連続テレビ小説「虎に翼」 (第37回・2024/5/21) 感想

NHK総合・NHK BS・プレミアム4K/連続テレビ小説『虎に翼』
公式リンク:Website、X(旧Twitter)、Instagram
第37回/第8週『女冥利に尽きる?』の感想。
※ 毎日毎日の感想なので、私の気分も山あり谷ありです。ご理解を。
※ また、称賛、絶賛の感想だけをご希望の方は読まないほうが良いです。
昭和17年3月。直言(岡部たかし)の工場は軍からの注文が途切れず、順調に稼働を続けていた。戦時下で食べ物が貴重になる中、優三(仲野太賀)は一緒においしいものを食べて寅子(伊藤沙莉)を元気づけようとする。その夜、寅子は優三に「どんな弁護士になりたかったか」とたずねる。「法律の本を出すことが夢だった」と語る優三と、仲むつまじく語り合う寅子。やがて、猪爪家にうれしい知らせが舞い込む。
------上記のあらすじは、公式サイト等より引用------
作品の 粗探しや重箱の隅を楊枝でほじくる こと、スタッフの人格否定や俳優の個人攻撃 が 目的ではない ことをご理解ください。
原作:なし
脚本:吉田恵里香(過去作/恋せぬふたり,生理のおじさんとその娘)
演出:梛川善郎(過去作/べっぴんさん,おちょやん,あなたのブツが、ここに) 第1,2,4,7週
橋本万葉(過去作/とと姉ちゃん,生理のおじさんとその娘) 第3,8週
安藤大佑(過去作/とと姉ちゃん,となりのマサラ,やさしい猫) 第5,6週
音楽:森優太(過去作/海の見える理髪店,あなたのブツが、ここに,忘恋剤)
主題歌:米津玄師「さよーならまたいつか!」
法律考証:村上一博(明治大学 法学部 専任教授)
料理指導:赤堀博美(過去作/花咲舞が黙ってない,厨房のありす)
タイトルバック制作:シシヤマザキ(公式サイト )
取材:清永聡(NHK解説委員:司法・事件・公文書管理・災害)
語り(本編):尾野真千子(過去作/カーネーション,長谷川町子物語,足尾から来た女)
語り(土曜日版):山下誠一郎(過去作/Eテレ「小雪と発酵おばあちゃん」)
副音声解説:山崎健太郎(過去作舞いあがれ!,らんまん,ブギウギ)
制作統括:尾崎裕和(過去作/恋せぬふたり,鎌倉殿の13人)
※敬称略
大失態を犯した主人公は"もはや戦争どころではない"状態に
「初めまして」の皆様も、ご常連の皆様も、管理人のみっきーです!
当ブログに来てくださり、ありがとうございます。
前回の冒頭が「昭和17年(1942)1月24日(土)」で、
前回の「子の親権を義父と争う女性の弁護案件」の期間は不明だが。
今回の冒頭は、帝都新聞の発行日から「昭和17年(1942)3月10日(火)」である。
歴史の教科書的に書けば。
5日前の3月5日に東京で初めて空襲警報が発令され。
前日の3月9日、インドネシアでジャワ島のオランダ軍が日本軍に無条件降伏する。
簡単にいえば、6月5~7日のミッドウェー海戦を控えた、日米が一触即発の緊張感のとき… となる。
従って、映像的な印象は “こんなご時世” を強調しつつ。
一方で、前回の弁護で大失態を犯した主人公は “もはや戦争どころではない” といったところだ。
"這い上がる寅子" をやらずに"夫婦愛"を描いた秀逸な展開
で、戦争どころではない寅子(伊藤沙莉)と、妻を元気づけようとする優三(仲野太賀)のくだりだ。
優三「全てが正しい人間はいないから」
寅子「えっ?」
優三「トラちゃんだって
僕と社会的地位のために結婚したろ?」
このやり取りで、寅子が自身の失態を優三にきちんと話したことが分かる。
優三「トラちゃんも ず~っと
正しい人のまんまだと疲れちゃうから…」
前回で、寅子へ「決めつけて突っ走ると 思わぬヘマをするから」と忠告した優三が、妻のミスを責めるのでなく、寅子の本音をくみ取って、今度はやさしく寄り添った。
N「人が恋に落ちるのは 突然です」
とにかく、この流れ、展開、運びを私は好きだし、大いに評価したい。
並みの朝ドラなら、前回での “寅子の失態” は “騒動” として位置付けて、次回から “這い上がる寅子” をやると思うのだ。
「人は失敗をしても巻き返せる。特に、朝ドラのヒロインは這い上がりますよ」と言わんばかりに… だ。
でも今作は、“這い上がる寅子” をやらずに、今のうちに描いておくべき、絶対に描く必要がある “夫婦愛” へ切り替えた。
それなのに、これっぽっちも “安っぽい恋バナ” にならずに、ちゃんと “寅子の物語” の一部になっている。
そして、何が正義であるかは、その人の経験値や立場でも変わってくる。
だから、法律が必要で、中立な法の運用が大切であることも伝わってくる。
「見合いに連敗から策略結婚」のときも驚いたが、今回も本当によくできたストーリーだ。
時々"原点回帰"を入れることで、より強い物語が作られる
ようやく、寅子と優三の“淫楽を共にする関係”を描くかと思いきや(笑)
イントロだけ見せて、時間経過。
時は、「昭和18年(1943)5月」へ。
1年2か月後になり、「寅子の妊娠が分かり 一同 この喜びようです」のナレーションだ。
そこからの、久し振りの明律大学における寅子の先輩であり、女子部一期生のリーダー的存在で、一足早く結婚、妊娠、弁護士になった久保田聡子(小林涼子)との再会。
その久保田が弁護士を辞め、夫の実家に帰るという。
N「何だよ。
仲間たちの思いを 私たちは
背負っているんじゃなかったのか」
寅子「もう 私しかいないんだ」
私も半ば意地もあるし期待もあるから残しているのが、下の架空映画『トラつば・アベンジャーズ/ウィメンズ・ファイト』のポスターだ。
この時点では、山田よね(土居志央梨)が残留組だが、ほぼ寅子だけが在籍メンバーだ。
でも、今回のように、“トラつば・アベンジャーズ” の回想シーンが挿入されると、物語が基準点に戻ると思う。
要するに、あれこれ描き、寅子も、寅子の周辺も変わるけど、変わらないものがある… と。
それが、上記のナレーションと寅子の会話劇だったのだ。
今作はブレてはいないから軌道修正ではなく、あくまでも物語も視聴者の意識も一種の “原点回帰”のようなものだ。
それをやり続けることで、より強い物語(ブレないストーリー)が構築されていくと思う。
今作のナレーションがこれまで積み上げた実績があるから…
そして、付け加えたい秀逸な演出についても書いておこう。
それは、上記のやり取り上でのナレーションと寅子のセリフの間にあった “約10秒間の沈黙=間” の演出だ。
この“約10秒間の沈黙” によって、寅子が背負い続ける責任と重圧、思い込みと思い入れが交錯する複雑な心情が、更に深く重く苦しく圧(の)し掛かってくるのが伝わる。
だから、つい寅子は、口に出してしまう。
で、これが伏線というか、終盤の、ある演出につながる【呼び水=ある事を引き出すきっかけを作るのに使うもの】になっている。
それが、今回の最後の演出だ。
N「もう 私しかいないんだ」
前段の甘味処「竹もと」では、まだ口に出せるエネルギーのあった寅子が。
久保田に送られた、夫を戦死で失われた寡婦たちや、子供がいる母親からの子育てや相続問題への多数の “悲痛な嘆きと切なる訴え” に押しつぶされてしまう。
そのことを「声すら出なくなった」とし、ナレーションで聞かせた。
本来は、ナレーションの多用は説明過多になるから推奨はしない。
でも、「声すら出なくなった」を描くには、寅子がしゃべらないことが最適解だ。
そんな王道の演出ではあるが、今作のナレーションがこれまで積み上げた実績があるから、全く説明に聴こえないのもお見事だ。
あとがき(その1)
いわゆる「戦争未亡人」からの手紙と声を多重に描くこと… と。
寅子の手元を照らす机上ライトの灯りを腕で遮って、妻を気遣いつつ眠ろうとする優三… と。
優三の奥の暗がりの中で、まるで光り輝くように見える小さな寅子の背中の大きさ… と。
この三つによって、時代、仕事、結婚、夫婦、家族、妊娠などが全部重なって見えてきます。
こういうのを、テレビドラマ” なのだから <映像で見せて(show)魅せる(fascinate)べき!> と言うのです。
ホント、素晴らしいです。
あとがき(その2)
前回の「あとがき(その3)」に書きました、これまで平仮名表記としていた「すべて」を漢字表記に統一した件について、視覚障がいの読者様からコメントをいただきました。
下記でご紹介しましたので、興味がある方は読んでみてください。
拍手コメント返信(2024/5/20):虎に翼(第36回) ※読み上げソフト利用者のコメントをご紹介します
最後に、次回の投稿は遅くなるかもしれませんが、気長にお待ちいただけると助かります…
★すべての読者様に愛と感謝の “ありがっとう!!”
★本家の記事のURL → https://director.blog.shinobi.jp/Entry/18862/