連続テレビ小説「虎に翼」 (第47回・2024/6/4) 感想
NHK総合・NHK BS・プレミアム4K/連続テレビ小説『虎に翼』
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第47回/第10週『女の知恵は鼻の先?』の感想。
※ 毎日毎日の感想なので、私の気分も山あり谷ありです。ご理解を。
※ また、称賛、絶賛の感想だけをご希望の方は読まないほうが良いです。
久藤(沢村一樹)の後押しもあり、司法省で働くことになった寅子(伊藤沙莉)は民法の改正案を読み、かつて共に法律を学んだ仲間たちを思い出す。そこに現れた久藤から、これがGHQから突き返された案だと知らされ、「思ったより謙虚だ」と言われた寅子は、自分の認識が甘いことに悔しい思いをする。そこに、久藤を訪ねてGHQで働くホーナー(ブレイク・クロフォード)がやってくる。
------上記のあらすじは、公式サイト等より引用------
作品の 粗探しや重箱の隅を楊枝でほじくる こと、スタッフの人格否定や俳優の個人攻撃 が 目的ではない ことをご理解ください。
原作:なし
脚本:吉田恵里香(過去作/恋せぬふたり,生理のおじさんとその娘)
演出:梛川善郎(過去作/べっぴんさん,おちょやん,あなたのブツが、ここに) 第1,2,4,7,10週
橋本万葉(過去作/とと姉ちゃん,生理のおじさんとその娘) 第3,8週
安藤大佑(過去作/とと姉ちゃん,となりのマサラ,やさしい猫) 第5,6,9週
音楽:森優太(過去作/海の見える理髪店,あなたのブツが、ここに,忘恋剤)
主題歌:米津玄師「さよーならまたいつか!」
法律考証:村上一博(明治大学 法学部 専任教授)
料理指導:赤堀博美(過去作/花咲舞が黙ってない,厨房のありす)
タイトルバック制作:シシヤマザキ(公式サイト )
取材:清永聡(NHK解説委員:司法・事件・公文書管理・災害)
語り(本編):尾野真千子(過去作/カーネーション,長谷川町子物語,足尾から来た女)
語り(土曜日版):山下誠一郎(過去作/Eテレ「小雪と発酵おばあちゃん」)
副音声解説:山崎健太郎(過去作舞いあがれ!,らんまん,ブギウギ)
制作統括:尾崎裕和(過去作/恋せぬふたり,鎌倉殿の13人)
※敬称略
「新章」で描くことが「前章」とは明らかに違う
「初めまして」の皆様も、ご常連の皆様も、管理人のみっきーです!
当ブログに来てくださり、ありがとうございます。
当ブログの感想欄で、憲法議論や、リベラルVS保守を語るつもりはない。
今回も、いつもどおりに “ドラマ” の感想を書いてみる。
序盤で、印象的だった寅子(伊藤沙莉)のセリフと演出がこれ。
寅子「さっきから この喜びを
分かち合いたかった人たちの顔が
次々と浮かんできて」
もちろん、「主人公が生きている世界」と「主人公が生かされている世界」と「主人公が生きているから成立する世界」が共存しているからこそ、寅子が過去にかかわった人たちのことが、我々視聴者も浮かんでくるわけだが。
ここで注目したいのは、敢えて “分かち合いたかった人たち” の回想シーンを盛り込まない演出になっていたことだ。
並みの演出なら、“トラつば・アベンジャーズ” の面々を盛り込むと思う。
でも、今回は敢えてやらなかった。
それは、いわゆる「新章」で描くことが「前章」とは明らかに違うからだ。
どう違うのか?
「ヒロインの挫折」を強調するために回想は不要との判断…
「前章」では、誤解を招くのを恐れずに書けば、寅子が正義、寅子が正しい、寅子に従え… だったのだ。
寅子は、誰よりも型にはまらず自由で、斬新で、時代の先の先まで見据えて行動していた… はずだ。
でも、戦争、夫や家族の死を経て、一家の経済的支えになると決めた時点から、寅子は自身の中で、ある種の決意と実績を封印するようになったのだ。
そういった「ヒロインの挫折」を強調するためには、挫折以前の回想シーンは演出的に邪魔になるという意図だと思う。
で、逆に強調してきた回想シーンが、次の二つと、衣装箱を前に泣く寅子のカットだ。
"希望"と"現実"の違いこそが、"ドラマで時代を描く"こと
よね(回想)「こっちの道には 二度と戻ってくんな」
桂場(回想)「君は弁護士を 一度 断念しているだろ」
語り「駄目だ どうしても スンッてなる」
以前に、山田よね(土居志央梨)が言った「こっちの道」が何であるかは議論済みだから省略する。
でも、明らかに、よねと桂場等一郎(松山ケンイチ)の各ひと言の回想は、痛烈に「ヒロインの挫折」を非難している。
そして、その非難を反論や反発で返すのではく、「スンッてなる」が今の寅子だってことだ。
要するに、夢や希望を語り前進していたころは成立していても。
戦争が終わり、民法改正のそのときになったら、寅子は及び腰になっている… と、際立たせて描いたわけだ。
これの何がスゴイのか、お分かりだろうか?
寅子と‘ライアン’こと久藤頼安(沢村一樹)との序盤の数分間のやり取りだけで。
寅子が変えるべきだと訴え続けた “現実” は、戦争が終わり、憲法が改正されたくらいでは変わらないことに力点を置いた。
これによって、「前章」で描いた “希望の未来” と、「新章」で描き始めた “現実” の違いがクッキリすることができたのだ。
そして、“希望” と “現実” の違いこそが、「ドラマで時代を描く」ということになるのだ。
桂場の恩師で東京帝大教授・神保を終盤に登場させる効果
少し劇中の時間軸は前後するが。
並みのドラマなら、終盤に登場した桂場の恩師で東京帝大教授・神保衛彦(木場勝己)を序盤に盛り込んで、保守派の意見をセリフでしゃべらせてから、「神保さんは、ああ言うんだけどね」と久藤が更に解説をやるのだ。
でも、それはあまりにも説明になり過ぎる脚本であり、演出だ。
むしろ、ちょっと難しい内容だから、終盤で神保教授を盛り込んで “詳しく解説” した… という感じだと思う。
今作らしさをしっかりと担保しつつ、老若男女問わず楽しめる朝ドラとして盛り込まれていると思う。
「なんでも映像で、回想で見せればいい」のではない
さて、民法改正の話から距離をおいてみよう。
今回で、今作らしいやり取りといったら、これも入ると思う。
アメリカ人と、親友の寅子が働くことを良き事とは思えない花江(森田望智)を慰める寅子とのシーンだ。
寅子「お給料もらったら 何か ぜいたくなもの
食べに行きましょうか」
花江「いいわね」
寅子「何が食べたい?」
花江「う~ん… 手羽先」
先日の、母はる(石田ゆり子)からもらったお金で、闇市の焼き鳥屋に寅子が座るも食べずに席を立った場面で。
鶏肉と鶏肉のすき間から串が見えるような品祖な焼き鳥が普通だった時代だからこその、手羽先のスペシャル感だ。
もちろん、5月30日(木)での はるの次のセリフの回収だ。
はる「どうしようもなくなった時
ないしょで 思いっきり ぜいたくしました。
そうするしかなかった」
言うまでもないが、5月21日(火)放送の第37回での川辺のシーンでの寅子が優三(仲野太賀)へ恋に落ちた名ゼリフの回収でもある。
優三「嫌なことがあったら
また こうして2人で隠れて
ちょっと 何か おいしいものを 食べましょう」
どちらのシーンの回想も挿入しないからこそ、上記の二つの言葉が、寅子の心に強烈に残っていることが伝わる。
「なんでも映像で、回想で見せればいい」のではないことを、証明したともいえる、いい演出だ。
久藤らが期待する寅子像と、寅子の寅子像の乖離の描写が!
さて、今回を、今作を、少し俯瞰で見下ろしてみよう。
「主人公の挫折」を描く、ネタにする “ドラマ” や “連ドラ” はよく見かける。
でも、積み上げてきた「主人公の言動や目標を、ほぼ全否定」するのは、 “ドラマ” や “連ドラ” で見かけることはないのでは?
もちろん、寅子が「第●条の、あそこを、こう修正するべき!」と詳細に描かれたことはあまり記憶にない。
ただ、寅子の “法律” や “法律家(弁護士や裁判官の含む)” はこうあるべき的な視点や論調は描いてきた。
それを「もう ヘマはできない。変な波風は立てずに…」で封印した結果を、久藤の最大の皮肉である「謙虚」で盛り込んできたのだ。
ここの脚本と演出と演技が秀逸だと思うのは。
本当の寅子を知っている人たちが期待する寅子像と、寅子自身がやらねばと思っている寅子像が乖離していることを、困惑する寅子と、嫌味な久藤と桂場、そして回想シーンのよねで明確化した点だ。
少し遠回りした描写に感じるが、実の表現はメッチャストレート。
この辺のメリハリのさじ加減も、今作らしさだ。
あとがき
ホント、よくできていますね。
並みのドラマなら「寅子、どうした?」「寅子、何やってんの!」となると思いますけど。
今作の場合は、「寅子、気づけ!」「寅子、再起して!」になりますもんね。
おっと、完全に感情移入してしまいました。
でも、私が感情移入するなんて、滅多にないですよ(笑)
★すべての読者様に愛と感謝の “ありがっとう!!”
★本家の記事のURL → https://director.blog.shinobi.jp/Entry/18906/
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