連続テレビ小説「虎に翼」 (第67回・2024/7/2) 感想 ※星長官の「日常生活と民法」の序文の全文掲載!

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第67回/第14週『女房百日 馬二十日?』の感想。
※ 毎日毎日の感想なので、私の気分も山あり谷ありです。ご理解を。
※ また、称賛、絶賛の感想だけをご希望の方は読まないほうが良いです。
休日返上で航一(岡田将生)と改稿作業をする寅子(伊藤沙莉)。航一はおだやかだが考えていることが全く読めない。戸惑いながらも改稿作業を楽しむ寅子。一方、家庭局では、家事部と少年部の親睦を深めようと寅子が昼食会を企画するが、まったくうまくいかない。
------上記のあらすじは、公式サイト等より引用------
作品の 粗探しや重箱の隅を楊枝でほじくる こと、スタッフの人格否定や俳優の個人攻撃 が 目的ではない ことをご理解ください。
原作:なし
脚本:吉田恵里香(過去作/恋せぬふたり,生理のおじさんとその娘)
演出:梛川善郎(過去作/べっぴんさん,おちょやん,あなたのブツが、ここに) 第1,2,4,7,10,11,14週
橋本万葉(過去作/とと姉ちゃん,生理のおじさんとその娘) 第3,8,13週
安藤大佑(過去作/とと姉ちゃん,となりのマサラ,やさしい猫) 第5,6,9,12週
音楽:森優太(過去作/海の見える理髪店,あなたのブツが、ここに,忘恋剤)
主題歌:米津玄師「さよーならまたいつか!」
法律考証:村上一博(明治大学 法学部 専任教授)
裁判所考証:荒井史男(元名古屋高裁長官 定年退官)
風俗考証:天野隆子(過去作/ごちそうさん,花子とアン,スカーレット)
旧字考証:三浦直人(明治大学大学院 文学研究科 史学専攻 日本史学専修)
医事考証:冨田泰彦(過去作/育休刑事,らんまん.どうする家康)
医事考証:冨田泰彦(過去作/育休刑事,らんまん.どうする家康)
ジェンダー・セクシュアリティ考証:前川直哉(福島大学 教育推進機構 高等教育企画室 准教授)
タイトルバック制作:シシヤマザキ(公式サイト )
取材:清永聡(NHK解説委員:司法・事件・公文書管理・災害)
語り(本編):尾野真千子(過去作/カーネーション,長谷川町子物語,足尾から来た女)
語り(土曜日版):山下誠一郎(過去作/Eテレ「小雪と発酵おばあちゃん」)
副音声解説:山崎健太郎(過去作舞いあがれ!,らんまん,ブギウギ)
制作統括:尾崎裕和(過去作/恋せぬふたり,鎌倉殿の13人)
※敬称略
今週のサブタイトル『女房百日 馬二十日?』について
「初めまして」の皆様も、ご常連の皆様も、管理人のみっきーです!
当ブログに来てくださり、ありがとうございます。
室内でも熱中症の危険があるとのこと。
こまめに水分補給してくださいね。
今回の感想に入る前に、今週のサブタイトル『女房百日 馬二十日?』について。
サブタイトルに “女房” が入る三部作? の三作目が今週だ。
「女房百日 馬二十日」とは、「妻は100日、馬は20日もすれば飽きてしまう」という意味が転じて。
「どんなものも、はじめのうちは珍しがられるが、すぐに飽きられてしまう」というたとえ。
“法曹界のアイドル” となった主人公が、誰に珍しがられ、誰に飽きられてしまうのか… あたりが見所かもしれない。
新キャラである航一の本格的な紹介と説明を板に水のごとく
航一「父の言うこと 真に受けないでください
ええ 分かっています」
上の航一(岡田将生)と寅子(伊藤沙莉)のやり取りまで、メインタイトル映像を含めて「5分18秒」。
前回では、“法曹界のアイドル” となった寅子の人気ぶりの描写がメインだったから、今回が視聴者への、新キャラクターである航一の本格的な紹介と説明だ。
それを、実質的に約4分間に押し込んだ。
●改稿作業が3回目であること
●航一の父、最高裁長官・星朋彦(平田満)が一度も顔を見せていないこと
●星長官に「百合さん」という新妻がいること
●星長官が弁護士になった理由
●星長官の先妻は病気で他界したこと
●航一には戦時中に病気で亡くなった妻と、複数の子どもがいること
●星長官が航一の再婚相手を探していること
7つを、星長官が入室してから、平田満さんの立て板に水のごとくの演技で一気に描いた…
と、いいたいとろころだが。
メイン監督である梛川善郎氏らしい繊細な配慮を感じる場面
実は、二分割、正確には三分割されていた。
最初の分割(編集)点が、星が寅子に手紙を渡し終えた瞬間の切り替え。
もう一つが、寅子が星にお辞儀をする動作の途中。
要は、ドアが映る引きのカットと、壁の絵画がよく見えるカットで切り替わっている。
それは、よく見ると、平田満さんと伊藤沙莉さんの動作がつながっていないことから判別できる。
恐らく、二つのカメラアングルからこのシーンを撮影し、星長官のセリフのテンポや流れがスムーズに見えるように工夫したと思われる。
やはり、いくつかのセリフごとに撮影を止めていては “立て板に水のごとく” には見えないからだ。
この辺の、シーン全体の雰囲気、テンポ感、スムーズさを優先した撮影や編集は、メイン監督である梛川善郎氏らしい繊細な配慮だと思う。
当時の日本では、民主的な家族、民主的な子育てが…
改定作業の次は、猪爪家。
前回の一家だんらんのシーンで、顔を映さなかった(=寅子に顔を見せなかった)優未(竹澤咲子)が、今回は窓越しに我々にだけ顔を見せた。
というか、寅子は久し振りに自分の大好きな法律に仕事抜きで向き合える時間が楽しくて、優未が目に入らない。
この前段で、下記の寅子が書いた文書を航一が褒めるくだりがあった。
「人々が互いに尊重し合いながら
協力していくような民主的な家庭」
今の優未の母を慕う心が寅子には届いていない。
法曹会館の屋上に戻ってきた寅子に、落ち葉を舞わせる秋風が吹く。
寅子の服装から、初秋の雰囲気だ。
いいや、音からしたらトタン屋根がひしめくほどの台風の接近を感じる。
アメリカでは50年以上前から意識されている民主的な家族、民主的な子育てが、この当時は法曹界の人間の家でも… を、描いているのだろうか?
「フラグが立つ」という表現は好きではないし。
むしろ、寅子とその他の家族の民主的な家族、民主的な子育てを、今作らしく “ホームドラマ” に重ねて描くとしたら、これまた かなり面白くなりそうだ。
"食べ物を一緒に食べることで、心が通じ合う"だから甘味処「竹もと」
今回で、「脚本家さん、やるなぁ」と感服したのが、寅子の行きつけの甘味処「竹もと」のシーン。
何に感服したのか?
これ、普通は、先の「長官室」でやれば済むことだし、そのほうが圧倒的に自然なのだ。
ただ、今作はこれまで、次の要素を強調してきた摘み重ねがある。
一つめは、寅子が法律家になったのは仕事として法律家になりたいというよりも、法律が大好きだから仕事にしたかった。
でも、今回の改編作業は仕事ではない。
だから、仕事の匂いがする「長官室」ではないほうが良いってこと。
二つめは、ざっくりと書けば、「食べ物を一緒に食べることで、心が通じ合う」を描き続けてきたからだ。
そして、もう一つ、今回は、次の優三(仲野太賀)の名ゼリフの回想シーンはなかったが。
優三(回想)「嫌なことがあったら
また こうして2人で隠れて
ちょっと 何か おいしいものを 食べましょう」
上記の「おいしいものを 食べましょう」は、既に視聴者へ十分に浸透しているという位置付けなのだろう。
こうなると、「竹もと」しか最適な場所がないのだ。
寅子「夫が言ってたんです」
優三(回想)「法律の本を出したかった」
出涸らしにも役割がある…
そして今回は、上記の回想を盛り込んで、巧みに「おいしいものを 食べましょう」に関連付けてきた。
寅子「出涸らしにしては
味も香りも上等すぎますね」
航一「フッ…」
寅子「でも その時の自分にしかできない
役目みたいなものは
確かにあるかもしれないわ」
因みに、一般的には「出がらし」と表記することが多いが、放送上も「出涸らし」で間違いではない。
わざわざ書くことでもないが。
普通、「出涸らしのような人」は、「味気ない人」「つまらない人」といったネガティブなイメージを指す。
でも、今回の「出涸らしのような人」は、「出涸らしでしか務まらない役目や役割ができる人」のポジティブな印象で使っているのが新鮮だ。
我が家では、エスプレッソを作るのにイタリア・ビアレッティ社の『モカ』シリーズの「モカエキスプレス 6杯用」というマキネッタ(イタリア語で「マシン」の意味)を使っている。

モカエキスプレス 6杯用
本場イタリアでは、使っているうちにコーヒー豆の “渋” が容器の内側にこびりつくのだが、決して洗剤で洗い落とさないという。
特に、金属フィルターに付いたコーヒーの粉が徐々に固まって、それが次のエスプレッソに移り、「その家の味」になるからだそう。
というわけで、我が家も1年ほど使っているが洗っていない。
これも、“出涸らしにも役割がある” だと思う。
星長官の「日常生活と民法」の序文を全文掲載!
またまた、話を今作に戻そう。
今回の最大の見せ場、いいや今作の見せ場の一つになると思われるのが。
「竹もと」に来店した星長官が「日常生活と民法」の序文を朗読する場面だろう。
少し長いが、字幕表示を転記してみる。
※一部の改行以外は、字幕ママ
星「今次の戦争で日本は敗れ
国の立て直しを迫られ
民法も改定されました。
私たちの現実の生活より
進んだところのものを取り入れて
規定していますから
これが 国民になじむまで
相当の工夫や 努力と日時を 要するでしょう。
人が作ったものです。
古くなるでしょう
間違いもあるでしょう。
私は この民法が早く国民になじみ
新しく正しいものに変わっていくことを
望みます。
民法は 世間 万人
知らねばならぬ 法律であります。
決して法律家にのみ託しておいて
差し支えない法律ではありません。
私の この拙著が いささかにても
諸君の民法に対する注意と興味とを
喚起する よすがとなることを
えましたならば
まことに望外の幸せであります。
昭和25年6月 星 朋彦」
テレビドラマで、しかも朝ドラで “これ” をここまでセリフに盛り込んで訴えるのは、本当に凄すぎる。
本来は、いつもの私なら「“これ” を映像で描くのがドラマでしょ!?」となる場面だが。
「三権の長」のひとりでる初代最高裁判所長官が、庶民のいる場所で声に出して読むことの説得力の強力さだ。
きっと、多くの視聴者が「竹もと」に同席していた客の立場で聴き入ったのでは?
星長官の序文朗読シーンの、臨場感と説得力の秘密を解説!
このシーンも、序盤の長官室と同様に、数回に分けて撮影されたカットが合体されている。
この場面がとてもリアルに感じる理由を私なりに考えてみた。
この場面をよく見る… いいや、よく聴くと分かる。
カメラが寄りのときは、収録マイクが平田さんの近くにあり、平田さんの息遣いが聴こえる。
で、カメラが引きのときは、マイクが平田さんから離れたところにあって、ほんの少しだけ空間ノイズが入っている。
普通は、一度 “通し” で録音した “一つの音声” を編集で貼り付けることで、スムーズな音声をつくる。
でもここは、視聴者の耳が “カメラ視点の耳” になっており、映像と音声がリンクしているのだ。
だから、立体感、一体感、臨場感が半端ないのだ。
いやあ、ここまでやる演出が朝ドラで見られる、聴くことができるとは!!
斬新で思い切りのよい脚本と、繊細で大胆な演出と、きめ細かな演技に魅了された15分間
そして、星長官の葬儀。
穂高重親(小林薫)と桂場等一郎(松山ケンイチ)が喪服で、ソファーに腰かけウイスキーをやっている。
もちろんこれも、食べ物ではないが…「食べ物を一緒に食べることで、心が通じ合う」の一環だろう。
夕景の喪服姿の寅子の部屋に、蜩(ひぐらし)の声が入ってくる。
画面が縦二分割構図で、“本の完成” と “長官の死” の「明暗」をモノクロ調で表現された。
今回の 15分間は、斬新で思い切りのよい脚本と、繊細で大胆な演出と、きめ細かな演技に魅了された。
あとがき
この、流れですよ。
先日、例の投稿で書きましたとおり、星長官のモデルである「三淵忠彦さん」の死の時間軸も位置づけも、史実とは違うんです。
当然ですが、フィクションである今作は、星長官や穂高教授たちが、より “先人の知恵” として若い人たちの影響を与えているように描いたわけです。
これこそが、久し振りに書きますけど。
時間軸を超えて、「主人公が生きている世界」と「主人公が生かされている世界」と「主人公が生きているから成立する世界」が、つながっている… の映像化だと思います。
やはり、今作って、最近の朝ドラとは一線を画す仕上がりだと思います。
みっきーの植物図鑑(第236回)
久し振りの植物図鑑です。
日曜日(6/30)に「千葉県立中央博物館」で開催中の文化庁との共催による巡回展「発掘された日本列島2024」(通称「列島展」)を見てきました。
博物館のすぐ横にあるのが、野鳥観察ができる「生態園」。
深い林がありまして、ほぼ全ての植物に名札がつけられており、歩き回るだけで勉強になります。
今回のは、センハイゴケ科の「ヨコスカイチイゴケ(横須賀一位蘚)」というコケの仲間です。

葉が細長く、先が鋭くと がり、ペタ~ッとやや扁平に張り付く姿が「針葉樹のイチ イの葉」に似ているので名付けられました。
これからこけが増える時期なので、足元は気をつけないといけないですね。
★すべての読者様に愛と感謝の “ありがっとう!!”
★本家の記事のURL → https://director.blog.shinobi.jp/Entry/18982/
【これまでの感想】
第1週『女賢しくて牛売り損なう?』
1 2 3 4 5 土
第2週『女三人寄ればかしましい?』
6 7 8 9 10 土
第3週『女は三界に家なし?』
11 12 13 14 15 土
朝ドラ「虎に翼」は、「戦隊モノ」でなく「和製アベンジャーズ」だと本気で思う理由
第4週『屈み女に反り男?』
16 17 18 19 20 土
第5週『朝雨は女の腕まくり?』
21 22 23 24 25 土
第6週『女の一念、岩をも通す?』
26 27 28 29 30 土
第7週『女の心は猫の目?』
31 32 33 34 35 土
第8週『女冥利に尽きる?』
36 37 38 39 40 土
第9週『男は度胸、女は愛嬌?』
41 42 43 44 45 土
納得!「虎に翼」の演出語る「マーベル映画を意識」やはり“トラつば・アベンジャーズ”は正解だった…?
第10週『女の知恵は鼻の先?』
46 47 48 49 50 土
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第11週『女子と小人は養い難し?』
51 52 53 54 55 土
第12週『家に女房なきは火のない炉のごとし?』
56 57 58 59 60 土
午後LIVEニュースーン 午後4時台・「虎に翼」取材担当者がドラマの裏側を語る“第12週の寅子と家裁がやったこと”
第13週『女房は掃きだめから拾え?』
61 62 63 64 65 土
朝ドラ「虎に翼」星航一(岡田将生)のモデルは“初代最高裁長官の長男”三淵乾太郎さん?渋沢栄一との遠いご縁も!”
第14週『女房百日 馬二十日?』
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