連続テレビ小説「虎に翼」 (第40回・2024/5/24) 感想
NHK総合・NHK BS・プレミアム4K/連続テレビ小説『虎に翼』
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第40回/第8週『女冥利に尽きる?』の感想。
※ 毎日毎日の感想なので、私の気分も山あり谷ありです。ご理解を。
※ また、称賛、絶賛の感想だけをご希望の方は読まないほうが良いです。
寅子(伊藤沙莉)は訪ねてきた後輩の小泉(福室莉音)から、女子部が閉鎖されることになったと知らされる。今年は高等試験も行われないため、寅子たち女性法曹の道は途絶えてしまうことに。戦局が厳しくなる中、寅子は優三(仲野太賀)と娘・優未(ゆみ)と戦争を乗り越えることを最優先にしようと心に決める。しかし、とうとう優三の元にも召集令状が届く。
------上記のあらすじは、公式サイト等より引用------
作品の 粗探しや重箱の隅を楊枝でほじくる こと、スタッフの人格否定や俳優の個人攻撃 が 目的ではない ことをご理解ください。
原作:なし
脚本:吉田恵里香(過去作/恋せぬふたり,生理のおじさんとその娘)
演出:梛川善郎(過去作/べっぴんさん,おちょやん,あなたのブツが、ここに) 第1,2,4,7週
橋本万葉(過去作/とと姉ちゃん,生理のおじさんとその娘) 第3,8週
安藤大佑(過去作/とと姉ちゃん,となりのマサラ,やさしい猫) 第5,6週
音楽:森優太(過去作/海の見える理髪店,あなたのブツが、ここに,忘恋剤)
主題歌:米津玄師「さよーならまたいつか!」
法律考証:村上一博(明治大学 法学部 専任教授)
料理指導:赤堀博美(過去作/花咲舞が黙ってない,厨房のありす)
タイトルバック制作:シシヤマザキ(公式サイト )
取材:清永聡(NHK解説委員:司法・事件・公文書管理・災害)
語り(本編):尾野真千子(過去作/カーネーション,長谷川町子物語,足尾から来た女)
語り(土曜日版):山下誠一郎(過去作/Eテレ「小雪と発酵おばあちゃん」)
副音声解説:山崎健太郎(過去作舞いあがれ!,らんまん,ブギウギ)
制作統括:尾崎裕和(過去作/恋せぬふたり,鎌倉殿の13人)
※敬称略
非公開コメントのご質問に、簡単に答えてみます…
「初めまして」の皆様も、ご常連の皆様も、管理人のみっきーです!
当ブログに来てくださり、ありがとうございます。
今回の感想の前に、非公開コメントで前回の感想へ質問をいただいたので、簡単に答えてみる。
生理痛や月経は描くのに、出産シーンがなかったことをどう思いますか?
結論から言えば、言葉遊びに聞こえるかもしれないが。
寅子にとって、腹を痛めて我が子を出産する「産みの苦しみ」よりも。
自分が女性法曹として認知され活躍するという夢を現実にする「生みの苦しみ」のほうが断然に意味も意義もあるから。
あえて「女性としての寅子が出産するシーン」を強調する必要はない… からだと思う。
従って、出産を強調しない(描かない)なら、妊娠中も出産直後も強調しない(描かない)のは筋が通っている。
因みに、漢字表記では、お母さんが赤ちゃんを「産む」は「出産の産の字」をつかい、赤ちゃんが「生まれる」まは「誕生の生の字」を使う。
もう一つの理由は、「生理痛」のことは令和でも まだタブーな話題であり、それを朝ドラで扱うことで社会的認知度を上げたいという、ドラマ『生理のおじさんとその娘』の脚本家と演出家、ドラマ『恋せぬふたり』の制作統括たちの意図があると想像する。
このことは書かずとも分かってくださっていると思い込んでいたから、質問をいただいて助かりました。
以上…
『虎に翼』「土スタ」で特集“寅子モデル”三淵嘉子 卒業の明治大から公開生放送▽伊藤沙莉&仲野太賀が登場
ちょっぴり的外れだと思う鳥の鳴き声のお話
本編の感想に入る前に、前回の続きで、ちょっぴり的外れだと思う鳥の鳴き声のお話だ。
前回で、キジバトの効果音によって直道(上川周作)が出征中の花江(森田望智)と、結婚したばかりの寅子(伊藤沙莉)に何か案ずるものがあると書いた。
そして、前回の終盤で時間経過してウグイスが鳴いた。
ただ、時間によって意味合いが違っており。
昼に鳴き声を聞くと、新しいことのはじまりなどを感じやすく、感情の変化を表すとされる。
正に、前回は感情の変化を象徴していたと思う。
でもって、今回の冒頭では、ウグイスと(多分)キビタキに似た鳥の鳴き声の効果音がつけてあった。
朝にウグイスの鳴き声を聞くと、成長を感じやすく、結果として旅立ちや別れを暗示するとされる。
ウグイスは、鳴き声を聞くだけで幸運が訪れるといわれる縁起のよい鳥だ。
ところで、キビタキの英名は、Narcissus Flycatcher(ナルキッサス・フライキャッチャー)。
ギリシャ神話のナルキッソス(Narcissus)と、ハエを捕まえる鳥であるフライキャッチャー(Flycatcher)が由来。
そして、ナルキッソスは、「ナルシスト」の語源で、自分の美しさに魅了されて水面に映る自分の姿を見続けたという神話上の美少年。
「一体、何の話?」と思うと思うが、少しあとで再登場するから覚えておいてほしい。
約4分10秒間もの長尺のアバンタイトルの構成も斬新
ここから、「本編」の感想だ。
「朝ドラらしからぬ朝ドラ」らしさといえば、約4分10秒間もの長尺のアバンタイトルの構成も斬新だ。
まず、2分強で寅子の、猪爪家の、佐田家の日常を淡々と描いた。
N「これでいいんだ。
心に蓋をして忘れる… それだけです」
後輩の小泉(福室莉音)がわざわざ訪ねて来て。
明律大の女子部が閉鎖されようと、高等試験がなくなろうと、寅子の “引きこもり” は変わらない。
そんな日常に、夫・優三(仲野太賀)の元に召集令状が届く。
切ないのは、夫に赤紙が届くことが “非日常” でなく、“今の日常で普通のおめでたいこと” として生活の中に存在する現実だ。
"赤紙が届く前の夫婦の時間"と"赤紙が届いてしまった夫婦の時間"の対比
直言(岡部たかし)が家族会議で、優三のやっておきたいことを聞く。
優三「明日 少しだけ
トラちゃんとお出かけさせてもらえたら」
寅子「えっ」
直言「そんなことで いいのかい?
もっと ワガママ言ってくれても。なあ?」
はる「そんなことが いいんですよね」
優三「はい」
寅子、優三、娘・優未(ゆみ)が川の字になって寝ている。
そこに、ナレーションが被さってくる。
N「私は この人に
何をしてあげられるんだろうか。
いや 何かしてあげられたんだろうか」
「してあげられた」と過去完了形になっているのが、寅子らしいと思う。
いいや、出征していく夫の命のことを冷静に見ている寅子の切なる思いだ。
そして、短い時間だった “夫婦の時間” への無念さや、ほんのわずかな罪悪感みたいなものもあったと思う。
だから、「何かしてあげられたんだろうか」と「?」は付かないし、付けない。
この辺の、脚本の表記、尾野真千子さんの語りの演技も、今作らしい繊細な表現だ。
そして、召集令状が届いた時点でカットしてメインタイトル映像に進まずに、一気に夜まで描くことで(厳密にいえば少し違うが)「赤紙が届く前の夫婦の時間」にケジメをつけた展開もお見事だ。
これによって、メインタイトル映像明けは、「召集令状が届いてしまった夫婦の時間」が強調できるわけだから。
寅子はナルシストなのか?
メインタイトル映像明けは、アバンで曖昧にしてあった “寅子の罪悪感” を明確に描いてきた。
寅子「私 自分が
弁護士として出世したいばかりに」
ここで、だいぶ前に書いた「ナルシスト」の話を思い出してほしい。
令和の現代は、孤独や孤立が深刻化しており、最近では「自己肯定感を上げていこう」なんて話題をよく目にするようになった。
そういう人たち、そういう社会では、ポジティブな考え方として、「ナルシスト」を自分を愛することや自己愛の表現として注目されているのをご存じでは?
最近の多くのナルシストの人は、「他社の評価を必要としない=マジの自己肯定感」と位置付ける。
そして、自分に対しては「もっともっと褒めて!」の一方で、他人には「ぼちぼち短所に気づけよ!!」とやかましく催促する。
では、寅子はナルシストなのか?
私は、寅子はナルシストでないと見ているし、受け止めている。
確かに、「自分が 弁護士として出世したいばかりに」ではあるが。
寅子の行動原理、行動をする理由や意図は、全て “法の下の平等のため” と一貫しているからだ。
弁護士になった際も「もっともっと褒めて!」ではなかったし。
山田よね(土居志央梨)と対立しても「ぼちぼち短所に気づけよ!!」でなかったのが寅子なのだ。
だから、この場面では、アバンよりも鳥の鳴き声がごくごく小さいのだと思う。
昨今の朝ドラで、最上級クラスの感動のプロポーズシーン!
川辺のシーンは見ごたえ十分だ。
昨今の朝ドラ中で、最上級クラスの「感動のプロポーズシーン」とするのは大袈裟か?
日が落ちるのが速く、照明演出が難しい夕景で。
しかも、天候に左右されやすい川辺のロケ撮影で。
ここまで、丁寧に映像を作り込んだことが、まずスゴイ。
もちろん、演出も演技も、時間との勝負の中でよくぞここまでやり切った。 その上で…
寅子「おいしいものは一緒に」
優三「だね」
こういうのを、多くの視聴者の大好物である「伏線と回収」というのだ(笑)
5月21日(火)放送の第37回での川辺のシーンに次があった。
優三「嫌なことがあったら
また こうして2人で隠れて
ちょっと 何か おいしいものを 食べましょう」
N「人が恋に落ちるのは 突然です」
そう、「おいしいものは一緒に」は、寅子と優三が本当の恋人同士になった証しなのだ。
そして今回で、寝食を共にする… 本物の夫婦になったのだ。
あとのシーンは、細かく解説するのは無粋だからやらない…
性差とは別次元の"人と人との日常"が強調して描かれている
私は、ちょうど8週目の最後である今回を「寅子の第一章」の最終回として位置付けてみた。
そう位置付けると、今作が「朝ドラらしからぬ朝ドラ」であることの大きな理由が見えてくる。
一つは、「女性初の…」を描く作品であるから、当然 “女性” を強調しているわけだが。
それ以上に、性差とは別次元の “人と人との日常” が強調して描かれていると思うのだ。
例えば、今回の寅子と優三だが。
確かに、寅子の女性として、妻として、母親としての苦悩が強調されてはいる。
でも同じくらいに、優三の男性として、夫として、父親として、元下宿人としての苦悩も強調されている。
であって、不思議なくらいに「寅子が女性、優三が男性」は強調されていないのだ。
「出征するんだから、優三が男性なのは強調されているのでは?」は筋が違う。
このエピソードで必要なのは、出征する人、そのパートナー、その家族であって、性別は付随している条件でしかないのだから。
とにかく、今作が描こうとしているのは“法の下の平等” だから、この「第一章」では徹底的に、女性と男性の両性をバランスよく描くことに専念したと思うし
それが、ちゃんとできていたとも思う。
"時代"と"日常"を丁寧に描写している
もう一つ見えてきたのは、“時代” と “日常” を丁寧に描写していること。
男尊女卑の時代、戦争の時代… と、寅子にとって決して明かるい日々ばかりでない暗く辛い日常なのに。
今作ならではの、まるで一種のヒーローモノ、戦隊モノ風の、明るさや楽しさ、愛と正義、勇気と友情などで、“時代” と “日常” を朝ドラらしく見せて(show)魅せて(fascinate)いる。
この2か月間、本当に楽しませてもらった…
あとがき(その1)
騒動に頼らず、時代の中の日常を丁寧に紡いでいるだけですが、それでいいんですね。
奇をてらうことなく、時代を描けば自然と人は波に、渦に巻き込まれるものなのです。
そんな時代を描いているのですから、この調子で進めばよいと思います。
引き続き、当ブログは今作を応援します。
今週の「土曜日版」の編集も楽しみ…
それにしても、書くことが多くて、時間かかり過ぎます(大汗)
写真まで、手が回りません…
あとがき(その2)
終盤で、出征直前に、優三が子守をしている際に流れた歌入りの英語の歌、オリジナルだったそうです。
詳しくは下記。
本日放送のNHK連続テレビ小説『虎に翼』劇中歌にベル・アンド・セバスチャンのスチュアート・マードックが歌唱で参加 | Qetic
★すべての読者様に愛と感謝の “ありがっとう!!”
★本家の記事のURL → https://director.blog.shinobi.jp/Entry/18876/
【これまでの感想】
第1週『女賢しくて牛売り損なう?』
1 2 3 4 5 土
第2週『女三人寄ればかしましい?』
6 7 8 9 10 土
第3週『女は三界に家なし?』
11 12 13 14 15 土
朝ドラ「虎に翼」は、「戦隊モノ」でなく「和製アベンジャーズ」だと本気で思う理由
第4週『屈み女に反り男?』
16 17 18 19 20 土
第5週『朝雨は女の腕まくり?』
21 22 23 24 25 土
第6週『女の一念、岩をも通す?』
26 27 28 29 30 土
第7週『女の心は猫の目?』
31 32 33 34 35 土
第8週『女冥利に尽きる?』
36 37 38 39
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