連続テレビ小説「虎に翼」 (第84回・2024/7/25) 感想
NHK総合・NHK BS・プレミアム4K/連続テレビ小説『虎に翼』
公式リンク:Website、X(旧Twitter)、Instagram
第84回/第17週『女の情に蛇が住む?』の感想。
※ 毎日毎日の感想なので、私の気分も山あり谷ありです。ご理解を。
※ また、称賛、絶賛の感想だけをご希望の方は読まないほうが良いです。
優未(竹澤咲子)と稲(田中真弓)に留守番を頼みライトハウスにやってきた寅子(伊藤沙莉)は、玉(羽瀬川なぎ)と涼子(桜井ユキ)が正面から話し合えるように手を打つ。玉は自分がいるせいで、涼子が好きなことができないのではとずっと悩んでいた。涼子は母・寿子(筒井真理子)が亡くなる際に残した言葉を打ち明ける。
------上記のあらすじは、公式サイト等より引用------
作品の 粗探しや重箱の隅を楊枝でほじくる こと、スタッフの人格否定や俳優の個人攻撃 が 目的ではない ことをご理解ください。
原作:なし
脚本:吉田恵里香(過去作/恋せぬふたり,生理のおじさんとその娘)
演出:梛川善郎(過去作/べっぴんさん,おちょやん,あなたのブツが、ここに) 第1,2,4,7,10,11,14,16週
橋本万葉(過去作/とと姉ちゃん,生理のおじさんとその娘) 第3,8,13週
安藤大佑(過去作/とと姉ちゃん,となりのマサラ,やさしい猫) 第5,6,9,12週
伊集院悠(過去作/オーディオドラマ・FMシアター「告白の対価」静岡局制作) 第15週
相澤一樹(過去作/BSプレミアム:善人長屋 第5話のみ,単発:月食の夜は) 第17週
音楽:森優太(過去作/海の見える理髪店,あなたのブツが、ここに,忘恋剤)
主題歌:米津玄師「さよーならまたいつか!」
法律考証:村上一博(明治大学 法学部 専任教授)
裁判所考証:荒井史男(元名古屋高裁長官 定年退官)
風俗考証:天野隆子(過去作/ごちそうさん,花子とアン,スカーレット)
旧字考証:三浦直人(明治大学大学院 文学研究科 史学専攻 日本史学専修)
医事考証:冨田泰彦(過去作/育休刑事,らんまん.どうする家康)
医事考証:冨田泰彦(過去作/育休刑事,らんまん.どうする家康)
ジェンダー・セクシュアリティ考証:前川直哉(福島大学 教育推進機構 高等教育企画室 准教授)
タイトルバック制作:シシヤマザキ(公式サイト )
取材:清永聡(NHK解説委員:司法・事件・公文書管理・災害)
語り(本編):尾野真千子(過去作/カーネーション,長谷川町子物語,足尾から来た女)
語り(土曜日版):山下誠一郎(過去作/Eテレ「小雪と発酵おばあちゃん」)
副音声解説:山崎健太郎(過去作舞いあがれ!,らんまん,ブギウギ)
制作統括:尾崎裕和(過去作/恋せぬふたり,鎌倉殿の13人)
※敬称略
<最も可愛げのない朝ドラヒロインの娘選手権>の金メダル!(笑)
「初めまして」の皆様も、ご常連の皆様も、管理人のみっきーです!
当ブログに来てくださり、ありがとうございます。
室内でも熱中症の危険があるとのこと。
こまめに水分補給してくださいね。
優未「お互い無理をしても
誰も幸せじゃないし
そこから友達になるのは難しいと思う」
個人的には、私が知る朝ドラ史上、<最も可愛げのないヒロインの娘 選手権> のダントツ金メダルだ!(笑)
私が頼まれ友だちだったら、こちらから即刻 LINEグループ解除だが…(汗)
演出の相澤氏は伊藤沙莉さんと竹澤咲子さんの演技力に賭けた
今週の演出担当である相澤一樹氏は、当初のリストには名前の記載がなかったスタッフで。
ドラマの演出経験が浅いことは、月曜日に書いた。
しかし、これまで意外といっては申し訳ないが、小道具の使い方やカット割りのメリハリなど、かなり頑張っているのも書いてきたことだ。
今回のメインタイトル映像明けにも、かなり頑張った演出があった。
それは、帰宅した寅子(伊藤沙莉)が、自分に無反応の優未(竹澤咲子)にかける言葉が見つからず、悩むカットだ。
セリフのない寅子と優未を、全3カットを使い、約23秒間も無言で放置した。
音声処理も、劇伴も貼り付けず、夕方の屋外から聞こえる遠くで遊ぶ子供らの声と、カラスの鳴き声だけ。
これ、流石に「約23秒間」は長い!
いや、「長いからダメだ」という意味ではない。
「よくぞ、23秒間の無言で表現することを選択、実行した!」と褒めたいのだ。
ここ、普通の演出なら悲しげな劇伴を載せるか、1カット3秒×3くらいで我慢できなくなると思う。
でも、きっと演出の相澤氏は伊藤沙莉さんと竹澤咲子さんの演技力に賭けたのだ。
ちょっとした目や首、指先の動きで、自分が相手に伝えたい気持ちを最大限に表現してくれる言葉が、どうしても見つからないことを芝居で見せて(show)魅せて(fascinate)くれるんだと。
演出は、その一番良い芝居を確実に押さえて、視聴者に提示すれば間違いないのだと。
ここからは完全な想像だが。
やはり、第17週まで進んでいる連ドラ、朝ドラだから、俳優に絶大な信頼を寄せていると思うのだ。
だから、あれこれとやるよりも「そこに賭けてみたい!」は、あると思うのだ。
そして、期待を裏切らず…
いいや、期待以上の “変顔” で伊藤沙莉さんと竹澤咲子さんが見せて魅せて、お返しだ。
語り「もちかして 優未も私を…」
脚本を読んだ際に、このシーンに上記の語りしかなかったら、さぞかし難しい演出だったろうか。
ちゃんと「似た者母子」になっている上に。
寅子は、周囲の納得いかない事象について、まず「はて?」となってから、自身の気持ちを咀嚼し始めるが、
優未の「はて?」は胸に秘めて、先に自分の気持ちを咀嚼して、更にサクッと本心を相手に伝えちゃう。
「伝えちゃう」というよりも「伝えることができる」が正しいか。
それだから、寅子がお留守番を母と娘を超えた「似た者‘同士’」として素直に頼めるという展開は、実に自然だと思う。
"公私の公"を"公私の私"にいかした寅子の見事な采配!
夕方のカラスから、昼間の海鳥たちの鳴き声へ。
寅子「私は 答えを出すことを手放す。
2人の問題は 2人に任せる」
寅子のことだから、サクッと空きを探して提示するかと思いきや、一捻りあった。
ここで描いてきたのは、裁判官という “公私の公” の寅子ではなく、裁判官を生業にしている寅子らしい “公私の私” を押し出した采配だ。
玉(羽瀬川なぎ)と涼子(桜井ユキ)の “共通の知り合い” だからこそ、両者の間に入って、ふたりが正面から話し合えるように仕組んだ。
その上で、「あとは、ふたりで決めたらいいわ」と放置するのではなく。
寅子「その出した答えを
涼子様が何と言おうと
私は支持するから」
涼子ではなく、自分に助けを求めてきた玉に寄り添うことを決めているのが寅子という構図だ。
玉が涼子を"お嬢様"でなく"YOU"と呼べる関係になりたいから
さらに、「なるほどね」と思ったのは。
実はこれまで涼子にとっての玉という存在への思いがほぼ描かれなかったから、「いつどうやって描くの?」と思っていたのだ。
だって、明らかに涼子は玉という存在がいるから、自分が華族のお嬢様であることを自覚できたわけだし、その自覚(自分の能力を知ること)が自負(自分の能力を信じること)になり、果ては自信(自分の能力以外も信じること)になり。
それは御家崩壊後も、玉と共に生活することで(きっと)無意識に続けていた…
で、その「玉と生きていくことが幸せなの」こそが、徐々に玉の心の重圧に変わっていき、ついに玉が爆発した。
ここの脚本がうまいのは、玉と涼子の本音を英語のセリフにしたことだ。
私は英語に詳しくないから間違った認識かもしれないが。
まず、「英語に敬語はない」は間違いで、「英語に、日本語のような言い回しをガラリと変えるような敬語はない」であり。
英語の場合は、尊敬の気持ちは、より丁寧な表現で伝える… だとして。
英語表現にすることで、「玉」「お嬢様」「~してくださいませんか?」「~してくださる?」といった身分の違い、上下関係を感じさせる単語や表現を排除<できる。
そのことで、映像的に視聴者が、玉が涼子を「お嬢様」でなく「YOU」と呼べる関係になりたいから、ずっとそばで英語を勉強し続けてきたことが分かるのだ。
そして余計なおせっかいとして、ここが朝ドラ『花子とアン』(NHK/2014年度前期)でのヒロイン・はな(吉高由里子)と蓮子(仲間由紀恵)の “腹心の友” にもつながるし。
どうなるかと思ったが、想像以上の感動作になったと思う。
寅子の左腕が顔に動いて、鼻か口に触れる動作が映っている
ここで、演出的なことにも触れてみたい。
この、寅子が、玉と涼子に直接話し合うべきと提案したあとだ。
カメラは大きく、「3人」「寅子の顔」「玉の顔」「涼子の顔」を撮影するポジションに配置。
注目するカメラは、やや引きで、腰から上の背中の寅子と、奥に玉と涼子の構図。
恐らく、このシーンは全体を一度撮影し、あとから個別に必要なアップを撮影したと思われる。
注目してほしいのは、12分17秒過ぎの次の涼子のセリフ直後の寅子の動作だ。
涼子「どんなに大変でも玉と生きていくことが幸せなの」
この直後、寅子の左腕が顔に動いて、鼻か口に触れる動作が映っている。
これ、普通に考えれば、玉と涼子のやり取りを聞いていて、涙がこぼれてきた… となる。
しかし、今度は逆に普通は、この動作、わざわざ演技としてさせる必要はないのだ。
要するに、演出がこのシーンにリアリティーを作りたいから「ルーズな引きのサイズ」にして、自然に動いちゃった伊藤沙莉さんの動作を「OKカット」に利用した… と思う。
さらに、この腕を動かした寅子があるから、寅子はただ聞いているだけでなく、気持ちを立て直した感じに見えて、次の寅子の叫びがいきたと思う。
寅子「玉ちゃん!
私は せめて2人が 対等であってほしい。
全てを諦めてほしくない」
偶然なのか、意図的なのか分からないが、羽瀬川なぎさんと桜井ユキさんの渾身のお芝居を、伊藤沙莉さんが見ているというシチュエーション自体、かなりレアだし、勇気のある演出だと思う。
もちろん、大成功しているのはまちがいない。
あとがき
どうやら、先日の少年事件は、あれ以上深入りしなんですかね。
でも、今回で寅子が「溝を埋めようともがく女」であるのを強調したのは良いことです。
あとは、「自ら溝を作りにいく厄介で面倒な娘」と「自ら溝を作りにいく厄介で面倒な男」がどう絡んでいくのか?
新潟という部分では、稲(田中真弓)もかかわってきそうですし。
ほんと、展開が読めませんね。
みっきーの植物図鑑(第238回)
昨日の千葉県船橋市の梨農園の様子です。
許可を取って撮影してきました。
まだ、小さい実ですが、少し青みがかった「幸水(こうすい)」です。
千葉県は、梨の栽培面積、収穫量(生産量)、産出額ともに、日本一を誇ります。(令和3年)。
特に北西部は、おいしい梨園がたくさんあるので、これから楽しみです。
★すべての読者様に愛と感謝の “ありがっとう!!”
★本家の記事のURL → https://director.blog.shinobi.jp/Entry/19045/
【これまでの感想】
第1週『女賢しくて牛売り損なう?』
1 2 3 4 5 土
第2週『女三人寄ればかしましい?』
6 7 8 9 10 土
第3週『女は三界に家なし?』
11 12 13 14 15 土
朝ドラ「虎に翼」は、「戦隊モノ」でなく「和製アベンジャーズ」だと本気で思う理由
第4週『屈み女に反り男?』
16 17 18 19 20 土
第5週『朝雨は女の腕まくり?』
21 22 23 24 25 土
第6週『女の一念、岩をも通す?』
26 27 28 29 30 土
第7週『女の心は猫の目?』
31 32 33 34 35 土
第8週『女冥利に尽きる?』
36 37 38 39 40 土
第9週『男は度胸、女は愛嬌?』
41 42 43 44 45 土
納得!「虎に翼」の演出語る「マーベル映画を意識」やはり“トラつば・アベンジャーズ”は正解だった…?
第10週『女の知恵は鼻の先?』
46 47 48 49 50 土
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56 57 58 59 60 土
午後LIVEニュースーン 午後4時台・「虎に翼」取材担当者がドラマの裏側を語る“第12週の寅子と家裁がやったこと”
第13週『女房は掃きだめから拾え?』
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朝ドラ「虎に翼」星航一(岡田将生)のモデルは“初代最高裁長官の長男”三淵乾太郎さん?渋沢栄一との遠いご縁も!”
第14週『女房百日 馬二十日?』
66 67 68 69 70 土
拍手コメント返信(2024/7/4):虎に翼(第69回) ※私は寅子が“ブチ切れ”た理由をこう解釈しました(長文です)
第15週『女房は山の神百石の位?』
71 72 73 74 75 土
拍手コメント返信(2024/7/10)その2:虎に翼(第73回) ※「直明と花江の寅子への忠告は1年後では遅かったのか?」を考えてみた
朝ドラ「虎に翼」 新潟で優未が「スンッ」と「お利口さんのふり」をやめるのに必要なものは?
第16週『女やもめに花が咲く?』
76 77 78 79 80 土
第17週『女の情に蛇が住む?』
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