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2025-08-31

EVトレンドは終わっていない

日経中国車、『勝ち組』BYDや吉利も減速 価格競争供給網にも打撃」を字面通りに飲み込むと、「EVの潮目は終わった」と読み違える可能性が高い。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM22B8R0S5A820C2000000/

実際の一次ソースを当たると、台数と売上の増勢は続きつつ、利益設備投資の歩調を調整しているという像が浮かぶ。その「読み違いの構造」を一次情報で解く。

一次ソースが示す実態

BYD:上期は増収増益。四半期では減益に転じ、要因は価格競争と支払サイト短縮要請

2025年上期の売上は約3713億人民元で前年比+23株主帰属純利益は約155億人民元+14。いずれも一次資料確認できる。

ただし2025/Q2は純利益が前年同期比約-30と減益。背景に激しい価格競争と、仕入先への支払サイト短縮の規制強化がある。

2025/07の販売は前月比で鈍化しているが、月次の前年同月比と前月比を混同すると「減速」の意味合いが変わる点に注意。

Geely:台数と売上は過去最高級に伸長。報告純利益は-14だが、コア利益+102

2025年上期の売上は1503億人民元で+27、販売は140.9万台で+47。会社公表のコア利益(非経常除き)は66.6億人民元+102。

一方、報告ベース純利益92.9億人民元で前年同期比-14との外部報道が並立。つまり「台数と売上は強いが、純利益は前年の特殊要因反動などで見かけ上は減少」という構図である

中国市場全体:前年比では伸長、前月比では鈍化という“ミクロの減速”が混ざる

2025/07の乗用車小売は前年比+6.3だが、前月比では-12.4。マクロの失速ではなく「夏場の需給要因と販促の強弱」が効いている。

NEVの小売は前年比で伸長が続く一方、前月比では調整局面。月次の上下を以て「潮目の転換」と断ずるのは早計である

供給網への圧力:支払いサイト60日化の強制力が増し、短期的に大手資金繰りが重くなる

2025/06以降、主要自動車メーカー仕入先への支払い60日以内を相次ぎ表明。背景に鉄鋼など素材サプライヤの資金繰り悪化規制圧力

工業情報化部が苦情受付プラットフォームを開設し、履行監視を強化。支払前倒しは大手キャッシュ負担一時的に増やし、損益にも影響する。

実施例としてCheryは平均47日に短縮。供給網の資金繰り健全化という「良い副作用」も同時に起きている。

見誤りが起きる理由

「減速」という言葉の中身が混在している

売上や台数の伸び率鈍化(それでもYoYプラス)は「トレンド終了」ではなく、成長のペース調整にすぎない。

利益の減少は、価格競争と支払サイト短縮の同時進行に起因する。構造的な需要萎縮と同義ではない。

指標の取り方が恣意的

報告純利益と、非経常を除いたコア利益では景色が変わる。Geelyは「報告純利益-14」だが「コア利益+102」で、事業コアの稼ぐ力は強化されている。

月次の前月比と前年同月比を混ぜるレトリック

2025/07はYoYプラスMoMマイナスMoMの調整をもって「潮目の変化」と断ずるのは論理飛躍だ。

政策ショックの短期影響を中長期の趨勢と取り違える

仕入先支払いの前倒しは短期的に資金繰り利益を圧迫する一方、供給網の健全化という中長期の正の効果を持つ。

まとめ

日経報道タイトル設計を改めるべきだ。

勝ち組も減速」というラベルは、台数と売上が伸長しつつ利益一時的に圧迫されている局面を、あたか需要トレンド終焉であるかのように誤誘導する危うさがある。必要なのは

であるEVトレンドを「減速方向」に持っていく見出し作りはやめ、一次データ客観的に示すことこそが報道機関の責務だ。

2025-08-09

ホンダ流をBYDが採用」は本当か?

ソース

日本経済新聞ホンダPHEV、BYDが採用するなど中国で台頭 薄れるトヨタの強み」

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC1813T0Y5A710C2000000/

ホンダPHEV、BYDが採用するなど中国で台頭」というタイトルは刺激的だが、実態は?

要約

前提

何が売れているのか

2024年中国PHEV市場中国勢が席巻し、上位はBYD車で占める傾向にある。CR-V PHEVなど日本勢の台数は相対的に小さい。CPCAの集計傾向からも読み取れる。

BYDはNEV全体でも最大級勢力で、PHEV構成比が大きい。PHEV普及の牽引役は中国メーカーだ。

ホンダ流」に近い設計の台頭は事実

ホンダi-MMD

「電動主導のシリーズ/並列」で、状況によりエンジン直結クラッチを用いる。

Honda e:HEVi-MMDhttps://global.honda/en/tech/two_motor_hybrid_system_honda_eHEV/

BYDのDM-i

電動主導で、巡航時などにエンジン直結へ切り替える制御を持つ。思想i-MMDに近い。

BYD DM-i(Super DMhttps://www.byd.com/eu/technology/byd-super-dm-plug-in-hybrid-technology

吉利雷神DHTDHT Pro)

多段直結を備える電動主導ハイブリッドとして設計されている。

Geely 雷神DHT

https://global.geely.com/en/news/2021/geely-auto-group-launches-leishen-powertrain-brand

採用」と「類似」は違う

ホンダ流をBYDが採用」と言うと技術導入の印象を与えるが、実態は「同系統アーキテクチャを各社が自前で実装である。直結クラッチを用いた電動主導ハイブリッド複数社が並行進化で到達した設計だ。

トヨタ方式の立ち位置

中国PHEV市場」という土俵では販売上の主役は中国勢で、トヨタPHEVが上位を占めていない。現地に限れば「PHEVでの優位」はない。

ただしグローバルでは地域要件規制が異なるため、「中国PHEV市場世界趨勢」と短絡するのは危うい。

まとめ

2025-07-05

吉利A7 vs プリウス首都高燃費チャレンジ動画が示すもの

https://h5.video.weibo.com/show/1042211:5183995152105536

微博で、中国市場で秋に発売予定の吉利ジーリー銀河A7が、プリウス首都高燃費対決を行ったとするライブ配信動画が公開された。以下、その映像が投げかけるメッセージ日本への影響を整理する。

動画内容

日本車勢への影響

総合評価

動画は「安価中国PHEV日本象徴であるプリウス燃費で超えた」という話題性を狙った販促映像であり、測定の透明性に欠ける。もっとも、技術競争価格競争を同時に仕掛けるシグナルとして国内産業への警鐘になり得る。真の影響はA7が実際に販売・導入された段階で顕在化する。メーカー行政、そして消費者が備えを検討する契機として受け止めるのが妥当である

2024-10-03

anond:20241002215902

現代小説家としては日本最高峰SSRガチャの親だろ

池澤夏樹一族

母:原條あき子詩人日本女子大学卒→アテネ・フランセ卒)

父:福永武彦小説家東京帝国大学文学部卒業

祖母福永トヨ(日本聖公会の伝道師

祖父福永末次郎(三井銀行勤務・東京帝国大学経済学部卒業

大伯父:秋吉利雄(天文学者理学博士海軍少将

又従兄:秋吉輝雄(立教大学名誉教授

池澤夏樹の受賞歴

中央公論新人賞スティル・ライフ

芥川龍之介賞スティル・ライフ

小学館文学賞「南の島のティオ」

読売文学賞 随筆・紀行賞「母なる自然おっぱい

谷崎潤一郎賞マシアス・ギリの失脚

伊藤整文学賞楽しい終末」

JTB出版文化賞「ハワイイ紀行」

毎日出版文化賞 文学芸術部門「花を運ぶ妹」

芸術選奨文部科学大臣賞すばらしい新世界

宮沢賢治賞「言葉流星群

司馬遼太郎賞イラクの小さな橋を渡って」「憲法なんて知らないよ」「静かな大地」などの著作活動全般

親鸞賞「世界文学を読みほどく」「静かな大地」

桑原武夫学芸賞パレオマニア

紫綬褒章

毎日出版文化賞 企画部門世界文学全集

朝日賞

毎日出版文化賞 企画部門日本文学全集

フランス芸術文化勲章オフィシエ

早稲田大学坪内逍遥大賞

2023-02-25

anond:20230224073522

小松 清廉(こまつ きよかど)は、幕末政治家旧名は肝付 兼戈(きもつかねたけ)。通称は尚五郎(なおごろう)のちに帯刀(たてわき)。維新の十傑の1人。薩摩国吉利(2,600石)領主

薩摩藩を雄藩に押し上げた藩政改革幕末政局薩長同盟大政奉還など)において重要役割を果たした。

明治維新直後に病気で死去したため、明治政府活躍した同じ薩摩出身西郷隆盛大久保利通知名度に隠れがちであったが、小松家について多く記した玉里島津家史料黎明館への寄贈により、21世紀にその事績研究と再評価が進んだ[1]。

2021-09-30

「あっちがEVなら、こっちは水素エンジンだ!」

無理。もうEVには非EV車は勝てない。内燃技術ベースにしたテクノロジーは、純粋コスト面でEV太刀打ちできなくなる。ICE(内燃)車もダメハイブリッドダメ水素エンジンダメ。内燃じゃないけどFCVダメ

なぜかといえば、EVは、今までのクルマよりずっとシンプルに作れるから

まず圧倒的に部品点数が少ない。自工会予測では3万点から2万点に減る。内燃車はエンジンだけで7000点ぐらい構成部品があるけど、EVだとeアクスルというモジュールに、エンジンに相当する駆動モーター・インバーターと、変速系に相当する減速機・デフギアボックス類と、電装系に相当する回路類が全部入ってパッケージ化され、これをティア1のサプライヤーが1社で供給する。極端な話、あとは駆動系・操作系・バッテリー・充放電制御機構があれば、EVは走ってしまう。それぐらいシンプル自工会が「EV化で雇用の大多数が失われる」と言っているのも結局はこういう話だ。1台の車を仕立てるために必要部品が圧倒的に少ないのだ。

それから、基本がモジュラー構造。内燃系は、燃料供給・燃焼・変速・出力・駆動などが全部繋がって一体の統合的な(インテグラル型の)システム構成してる。対するEVは、互いに独立度の高いパーツを組み合わせた、モジュラー型のシステム構成で、全体が密結合じゃなくて疎結合になってる。駆動系の手前までは電気結線だけなので、レイアウト自由度も高い。違う企業のeアクスルを採用した場合も、制御系を調整すればすぐ乗せ替えられる。つまりコストと性能しだいでどんどんモジュールサプライヤーを入れ替えていける。傘下に何重もの系列サプライヤー企業を抱えて、密に擦り合わせながら時間をかけて車両設計していく、今までのようなやり方が不要になる。現にテスラはイヤーモデル制を排して、年度中でもどんどんモジュールを入れ替えて性能向上やコストダウンを図っている。

あと技術的な枯れ方。内燃系はもう100年近くイノベーションを繰り返して、もうほとんど伸びしろがなくなっている。一方のEVは、バッテリもeアクスルも性能的には発展途上だ。性能が上がるということは、コストが安くなることと表裏一体の関係にある(同じ性能を安く作れる or 同じ価格で高い性能を出せる)。つまり内燃はもうEVを突き放すことはできず、EVのほうは追いつき追い越すための余裕がまだまだある。

こういう背景があって、将来はEVコスト的に内燃とイーブンになり、下回っていくことが予想されていた。最近は「EVが今までの乗用車と同価格になるのが2025年頃」という予想が出てたんだけど、今年になって、もうEV価格性能比で内燃車を追い越す事例が出てきている。

中国・宏光のMINI EV。45万円で9.3kWhのお買い物カー。ローエンド市場向けコミューターEV日本軽自動車的な用途

https://kurukura.jp/car/2021-0813-60.html

中国吉利のGeometry EX3。100万円で日産リーフ同等の車格と充電容量、航続距離320km。

http://global.geely.com/media-center/news/geometry-ex3-brings-affordable-evs-to-the-masses/

中国では内燃車の販売税金かけてEV生産の補助に廻すEVクレジットというのがあり、それも一部販売原資に廻ってると思われるが、それにしても内燃車より安い。本当の原価はBOMリスト原価計算する必要があるが、とにかく「シンプルに作って、軽く・広く・安くできる」というEVの優位性が生かされ、これまでよりも破格に安く供給されている。

これが意味するのは、もうすぐEVは「通常の内燃車にエコプレミアムが乗せて売る高級車」ではなくなるということだ。どの車格でも、内燃車や、内燃車の発展形としてのHVや、EVHVの要素を併せ持った複雑な構造FCVよりも、安くなっていく(水素エンジンはどうかって? あれは燃費が悪すぎて、乗用車としての実用に耐えるレベルまで仕上げられるかどうかすらまだわからない。市販モデルが出ないまま死産する可能性も高い)。

日本でも二輪の業界では、すでにこの傾向が見えはじめている。ヤマハ原付スクーター20万円、電動原付スクーターは25万円と、もう価格差はわずかになっていて、都内では電動のほうに助成金10万出るので、購入者目線では電動スクーターの方が圧倒的に安くなっている(この助成金が出るからメーカー側もあえて差額を付けてるのかもしれない)。

クルマも同じだ。EVは、これからは「環境にいいから」じゃなくて「既存クルマより安いから」売れるようになる。自工会が何と言おうと、この現実には勝てない。

日本自動車産業は、米国でマスキー法という厳しい環境規制が敷かれたとき米国メーカーよりも早く規制対応することで、米国市場での橋頭堡を築くことができた。それが今回はどうだ。EVがこれまでの自動車技術とは似て非なる破壊イノベーションであることを見誤ったまま、「再エネとEV欧米陰謀」「EV一本槍では雇用が失われる」みたいな現実逃避を繰り返し、FCVなどのピントがズレた代替技術BETし続けた。現時点でEVの要素技術をしっかり内製化し、ガチ海外勢と闘える体制なのは、早くからEVシフトを敷いた日産、その傘下サプライヤージヤトコとマレリ(どちらもeアクスル事業)、それからeアクスルを足掛かりに自動車産業に参入して海外シェアガンガン獲得してる日本電産ぐらいだ。それでも自工会は「業界産業雇用を守る」と言い続け、沈没しかかった船からティ企業を降ろそうとしない。こんな調子で一体この先どうなるんだ? EV鎖国でもするのか?

追記

中華EVの話をされてもなあ、という指摘があり、確かに安かろう悪かろうなんだろ」というイメージが拭えないと思うので、テスラベンチマークにしてEV利益構造を考えよう。テスラモデル3の標準グレードであるスタンダードレンジプラスは、いま国内で430万円、米国で400万円弱で買える(助成金抜き)。テスラの直近四半期の販売粗利率は28%。トヨタで車格が近いセダンカムリハイブリッドで、同等モデルといえる下から2番目のG(2WD)が380万円(助成金抜き)。トヨタ販売粗利率は20%と言われている。テスラ米国販売価格原価計算すると、既にモデル3のほうが若干安い(290万円<305万円)。つまりテスラ側はカムリと同じ値付けにしてもまだ値下げ余力がある。今はそうしなくても長い納車待ちが発生してるからエコプレミアムを乗せて売ってるだけだ。

ちなみにテスラ2023年までに「自動運転機能を搭載し、価格を2万5000ドル(1ドル=110円として275万円)に抑えた新型EV2023年までに市場に投入する」と宣言している(https://president.jp/articles/-/46586)。おそらくCセグメントゴルフ同等)で、カローラや同サイズSUV系と戦うことになる車だ。そしてこの記事中にあるように、この新モデルが275万円で国内導入でき、そこに80万円の補助金が乗ると、実質価格100万円台に突入してしまう。軽自動車の最高級モデルよりも安いのだ。そういう時代が足元まで迫っている。

テスラはこういう廉価モデル日本車を淘汰しようなどとは考えてない。そもそも彼らの視野日本自動車メーカーは入っていない。米国の一部州ではハイブリッド車は既にガソリン車と同じ環境負荷分類になっている。もうEV以外は対抗馬ではないのだ。彼らはバッテリ技術EV関連技術に狂ったように投資を続け、中国EVと性能だけでなくコストでもガチで殴り合う。その時に、日本自動車業界はまだリングに立っていられるだろうか。

トヨタHVFCVEVの基幹技術を持っているからまだ戦える」と言う人もいる。確かにトヨタという企業」は今からでもEVに全振りした生産体制を整えられるかもしれない。一方で「自工会会長豊田氏」は、EV懐疑論水素社会という2つのファンタジーを操ってティア2以下のサプライヤー現実歪曲フィールドに巻き込んできた(ティア1の大半はなんだかんだでEV化が不可避であることを理解していると思う)。「痛みを受け入れてでも産業構造を転換しよう」と言わずに、下請企業を沈みゆく泥船に乗せたままにしている。自分批判しているのはそこだ。

 
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