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脳科学者か脳研究者か:脳科学の真実

「脳科学者」というと誰をイメージするだろうか。

先般、約4億円の申告漏れが発覚した方だろうか。
(4億円の脱税ではない。しかもあれは、脱税ではなく申告漏れと書くべきで、
脱税というのは過少申告や所得隠しで節税をは買った人のことを指すべきだと思う)

それとも、脳トレの稼ぎを研究室の予算につぎ込んだ方だろうか。

いずれにしても、「脳」をキーワードに社会を上手く動かしている方という感じか。
この本は、そうした「脳科学」ブームについて論じた本である。

脳科学の真実--脳研究者は何を考えているか (河出ブックス)脳科学の真実--脳研究者は何を考えているか (河出ブックス)

河出書房新社 2009-10-09
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その点では、以前取り上げたこの本と論点は近い。

「脳で何がわかるのか」は案外わかっていない:「脳科学」の壁

ゲーム脳や脳トレ批判という所も共通点が多い。

目次を見てもわかるだろう(アマゾンから)

【目次】
はじめに メジャー化した脳科学
第一章 脳科学ブームの立役者
第二章 未来技術としての読脳術
第三章 リアリティーのある研究成果
第四章 脳科学のレトリック
第五章 研究者のダークサイド
第六章 ちいさなマニフェスト
あとがき

やはりfMRIなどの「脳画像」で活動しているかどうかを図ることや、
前頭葉をリーダーであるかのような記述に対する批判から始まる。
「脳トレ」で活発化する前頭葉は、「ゲーム脳」では停滞する。
では、「脳トレ」の「ゲーム」をするとはどういう事なのか?
こういう矛盾に脳科学はどう答えるのか。

本書は、脳研究を社会や日常と結びつけて語る「脳科学者」の言説が、
実際の「脳研究」を反映した物ではないことが問題を複雑にしている事を指摘する。

つまり、「お茶の間の脳科学」と「実際の脳研究」の違いを明らかにし、
何が問題なのか、その問題はどこに起因しているかを読み解こうとしている。

そして最後に、その問題点を「脳科学の情報発信」をいかに行うかという点に収斂させている。
つまり、ここでも「科学リテラシー」と「科学コミュニケーション」が問われている。
そうは書いてないけど。

「研究の元にある考え方」を示すことがフェアな情報発信であると筆者は問うている。

この「フェアな情報発信」という言葉は、なかなかに重い物ではないだろうか。

筆者自身が脳研究者であり、脳画像を使って研究しているからの自戒もあっての言葉だろう。

脳科学が注目されている今だから、
脳科学者と呼ばれるのか、脳研究者と呼ばれるかはイメージだけの問題ではないのかもしれない。

それは、Mr.BRAINとDr.BRAINくらい違う気がする。
このDVD見る前に、この本読んでおくと、余計に笑えます。

MR.BRAIN DVD-BOXMR.BRAIN DVD-BOX

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脳科学者はMr.BRAINで、脳研究者はDr.BRAINなのかもしれない。

さらに、この本の特徴は、脳科学者の主張の「嘘を暴く」という物ではなく、
研究成果そのものに見え隠れする問題についても目配りしているところだろう。

脳研究者も、脳科学者を補強するような研究をしていないとは言えないからだ。

脳を研究するときには、部分と全体という問題をはらんでいる。
研究はどうしてもピンポイントを解明したがる。
しかし、脳という機関の機能は、部分の総和ではわからない。
複数のパートが呼応する事で生じる機能もあることがわかってきている。
そうした脳の「わからなさ」については、脳研究者が書いた本を見なければいけない。

その、まさに脳研究者が書いた本が伝統ある毎日出版文化賞を受賞した。
今年で63回を迎える賞だ。

毎日出版文化賞:文学・芸術部門に「1Q84」@毎日.jp
><自然科学部門>

 つながる脳 藤井直敬著 NTT出版


毎日出版文化賞受賞作紹介@e-Hon

つながる脳つながる脳

エヌティティ出版 2009-05-15
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まだ読んでないので書評書いてなかったのだけど、
おめでとうございます。
謹んで紹介させていただきます。

毎日出版文化賞@Brain Hackers
>後から伺いますと、自然科学部門では満場一致で決まったそうで、一体何が選考委員の先生方に響いたのか、伺ってみたいところです。いずれにしても、63年も続いている権威のある賞をいただいた事、大変ありがたいことです。これを励みに、本業の成果をきちんとあげられるようにがんばりたいと思います。

藤井さんは、この「脳科学の真実」についてもブログで言及している。

「脳科学の真実」@Brain Hackers
>主として、どうして「脳ブーム」が起きるのかという構造を考察していて面白いんですけど、機能イメージングについての問題意識もたっぷり書いてあって、盛り沢山。オススメ。でも、なんというか首締まってませんか?息苦しくないですか?と聞きたくなる危うさが、ドキドキさせる。

問題意識のある研究者が、素直に書いた本が呼応して、真実を語る。
そんな感じがする言葉である。
合わせて読んでみるといいのだろうな。
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ありがとうございます

書評いただきありがとうございます。
坂井さんの本も面白いですよね。
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Author:fujita244
2000年から新宿在住。
21世紀とともに新宿を闊歩。
高度成長期の一億総中流育ち
頭も身体もサイズM。
フツーのオッサンから見て
フツーじゃなさそうな話を
書いています。

2011年12月に
「若だんなの新宿通信」から
「フジタツヨシの新宿通信」
に変更しました。

2012年12月20日にはてなブログも始めました。
「fujita244's field」です。
2013年2月1日からゴルフ専用のブログもはじめてます。
「fujita244のゴルフBK」です。
2つのサブブログもよろしくお願いします。

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