自分は当事者か 故郷が被災して30年 作家の見つめた「やましさ」
毎日新聞
2025/1/11 06:00(最終更新 1/11 06:00)
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災害の当事者と非当事者の間に線を引くことはできるのだろうか。痛みを訴え、悲しみを語るのが許されるのは、限られた人だけなのだろうか。作家の砂原浩太朗さんの新刊『冬と瓦礫(がれき)』(集英社)は、災害の「当事者性」を巡る小説だ。執筆のきっかけに、1995年の阪神大震災で感じた戸惑いがあるという。
山本周五郎賞受賞作『黛(まゆずみ)家の兄弟』や『高瀬庄左衛門御留書(おとどめがき)』で気鋭の時代小説家として注目を集める砂原さん。本作は、そんな砂原さんにとって初の現代小説でもある。故郷の被災を知り、東京から神戸に戻る主人公・圭介の物語は、30年前の実体験が下敷きとなっている。
被災した家族・友人との「壁」
砂原さんは69年生まれ、神戸市出身。95年当時は、東京の出版社で編集者として働いていた。発災から3日目、水や食料などの物資を持って実家に駆けつけたが、「故郷の一大事に居合わせなかったこと」に複雑な思いを抱いてきたと吐露する。
「神戸は自分の作家としての土壌を作ってくれた土地。深い愛着があります」。砂原さんはそう述べた上で「どう表現したらいいのか」と言いよどむ。「残念、では少し違うんです。『そこにいたかった』と言ってはいけないという思いもあって。あえて言葉にするなら、やましさ、でしょうか」
新幹線で東京を出た圭介は、私鉄や知人の車を乗り継ぎ、最後は歩いて神戸市中心部の実家を目指す。圭介と同じ道を当時、砂原さんも歩いた。
被災した家族を親戚宅に避難させ、祖父母の家を片付け、人工島の団地に住む友人のもとを訪ねる。その過程で圭介は、家族や友人との間にある見えない壁に直面する。やがて東京に帰る圭介に対し、友人はある言葉を口にする。彼の発する…
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