特集
今週の本棚
「面白い!読ませる!」と好評の読書欄。魅力ある評者が次々と登場し、独自に選んだ本をたっぷりの分量で紹介。
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今週の本棚・なつかしい一冊
牟田都子・選 『ベスト版 たんぽぽのお酒』=レイ・ブラッドベリ著、北山克彦・訳
2024/12/14 02:07 1017文字◆牟田都子(むた・さとこ)・選 (晶文社 2200円) 10代の終わり、周囲の大人に感化されてSFに憧れた。古今の名作を解説したガイドブックの中から、詩のようなタイトルの連なりにひかれて手に取ったのがレイ・ブラッドベリだった。『10月はたそがれの国』『何かが道をやってくる』『火星年代記』。1920
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今週の本棚
橋爪大三郎・評 『イスラエルとパレスチナ』=ヤコヴ・ラブキン著、鵜飼哲・訳
2024/12/14 02:07 1367文字(岩波ブックレット・880円) ◇シオニズムとユダヤ教を区別する ユダヤ教とシオニズムはまるで別もの。むしろ正反対だ。--この重大な前提から議論が始まる。イスラエル建国の裏側やパレスチナ紛争の実態、ガザ地区はなぜ徹底的に破壊されたのか。一連の疑問がするすると解けていく。 著者は歴史学が専門。一九四
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今週の本棚
三浦雅士・評 『資本主義の中で生きるということ』=岩井克人・著
2024/12/14 02:07 1386文字(筑摩書房・2420円) ◇「自由と不安は表裏」を考える 名著である。エッセイ48篇、まさに「岩井克人・人と思想」。冒頭の「ファンレター」は、1981年、イェール大学で著者の講義に出ていたという米国女性からのメールだが、その講義に触発されいまは社会学の教授をしているという。嬉(うれ)しくないはずが
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今週の本棚
2024年「この3冊」/上(その1)
2024/12/14 02:05 4930文字「今週の本棚」の書評執筆者が、この1年に読んだ書籍を振り返り、とっておきの3作品を紹介します。あなたの心に残った一冊と同じ本が、入っているかも? ◇荒川洋治(現代詩作家) <1>吉本隆明詩集 吉本隆明著、蜂飼耳編(岩波文庫・1221円) <2>塚本邦雄歌集 塚本邦雄著、尾崎まゆみ編(書肆侃侃房・2
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今週の本棚
2024年「この3冊」/上(その2止)
2024/12/14 02:05 3722文字◇川本三郎(評論家) <1>山と言葉のあいだ 石川美子著(ベルリブロ・2860円) <2>美しい人 佐多稲子の昭和 佐久間文子著(芸術新聞社・3300円) <3>南光 朱和之著、中村加代子訳(春秋社・2860円) <1>アルプスの山を愛するフランス文学者の山をめぐるエッセイ集。単に登山にとどまらず
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今週の本棚・著者に聞く
広瀬大介さん 『リヒャルト・シュトラウス 楽劇 ばらの騎士』
2024/12/14 02:05 792文字◆広瀬大介(ひろせ・だいすけ)さん (アルテスパブリッシング・3850円) ◇30年越しの感動を言語化 ドイツ後期ロマン派の作曲家、リヒャルト・シュトラウス(1864~1949年)のオペラ「ばらの騎士」のハンドブック。台本の対訳と音楽の分析を併せ持つ新たな形の解説本だ。シュトラウス研究の第一人者で
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今週の本棚・編集後記
「この3冊」の「下」は、来週にお届けします…
2024/12/14 02:05 65文字「この3冊」の「下」は、来週にお届けします。年の瀬まであと少し。体に気をつけてお過ごしください。(代)<デザイン・絵 寄藤文平>
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今週の本棚・次回の予定
12月14日の書評欄は年末恒例、2024年の「この3冊」など
2024/12/9 11:00 431文字12月14日の毎日新聞朝刊「今週の本棚」で掲載予定の本の主なラインアップを紹介します。 ①内田麻理香さん評『メアリ・シェリー フランケンシュタインから<共感の共同体>へ』(シャーロット・ゴードン著、小川公代訳・白水社) ②橋爪大三郎さん評『イスラエルとパレスチナ ユダヤ教は植民地支配を拒絶する』(
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今週の本棚
東直子・評 『地球の恋人たちの朝食』=雪舟えま・著
2024/12/7 02:02 2039文字(左右社・3300円) ◇絶望の反転 至る所に胸打つフレーズ 目次を見ると、「海の底のハイウェイ」「モーニング・ソルティー・キッス」「心臓に住むガブローシュ」などの魅惑的なタイトルに必ず日付がついている。これは、各話がウェブ日記として掲載された日を示している。表題となった冒頭の「地球の恋人たちの朝
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今週の本棚・情報
ベストセラー
2024/12/7 02:02 181文字<1>人生の壁(養老孟司著・新潮社) <2>荒木飛呂彦の新・漫画術 悪役の作り方(荒木飛呂彦著・集英社) <3>加耶/任那 古代朝鮮に倭の拠点はあったか(仁藤敦史著・中央公論新社) <4>日ソ戦争 帝国日本最後の戦い(麻田雅文著・中央公論新社) <5>カラー版 西洋絵画のお約束 謎を解く50のキー
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今週の本棚・著者に聞く
角幡唯介さん 『地図なき山 日高山脈49日漂泊行』
2024/12/7 02:02 821文字◆角幡唯介(かくはた・ゆうすけ)さん (新潮社・2310円) ◇未来を予期しない、できない 探検家である著者が、地図を持たずに北海道・日高の山に登った日々を記録したノンフィクションだ。これまでチベットや北極など世界各地を冒険してきたが、10年ほど前から<脱システム>、すなわち情報化と消費経済が過度
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今週の本棚・編集後記
作家の開高健を初めて知ったのは…
2024/12/7 02:02 162文字作家の開高健を初めて知ったのは、ウイスキーのテレビCMでした。1989年の死去前まで出演を続けており、幼い私は開高を「俳優」だと思っていましたが、とんだ間違い。以後は彼の著作も手に取りました。「なつかしい一冊」で紹介した『珠玉』は、紙の本は入手が困難ですが、現在は電子書籍版で購入できます。(代)<
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今週の本棚・話題の本
『クッキングパパ』=吉村和真
2024/12/7 02:02 810文字今回取り上げるのは、うえやまとち『クッキングパパ』171巻(講談社・759円)。料理が大好きな主人公・荒岩一味の家族を中心に、会社仲間や友人、隣人など、料理が人の輪を広げていく。実に心温まる物語だ 1985年の連載開始から来年で40周年、話数は1700を超える。なぜそんな長寿作の近刊をこのタイミン
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今週の本棚
『島原リバティ』=タケチオサム・著
2024/12/7 02:02 525文字(文芸社・990円) 物語は九州北部のキリシタン禁制への反発から島原と天草の一揆(いっき)へと展開し、島原南部の原城からの抵抗で幕を閉じる。よく知られた反乱の「浮かぶ氷山」のような事実の断片は、考証を経ながら、フィクションによって「海面下」でつなげられた。 乱や一揆に「自由」を示す<リバティ>を充
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今週の本棚・なつかしい一冊
金承福・選 『珠玉』=開高健・著
2024/12/7 02:02 1026文字◆金承福(キム・スンボク)・選 (文春文庫(電子版)407円) 私が留学生として来日したのは1991年9月。日本語学校であいうえおから学ぶスタートとなった。台湾や中国、韓国、ドイツからやって来た年代もバラバラの学生たちの共通語は日本語。舞踏家の大野一雄さんに学びにきた哲学専攻のクラスメイトがいれば
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今週の本棚
『悪文の構造』=千早耿一郎・著
2024/12/7 02:02 508文字◆千早耿一郎(こういちろう)著 (ちくま学芸文庫・1210円) 読みにくい文章を書かないための実用書である。悪文の実例がたくさん出てくる。法律の文章もあれば新聞記事もある。有名な作家の小説もある。なぜその文章が読みにくいのか、文章の構造を図解で示す。 悪文にはいくつかのパターンがある。たとえば、主
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今週の本棚
中島岳志・評 『ひっくり返す人類学 生きづらさの「そもそも」を問う』=奥野克巳・著
2024/12/7 02:02 1327文字(ちくまプリマー新書・946円) ◇「当然」を見つめ直す、閉塞感への処方箋 著者は日本を代表する文化人類学者。東南アジア地域を主なフィールドワークの対象としてきた。フィールドワークは単なる異文化の観察ではない、その土地の人々と共に暮らすことを通じて人間の本質に迫るのだ。 そこでは、私たちの日常の中
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今週の本棚
養老孟司・評 『異能機関 上・下』=スティーヴン・キング著、白石朗・訳
2024/12/7 02:02 1321文字(文藝春秋・各2970円) ◇異常な世界、そこに不思議な現実感が キングの新刊は機会があると紹介することにしている。本書は昨年の刊行だが、私は日ごろやや硬い翻訳本を取り上げることが多く、本書の紹介が遅くなった。キングの作品は好きなのだが、好きな作品の紹介は楽しく、仕事の息抜きにもなる。 キングはじ
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今週の本棚
大竹文雄・評 『就職氷河期世代 データで読み解く所得・家族形成・格差』=近藤絢子・著
2024/12/7 02:01 1323文字(中公新書・968円) ◇働き盛り世代でも格差、将来の不安 就職氷河期世代に関する次の説明は正しいだろうか。(1)「氷河期世代は、卒業後長期にわたって雇用が不安定で年収も低い」、(2)「氷河期以降の景気回復期の卒業世代は雇用が安定し年収が高い」、(3)「氷河期世代の出生率は低い」。多くの人の答えは
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今週の本棚
『華麗なる野鳥飛翔図鑑』
2024/12/7 02:01 114文字日本の野鳥161種が飛ぶ姿を写真で紹介する『華麗なる野鳥飛翔図鑑』(齊藤安行解説、小堀文彦写真・イラスト、髙野丈写真・文一総合出版・2640円)より。写真は2羽で小競り合いをするコサギ。鳥が飛ぶ仕組みや飛翔写真撮影術の解説も。
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