支援できず「置き去りにされた」 障害者団体が感じた歯がゆさ
「私たちも支援に行きたかったが、思うようにいきませんでした」
ろう者らの当事者団体による「石川県聴覚障害者協会」(金沢市)で業務執行理事を務める藤平淳一さん(52)は、あの日のことを振り返ると歯がゆさが残っている。当事者の支援団体なのに、災害時に置き去りにされた感じがしたという。なぜ支援活動に携われなかったのか。
今月で阪神大震災の発生から30年を迎えます。この間に被災地の支援のあり方がどう変わったのかを考えます。11日まで連日、午前6時にアップする予定です。
・「県に当事者意識ない」
・災害ボランティアどう支援する?
・阪神大震災後に生まれた兆し
・冷遇されたボランティア調整役
・住宅再建で漂う不安
・関連死は抑えられたか
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戸別訪問に名簿の壁
2024年の元日、最大震度7を観測する激しい揺れが石川県の能登半島を襲った。新年を祝う時間もなく、藤平さんらは、ろう者の当事者団体を集めて、金沢市の事務所に県聴覚障害者災害救援対策本部をすぐさま設置した。
ろう者の中には、災害時でも「避難所で音声による支援情報が流れても気づくことができない」「地域の人と意思疎通が図れるか分からない」という心配から、避難所へ行くことをためらう人が少なくない。
無料通信アプリ「LINE(ライン)」などの連絡手段を通じてろう者やその家族の心に寄り添い、障害者ら支援が必要な人を対象にした避難所などに集団避難させるなど奔走した。
その中で、支援が十分にできずに、もどかしさを抱えていた。
そこで、行政に頼らず自分たちだけで戸別訪問をすることにした。ところが、県や市町に名簿の提供を求めたが、どこも「『ちょっとね……』といった返事で、断られた」という。
ある市町の職員は「土砂崩れで道路が寸断し交通事情の悪化も影響したうえ、職員も被災して正直、(障害者の見回りまで)手が回らなかった」と話す。
藤平さんらが、被害が特に大きかった奥能登地方(珠洲(すず)市、輪島市、能登町、穴水町)に住むろう者の安否確認などができたのは、連絡先が事前に分かっていた50人ほど。聴覚の身体障害者手帳を持つ264人(23年度末時点)の2割弱だった。
残りの人にはつながれず、その後はこの50人を中心に支援を続けたという。
自分たちの知らない所で支援
在宅の障害者を支援する仕組みは、国として整備されているのだろうか。
厚生労働省は、災害の発生から3カ月以内に障害者らを戸別訪問して、状…
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