2011.12.07 初冬の小景
八ヶ岳山麓の四季 67

小口隆三 


 晩秋から初冬へ移り変わる時期です。初冬の小景を探して八ヶ岳山麓に広がる原村(はらむら・長野県諏訪郡)の中を回りました。

 先ず目に飛び込んでくるのは眼前に聳え立つ阿弥陀岳(2805m)と横岳(2835m)です。(写真(1))。原村から眺める阿弥陀岳(写真中央)はどっしりと構えて迫力があり立派です。それもその筈、地図で調べると阿弥陀岳山頂は原村の村域内にあるのです。
横岳は名前の通り横に長い山、「大同心」「小同心」など険しい岩峰がいくつかあることでも知られています。(写真左側)。
阿弥陀岳山頂の右後ろにちょっと頭を覗(のぞ)かせているのは八ヶ岳連峰・最高峰の赤岳(2899m)の山頂です。阿弥陀岳の背後に隠れてしまっていて、その雄姿を見ることができないのは残念です。
山々の上部の岩陰には雪が見えます。この時期平地(1000m前後)に雨が降るとき、3千m近い山の上部では雪。雪は消えたり積もったりを繰り返しています。
shoto

 初冬の空の下、たくさんの実をつけた柿の木がすっくと立っていました。(写真(2))。
この地域にある柿は渋柿で、晩秋までには収穫して皮をむき、藁縄やひもで吊るして日向に干して干柿にします。かつて諏訪地方では干柿は冬のお茶菓子として子供にも大人にも人気がありましたが、いつしか影がうすくなっています。日々時間に追われてインスタントに頼る現代人は手間暇かけて作った素朴な自然食品の良さを忘れてしまったようです。
写真の柿の木は何らかの事情で収穫されないままになっているのでしょう。木に生っている柿の実は熟してくると甘くなり、たくさんの鳥がそれを食べに来ます。鳥は甘くなった柿に的確にとりつき啄ばみ食べつくします。甘くなった柿を見分けるのが得意らしく、旺盛な食欲には脱帽です。
shoto

 晩秋から初冬にかけての風物詩・野沢菜の収穫シーン(「おは採り」)です。(写真(3))。
 収穫した野沢菜は水で洗い(「おは洗い」)、漬け込みます。諏訪地方では野沢菜漬けを「おはづけ」と呼び、主婦はさまざまな工夫をこらして自家特有の自慢の味を作り出し、長い冬の期間のお茶請けや惣菜として日常的に食します。
shoto

 原村は高原野菜、とりわけセロリの大生産地です。写真(4)は採り入れが終わり冬を迎える高原野菜の畑に稲藁の大きな束が並んでいるシーンです。珍しい光景に見とれていたら耕運機に乗った農家のおじさんがこちらへ来たので止まってもらい、聞いてみました。稲藁は田んぼから運んできたもので、これを畑に鋤(す)き込んで高原野菜栽培の肥料にするのだそうです。
 写真の遠景は蓼科山などの北八ヶ岳の山並みです。
shoto

 初冬の薄日の中で二十基を超える「馬頭観世音」と「牛王尊」の石碑が整然と並んでいます。(写真(5))。
馬や牛は、農作業の機械化が進み近来全く見かけなくなりましたが、かつては農作業に欠かすことのできない大事なものでした。これらの石碑は農家の人たちが馬や牛の無病息災を切実に願って建てたものでしょう、往時が偲ばれます。
shoto

撮影年月日  2011年11月27日
撮影場所   長野県 諏訪郡 原村にて

【写真はクリックすると拡大します】

Comment
管理人にだけ表示を許可する
 
TrackBack