2009.10.31
日航の再建はGM方式しかない
政府のご都合主義は甘やかしの継続に通じるだけ
前原誠司・国交相は29日、破綻寸前の日本航空を、企業再生支援機構を利用して救済することを決めた。同機構が保有する1.6兆円規模の公的資金枠を使えば自立再建が可能という判断のようである。だが、政府が自立再建にこだわるのは、日航を破綻させると社会的、経済的影響が大きすぎるので避けたいという、政府のご都合主義からきているのではないか。ご都合主義は、日航の破綻の原因となった「甘やかし」の継続に通じるだけである。日航の再建は法的処理と公的支援を組み合わせたGM方式によるほかないと思う。
前原氏が国交相就任以来、意図した「JAL再建タスクフォース」による再建が成功しなかったのは、タスクフォースの権限不足もあるが、国交省が自立再建にこだわったからである。その結果、日航のOBは年金の減額を拒否、融資銀行団は債権放棄に応じず、問題解決の高い壁となった。
オバマ政権がGM再建の際使った法的処理と公的支援を組み合わせた方式を採用していれば、2つの壁は容易に越えることができたはずである。国交省が最もオーソドックスと見られる方式を避けたのは、法的処理を行うと、日航の再建を確実にするために不採算路線の廃止などに大ナタを揮わなくてはならず、その結果、民間航空の来ない地方空港が続出することを恐れたためと見られる。
企業再生支援機構を利用しても、自立再建であることには変わりはない。公的資金を利用しやすくなるだけである。それに伴って銀行団に債権放棄を求めやすくなるかもしれない。しかし、最大の問題である年金基金の積立不足額の圧縮のメドは立たない。日航社員の再建のために犠牲を払う姿勢はむしろ緩むであろう。
年金の減額を特別立法で強制的に行うという案が浮上しているが、無理筋ではないか。逆に、年金水準が世間の相場より高いままであると、企業再生支援機構の最大のメリットであった公的資金の投入が難しくなってしまうというジレンマに陥る。
早房長治 (地球市民ジャーナリスト工房代表)
前原誠司・国交相は29日、破綻寸前の日本航空を、企業再生支援機構を利用して救済することを決めた。同機構が保有する1.6兆円規模の公的資金枠を使えば自立再建が可能という判断のようである。だが、政府が自立再建にこだわるのは、日航を破綻させると社会的、経済的影響が大きすぎるので避けたいという、政府のご都合主義からきているのではないか。ご都合主義は、日航の破綻の原因となった「甘やかし」の継続に通じるだけである。日航の再建は法的処理と公的支援を組み合わせたGM方式によるほかないと思う。
前原氏が国交相就任以来、意図した「JAL再建タスクフォース」による再建が成功しなかったのは、タスクフォースの権限不足もあるが、国交省が自立再建にこだわったからである。その結果、日航のOBは年金の減額を拒否、融資銀行団は債権放棄に応じず、問題解決の高い壁となった。
オバマ政権がGM再建の際使った法的処理と公的支援を組み合わせた方式を採用していれば、2つの壁は容易に越えることができたはずである。国交省が最もオーソドックスと見られる方式を避けたのは、法的処理を行うと、日航の再建を確実にするために不採算路線の廃止などに大ナタを揮わなくてはならず、その結果、民間航空の来ない地方空港が続出することを恐れたためと見られる。
企業再生支援機構を利用しても、自立再建であることには変わりはない。公的資金を利用しやすくなるだけである。それに伴って銀行団に債権放棄を求めやすくなるかもしれない。しかし、最大の問題である年金基金の積立不足額の圧縮のメドは立たない。日航社員の再建のために犠牲を払う姿勢はむしろ緩むであろう。
年金の減額を特別立法で強制的に行うという案が浮上しているが、無理筋ではないか。逆に、年金水準が世間の相場より高いままであると、企業再生支援機構の最大のメリットであった公的資金の投入が難しくなってしまうというジレンマに陥る。