2010.02.28 トヨタは生産規模を縮小し、技術者育成に全力を注げ
お粗末すぎたガバナンス、他の輸出企業も点検急ぐ必要

早房長治 (地球市民ジャーナリスト工房代表)


トヨタ自動車の豊田章男社長が24日、米議会下院の監督・政府改革委員会の公聴会で同社の大量リコール問題について異例の証言を行った。この証言で、トヨタのガバナンスが世界一の自動車企業としては余りにもお粗末であったことが明らかになった。トヨタは生産規模を20%程度縮小し、不足している技術者の育成に全力で取り組むとともに、安全性問題をはじめとするガバナンスを全面的に改革すべきである。

豊田社長の証言で最も驚かされたのは、彼が「トヨタ車の一連の不具合問題を認識したのは昨年末だった」と答えたことである。出席している米議員たちの間にも驚きが走った。米国で不具合問題が発生したのは数年前のことだ。それ以来、アクセルやブレーキなど重要部分について多数の苦情が殺到し、悲劇的な事故も起きた。こうした事態を、長年、経営幹部を務めてきた豊田社長が知らなかったいうのである。その原因は同社の安全性と情報伝達のガバナンスに大きな欠陥があったと考えるほかはない。

日本の大企業の大部分はピラミッド型の経営システムを持っている。したがって、重要・緊急の安全情報でもトップまで上がるのに時間がかかり、また、その後でないと他の部門には届かない。

トヨタの場合では、ヨーロッパでの不具合情報が公式に米国トヨタに届くのに年単位の時間がかかったのである。また、安全性以外の部門を司っていた豊田氏が米国における不具合問題の実態を認識したのは、昨年秋、社長に就任した後であったというのだ。欧米におけるリコールについての判断も本社で行っていたという徹底した本社中心主義には「これが世界最大の企業の実態だったのか」と呆れる。

豊田社長は公聴会で「グローバル品質特別委員会を設置し、私のイニシアテイブで安全性問題を解決する」と言明した。しかし、一度、ピラミッド型になった経営システムや官僚化した経営体質を改革するのは容易でないことを、豊田氏は認識すべきである。
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