2010.03.31
青春の詩
ことば (67) サミュエル・ウルマン
日本語の語彙には、やまとことばと漢語と外来語がある。
このところ、やまとことばに魅了され、がらにもなく古語辞典など入手して遊んでいるが、これがけっこう楽しい。古文など、もうすっかり忘れてしまっていたが、現代語にも、特に話しことばには「やまとことば」が脈々と息づいているのに気づかされた。これまで漢語・漢字を使用しないで、翻訳(英文和訳)したことはない。でも、ひょっとしたら、「やまとことば」だけで、かなりやれるかもしれない。
以下に、アメリカの詩人サミュエル・ウルマン(Samuel Ullman)の英詩 『Youth』 と、「話しことば」調の訳文、それに漢詩調の訳文を掲載する。拙訳『わかさ』は、「やまとことば」で試訳したもので、漢詩調の訳文のような格調の高さはない。でも、たらちねの母から受け継いだ「やまとことば」の力強さ、わかりやすさはある、と思い込みたかったのだけれども、実のところ、妻にも先輩たちにも、「漢字がないので読みづらい」と評判はよくなかった。
Youth
by Samuel Ullman
Youth is not a time of life ― it is a state of mind; it is a temper of the will, a quality of the imagination, a vigor of the emotions, a predominance of courage over timidity, of the appetite for adventure over love of ease.
Nobody grows old by merely living a number of years ; people grow old only by deserting their ideals. Years wrinkle the skin, but to give up enthusiasm wrinkles the soul. Worry, doubt, self‐distrust, fear and despair ― these are the long, long years that bow the head and turn the growing spirit back to dust.
Whether seventy or sixteen, there is in every being's heart the love of wonder, the sweet amazement at the stars and the starlike things and thoughts, the undaunted challenge of events, the unfailing childlike appetite for what next, and the joy and the game of life.
You are as young as your faith, as old as your doubt ;
as young as your self‐confidence, as old as your fear,
as young as your hope, as old as your despair.
So long as your heart receives messages of beauty, cheer, courage, grandeur and power from the earth, from man and from the Infinite, so long you are young. When the wires are all down and all the central place of your heart is covered with the snows of pessimism and the ice of cynicism, then you are grown old indeed and may God have mercy on your soul.
わかさ
ゲンサク: サミュエル・ウルマン
ホンヤク: まつの まちお
2010.3.28
わかさは とし じゃない、こころだよ。こころがまえ、かんがえかた、やるき、おびえないで たちむかう きもち、ぬるまゆに つかっていないで おもいきって まえに でる こころいき なんだよ。
としを とったから ふけるんじゃない。ふけるのは やりたいことを みうしなったときだけ なんだよ。としを とると はだが しぼむ、でもね やるきを なくすと たましいが しぼむ。きがかり、うたがい、おのれが しんじられなくなること、おびえ、あきらめ - こうしたものは ながい ながい としつきと おんなじで、あたまを にぶらせ きもちを おちこませる。
としが 70でも、16でも、ひとの きもちは おんなじ なんだよ。おしはかれないものが だいすきで、ほしや ほしのように ひかり かがやく ものに あこがれる。たいせつなことなら くじけずに たちむかい、おもしろいことなら つぎは どうなるの と こどものように せがむ。いきるのが たのしくて おもしろくて しかたがない ものなんだよ。
しんじるこころが あるかぎり わかく、うたがうと ふける。
おのれを しんじるかぎり わかく、おびえると ふける。
のぞみが あるかぎり わかく、あきらめると ふける。
このよの ものごとに、うつくしさ、よろこび、いさましさ、こうごうしさ、ちからを かんじとれるかぎり、ひとは わかい。これが まったく かんじとれなくなって こころの なかが なげきと あきらめで こおりついてしまうと、ひとは まちがいなく ふけこむ。そうなったら どうか かみさまの おめぐみが ありますように。
青 春
原作: サミエル・ウルマン
邦訳: 岡田 義夫
青春とは人生のある期間を言うのではなく心の様相を言うのだ。優れた創造力、逞しき意志、炎ゆる情熱、怯懦を却ける勇猛心、安易を振り捨てる冒険心,こう言う様相を青春と言うのだ。
年を重ねただけで人は老いない。理想を失う時に初めて老いがくる。歳月は皮膚のしわを増すが情熱を失う時に精神はしぼむ。苦悶や、狐疑、不安、恐怖、失望、こう言うものこそ恰も長年月の如く人を老いさせ、精気ある魂をも芥に帰せしめてしまう。
年は七十であろうと十六であろうと、その胸中に抱き得るものは何か。曰く「驚異えの愛慕心」空にひらめく星晨、その輝きにも似たる事物や思想の対する欽迎、事に處する剛毅な挑戦、小児の如く求めて止まぬ探求心、人生への歓喜と興味。
人は信念と共に若く 疑惑と共に老ゆる
人は自信と共に若く 恐怖と共に老ゆる
希望ある限り若く 失望と共に老い朽ちる
大地より、神より、人より、美と喜悦、勇気と壮大、偉力と霊感を受ける限り人の若さは失われない。これらの霊感が絶え、悲歎の白雪が人の心の奥までも蔽いつくし、皮肉の厚氷がこれを固くとざすに至ればこの時にこそ人は全くに老いて神の憐れみを乞う他はなくなる。
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サミュエル・ウルマンの詩 “Youth” には、オリジナル版とリーダーズ・ダイジェスト版がある。日本では、岡田義夫の漢詩調の訳「青春」が広く知られているが、これはリーダーズ・ダイジェスト版を翻訳したもの。ここでも、漢語と「やまとことば」を比べるということから、原文はリーダーズ・ダイジェスト版を採用した。
資料170 サミュエル・ウルマンの詩「青春」(原文)
http://www.geocities.jp/sybrma/170samuel.ullman.youth.html
サミュエル・ウルマンや「青春」の詩について詳しくは、つぎのサイトを参照してください。
http://home.h03.itscom.net/abe0005/ikoi/seishunn/seishunn.htm
サミュエル・ウルマン記念館: http://main.uab.edu/Sites/UllmanMuseum (米国)
新青春の会: http://www.seisyun.jp/ (東京都)
松野町夫 (翻訳家)
日本語の語彙には、やまとことばと漢語と外来語がある。
このところ、やまとことばに魅了され、がらにもなく古語辞典など入手して遊んでいるが、これがけっこう楽しい。古文など、もうすっかり忘れてしまっていたが、現代語にも、特に話しことばには「やまとことば」が脈々と息づいているのに気づかされた。これまで漢語・漢字を使用しないで、翻訳(英文和訳)したことはない。でも、ひょっとしたら、「やまとことば」だけで、かなりやれるかもしれない。
以下に、アメリカの詩人サミュエル・ウルマン(Samuel Ullman)の英詩 『Youth』 と、「話しことば」調の訳文、それに漢詩調の訳文を掲載する。拙訳『わかさ』は、「やまとことば」で試訳したもので、漢詩調の訳文のような格調の高さはない。でも、たらちねの母から受け継いだ「やまとことば」の力強さ、わかりやすさはある、と思い込みたかったのだけれども、実のところ、妻にも先輩たちにも、「漢字がないので読みづらい」と評判はよくなかった。
Youth
by Samuel Ullman
Youth is not a time of life ― it is a state of mind; it is a temper of the will, a quality of the imagination, a vigor of the emotions, a predominance of courage over timidity, of the appetite for adventure over love of ease.
Nobody grows old by merely living a number of years ; people grow old only by deserting their ideals. Years wrinkle the skin, but to give up enthusiasm wrinkles the soul. Worry, doubt, self‐distrust, fear and despair ― these are the long, long years that bow the head and turn the growing spirit back to dust.
Whether seventy or sixteen, there is in every being's heart the love of wonder, the sweet amazement at the stars and the starlike things and thoughts, the undaunted challenge of events, the unfailing childlike appetite for what next, and the joy and the game of life.
You are as young as your faith, as old as your doubt ;
as young as your self‐confidence, as old as your fear,
as young as your hope, as old as your despair.
So long as your heart receives messages of beauty, cheer, courage, grandeur and power from the earth, from man and from the Infinite, so long you are young. When the wires are all down and all the central place of your heart is covered with the snows of pessimism and the ice of cynicism, then you are grown old indeed and may God have mercy on your soul.
わかさ
ゲンサク: サミュエル・ウルマン
ホンヤク: まつの まちお
2010.3.28
わかさは とし じゃない、こころだよ。こころがまえ、かんがえかた、やるき、おびえないで たちむかう きもち、ぬるまゆに つかっていないで おもいきって まえに でる こころいき なんだよ。
としを とったから ふけるんじゃない。ふけるのは やりたいことを みうしなったときだけ なんだよ。としを とると はだが しぼむ、でもね やるきを なくすと たましいが しぼむ。きがかり、うたがい、おのれが しんじられなくなること、おびえ、あきらめ - こうしたものは ながい ながい としつきと おんなじで、あたまを にぶらせ きもちを おちこませる。
としが 70でも、16でも、ひとの きもちは おんなじ なんだよ。おしはかれないものが だいすきで、ほしや ほしのように ひかり かがやく ものに あこがれる。たいせつなことなら くじけずに たちむかい、おもしろいことなら つぎは どうなるの と こどものように せがむ。いきるのが たのしくて おもしろくて しかたがない ものなんだよ。
しんじるこころが あるかぎり わかく、うたがうと ふける。
おのれを しんじるかぎり わかく、おびえると ふける。
のぞみが あるかぎり わかく、あきらめると ふける。
このよの ものごとに、うつくしさ、よろこび、いさましさ、こうごうしさ、ちからを かんじとれるかぎり、ひとは わかい。これが まったく かんじとれなくなって こころの なかが なげきと あきらめで こおりついてしまうと、ひとは まちがいなく ふけこむ。そうなったら どうか かみさまの おめぐみが ありますように。
青 春
原作: サミエル・ウルマン
邦訳: 岡田 義夫
青春とは人生のある期間を言うのではなく心の様相を言うのだ。優れた創造力、逞しき意志、炎ゆる情熱、怯懦を却ける勇猛心、安易を振り捨てる冒険心,こう言う様相を青春と言うのだ。
年を重ねただけで人は老いない。理想を失う時に初めて老いがくる。歳月は皮膚のしわを増すが情熱を失う時に精神はしぼむ。苦悶や、狐疑、不安、恐怖、失望、こう言うものこそ恰も長年月の如く人を老いさせ、精気ある魂をも芥に帰せしめてしまう。
年は七十であろうと十六であろうと、その胸中に抱き得るものは何か。曰く「驚異えの愛慕心」空にひらめく星晨、その輝きにも似たる事物や思想の対する欽迎、事に處する剛毅な挑戦、小児の如く求めて止まぬ探求心、人生への歓喜と興味。
人は信念と共に若く 疑惑と共に老ゆる
人は自信と共に若く 恐怖と共に老ゆる
希望ある限り若く 失望と共に老い朽ちる
大地より、神より、人より、美と喜悦、勇気と壮大、偉力と霊感を受ける限り人の若さは失われない。これらの霊感が絶え、悲歎の白雪が人の心の奥までも蔽いつくし、皮肉の厚氷がこれを固くとざすに至ればこの時にこそ人は全くに老いて神の憐れみを乞う他はなくなる。
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サミュエル・ウルマンの詩 “Youth” には、オリジナル版とリーダーズ・ダイジェスト版がある。日本では、岡田義夫の漢詩調の訳「青春」が広く知られているが、これはリーダーズ・ダイジェスト版を翻訳したもの。ここでも、漢語と「やまとことば」を比べるということから、原文はリーダーズ・ダイジェスト版を採用した。
資料170 サミュエル・ウルマンの詩「青春」(原文)
http://www.geocities.jp/sybrma/170samuel.ullman.youth.html
サミュエル・ウルマンや「青春」の詩について詳しくは、つぎのサイトを参照してください。
http://home.h03.itscom.net/abe0005/ikoi/seishunn/seishunn.htm
サミュエル・ウルマン記念館: http://main.uab.edu/Sites/UllmanMuseum (米国)
新青春の会: http://www.seisyun.jp/ (東京都)