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カンヌ映画祭オープニング作品『Grace de Monaco』。批評が悪く(「ナオミ・ワッツの『ダイアナ』もひどかったが、これは更にひどい」etc・・・)周囲の反対を押し切って観にいったら、やっぱり周囲が正しかった。
これほど薄っぺらな映画、観たことがない。ニコール・キッドマンのボトックスと整形で強張った顔は“ふつうの顔”“微笑んだ顔”の2パターンしかできなくて、どんな感情も感動も伝えてくれない。でもすべてを彼女の表情のせいにしては気に毒だ。ティム・ロスも薄っぺらだったから、監督オリヴィエ・ダアンの責任が大きい。
50-60年代ファッションのヴィデオクリップと思って慰めたけど、1時間40分は長すぎた。

Grace of Monaco

カンヌで(いい意味で)話題になったグザヴィエ・ドラン。コンペティション参加作品『Mommy』は審査員賞を受賞。最年少の監督ドランが最年長のゴダールと一緒に受賞した。
2009年『マイ・マザー』でカンヌに登場し、2012年『わたしはロランス』でクイア・パルムを受賞している。『Mommy』はまだ封切りじゃないので、その前の『Tom à la ferme/Tom at the farm』を観た。

Tom at the farm

交通事故で死亡した恋人のグザヴィエの埋葬式に出るため、トムはケベックの田舎、グザヴィエの母親の農家にやってくる。母親は、トムを息子の友人と信じている。そして息子が“恋人”と思わせていたサラが埋葬に来ないのを嘆くのだ。
グザヴィエの兄フランシスはレッドネックのカリカチュアみたいな農夫、保守的でゲイ嫌い。トムが着くなり首を絞め、家族の名誉と母親のためにグザヴィエがゲイだったことは絶対隠せ、と脅す。トムが何日か農家で過ごす間、何度も暴力を振るうが、トムはフランシスから離れられない。そこへトムが呼び寄せたサラがやってきたので、ウソで固めた関係のテンションは高まって行く・・・

手前からフランシス、母親、トム
Tom at the farm2

トムとフランシスのストックホルム症候群のような関係、結婚もせず家にいるフランシスと母親の関係、突然呼ばれてやってきて“お芝居”についていけないサラ・・・それぞれ歪みを持った人間とその関係が巧みに描かれ、ぞっとするほど。
トムはグザヴィエ・ドラン、フランシス役のピエール=イヴ・カルディナルもすごくうまい。一見ふつうで、一瞬の視線が狂気を感じさせる。つまり、グレースとは対極の深さ、これなら賞取るよね、しかも25歳!と感心したのであった。

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プロフィール

Author:長谷川たかこ

この国に住もう!と決めたのは13歳のとき。それが実現したのは10年以上経ってから、それから30年の月日が流れました(単純計算しても歳は出ません!)
訳書多数、著書3冊。夫1人、子供2人、猫2匹と暮らす騒がしい毎日。映画と料理とヴィンテージの服、デビッド・ボウイが趣味。

長谷川たかこ

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