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カンヌでグランプリをとったジャック・オディアールの作品『Un prophète/預言者』は、刑務所が舞台のお話。

清く正しい映画が好きなテレラマ(週刊テレビ・カルチャー情報誌)やフランス・アンテール(ラジオ局)が「主人公が発展向上していく様がスバラシイ」などと絶賛していた。
それを聞いて私は、主人公が模範囚になって立派に更生して社会に復帰するお話かと思っていたら、のっけからほかの囚人を殺したりするから、ええっそんなことしたら模範囚になれないじゃん!

観ているうちに、彼が悪の世界で向上していくストーリーだとわかった。

prophete_affiche.jpg

6年の実刑をくらって刑務所に入ってきた時、マリックは読み書きもできなく、誰よりも若く、弱く見えた。刑務所の規則だけでなく、囚人間に暗黙のルールやヒエラルキーに戸惑うばかり。彼は19歳だ。

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ムショではコルシカ出身の男がボス的存在で手下を従え、自らの掟で仕切っている。
「言うとおりにすれば護ってやる」とボスが持ち掛け、マリックは承諾するしかない。
コルシカ・ボスの言いつけるミッションをこなすうちに、マリックは逞しく成長していく。

中央の白髪がボス(ニール・アレストラップ、オディアールの作品によく出る)

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顔もだんだん険しくなり、貫禄が出てくるマリック。演じるタハール・ラヒムは新人。

prophete3.jpg

ストーリーも役者たちもいいけど、刑務所の時間の流れ、じめじめとした暗さ、一時も気を許せない人間関係が、彼らの体臭が感じられるほど生々しく描かれている。2時間半、自分が刑務所にいるような気分になった。

うちに帰って「刑務所にだけは入りたくないって思った」と言ったら、「そういう予定があるわけ?」と息子が心配した。


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プロフィール

Author:長谷川たかこ

この国に住もう!と決めたのは13歳のとき。それが実現したのは10年以上経ってから、それから30年の月日が流れました(単純計算しても歳は出ません!)
訳書多数、著書3冊。夫1人、子供2人、猫2匹と暮らす騒がしい毎日。映画と料理とヴィンテージの服、デビッド・ボウイが趣味。

長谷川たかこ

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