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クリスマス。街中がイリュミネーションで輝き「Joyeuses fêtes!/楽しいお祝いを」の挨拶が交わされる。
家族が集って祝う日が近づくと、いつもにまして孤独を感じる人、逆に家族に会うのが憂鬱で「家族ってなんだ?」と問う人が増える・・・というタイミングで封切りになった是枝さんの『万引き家族』。
待たれたカンヌ映画祭パルムドール受賞作の公開。仏語タイトルは『Une affaire de famille/家族の問題』

万引き家族/Une affaire de famille

スーパーで息の合った共同作戦で万引きする父と息子。

万引き家族/Une affaire de famille

コロッケを買って寒い寒い!と帰りを急いでいると、小さい女の子がベランダにひとり。
コロッケ食べる?と話しかけ、結局連れてきてしまう。
帰り着いた長屋には、ほぼ17歳から70歳の女性3人が折り重なっていた。

工事現場で働き万引きを副業とするお父さん、工場勤めのお母さん、風俗で働く娘、12歳の息子は押し入れで暮らしている。そしてわずかな年金をもらっているおばあちゃん。

最後の映画になってしまった樹木希林さん。彼女は現れただけでスクリーンを占領した。

万引き家族/Une affaire de famille

一見、貧しくても仲のいい家族。

万引き家族/Une affaire de famille
photos:allociné

次第に彼らの繋がりはもっと複雑であることがわかってくる。

気が付くのが遅いけど、是枝さんはずっと「家族とは?血の繋がりとは?」をテーマにしてきた:
母親が突然出て行き、残された子供5人が生き延びようとする『誰も知らない』。
『海岸dialy』は父親が再再婚で作った娘を引き取る3人姉妹の話。

この作品ではそのテーマが更に掘り下げられた感じだ。
血が繋がっていても愛せず、捨てたり暴力をふるう親たち。一方、愛する対象が欲しくて“盗んで”しまう人たち。
同時に、社会から忘れられ、社会保障からはみ出し、法に触れながらなんとか生きている人たちの存在を明るみに出している。
是枝氏はよく「小津安二郎を思わせる」と言われるけど、インタビューで「小津よりケン・ローチに同類を感じる」と語っていた。

日本政府が「国の恥・・・」とこの作品の成功に眉をひそめたことも、ル・モンドはじめメディアが触れていたけど、これは現実でしょ。国は“建前”だけじゃない。

とにかく。ジレ・ジョーヌが購買力のなさを訴え、一方で人々がヒステリックにプレゼントを買いまくる季節、孤独や家族の問題が浮き彫りになる季節に、この作品はいくつもの波紋を投げかける。その波紋はけっして暗くない。
パルムドールに値する素晴らしい作品。

Une Affaire de famille
是枝裕和監督作品
主演:安藤サクラ、リリー・フランキー、樹木希林、松岡茉優、城桧吏・・・
2時間
フランスで公開中


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プロフィール

Author:長谷川たかこ

この国に住もう!と決めたのは13歳のとき。それが実現したのは10年以上経ってから、それから30年の月日が流れました(単純計算しても歳は出ません!)
訳書多数、著書3冊。夫1人、子供2人、猫2匹と暮らす騒がしい毎日。映画と料理とヴィンテージの服、デビッド・ボウイが趣味。

長谷川たかこ

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