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風邪薬は映画!

朝起きると声が出なくなっていた。出そうと思えば出るんだけど、娘が、
「ギャーッ!すごいヘビースモーカーのオバアサンみたいな声」とケラケラ笑う。笑ってる場合だろうが。

前の晩、寒気がして気分が悪かったけど、いきなり声が出なくなるとは。週末に病気になるなんてまことにツイていない。
夫は出張でマラケシュに行っていて、「週末来たら?」と言われていたけど、帰りの飛行機が目から火が出るほど高くて諦めた。

友達と会う約束を断り、でも熱もないし寝込むほどじゃないし、こういう時は映画!
厚着をして、歩いて5分の映画館に赴き、ギリシャ人監督ヨルゴス・ランティモスの『Mise à Mort du Cerf Sacré/神聖な鹿の殺人』(原題『The Killing of a Sacred Deer 』

ヨルゴス・ランティモス『The Killing of a Sacred Deer』

スティーヴン(コリン・ファレル)は腕利きの外科医、眼科医の妻(ニコール・キッドマン)、2人の子供と大きな家に暮らしている。
裕福で幸せそうなブルジョア家族、なんだけど家庭には人間味がなくて会話もマニュアルっぽい。会話だけでなく、夜ベッドに入る時、妻は夫に「全身麻酔?」と尋ね、セックスの間“昏睡状態”を演じるのだ。

彼らのマニュアル生活に15歳のマーティンが登場する。彼の父親はスティーヴン執刀中に死亡した。

ヨルゴス・ランティモス『The Killing of a Sacred Deer』

同情を感じたスティーヴンは、プレゼントをあげたり、家に招待する。マーティンは家や病院に出没しだし、ますます“愛情”を要求し、それは脅しに変わっていく。
目には目を・・・

アメリカの家族にギリシャ悲劇を持ってきた。なぜかカンヌ映画祭でシナリオ賞を取ったけど、ギリシャ悲劇と現実に起こることがかみ合わなく、ストーリーに入り込めない。それを救おうとするのが主役の2人:有能な医師、良き夫、良き父という“殻”から、背徳的な地肌を垣間見せるコリン・ファレル。自分も不安だけど、人も不安にするのが上手く、何考えているのかわからないニコール・キッドマン。

ヨルゴス・ランティモス『The Killing of a Sacred Deer』
photos: allociné

帰って娘に「なんか後味の悪い映画だった」というと、
「ビョーキの時観たからよ。『ロブスター』はよかったのに」
子孫を残すことが義務付けられた近未来。45日以内に配偶者を見つけなければ動物に姿を変えられてしまう・・・という『ロブスター』は発想がオリジナルで、ユーモアもあった。
ヨルゴスさん、模索中?

Mise à mort du Cerf Sacré
ヨルゴス・ランティモス監督作品
主演:コリン・ファレル、ニコール・キッドマン、バリー・コーガン
2時間01分
フランスで上映中

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プロフィール

Author:長谷川たかこ

この国に住もう!と決めたのは13歳のとき。それが実現したのは10年以上経ってから、それから30年の月日が流れました(単純計算しても歳は出ません!)
訳書多数、著書3冊。夫1人、子供2人、猫2匹と暮らす騒がしい毎日。映画と料理とヴィンテージの服、デビッド・ボウイが趣味。

長谷川たかこ

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