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伝達を咥えた犬が塹壕の中を走っていく。第一次大戦は休戦を迎えようとしていた。
最後の攻勢命令を犬から受け取ったプラデル中尉は、経験のない兵士を先行させ、死者を増やす。

映画『天国でまた会おう/Au revoir là-haut』

生き埋めになりかけたアルベールは危機一髪でエデユアールに掘り出され、しかしその瞬間、エデュアールは爆弾でぶっ飛んだ。アルベールは重度の火傷を負った“命の恩人”を助けようとする。

顔の下半分が無残に損傷し、軍用病院で痛みに呻くエデュアールにモルヒネを調達し、家には絶対帰りたくないという彼のために、名簿をすり替えてエデュアールが死んだことにする。彼は良家の息子。絵の才能を認めようとしなかった(「画家なんか職業ではない!」)父親にこんな姿は見せたくない。

病院で初めて自分の顔を見て・・・

映画『天国でまた会おう/Au revoir là-haut』

パリにたどり着いた2人は仕事もお金もなく・・・あるのはエデュアールの絵の才能と会計士だったアルベールの計算能力。2人は“復讐”を計画する:自分の保身しか考えず兵士の死を何とも思わなかったプラデル中尉(右)と、エデュアールの父親に代表される「権力」への復讐を。

映画『天国でまた会おう/Au revoir là-haut』

ゴンクール賞をとったピエール・ルメートルの『Au revoir là-haut/天国でまた会おう』

映画『天国でまた会おう/Au revoir là-haut』

本が傑作だったし、監督がアルベール・デュポンテル?これまで低予算・現代が舞台のナンセンスコメディを作った彼が、この歴史ドラマを?・・・と観るか観ないか迷った挙句、結局観たら、すごくよかった。

第一次大戦の戦闘シーン、顔を隠すためにエデュアールが次々と作るマスク、ホテル・リュテシアで繰り広げられる狂乱の時代のパーティ、そして世紀の詐欺計画・・・600ページ近くある原作を映画は2時間弱で駆け抜ける。テンポがよく、デュポンテル&ルメートル共同執筆のシナリオがよく、1920年代はじめのパリが美しく撮られる。

映画『天国でまた会おう/Au revoir là-haut』
photos:allociné

そして俳優がみんなはまり役:エデュアールは『120 battements par minute』(邦題『BPM』2018年3月公開予定)の主役ナウエル・ペレーズ・ビスカヤール。セリフは殆どなく(口を負傷してしゃべれない)すべての感情を目の動きだけで。
夢見がちで不器用なアルベールは、アルベール・デュポンテル(監督して主演だと自己満足っぽくなるのをうまく回避)、
高慢ちきな美男プラデル中尉をロラン・ラフィット。そしてエデュアールの父親はニエル・アレストリュプ(この役は彼しかいない!)。

ピエール・ルメートルはミステリーを1冊読んだら、文体とカミーユ・ヴェルーヴェン警部のキャラにほれ込み、全冊読んで「もう読むもんがない!」という時、この「天国で・・・」が出て、この作家の構成力と文才にぶっ飛んだ。
本も映画もお奨め!

Au revoir là-haut

脚本・監督:アルベール・デュポンテル
主演:ナウエル・ペレーズ・ビスカヤール、アルベール・デュポンテル、ローラン・ラフィット、ニエル・アレストリュプ
1時間57分
フランスで公開中

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プロフィール

Author:長谷川たかこ

この国に住もう!と決めたのは13歳のとき。それが実現したのは10年以上経ってから、それから30年の月日が流れました(単純計算しても歳は出ません!)
訳書多数、著書3冊。夫1人、子供2人、猫2匹と暮らす騒がしい毎日。映画と料理とヴィンテージの服、デビッド・ボウイが趣味。

長谷川たかこ

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