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2024年12月 1日 (日)

『失敗談 法律事務所の安定経営を目指して』(弁護士若松敏幸著)

Pxl_20241201_101918063 弁護士である著者が「安定経営を目指して」、平成8年から11年頃に取り組まれていた話。顧問契約を増やそうとされていた時期の話から、スタート。

顧問契約を押し売りして、値下げして、これは上手くいかないやり方だな~、嫌われるやり方だな~と思いましたが、若かった私が、この本を読んで、何を思ったのか、記録も記憶もありません。2000年の出版。いつ買ったのかも、記憶がない。

で、顧客を増やすために、著者は講義を受けられるのですが、
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【講師】お客さんを増やそうと思えば、「私は365日受け付けますよ」という、自分の態勢を作らなかったらだめです。
【著者】家庭も大事にしたい。プライベートも大事にしたいと言ったら、無理ですかね。
【講師】旅行に行きたかったら、勝手に行きなさい。なぜ俺が付いて行かないといけないのかと言うのです。
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このシーンも、私の感覚とは違います。
いくら仕事が忙しくても、家族に相手にされないとか。下手したら、家族が消えてしまった、なんていう事態も、容易に起こりえます。

家族あっての、お仕事。

タイトルが『失敗談』ですから、突っ込みどころがあっていいと思うのですが、あえて私の感覚と違う部分を抜き出させてもらって、

私はそう考えてやっています、ということが言いたくて、引用させてもらいました。

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2024年11月25日 (月)

『自分で会社を清算しました(幻冬舎)』

Pxl_20241125_081354758 会社の「解散から清算結了」の手続きの中には、登記上のことに限っても、いろんな論点があって、悩むことが多い手続き。

中でも、難しいのは、税理士さんが付かれていないケース。

清算事務報告書の数字で、なぜか司法書士が、あれこれ悩むことになります。

ところで、『自分で会社を清算しました』は、他の専門書とは異質で、経験者の話であれば面白いのかもと、買ってみました。複数の専門書を引用しながら、書かれています。

「専門家といえども法律の解釈を誤ることはあり得る。また、実務経験の長い専門家が執筆した文献は、現在有効でない古い知識に基づいて執筆されていることもあり得る。ひとつの文献のみに依拠しているとそういった誤りをその分野の専門家でない者が見つけるのは難しいが、複数の文献を読み比べれば専門家でなくても誤りに気付くことができるかもしれない」(本書のまま)

私が調べごとをする際も「これは正しいのか」という、自分のフィルターを通して見るようにしていますが、「経験の長い専門家」のほうが、疑われるのですね…。

この本の中では、清算結了の登記が終わった後に、印鑑の廃止届を法務局に出されていたり(→司法書士からすると、まさか。すでに登記簿が閉鎖されてるのに、わざわざ印鑑の廃止届とは、想像もできません)、清算結了後に銀行口座を解約して利息が発生したとされていたり(→それはありなのか)、専門家が書いた本だと、これは書かれないだろうな、という部分はありました。

◎リンク 堺市の司法書士吉田事務所コラム20「株式会社の解散から清算結了までの流れ」

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2024年11月24日 (日)

『移動する人はうまくいく(長倉顕太著)』

Pxl_20241124_101858608 『移動する人はうまくいく』ということは、旅行好きの私の人生はうまくいくのかな、と考えて、手に取った本。

移動することで、「人間が本来持っている感覚が蘇ってくる(本書の表現)」のであれば、旅行も含むのでしょうけど、著者は、それだけでなくて、住む場所や、働く場所も変えていくことで、いい人生になるのではないか、と書かれている気がします。

確かに、私も引っ越しを経験して。

結婚の時に買ったマンションは、景色が良くて、PLの花火の日は、誘わなくても誰かが遊びに来てくれて、この眺望は絶対に手放さないぞと思っていたものですが、事務所の近くに引っ越しして、眺望が見込めない中層階に住むことで、心身が落ち着きました。

こういうのも、動いてみないと、分からないことです。

「電車の中で移動しながら本を読む」というのも、好きなことです。家や事務所とは違う環境で、新しい情報を取り入れることで、インプットの効果が2倍になればいいな、と。

ただ、「会社員でいることがもはや最大のリスク(本書の表現)」「まずは独立開業しようと宣言しよう(本書の表現)」といった部分は、人には向き・不向きがあります。万人に当てはまることではないので、暴論のように見える部分もありました。

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2024年11月23日 (土)

「法律事務所をつくる!(ハードウェア&ノウハウ集積編)」

Pxl_20241123_093048377弁護士さんか書かれた「法律事務所をつくる!(スピリット&マネジメント編)」と並行して読んでいたのが、「法律事務所をつくる!(ハードウェア&ノウハウ集積編)」。

法律事務所の開業を支援する立場、コンサルされる業者さんの立場から書かれた本です。

私の場合、独立の時と1回目の引っ越しの時は、紹介で出会ったコクヨ系の備品屋さんのお世話になって、2回目3回目は、オフィス移転の専門業者さんのお世話になっています。

2回目と3回目の引っ越し時は、LANも複雑になり、「ただ荷物を運ぶだけ」では済まなくなったためです。

事務所の備品も、最初は、家庭用のものでも良さそうなところ、そこは「形から入る」で、事務所らしく。ワンルームマンションなのに、開業時に、備品代だけで44万円分も使っています。

司法書士は、「携帯電話とパソコンがあれば、自分の身ひとつでできる」スタイルも選択できますが、2か所の事務所勤めを経て、事務所構え、見栄えも大事。司法書士事務所というのは、こうあるものだ、というイメージを持っていたからだと思います。

無意識に持つイメージというのはとても大事で、他人を雇用する予定もなかった私が、今、4人の事務所を運営できているのは、形から整えて「こうありたい」というイメージを持っていたからではないか、と。しかし、それは後付けの理屈で、実際のところは、先のことを考える余裕なんてなかったです。

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2024年11月17日 (日)

「法律事務所をつくる!」(弁護士近藤早利著)

Pxl_20241117_075329015mp「法律事務所をつくる!(スピリット&マネジメント編)」が出版されたのが、平成13年10月。

平成14年1月に独立を決めた私は、この本を何度も読んで、支えにしていました。書かれているのは、弁護士の共同事務所を作る話なので、ひとりで事務所をやっていこうとしていた私とは、次元が違い過ぎるのですが。

だから、今読んでも、ものすごくいいことが、書かれています。

ずっと頭に残っているのが「雇用を創出してこそ、経営の醍醐味」というフレーズ。

正確には、経費節減が安定経営に資するという考えには与しません、という話の後に「雇用を維持・創出してこそ企業経営の醍醐味でしょうに(本書の表現のまま)」と続きます。

私自身、当時は人を雇用することは、予定していませんでした。「ノリと弾みとタイミング」で、2人で事務所を始めることになったものの、「2か月だけ手伝って。後はひとりでやる」と言っていました。

大きくするのは、簡単。小さくするのは、難しい。

だから、悲観的に。規模を極力小さくして始めたことは、今になっても正解だったと思っています。

司法修習の最終講義で黒板に書かれたという言葉「恒産なければ恒心なし(本書の表現のまま)」も、本当にそのとおり。

自分の心配をしている状態じゃ、人のことを心底思いやることはできない。家族のこと、従業員のことも、依頼者のこともです。

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2024年11月10日 (日)

『発達障害に生まれて(松永正訓著)』

Pxl_20241110_094716046mp 『発達障害に生まれて(松永正訓著)』は、未読のまま、本棚にあった本。

先週紹介した『開業医の正体』の中で、題名が出て来たので、もしかしてと本棚を探してみた。同じ著者でした。

この本が深みを出しているのは、著者は医師である「私」であるものの、「母」から聞き取った話を、「母」の視線で、自閉症である勇太君のことと、「母」の心の動きを赤裸々に語られている部分。その「母」は、特別支援学級の教員資格を持っている、という背景もあります。

「障害」の「害」の文字を使う理由など、専門家のフィルターを通して語られているので、伝わり方が違います。

「子供は親を選んで生まれてくる」という話は、本当にその通りと思うしかありません。但し、教員資格を持っていることと、自分が親になることとは全く違う。母の気持ちの変化も、リアルに伝わります。

成年後見制度の話も、出てきました。

私の事務所でも、難病を持つ兄妹の後見人をお受けしています。我々のほうが年長になります。役所の手続きも、何種類もあって複雑。この本に書かれているように、「信頼できる後見人に出会えた」と、ご本人とお母様に思ってもらえる存在で、居続けないといけません。

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2024年11月 4日 (月)

『開業医の正体』(松永正訓著)

Pxl_20241104_093258003mp『開業医の正体』は、開業司法書士として参考になることがあると思って、手に取りました。

本から一番伝わったのは、「経験が大事」ということ。ブラックな勤務時代の経験があるから、量をこなしてこられているから今がある、ということです。

司法書士試験の合格者の平均年齢が上がって、勤務経験を経ない「即独」が増えているかもしれないとすれば、段階踏んで進んでも、遅くはないと言いたい。

「つまり開業医は、それまでの自分の経験と知恵を売り物にしている仕事である」「人生経験豊富な医師は、家族の問題を解決する経験値がある。ぼくなど、まだまだ鼻垂れ小僧だ。人生の深みを知るのはこれからだ。」(以上、いずれも本書の表現のまま)

19年大学病院に籍を置き、開業18年の著者が「鼻垂れ小僧」ならば、どこまでやれば『経験豊富』の境地に立てるのか。

司法書士も同じで、毎年法律が変わって、毎年新しい制度ができて、そんな中、結局は「人」を相手にするお仕事なので、どこまでいっても「これで十分」と思えることはない。そう考えてやっています。

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2024年11月 3日 (日)

『日本一稼ぐ弁護士の最強メンタル(福永活也著)』

Pxl_20241103_011924599mp『日本一稼ぐ弁護士の最強メンタル』は、先に読んでいた『日本一稼ぐ弁護士の仕事術』の各論編のような内容。

法律事務所に就職して、事務所の仕事をしながら自分の仕事をして、東日本大震災の原発被災者となった事業者の支援をした。あれ、こんな話読んだことないかも?と思って読み返すと、先に出された本では軽く流されていた内容が、具体的に書かれていて、著者の生き方が、伝わりやすかった。

「勤めている時に、自分が抱えている仕事を過少申告してでも経験を買う」みたいな考え方は、私になかった。普通の人は、できるだけ楽してお給料をもらえたら、それでよしと思うもの。

「事務員も雇わず、ひとりで長時間労働をする」というのは、私には無理。メンタル以前、ここまでできないし、やる気もないかなと考えると、同業者の中でもいろいろと差が出てくるのが、どうしてなのか、というのも、見えたりします。

「深夜のメールが職員にはプレッシャー」というのは、「休日に私が仕事をすると、職員が逆に疲弊する」のと同じ。今の私の事務所でも同じだから、この話は分かりました。金曜日、せっかく仕事を片付けて帰ったのに、月曜の朝に職場に行くと、仕事が山積みとなると、気持ちが萎えます。

著者の生き方の真似はできないけれど、「ここまでやっている人がいる」というのは、参考になるので、自分が若い時に知っていたら、もっとよかったかなと思いました。

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2024年9月 8日 (日)

『地面師(講談社 森功著)』

Pxl_20240908_102838459mpネットフリックスで『地面師たち』を見てから、そういえば、本があったんじゃないかと、事務所の中、探してみました。

『地面師』(講談社 森功著)。未読でした。

「積水ハウス事件」の他、「アパホテル溜池駐車場事件」など、複数の実話を少しずつ取り込みながら、まとめられています。ドラマのような面白さはありません。『地面師たち』は、業界外の人の中でも、噂になっているようです。

本の中でも、しきりに出て来る「中間業者」の存在。BがAから買って、それをCに持ち込んで買い取らせ、同日に決済する、という手法は、「中間省略登記ができない」とされている現状では、規制したほうがいいんじゃないか、と。せめて、銀行融資が下りない、とか。

「中間省略登記はできない」とされているのに、「できるようになった」と主張される業者さんと、衝突したこともあります。

実務上「第三者のためにする契約」として存在しています。俗にいう「三為(さんため)」ですが、ウチの事務所での直近の例では、登記のご依頼、辞退させてもらいました。

実態が要件を満たしているように見えないのに、無理やり要件に合うように当てはめる、ことには、関与したくないのが正直なところです。

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2024年5月11日 (土)

振り返ると夢のような日々だった?【成年後見】

Pxl_20240511_104356855mp 「成年後見取扱い実績」のページ更新。

今年に入って、確定済みが2件。審判待ちが3件。申し立ての準備中で3件あります。

「まだ空きがありますか」と聞かれると、「大丈夫です~(喜んで)」とお答えしていますが、完全に未踏の領域に入っています。

『ケアマネージャーはらはら日記』の最後は、こんな文章で締め括られていました。

「私はこの仕事が好きだからやってきた。振り返ってみると、夢のような日々でもあったのだ」(本文のまま)。

そう。私は司法書士の仕事が好きだからやってきた。やりたいと思っても、誰にでもできるわけではない仕事。大変なこともあるけれど、いつか振り返った時、夢のような日々だったと、振り返られるようにしたい。

大変なことも含めて、夢のような日々だと、感じられる余裕も持ちたい、と思っています。

◎リンク 堺市の司法書士吉田事務所「成年後見取扱い実績一覧」 

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