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2024年12月15日 (日)

「よくある質問」ではなく「時々ある質問」

20220920_184358026-1 「よくある質問」ではないですが、時々ある質問。

1.自分で書類を作ったら、費用は安くなりますか。
2.自分で法務局に走れば、費用は安くなりますか。

この2つに対する回答は明確でして、「安くはなりません」。

まず、ご自分で書類を作られると、司法書士は、慣れない書類の言葉尻の細部まで、チェックしないといけません。

普段、自分の事務所で使っている書式であれば、画像を読み取るように見ていて、「違う」という部分は、パッと見た時点で気付けることもあります。もちろん、読み込まないと気付けないこともあるのですが、「これでいけるのかな」というグレーな部分を残すくらいなら、こちらで作らせてもらうほうが、負担が軽いんです。

それと、最近は、ほとんどがオンライン申請になって、法務局には、ほぼ行きません。「本人申請」の申請書の書式は、事務所にはないので、オンライン形式でなく、「紙の本人申請で申請書を作る」のは、逆に面倒です。

時と場合にもよります。期間の余裕にもよりますが、費用の節約のために「住所の変更登記だけ、ご自身でされたい」と言われる場合は、「実費だけでいいから、こっちでやります」と言って、本体のご依頼と共に、引き取ることもあります。

◎リンク 堺市の司法書士吉田事務所メインサイト「よくある質問」

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2024年12月12日 (木)

金融機関は意外なほど「人柄」も見られている

Pxl_20240601_055728998-1出勤したスタッフが、玄関の掃き掃除を始めたので、「どうした?」と。「銀行の人が来られるから?」と聞くと、「たまたま、汚れが目に入ったから」と。

「銀行の人と、掃除が関係あるんですか」と聞かれたので、「銀行の人はそういうところ、見ているから」と私。

何度も書いています。私の偏見ですが、

・業績がいい組織は、きちんと掃除ができている。
・業績の悪い組織は、表から見える汚れのことも、気にできなくなる。

ちなみに、金融機関の方は、業績と共に「人柄」も見ている、ということを、最近になって知りました。それも、意外なほどにです。

例えば、対金融機関に限らないことですが、担当の人が若いからといって、見下したような態度を取っていると、ちゃんと上の方と情報が共有されています。当たり前ですが。

私の事務所に対しても、時々。本当に時々ですが、女性職員に対してだけ、横柄な態度を取られる方がおられますが、そのことが私の耳に入るのと、同じです。

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2024年12月 7日 (土)

独立を告げてから出るまでの期間(平成14年1月~7月)

20231118_104858326 平成14年1月。独立することを勤務先の先生に告げ、独立の日は平成14年7月と決まりました。

しかし、事務所の先生は、後任者を募集するような気配がありません。

私の気が変わって、「やっぱり独立は止めます」と言うと思われていたのか、できるだけ長く居て欲しいと思って下さったのか。

いずれにしても「勤務司法書士なんか、すぐに見つかる」目算は外れ、いざ探し始められたものの、後任となる補助者が入ったのは、私が退職する前日。その時期からもう、ひと昔前と比べると、資格者の募集が難しくなっていたのかもしれません。

3年間働いて独立していく司法書士と、実務経験があるものの、事務所のやり方が分からない補助者の差は、歴然としています。司法書士事務所、どこも同じように思われるかもしれませんが、事務所によって「やり方」は大違いです。

「引き継ぎ」がないまま、ある日突然違う人が入って、上手くいくはずもありませんでした。

ところが、回りまわって、自分が逆の立場になるとは、当時は思いもしません。

産休の代替要因として入ってもらい、引き継ぎ期間が1週間しかない状態に、私もやってしまいます。立場が変わった私は、新しく入る人の目線に立てず、「1週間あれば、なんとかなるだろう」という、安易な考えに陥ってしまいます。

人は機械ではないので、ある日を境に入れ替わる、というのは、無理な話です。

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2024年12月 1日 (日)

『失敗談 法律事務所の安定経営を目指して』(弁護士若松敏幸著)

Pxl_20241201_101918063 弁護士である著者が「安定経営を目指して」、平成8年から11年頃に取り組まれていた話。顧問契約を増やそうとされていた時期の話から、スタート。

顧問契約を押し売りして、値下げして、これは上手くいかないやり方だな~、嫌われるやり方だな~と思いましたが、若かった私が、この本を読んで、何を思ったのか、記録も記憶もありません。2000年の出版。いつ買ったのかも、記憶がない。

で、顧客を増やすために、著者は講義を受けられるのですが、
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【講師】お客さんを増やそうと思えば、「私は365日受け付けますよ」という、自分の態勢を作らなかったらだめです。
【著者】家庭も大事にしたい。プライベートも大事にしたいと言ったら、無理ですかね。
【講師】旅行に行きたかったら、勝手に行きなさい。なぜ俺が付いて行かないといけないのかと言うのです。
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このシーンも、私の感覚とは違います。
いくら仕事が忙しくても、家族に相手にされないとか。下手したら、家族が消えてしまった、なんていう事態も、容易に起こりえます。

家族あっての、お仕事。

タイトルが『失敗談』ですから、突っ込みどころがあっていいと思うのですが、あえて私の感覚と違う部分を抜き出させてもらって、

私はそう考えてやっています、ということが言いたくて、引用させてもらいました。

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2024年11月30日 (土)

親の心子知らず-独立を決めた時の私(平成14年1月)

Pxl_20241130_033951159独立を決めた「瞬間」は、鮮明に記憶しています。

平成14年1月。事務所の先生から「不景気だから、独立の予定は遅らせて」と言われた時に、「いえ、もう独立したいんです」と言いました。

『親の心子知らず』というのは、まさにこのことで、100%私のことを心配して言って下さった言葉に、即座に切り返しました。

先に独立した先輩の事務所は、見させてもらっていました。「これだけの仕事が動いてるねん」と件数を見せてもらって、有志の無料相談会に参加させてもらうと、たくさんの相談者が来られていました。

確かに、古い世代では「司法書士業は、景気と密接につながっていた」のかもしれませんが、「自分もやってみたい」。「景気は関係ないんじゃないか」と思っていました。なので、「事務所を出たい」と言う機会はないかと、ずっと考えていたものの、なかなか言えませんでした。

当時の自分の経験から、平成22年12月に私の事務所から独立した森髙司法書士には、オープンに話してもらうようにしていました。

「下積みの経験がない人に、上積みの仕事はできない」と『伝説の外資トップが説く働き方の教科書(新将命著)』に書かれていましたが、こういう部分を切り取っても、まさにそのとおりです。

しかし、その後、スタッフの数以上に「辞めます」と言われてきた私は、スタッフへの配慮が足りないことを、後で気付くことになります。それと、立場変わって、「辞めます」と言われた側の気持ちも、知ることになります。

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2024年11月26日 (火)

士業はサイトの運営を任せ過ぎてはいけない【事務所運営】

Pxl_20241126_104632718 某知事選挙で、「SNSをコンサルした」とされている人が、話題になっています。

士業も他人事ではないのが、士業の世界独特の、倫理の部分。

外部の一般企業に必要以上に任せてしまうと、「士業の世界ではしてはいけない」ことを、目先の効果を狙ってされてしまう可能性があります。過払いのポスティングチラシは、いまだに入っていますが、明らかにやり過ぎ。

A事務所、B事務所のホームページの外見が、ひと目で見て同じ、という例も、よくあります。

記事の内容も、順番が入れ替わっていたりしても、ほぼ同じ。画像も同じ。

だから、調べ事をしていると、複数のホームページが、同じ文章でヒットしたり。

同じ士業が同じテーマで書くと、そういうことも起こりえますが、同時に「これは司法書士が書いた文章じゃないな」というのも、分かったりします。最後はやっばり、自分の手元に原稿を戻してもらって、専門家の文章として仕上げないと。。。

話を戻すと、もし士業のホームページを管理している業者が、「実はウチが更新しているんです(ウチの会社は凄いでしょ)」と書いてしまうと、「それはルール違反でしょ」というのが、某知事選挙の話だと思って見ています。

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2024年11月17日 (日)

「法律事務所をつくる!」(弁護士近藤早利著)

Pxl_20241117_075329015mp「法律事務所をつくる!(スピリット&マネジメント編)」が出版されたのが、平成13年10月。

平成14年1月に独立を決めた私は、この本を何度も読んで、支えにしていました。書かれているのは、弁護士の共同事務所を作る話なので、ひとりで事務所をやっていこうとしていた私とは、次元が違い過ぎるのですが。

だから、今読んでも、ものすごくいいことが、書かれています。

ずっと頭に残っているのが「雇用を創出してこそ、経営の醍醐味」というフレーズ。

正確には、経費節減が安定経営に資するという考えには与しません、という話の後に「雇用を維持・創出してこそ企業経営の醍醐味でしょうに(本書の表現のまま)」と続きます。

私自身、当時は人を雇用することは、予定していませんでした。「ノリと弾みとタイミング」で、2人で事務所を始めることになったものの、「2か月だけ手伝って。後はひとりでやる」と言っていました。

大きくするのは、簡単。小さくするのは、難しい。

だから、悲観的に。規模を極力小さくして始めたことは、今になっても正解だったと思っています。

司法修習の最終講義で黒板に書かれたという言葉「恒産なければ恒心なし(本書の表現のまま)」も、本当にそのとおり。

自分の心配をしている状態じゃ、人のことを心底思いやることはできない。家族のこと、従業員のことも、依頼者のこともです。

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2024年11月16日 (土)

独立を決めてから開業するまでの記録(平成14年1月~7月)

Pxl_20241115_000529071 独立開業前の話。

平成14年7月1日に開業した私は、事務所の先生との「独立する時は、半年前に言うこと」という約束を守り、平成14年1月に伝えました。「出る」と言った後の半年は長いですが、やることはいろいろあります。

・3月31日、パソコンを購入(178,269円)
・4月14日、事務所の賃貸借契約
・4月22日、請求書のソフトを購入(92,400円)
・6月20日、コピーFAXの複合機を購入(504,000円)

いきなりコピー機を買うなんて、まさに「形から入っている」としか思えない進め方。「司法書士事務所には、コピーFAXの複合機があるもの」という固定観念がありました。請求書も、最初はエクセルで十分なのに。

アスクルのカタログを眺めるのも、楽しかった。

5月頃、その後、私の奥様になる人が、「見せたいものがある」と家に持ってきました。事務所のホームページの原型、手作りのものでした。

6月22日には、机やキャビネットを搬入。合計441,000円の中には、200キロの対価キャビネットもありました。

7月1日から、2人で事務所を始めました。前の日に「明日から来れる?」と私が言った、と言っていますが、その記憶が、私にはありません。

ホームページは8月に公開。12ページ、今からすると小規模のものですが、素人が作ったにしては上出来。わりとすぐに、問い合わせが入り始めます。

◎リンク 堺市の司法書士吉田事務所メインサイト「事務所の歴史 第1章創業期」

◎リンク 堺市の司法書士吉田事務所 コラム44 「堺東の司法書士」より「三国ヶ丘の司法書士」

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2024年11月 9日 (土)

「挨拶回り」や「飛び込み営業」は必要なのか【事務所運営】

Pxl_20241107_231819227mp 土曜日の連載、過去を振り返る話。時計の針を少し戻して、平成14年7月。4年と9か月の勤務経験を経た私は、三国ヶ丘駅前のワンルームマンションで、独立開業しました。

『開業の案内』を郵送したところ、「ちょうどよかった」と抹消の依頼がありました。7月1日に申請した商業登記があったので、「やることなし」状態ではなかったものの、「経費をどうやって賄うか」という、マイナスの思考しかありませんでした。

先輩から回してもらえた仕事。それと、月1回、有志で開催していた無料相談会から、仕事は少しずつ入ってきました。

JCからのお誘いもありました。集会に参加はしてみましたが、面倒くさいなという記憶しかありません。

メインは、ホームページ経由のお仕事です。「金融機関や不動産業者には近付くまい」と決めていました。

大学の会報で取材してくれた時の記事によると、「7月から11月まで14件の相談があった」と書かれています。債務整理を扱う司法書士、ホームページを持つ司法書士がまだ少数派だった時代で、見えないところで、追い風は吹いていました。

多くの人が、仕事を得るために、最初は「いろんなところに顔を出す」とか、「飛び込みでの挨拶回り」と書かれています。今の私が開業前の状態だったら、「そんなことしたくない」と絶望するでしょう。でも、嫌なお付き合い、営業回りみたいなことはせずに、あれから22年が経過。今に至っています。

◎リンク 堺市の司法書士吉田事務所メインサイト「事務所の歴史 第1章創業期」

◎リンク 堺市の司法書士吉田事務所 コラム040「営業行為」をしない司法書士事務所

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2024年11月 4日 (月)

『開業医の正体』(松永正訓著)

Pxl_20241104_093258003mp『開業医の正体』は、開業司法書士として参考になることがあると思って、手に取りました。

本から一番伝わったのは、「経験が大事」ということ。ブラックな勤務時代の経験があるから、量をこなしてこられているから今がある、ということです。

司法書士試験の合格者の平均年齢が上がって、勤務経験を経ない「即独」が増えているかもしれないとすれば、段階踏んで進んでも、遅くはないと言いたい。

「つまり開業医は、それまでの自分の経験と知恵を売り物にしている仕事である」「人生経験豊富な医師は、家族の問題を解決する経験値がある。ぼくなど、まだまだ鼻垂れ小僧だ。人生の深みを知るのはこれからだ。」(以上、いずれも本書の表現のまま)

19年大学病院に籍を置き、開業18年の著者が「鼻垂れ小僧」ならば、どこまでやれば『経験豊富』の境地に立てるのか。

司法書士も同じで、毎年法律が変わって、毎年新しい制度ができて、そんな中、結局は「人」を相手にするお仕事なので、どこまでいっても「これで十分」と思えることはない。そう考えてやっています。

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