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2024年11月19日 (火)

「任意後見契約」or「必要になった時に補助の申立」【成年後見】

Pxl_20241118_075252131公証人の先生に、施設まで出張してもらい、遺言書と死後事務委任契約。それと、見守り契約をしました。

本来であれば、ここに「任意後見契約」もセットで入れるべきところですが、「絶対に後見人が必要」という環境にはおられないこと。見守り契約を入れてあるので、もし必要になれば、本人申立てという形で、一番軽い「補助」の申立てをお勧めすればいいのでは、という考えもあります。

「今のうちに、司法書士と任意後見契約をしておきますか。それとも、必要が生じた時に、裁判所で後見人を選ぶ申立てをしますか」という選択は、素人の方には、とても難しい話になります。選択に必要な要素が、多過ぎるためです。

「本人申立で補助」という選択は、例えば、突然の脳梗塞で起きられなくなった、という事態には対応できません。

任意後見契約を発効させるには、ご本人が認知症になられた時に、裁判所に任意後見監督人の選任申し立てが必要になります。結局、裁判所の手続きを踏まないといけない。ご本人の同意も必要です。

法定後見制度で「司法書士に後見人を頼みたい」と言ったら、監督人が必須ではないのに、任意後見だと監督人が必須(=監督人の報酬も必要)、というのは、制度上の不備。バランスを欠いている気がします。

それと、「頼みたいことを、自由に選べる」のが任意後見のメリットとされていますが、私が6年前に締結させてもらった任意後見契約では、「マイナンバーに関する諸手続き」が抜けてしまっています。必要なことは、時代の流れ、その時の環境によっても、変わってきます。

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2024年10月29日 (火)

遺言執行者からの相続登記の可否は内容と作成時期による【不動産登記】

Pxl_20241029_073411426 遺言執行者である他士業の先生から、「遺言執行者から相続登記ができるようになったんですよね~」と、確かにそういう改正があったなと、一旦は委任状も預かってしまったものの、

遺言執行者から相続登記ができるのは、『特定財産承継遺言』と呼ばれる内容=「特定の不動産を、特定の相続人に相続させるもの」に限られると、後で気付くことに。

遺言書の内容にも注意、遺言書の作成時期(改正法の施行日は、令和元年7月1日)にも注意、ということになります。

但し、司法書士として、登記名義人となる、当該相続人の意思を確認しないまま、遺言執行者が単独で相続登記ができてしまうことに、気持ちの悪さは感じていました。

いわゆる「負動産」の問題が深刻な昨今、

例えばの話、仲の悪い子A・子Bがいて、子Aが遺言者父と結託して、要らない「負動産」を、子Bに相続させる遺言書を作成してもらった。遺言執行者になっている子Aは、子Bの知らないうちに、「負動産」について子B名義の相続登記を申請した。

法律の理屈と人の感覚は違うので、司法書士が、遺言執行者である子Aの代理でB名義の相続登記の申請をしていたら、子Bからクレームを受けることになるのは確実です。

下記コラムでは、遺贈と相続の登記申請の方法について、令和元年と令和5年の改正点も踏まえて、まとめています。

◎リンク 堺市の司法書士吉田事務所 コラム118「遺贈」の登記と「相続」の登記の違い

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2024年10月28日 (月)

後見開始の審判と役所での印鑑登録の話【成年後見】

Pxl_20240612_232128870-1被保佐人さんの印鑑登録に一緒に行って、その間にと、他の用事を済ませて市民課に戻ると、「後見人 登録抹消」と書かれた書類を持って、係の方が近付いて来られました。

うっかりしていました。

元々、後見の審判を受けてから、保佐に変更されたので(手続き的には、保佐の開始と後見の終了)、現状、印鑑登録をするのに問題がない、と考えていたものの、市民課には「後見が始まって、印鑑登録が廃止された」という情報しかない状態でした。

保佐人の登記事項証明書と、私の運転免許証のコピーも取られて、改めて手続き。登録の戻し方が分からないということで、しばらく待ちました。

ちなみに、後見開始の審判と同時に、印鑑登録が抹消されるのは今も同じですが、令和2年から、後見開始の審判を受けた方でも、印鑑登録ができるようになっています。

「被後見人さん本人と、後見人が一緒に役所に出向く」などの要件がありますが、被後見人さんの印鑑登録をするとしたら、遺言書を作る場面など、限られた機会になりそうです。

但し、被後見人さんの遺言書作成については、民法で制限がかかっているので(医師2名以上の立ち合い)、私自身は、試みた経験はありませんが、あり得る話だと考えています。

◎リンク 堺市の司法書士吉田事務所 後見サイト「後見」⇔「保佐」の類型変更

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2024年10月18日 (金)

年齢差は「マイナス20」した上で考える

Pxl_20241018_075137665「遺言執行者はご家族にされますか、それとも私がお受けしましょうか」。

しかし、私が何歳まで司法書士を続けられるのかを考えると、「マイナス20」をした上で年齢差を考えないといけない、と考えています。

お客様が100歳まで生きられるとすると、私は80歳。
80歳の私が生きていたとしても、司法書士をしていなければ意味がない、ということです。

早いです。私が司法書士としての「終わり」を意識しないといけない年齢になっている、とは。。。

ご迷惑をお掛けするリスクを減らすため、最近は、事務所の司法書士と連名でお受けするようにしていますが、それで「年齢差」の溝が埋まるわけではありません。

「先生が元気でいてもらわないと困る」と言われることも増えています。「あなたが居なくても誰かがする」のが世の中ですが、自分が抱えているのは家族とスタッフだけではない、という意識は持っています。

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2024年9月 5日 (木)

「いつもの先生」にお願いしたい理由【遺言公正証書の作成】

Pxl_20240905_021445646堺公証役場に、公正証書遺言作成のため、証人として参加。

堺の公証役場。公証人の先生や事務員さんとのやり取りが、安定しています。私の事務所が「圧倒的に堺の公証役場が近い」という理由はあるにしても、「いつもの先生」を選ぶ理由がある、ということです。

続いて、堺市の北区役所で、被後見人さんの住所異動の手続き。北区役所でも、市民課で処理してもらっている間に、後期高齢者医療保険と介護保険の係を回ります。堺市の場合、介護保険証と負担割合証は、手書きで住所を修正。

大阪市だと、市民課での住所異動の処理が終わらないと、他の係を回らせてもらえないので、どう考えても「市民課で処理している間に回って下さい」が効率的。市民課に戻ると、もう住民票が発行されていました。

続いて、遺言書作成と死後事務委任契約等の打ち合わせ。任意後見契約はありませんが、見守り契約も組み込ませてもらう予定です。

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2024年4月25日 (木)

遺言公正証書の正本や謄本に『印』と印字されている理由【遺言書の作成】

20240424_142655145遺言公正証書の作成。

公証役場に保管される遺言書の原本に、遺言者本人と証人2名の署名捺印し、原本はそのまま公証役場で保存。したがって、遺言書の原本が紛失したり、滅失する心配はない、というのが、ひとつのメリットです。

たいてい、公証人は説明されます。

「みなさんが印鑑を押された原本は、公証役場で保管します。お渡しする正本と謄本には、『印』という文字が印字されていますが、これは、原本に印鑑を押しているという意味です。だから、正本と謄本に印鑑が押されてなくても、問題はありません」。

ところが、やっぱり気になられて、「これでいいんですか」と、電話して来られてくることもあります。

『印』と印字されてあると、「そこに印鑑を押さないといけない→押し忘れている?」という心理になられるのが、自然です。

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2024年2月23日 (金)

遺言書には「予備的な条項」を入れることを検討【遺言書作成】

20240223_143336924公正証書で遺言書を作られている場合でも、

夫は「妻に全てを相続させる」旨の遺言
妻は「夫に全てを相続させる」旨の遺言

ご自身で公証役場に出向いて遺言書を作られた場合、ここで止まられていることも多いです。

しかし、この内容だけでは「どちらかが先に亡くなる」可能性を考えられていません。せっかくの遺言書が使えず、相続手続きが大変になった…ようなこともありました。

もっとも、「後に残った夫婦の一方は、その兄弟姉妹・甥姪に法定相続分で相続させるもの」と、意図して作成されたのであれば、この遺言書だけで十分となります。

職業柄、遺言書の不備が生じることを理解している私自身、「とりあえず」の遺言書は、法務局に保管してあるものの、亡くなる順番によっては、「相続人不存在」に陥るリスクがあります。身近な親族に受け取ってもらう遺言書を残しておく方法、亡くなる順番が何パターンもあるとすると、なかなか難しいもの。

予備的な条項を入れた遺言、予備的遺言も検討しましょう。

◎リンク 堺市の司法書士吉田事務所コラム016「万が一を考えた予備的遺言」

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2023年12月17日 (日)

死因贈与契約をしている受贈者が先に亡くなったら?【死因贈与】

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月額制で、大量の専門書を閲覧できる「リーガルライブラリー」を契約した話は、12月3日に書きました。

今回、「死因贈与契約をしている中、受贈者のほうが先に亡くなったら、死因贈与契約はどうなるのか」を調べたかったところ、キーワードで横断的に検索できる「リーガルライブラリー」が威力を発揮。

『第3版 家庭裁判所における遺産分割・遺留分の実務』では、「受遺者が贈与者の死亡前に死亡したときは、効力を生じない旨(民994条)は準用される(P466から引用)」とありますが、手元にある「初版」にはその記載自体がなさそう。

手元にある本が最新版とは限らないので、「本を持ってるから、データーで見る必要はない」という結論にはならない、ということです。

ちなみに、この本の記述だけでは不十分で、『我妻・有泉コンメンタール民法』では、「判例は(中略)民法994条を死因贈与に準用することを否定している(P1195)」と、真逆のことを書かれています。

「準用否定説と肯定説があって、準用肯定説が通説(『死因贈与の法律と実務』P64)」と、判決の概要も含めて、丁寧に説明されている書籍もあります。

死因贈与に限りません。1冊の専門書に書かれていることを鵜呑みにし、業務に取り込むのは不十分、という結論であればまだいいですが、「両説ある」ことを知っていないと、顧客に迷惑を掛けてしまいかねない、という部分は恐いところです。

◎コラム 堺市の司法書士吉田事務所コラム12「不動産の死因贈与は『公正証書』かつ『執行者の定めあり』で」

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2023年12月14日 (木)

自筆証書遺言検認に必要な収入印紙は800円+150円【遺言書検認】

20231214_110300529自筆証書遺言の検認期日。司法書士のささやかな役割として、「収入印紙150円分をお持ちする」ことを心掛けています。

検認済証明書の手数料150円分の収入印紙は、いわゆる予納ではなく、当日持参。

裁判所から、申立人に送られる案内には「150円分をご持参ください」と書かれてはありますが、一般の方は、なかなか収入印紙を買われる習慣がありません。

先日、ドラマ『うちの弁護士は手がかかる』で、「収入印紙代800円をどちらが負担するか」で検認期日に相続人が揉める、というシーンがありましたが、司法書士としては「150円のこともあるよ」と思いながら見ていました。

検認済証明書は、少し待っていれば遺言書に合綴し、裁判所が割印を押して返してくれます。

今日は、検認済証明書を付けてもらった遺言書を持って、申立人の方と共に、区役所の窓口に移動。

「公証役場で離婚公正証書を作った足で、区役所の戸籍係に」というのは、よくある話ですが、はじめての例です。

◎リンク 堺市の司法書士吉田事務所相続サイト「自筆証書遺言の作成」

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2023年9月28日 (木)

人生100年時代「将来の備えに司法書士の活用を」

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八尾から堺東に移動するのに、ナビで、阪神高速大和川線に誘導されました。「鉄砲」出口を出ると、ちょうど「イオンモール堺鉄砲町」のところ。

このまま湾岸線に乗って神戸に行けるとなれば、地下を走っているため、目立たないものの、何気に便利な大和川線です。

さて、相続の手続き、施設責任者の方が手伝っておられる、というお話を聞いて、SOSに入りました。今日の行き先は年金事務所だったので、私もボランティアの運転手です。

施設さんによっては、入所者を審査で選ばれている所もあれば、身寄りのない方を、身元引受人がいないまま、入所を了解されている、ということもあります。後者の施設さんのほうが、マンパワーで何でも手伝っておられる傾向。

亡くなられた後に、部屋に残された通帳が宙ぶらりんというのは、間違いなくマズい状態なので、まずは遺言書で遺言執行者を指定しておくことを含めて、死後事務に困らないようにすること。それに加えて、必要があるならば、後見制度の利用も検討。

今は困られていなくても、将来困らないようにするために、というご相談が増えているのは、事務所的には良い傾向です。

◎リンク 堺市の司法書士吉田事務所コラム016「万が一を考えた予備的遺言」

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