2020/04/03
阿部 亮 他 「農学基礎セミナー 新版家畜飼育の基礎」
農山漁村文化協会(2008年刊)
第1章 畜産の役割と動向1 人間生活と畜産
家畜とは、たんに人間に飼い慣らされた動物ではなく、人間生活に有用な価値をもたらす動物である。そのため、動物の家畜化の過程あるいは家畜化ののちに、経済的価値や有用性を高める改良が行われている。
2 日本畜産の特徴と動向
経営の大規模化
生産水準の向上
飼料自給率の低下(わずか10%)
環境問題の深刻化(糞尿の発生量の増加)
環境保全型農業の手法が検討され始めている
産直・直売の増加
農産物に対する消費者の安全性指向を背景として、農業生産現場と都市の消費者を直接結ぶ産直(産地直結販売)が増加している。消費生活協同組合など特定の需用者を対象に、農家自らが生産・加工し、付加価値を付けた牛肉、豚肉、鶏肉、卵、牛乳、乳製品を直接販売する方式である。
生産者側にとって産直のメリットは、
①安定した供給先を確保できる
②一般的には受容のない部位でも付加価値をつけて販売できる
③消費者と直接対話ができ、消費者のニーズを知ることができる
消費者側のメリットは、
①流通段階を簡素化しているため価格が安くなる
②生産者の顔が見え、安心感がもてる
さらに、生産された畜産物を消費者に直接販売する直売の取り組みも増加している。
有機畜産物の生産
安全な食糧を求める方向のひとつとして、有機畜産物がある。有機畜産物として認定されるための生産条件として、家畜の行動、給与飼料、衛生管理、飼育方法、畜舎、放牧地、飼育記録などに一定の条件があり、そのすべての条件を満たすことが必要となる。
現在、議論されている有機畜産物の生産条件の特徴は、抗生物質の使用禁止など、たんに食の安全性に対する配慮ばかりでなく、動物の福祉にも配慮していることである。
第2章 家畜の生理・生態と飼育環境1 家畜の生理・生体と飼料
1 家畜の栄養と飼料
家畜は胃の構造によって、単胃動物と反芻動物に大別される。
ニワトリは歯がないが、食道にそのうが発達し、筋胃と呼ばれる胃袋にはグリット(小石)や砂をたくわえていて、食べた飼料を強い力ですりつぶして消化をうながす。
2 飼料の種類・性質と給与の基本
家畜に飼料を給与する場合には、飼料の栄養素の含量を把握することが大切である。飼料の化学組成は祖タンパク質、祖脂肪、炭水化物、ビタミン、ミネラルとして表示される。
2 家畜の飼育環境とその調節
家畜の適温域
家畜の汗腺はウマがよく発達しており、次いでウシ、ヒツジ、ブタの順で、ニワトリには汗腺がない。呼吸に伴う放熱が盛んになり、高温時に呼吸数が60~100回を超えるものは熱性多呼吸(パンティング)とよび、汗腺の発達していないニワトリやブタでよく見られる。
ニワトリの適温域 採卵鶏 20~30℃
ブロイラー 15~25℃
太陽光線
太陽の光線は、健康の維持・増進の上で重要で、紫外線によって病原菌を殺す力が強く、ビタミンDの生成にも効果がある。特に育成期の家畜は、舎外に出して、十分な太陽光線のもとで自由に運動させ、丈夫な体をつくるように心がけなければならない。ニワトリでは太陽光に当てた場合と当てない場合とで、とさかの色や骨格の発達に差が現れる。また、ニワトリは、一日の明暗周期が、産卵率や卵重などに影響する。
3 家畜の繁殖と育種
4 家畜の糞尿処理と有効活用
第3章 飼料の生産と利用1 飼料作物の特徴、種類と利用
2 耕地型飼料作物の栽培と調整
3 草地の維持・管理
4 飼料作物の調整と貯蔵
5 食品残渣などの利用
第4章 家畜飼育の実際1 養鶏 ニワトリはキジ目キジ科ニワトリ属
1 ニワトリの体の特徴
皮膚は薄く汗腺がない。
くちばしが発達しているが歯はない。
目は大きく視野は広い
雄の足にはけづめが発達している。
尾の付け根には尾腺が発達し、耐水性に富んだ物 質を分泌し、これをくちばしで体に塗りつけ、羽 毛のぬれを防いでいる。
首は長く,自由に動き、くちばしはほとんど全身 に達し、羽毛のつくろいができる。
筋肉は、翼を動かすための胸筋と、ももの筋肉が 発達し、とくに胸筋は体重の約25%に達するといわれる。
2 ニワトリの習性と行動
ニワトリは身を守る有力な器官(武器)を持たないため、外敵に対する警戒心が強く、警戒の声を出して集団で行動する。
聴覚と視覚がすぐれ、情報の大部分を目から得ているといわれる。まわりのちょっとした変化や音に対しては敏感に反応する。
カンニバリズム
狭い場所や高温・多湿などの環境下で飼育されたり、栄養素が不足した飼料を給餌されたりすると、ニワトリはつつき合いを起こす。はなはだしいときは相手を殺してしまうこともあり、そのままにしておくと急激に群れ全体に広がることもある。
就巣性
改良によって、現在の実用種では就巣性がほとんど除去されている。
砂浴び
夏は涼しい日陰、冬は日の当たる暖かい所にすわり、あしで細かい土をはね上げて砂浴びをする。砂浴びは、体温を発散したり、皮膚についた寄生虫をはらい落としたりする、快適さを求める行動と考えられている。
3 ニワトリの一生
発育段階によって、幼びな、中びな、大びな、成鶏に分けられる。幼びな期は体温の調節機能が不十分で給温が必要である。中びな期には羽がほぼ生えそろい、骨格や筋肉が急速に発達する。大びな期には成羽に生えかわり、性成熟が進み、やがて初産をむかえる。
初産から1年くらいはよく産卵するが、その後月齢を経るにつれて産卵数が減少し、卵質も低下するため、採算のとれなくなった時点で新しいニワトリと入れ替えることが多い。経済的な寿命は、初産後、長くて2年程度と考えられる。ケージ飼育ではおよそ18ヶ月で新しいニワトリにかえるのが普通である。
ブロイラーの場合は、孵化後約8週間飼育して出荷されるので、その一生は非常に短い。
採卵鶏の飼育計画に当たっては、年間の鶏卵生産をどのくらいにし、労力をどのように配分するかが重要になる。まず、養鶏場全体の成鶏を何回に分けて導入するかを決める。専業養鶏の場合、導入は等間隔、同羽数がよい。また鶏舎ごと総入れ替えできれば理想的で、導入回数が多いほど年間を通して平均した生産ができる。
4 生産物の特徴と利用
殻つきの卵の一般的な卵重は55~64gで、その約10%が卵殻、約60%が卵白、約30%が卵黄である。
外卵殻膜と内卵殻膜の間にできる気室は、卵が卵管中にあるあいだはなく、放卵後の冷却や水分の蒸発によって内容が収縮してできる。
卵白は卵黄をとりまく内水様卵白と外側の外水様卵白の間にある濃厚卵白の三層からなる。
1 ニワトリの品種と改良
ニワトリの祖先は現在もインドから東南アジアにかけて生息している赤色野鶏といわれる。
採卵養鶏が産業としておこなわれるようになったのは明治時代になってからである。
昭和40年代以降には、大羽数の企業的な養鶏が主体になってきたが、鶏卵の消費はほぼ限界となり、飼養個数は減少した。
主なニワトリの品種の特性
【卵用種】
・白色レグホーン種:原産地 イタリア
動作は活発で軽快、やや神経過敏、早熟で体質強健、就巣性はない。初産日齢約150日、
卵重57~63g、初年度の産卵数240~280個
【卵肉兼用種】
・黄斑プリマスロック種:原産地 アメリカ合衆国
羽色は黒色と白色の細かい黄斑。とさかは単冠。くちばし、あしは黄色。卵殻は褐色。
性質温順。体質強健。就巣性はほとんどない。初産日齢180~200日。卵重56~60g。
初年度の産卵数200~250個。
・名古屋種:原産地 日本
羽色は淡黄褐色。とさかは単冠。
くちばしは黄色。足は鉛色。皮膚は灰色。
卵殻は褐色。性質温順。体質は非常に強健。
元来就巣性が強いが、改良されたものは就巣性がない。初産日齢160~170日。平均卵重55g
初年度の産卵数245~270個。
【愛玩用種】
・容姿の鑑賞用・・・長尾鶏、ちゃぼ、比内鶏、烏骨鶏
・鳴き声の鑑賞用・・・東天紅、声良(こえよし)
・闘鶏用 ・・・・・・・しゃも、薩摩鶏
2 飼育形態と施設・設備
平飼い:ニワトリ本来の生活にあった飼育方法と言えるが、ニワトリ同士の争いが多くなり、糞から伝染する病気に感染することも多くなる。大羽数の飼育には適さない。
ケージ飼育:1つのケージに1羽ずつ入れて飼育する単飼と2羽以上入れる複飼がある。土や糞から離れているので、糞から伝染する病気に感染することは少ない。飼育密度を高くでき有利な反面、健康への悪影響やニワトリ同士の争いが起こりやすく、傷卵の発生も多くなる。
3 ニワトリの栄養と飼料
ニワトリは、タンパク質、脂肪、炭水化物、ビタミン、無機質などの栄養素を飼料から摂取し、体の成長、維持や卵の生産に使っている。飼育に必要な栄養素の量を示したものが日本飼養標準である。
消化器の特徴と機能
・くちばし:先端が角質化してかたく、穀物の実や虫類をつついたり、ついばんだり、より分けたりするのに適した形をしている。
・そのう :飼料を一時蓄える働きを持ち、水の他、口腔咽頭部や食道からの粘液で飼料をふやかして、やわらかくする。
・胃 :腺胃と筋胃がある。腺胃は胃酸と消化液を分泌する。筋胃は両凸レンズ状の形をして、強い筋肉の収縮運動で飼料をすりつぶし、かくはんする。放し飼いのニワトリは、小石(グリッド)や砂を拾い食いして筋胃の中に蓄えておき、これを使って飼料をすりつぶす。
・腸 :摂取された飼料は、主に小腸で消化・吸収される。小腸は他の家畜に比べて長さ・容積ともに小さい。一対の盲腸があり、末端部は泌尿生殖管と一緒に総排泄腔となっている。不消化物は総排泄腔で尿と一緒に排泄される。
飼料の種類と特徴
・穀類 :トウモロコシは養鶏用飼料原料として最も重要なものである。黄色の品種では、キサントフィルやカロテンを含み、卵黄やブロイラーの皮膚の色に関係する。ついでグレインソルガム(マイロ)が多く用いられる。その他コムギ、オオムギ、米などが補助的に用いられる。
・植物油粕:タンパク源として用いられる。大豆粕は必須アミノ酸のメチオニンが不足しているので、魚粉と組み合わせて用いられる。そのほか、綿実やなたねの油粕などが使われる。
・ぬか類 :エネルギーの調節と微量栄養素を補給するため、穀類と植物油粕に加えて古くから用いられている。脱脂米ぬかは、米ぬかから油を抽出したもので、ぬか類の中ではもっとも栄養に富んでいる。(フスマも多く利用されている)
・動物性タンパク資源:魚粉はアミノ酸組成が良く、とくにリジンとメチオニンが豊富で、飼料原料として欠かせない。
・その他の飼料原料:
アルファルファ・ミールは緑じとして各種ビタミンやキサントフィルを含むのでよく利用される。青菜、牧草、野草なども、身近な飼料原料である。
卵用鶏はカルシウム、リンを多く必要とするので、カキ殻、炭酸カルシウム、リン酸カルシウムなどが無機質飼料として利用される。また、食塩は必ず与える。
・自給飼料の利用
飼料費は生産費の中でも最も高い割合をしめるので、できるかぎり自家生産物や野菜くずを利用して、飼料費の節約に努めることが重要である。
卵や肉の直接販売をしている経営では、自給飼料を利用して、特色ある鶏卵や鶏肉を生産している例もある。
飼料の配合方法
飼料原料そのもので単体飼料ともいう。2種類以上の飼料原料を一定の割合で配合したものを配合飼料という。
① 飼養標準によりニワトリが必要とするCP(粗タンパク質)とME(代謝エネルギー)を決定する。
② 入手可能な単味飼料でCP、MEを満たす配合割合を計算する。なお、あとでカルシウム剤、食塩やビタミン剤などを7%くらい加えるので、配合割合の合計は90%ていどとしておく。
③ 飼料成分表で単味飼料のCP,ME含量に配合割合を掛け、CP、MEの含量を求める。
④ 各単味飼料のCP,ME量を合計し、全体のCP、ME量の含量を求める。
⑤ 必要とするCP,ME量と比較してそれに近づくように単味飼料の配合割合を修正し、②~④を繰り返す。
4 種卵の採取と孵化
1 種卵の採取
種卵(受精卵)は、平飼いでは自然に交尾が行われ、雄一羽に対して雌10~15を配する。ケージ飼育では人工授精を行う。種卵は後尾後3日目頃から産卵され、1回の受精で約10日間産卵される。
種卵は、形が正常で、大きさが54~65gのきれいなものを選択する。消毒をして鈍端を上にして、温度15~20℃、湿度40~70%の場所に貯卵する。貯卵期間は1週間以内がよく、その後は、し だいに孵化率が低下する。
2 孵化
種卵に一定の温度(37.8℃)と湿度(60%)を与えると胚が発育する。まず、胚盤が大きくなり、神経や血管が形成される。づづいて、骨格、脳、呼吸器、循環器などが形成され、21日目に鈍端に近い卵殻をくちばしの先(破殻歯)で破り、頭部とあしで卵殻を押し破り孵化する。
孵化前の作業:使用前に、孵卵器は清掃、水洗、消毒をし、温・湿度調節器は点検をしておく。種卵は逆性石けん液、フェノール系消毒剤などで消毒をする。
孵化中の管理:種卵を卵座またはトレイの上に鈍端を上に並べ、品種や系統がわかるように印をつけて孵化を開始する。発育中の胚が卵殻膜に癒着しな いように、ときどき卵の位置を変える(転卵という)。転卵は、入卵の翌日から入卵後18日目まで、1日10~20回行う。
検卵 :無精卵や発育を中止するものは取り除く必要がある。この作業を検卵とい、入卵後7日目に行う場合が多い。検卵は暗い部屋で電光検卵器で卵の鈍端に光を当てて、卵内部の様子を検査する。
正常に発育しているものには血管が伸びている様子が見える。発育中止卵は血管の伸びが止まっている。無精卵は中央部に卵黄の影が見えるだけである。
初生びなの雌雄鑑別
ひなの総排泄腔を反転展開させて、雌雄を見分ける方法である。この方法は高度な技術の習得が必要で、専門の技術者が従事している。
羽毛鑑別法
羽毛やあしの色、主翼羽の成長速度の差によって雌雄を区別する方法で,現在広く行われている。
5 ひなの生理と育雛
育雛では、雛にとって最適な環境条件をつくり、丈夫に育てることが管理の基本である。同時に、病気の発生予防のため、ワクチン接種などの衛生管理も計画的に実施することが大切である。
・箱型育雛器による方法
箱型育雛器は、木製の箱に温源部を付けた最も初歩的な設備である。50~100羽程度を育雛するのに適している。
・バタリー育雛法
バタリー育雛器は場所を取らず比較的大羽数のひなの育雛に適した設備で、温源部と床が金網でできた飼育かごを積み重ねたものである。
・平飼い育雛法
室内の床の上で育雛する方法で、床やゲージの下に通した温水パイプで加温したり、温風で育雛舎全体を暖房したりする。
発育段階と育雛のポイント
・幼びな期(4週齢まで)
孵化したばかりの初生びなは、全身が柔らかい初生羽におおわれているが、体温の調節機能が十分になく、ひなの羽毛も保温力に乏しいので、育雛器内で加温して育てる。
・中びな期(4~10週齢まで)
食欲が旺盛で、筋肉や骨格が発達する時期である。この時期以降は適切な栄養を与え、十分な運動をさせて体を充実させることが大切である。
・大びな期(10週齢~初産まで)
徐々に環境への適応力を付けることが大切になる時期である。120~130日齢頃には性成熟が進み、成羽への換羽とともに、とさかも伸びて鮮紅色になる。
幼びな期の管理
・温湿度管理
育雛器の温度は33~35℃ にし、冬季には4週間、その他の季節は3~4週間で23℃程度まで下げるのが基本である。
温度の調整は、ひなの様子を見ながら行う。ひなが温源部から離れて寝ていれば温度は高すぎるし、温源部の近くに集まっていれば低すぎる。
また、育雛初期の約1週間は湿度が不足しやすいので、湿度計で50~70%の湿度になるように管理する。なお、保温にばかり気を取られて換気を怠ると、病気にかかりやすくなるので注意する。
育雛器の給温を止めるには、1度に行わず2~3日間夜間だけ給温して外気になれさせるとよい。
・えづけ
えづけの時間は、ひなの体内に残っている卵黄が大部分消化されたころがよく、孵化後25~60時間がめやすである。はじめは皿状の器、または新聞紙の上などにばらまいて与える。最初の1週間はひなにえさや飲み水の場所がわかるように電灯をつけておく。
・断嘴(し) 10日齢から14日齢のあいだに断嘴を行う。
中びな・大びな期の管理
・ひなの移動と飼料の切り替え
糞の排泄量も多くなり、放置しておくとアンモニアなどの有毒ガスが発生するので、週に1回は除フンする。早熟なものは130日齢ころから産卵を始めるので、その前に成鶏舎に移動する。
・光線管理
この時期に鶏舎に電灯をつけて照明時間(日長時間+照明時間)を加減する光線管理を行う。これは、ひなの時期に、明るい時間が短いとおそく、長いと早まる性成熟を調整するためで、解放鶏舎では、以下のような光線管理が行われている。明るさはニワトリの位置で5~10ルクス程度(新聞の文字が読める程度の明るさ)で、成鶏期以降は照明時間を短縮しないのがよい。
【4月びなに対する点灯例】
140日齢になる9月に点灯を始め、15時間の照明時間になるように翌年5月まで点灯する。
また、飼育するニワトリの標準発育体重に近づけることで良好な産卵成績が得られることが多い。そのため標準発育体重をこえたときには飼料給与量を制限する方法がとられる。
6 採卵鶏の生理と飼育技術
採卵鶏は、一般的には18週前後で産卵を開始し、その後2~4ヶ月間が産卵数が最も多く、徐々に低下する。
ウシやブタでは卵巣が左右1対あるが、ニワトリでは左側のものだけが発達する。産卵を開始したニワトリの卵巣には直径が1~35mmくらいまでのさまざまな発育段階にある卵胞が存在する。
卵胞が発育し、最も大きくなると外側の膜が破れ、卵子(卵黄)が排卵され漏斗部から卵管に入る。この卵黄は卵白がぼう大部で、卵殻膜が峡部で、卵殻が子宮部で形成され、総排泄腔から放卵される。排卵から次の排卵までは25~26時間といわれる。
産卵とホルモン
卵の形成から放卵までには、下垂体から分泌される性腺刺激ホルモンと、卵巣から分泌される卵胞ホルモンとが関係する。性腺刺激ホルモンは卵胞に卵黄物質の蓄積を促し、卵胞ホルモンは肝臓の卵黄物質の生産を促進する。また、放卵には下垂体後葉から分泌されるホルモンが関係している。
産卵周期
ニワトリの産卵は数日間産卵を続けた後に1日(または2,3日間)休産し、ふたたび数日間産卵を続けるという周期性を示す。このような周期を産卵周期といい、連続した一連の産卵をクラッチとよんでいる。
産卵の季節変化
ニワトリは日長が長い季節によく産卵し、自然日長のもとでは、産卵は春季に高く、秋季に低くなる。このため産卵パターンは、孵化の季節によって異なり、春と秋、冬と夏に孵化したひなでは対照的な産卵パターンを示す。なお、産卵に適する気温は12~25℃といわれている。
成鶏期の管理
・飼料給餌、給水
成鶏期の飼料は、ふつう1日分を朝と夕方に分けて、ニワトリの様子、飼料の食べぐあいを観察しながら与える。
産卵初期には成長しながら産卵が急激に増えるため、高タンパク飼料を給与し、産卵や成長の程度に応じて産卵中期(およそ40~60週齢)、後期(およそ60週齢以降)にかけて粗タンパク質水準を下げていく給与方法が行われている。産卵調査に当たっては、群(あるいは鶏舎)ごとにその日の産卵個数と重量を測定する。同時にへい死やとうた鶏を記録し、月、年単位でまとめる。飼料は投入のつど、重量を記録する。
新鮮な水はいつでも飲めるようにし、夏季は切らさないよう、冬季は凍結させないように心がける。
・集卵、清掃
産卵は午前中にほぼ終わるので、ふつう午後に集卵する。除ふんは1週間に1~2回行い、鶏舎内を清潔に保つようにする。とくに春から秋にかけてハエの多発する季節には、できるだけこまめに除ふんする。
・環境管理
鶏舎内の環境(温度や湿度)を記録する。なお、湿度の影響は他の家畜ほど大きくない。
・夏季の管理
ニワトリは暑いときには翼を広げ、口を開けて激しくあえぎ(パンティング)体温を放散させる。また、盛んに水を飲み、ふんは水様便となる。30℃以上になると産卵に影響するといわれる。夏季には以下のような点に注意して管理する。
① 鶏舎内の通風をよくする。場合によっては、送風機で風を当てる。
② 樹木などで日陰を作り直射日光を避ける。
③ 屋根に白いペンキを塗って太陽熱を反射させたり、鶏舎内に水を噴霧したりすることも、温度を下げるのに効果的である。
・冬季の管理
ニワトリは寒いときには、体を丸め熱が逃げないように羽毛を逆立てる。寒くなると飼料摂取量が増えるが、産卵率は低下する。防風垣をつくったり、カーテンを張ったりして鶏舎内に寒風が吹き込まないようにする。
・だ鶏の淘汰
日常の管理の中で発見して淘汰する。
・だ鶏の見分け方
・飼料の食い込みが悪い
・ふんの量が少ない。緑・黄・肉色のふんをするものは病鶏
・たびたび飲水し、ときに水をもどすものは病鶏
・動作が鈍いものは病鶏
・昼でも目を閉じていることが多いものは病鶏
・換羽を早く始めるものはだ鶏
・とさかが小さく、光沢のないものは休産中
・くちばしが細く長いものはだ鶏
・目や鼻がぬれて汚れているものは病鶏
・くちばし、耳だ、あし、肛門部が黄色のものは休産して日が経過している鶏
・腹部が膨満しているものは腹水症
・腹部が厚く硬く感じるのはだ鶏(脂肪鶏)
・腹部がぺちゃんこで弾力のないものは病鶏
・恥骨の間がせまいものは休産中またはだ鶏
・腹部の卵が感触できるものは病鶏(卵墜)
(多産鶏の腹部は、弾力があって、ゴムまりに触れる感じで、産卵直前にはやや張ってくるが、卵を外部から感触することはない)
・強制換羽
初産から1年くらいたつと、産卵が減少し、卵殻も薄くなって卵質が低下し、自然に換羽するニワトリが増えてくる。自然換羽に先立って人工的に換羽を起こさせると、卵殻質を改善し、採卵期間を延長することができる。この方法を強制換羽という。(サルモネラ感染症にかかりやすくなることもある)
一般的な方法として、60週齢前後に、夏季は1 0~14日間、冬季は7~10日間絶食させ、同時に点灯を中止する。絶食期間が終わったら、飼料を数日かけて徐々に増やして与える。
絶食開始から1~2日で休産し、30~40日で50%程度の産卵を再開する。点灯は30日後に再開する。
・鶏卵の品質
形が正常で、汚れがなく、卵殻は適度になめらかで丈夫であり、びびわれがないもの、卵を割ったとき、濃厚卵白が高く盛り上がり、血液、肉はんなどの混入が見られないものがよい卵である。
最近では、消費者への直接販売も増えているが、その場合には、
① 飼育方法や飼料配合を工夫して高品質な卵を生産する。
② 鶏舎を常に清潔に保ち、清潔な新鮮卵を販売する。
③ 鶏卵について正しい情報を提供する、などの点にも十分留意する必要がある。
・品質を決める要因
鶏卵の品質は遺伝的な要因、飼料、季節、鶏の日齢および飼育環境などの影響を受ける。
【卵殻】主として炭酸カルシウムでできており、緻密で厚いほど強く、薄く弱いと破卵や傷卵が多くなり、商品価値が著しく低下する。
【卵白】水様の水溶性卵白と濃厚卵白とがある。濃厚卵白は高く盛り上がっているほどよい。濃厚卵白の盛り上がりは、貯蔵日数の経過にともなって低下していくので、鮮度の目安になる。
【卵黄】黄色の色素は飼料中のトウモロコシ、緑餌に含まれる色素が移行したものである。卵黄は弾力があって、丸く盛り上がっているほどよい。
7 ニワトリの衛生と病気
病原体の侵入を防止する
病原体に汚染されていないひなを導入することはもちろん、外部で汚染される可能性の高い卵の輸送箱や出荷用のケージは消毒してから使用し、出入りする車も消毒する。また、部外者の立ち入りを制限し、立ち入る場合は手足を消毒し、消毒済みの衣服と着替える。
ワクチン・予防薬の使用
ニューカッスル病、鶏痘、マレック病などにはワクチン接種が有効で、それぞれのワクチンについて接種プログラムを忠実に実行する。
主な病気の特徴とその対策
【家禽サルモネラ感染症】
【ニューカッスル病】(法定伝染病)
【高病原性鶏インフルエンザ】(法定伝染病)
【鶏痘】
【鶏伝染性気管支炎】
【鶏伝染性喉頭気管円】
【鶏リンパ性白血病】
【マレック病】
【マイコプラズマ感染症】
【鶏ロイコチトゾーン症】
【鶏コクシジウム症】
【腹水症】
2 養豚
3 酪農
4 肉牛
5 ウマ
6 ヤギ
7 ヒツジ
8 ダチョウ
平成22年12月