私の闇の奥

藤永茂訳コンラッド著『闇の奥』の解説から始まりました

調査報道

2011-10-10 21:31:10 | æ—¥è¨˜ãƒ»ã‚¨ãƒƒã‚»ã‚¤ãƒ»ã‚³ãƒ©ãƒ 
  先週のブログ『ハイチのコレラ禍(2)』に、「おにうちぎ」さんから、私のブログを一種の調査報道のように読んでいるというコメントを頂きました。私は現場に足を運ばず、当事者のインタヴューも行なわず、ただ椅子に座ってインターネットに全面的に頼っていますが、出来るものならば本当の調査報道をやりたいと思う事柄が国内国外に山ほどあります。高い志を掲げる若いジャーナリストたちが,下劣な週刊誌的ねたに引き回されることなく、取り上げるに値する事柄を熱く報道して下さることを念じてやみません。例えばハイチという“小さい”窓から見えて来るアメリカというシステム(とりわけ現時点ではビル・クリントンという稀代のワルに象徴される)の巨大な残酷さを凝視してほしいものです。USA 本国の直ぐ南に位置する黒人国ハイチの目も当てられない悲惨は、USA がもたらしている完全な人災であります。マスメディアは殆ど報道しませんが、日本の外務省が海外旅行者のために国別で提供している「外務省海外安全ホームページ」にはハイチの悲惨きわまる現状が、国連治安維持部隊が何をしているかを含めて、生々しく描かれています。語るに落ちるということでしょう。その一部を下に引用しますから読んで下さい。(コピーがうまく行かなかったので読みづらい所がありますが):
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概況?(1)ハイチの治安情勢は、2010年1月12日に発生した震災後の復興の遅れ?にもかかわらず、国連ハイチ安定化ミッション(MINUSTAH)及びハイチ?国家警察(PNH)による治安維持活動が奏功し、現在のところ比較的落?ち着いています。しかし、主要都市では殺人等の凶悪事件は継続して発?生しており、震災の被災民の生活環境改善への期待と不満が募る中、銃?器へのアクセスが容易である当地において凶悪犯罪の危険性が増す可能?性は依然として高いと言えます。??(2)首都ポルトープランス市及び地方都市においては、反政府デモや、生?活環境の改善又はMINUSTAHの撤退を求めるデモが頻発し、デモが過激化?した際には、ハイチ国家警察(PNH)及びMINUSTAHが出動し鎮圧すると?いった事案も発生しています。一般市民においても銃器による流れ弾・?催涙弾・投石・暴力行為などによる被害が発生しています。また、特に?ポルトープランス市のシャン・ド・マルス広場周辺においては首都圏で?発生したデモ隊行進の終着点となる可能性が高く、首都圏から地方へ向?かう主要道路の交差地点であることから、占拠された際は一時的に都市?機能が麻痺してしまう危険性があります。??(3)首都圏には、首都ポルトープランス市に隣接しておりハイチ最大のス?ラム街といわれるシテ・ソレイユ地区のほか、ポルトープランス市のベ?ル・エール地区及びマルティッサン地区等の犯罪者集団の集結地帯があ?り、これらの地域で数多くの犯罪が発生しています。??(4)ハイチにおける殺人事件は「貧富の差」による嫉妬等、極めて短絡的?動機により発生しています。また、強盗事件については、多額の金銭を?保管している事務所が標的とされる傾向が強く、その手口は極めて強引?であり、その他に富裕層を狙った強盗殺人や、幅広い階層が被害者と?なっている誘拐事件も発生しています。??(5)ハイチでは、一般犯罪同様に交通安全事故防止対策が重要です。特に?地方へ向かう幹線道路は路面状況が悪い上、整備不良の車両がスピード?を出して走行しているため、大規模な交通事故に巻き込まれる可能性が?あります。また、首都圏内においても夜間・早朝はスピードを出して走?行する車両が多いため日常的にいたる所で交通事故が発生しています。??(6)ハイチでは、倒れた電柱・切れた電線などには高圧電流が流れている?場合があります。大変危険ですので決して近づかないように注意してく?ださい。また、固定電話について使用不能、若しくは復旧した場合でも?新たな番号が付与されていることがあり、震災前の電話番号が使用でき?ない場合があります。
1. ???2.地域情勢?(1)首都ポルトープランス市、首都圏のシテ・ソレイユ地区、地方都市?カップ・ハイシアン市、ポール・ドゥ・ペ市、ゴナイーヴ市及びジェレ?ミ市?  :「渡航の延期をお勧めします。」? 
(イ)ハイチにおいては、富裕層(外国人を含む)を狙った身代金目的の?誘拐事件が頻発しており、その多くが同地域で発生しています。? (ロ)ハイチ最大のスラム街といわれるシテ・ソレイユ市、ポルトープラ?ンス市ベル・エール地区及び同市マルティッッサン地区は犯罪者の集?結地帯となっており、殺人・強姦・強盗・誘拐等の数多くの犯罪が頻?発しています。また、同地域においては日中においても犯罪者等の掃?討作戦が実施されており、巻き込まれる危険性があるので、厳に立ち?入らないでください。? (ハ)歩行者の手荷物をオートバイに乗った犯人が後方から奪い取るひっ?たくりや、商店及び住居からの現金強奪等の盗難事件が多発していま?す。現金等の受渡しを拒否した場合などは、暴行事件や殺人事件にエ?スカレートすることもあります。
??(2)首都ポルトープランス市及びシテ・ソレイユを除く首都圏(デルマ市、?ペチョンビル市、タバール市、カルフール市、ケンスコフ市)?:「渡航の是非を検討してください。」?   ハイチ国家警察(PNH)及びMINUSTAHによる武装した組織犯罪集団の?掃討作戦と治安維持活動により、治安状況が改善・安定化しています。?ただし、震災後は大勢の外国人支援関係者が当地を訪れ、その支援関係?者が誘拐事件に遭う事案も発生していますので、引き続き注意が必要で?す。??(3)西県(ポルトープランス市、シテ・ソレイユ地区を含む上記首都圏を?除く)、グランダンス県(ジェレミ市を除く)、ニップ県、南県、?南東県、アルティボニット県(ゴナイーブ市を除く)、中央県、?北西県(ポール・ドゥ・ペ市を除く)、北県(カップ・ハイシアン市を?除く)、北東県?  :「渡航の是非を検討してください。」?   ハイチ国家警察(PNH)及びMINUSTAHによる武装した組織犯罪集団の?掃討作戦と治安維持活動により、治安状況が改善・安定化しています。?ただし、今後、情勢が変化する可能性もありますので、引き続き注意が?必要です。???3.滞在に当たっての注意?  上記のとおりハイチの治安情勢は一部では改善がみられるものの、依然?として不安定であることから、国内全域における移動、また陸路による国?境の移動は極めて危険なため、特に観光等の不要不急の渡航は厳に差し控?えるようお勧めします。このような治安情勢にもかかわらず、やむを得な?い事情でハイチ首都圏及びカップ・ハイシアン市、ポール・ドゥ・ペ市、? ゴナイーヴ市、ジェレミ市に渡航・滞在される方は、武装身辺警護員を付?ける等、十分な安全対策をとるようお勧めします。また、一般的に夜間外?出は危険ですが、特にハイチでは国連機関職員の外出禁止時間帯である平?日午前0時~午前5時、週末(金・土曜日)午前1時~午前5時には国家警察? 及びMINUSTAHによる犯罪者等の掃討作戦に巻き込まれる危険性があるの?で、外出は厳に控えてください。?(1)短期滞在者向け注意事項? (イ)上記情勢のとおり、「渡航の延期をお勧めします。」の危険情報が?発出されている地域への渡航は、目的いかんを問わず延期するよう強?くお勧めします。やむを得ない事情により同地域に渡航・滞在する場?合は、不測の事態に巻き込まれることのないよう最新の治安情報の入?手に努めるとともに、不要不急及び単独での外出は極力控え、自らの?安全確保に十分注意するよう心掛けてください。?やむを得ない理由で長期、短期にかかわらずハイチに渡航・滞在す?る際には、入国次第、緊急連絡先を必ず在ハイチ日本国大使館に連絡?してください。? (ロ)ハイチにおいては、度重なる政情不安、極めて高い失業率、諸物価?の高騰等に起因する治安の悪化は上記のとおり深刻です。やむを得な?い理由でハイチに渡航・滞在する場合は、必ず、渡航前に、十分な警?備対策が講じられている宿泊施設や交通手段を確保すると共に武装身?辺警護員の雇用をお勧めします。なお、同国到着後に宿泊施設等を確?保することは非常に困難です。? (ハ)空港では外国人渡航者を狙った犯罪が多いので、現地に知人等がい?る方は空港送迎を依頼してください。また、タクシー(空港指定業者?を含む)の台数そのものが少ない上、法外な金額を要求してきたり、?交渉後に別途料金を請求してくる場合も見受けられ、また車両の安全?性にも問題がありますので、タクシーの利用はお勧めできません。? (ニ)強盗・誘拐・殺人・強姦等の凶悪事件が日常化しています。特に誘?拐事件は、ターゲットや手口が多様化しており、被害者は富裕層のハ?イチ人や外国人に限らず、あらゆる階層にまで拡大しています。ま?た、誘拐事件は時間帯・性別・年齢を問わず発生していることから、?不要不急の外出や単独での外出は控える、スラム街には絶対近寄らな?い、日中であっても徒歩による移動は絶対に避ける、移動に際し武装?身辺警護員を付ける等、自らの安全確保に十分注意するよう心がけて?ください。誘拐から自分自身と家族の安全を守る心構えとして、「目?立たない」、「用心を怠らない」、「行動を予知されない」の三原則?を念頭に、日常における予防を忘れないでください。また、「移動時?間や経路を変更する」、「外出や帰宅時に、不審者や不審車両が見あ?たらないかチェックする」、「目的地から離れた場所に駐車しない」?等の注意が必要です。(詳細はホームページ「海外における誘拐対策?Q&A」( http://www.anzen.mofa.go.jp/pamph/pamph_04.html )を?参照してください。)? また、両替所や銀行への立ち寄り後に強盗事件が多発していますの?で、注意が必要です。? (ホ)スラム街は、一般のハイチ人でさえ近づかないので、絶対に近寄ら?ないよう注意してください。? (ヘ)日中であっても、徒歩による移動は誘拐等の犯罪に巻き込まれる危?険が高いので、避けてください。また、夜間は事件及び交通事故が多?発していますので、車両であっても外出は絶対に控えてください。特?に、駐車地点まで徒歩による移動中に誘拐されるケースが増えていま?すので、駐車場所には十分注意してください。? (ト)外出中に不測の事態が起きた場合は、速やかにホテルに戻り、事態?が収まるまで待機し、在ハイチ日本国大使館と連絡を取り合うように?してください。ホテルに戻れない場合には、近くのMINUSTAH要員又は?警官に助けを求めるようにしてください。? (チ)ハイチにおいては各県を結ぶ乗合バス及び船舶が存在しますが、整?備状況が劣悪なため、整備不良等に起因する交通事故及び沈没事故も?発生しており、その際の死傷者は数十人に達することも珍しくありま?せん。??(2)長期滞在者向けの注意事項? (イ)現地に3か月以上滞在される方は、緊急時の連絡等に必要となりま?すので、到着後遅滞なく在ハイチ日本国大使館に「在留届」を提出し?てください。また、住所その他の届け出事項に変更が生じたとき又は?ハイチを去る(一時的な旅行を除く。)ときは、必ずその旨を届け出?てください。なお、在留届は、在留届電子届出システム(ORRネッ?ト、 http://www.ezairyu.mofa.go.jp/ )による登録をお勧めしま?す。また、郵送、FAXによっても行うことができますので、在ハイチ?日本国大使館まで送付してください。? (ロ)90日以内の一般観光目的での滞在には査証取得の必要はありません?が、目的、期間に応じて滞在許可の取得、更新が必要となりますの?で、自身の目的に応じた手続きについてあらかじめ調査しておくこと?が必要です。? (ハ)不測の事態に巻き込まれることのないよう、最新の治安情報の入手?に努めるとともに、不要不急の外出や単独での外出は控え、自らの安?全確保に十分注意するよう心がけてください。? (ニ)住居を選ぶ際には、周囲の治安状況、建物の警備状況、電気や水の?供給設備をよく検討してください。ホテルに滞在する場合も、常時武?装警備員が配置されている等、警備レベルの高いホテルを選んでくだ?さい。? (ホ)ハイチにおいては、基礎インフラ(電気、浄排水、通信、道路)が?極めて脆弱で、1日の通電時間は約4時間程度しかなく、非通電時間帯?は水の供給も停止します。このため、発電機を備え付けた一部のホテ?ル・住居以外ではトイレの使用もできなくなります。また、雨季に頻?発する豪雨により河川が増水し、道路が遮断されるなど、予期せぬ事?態に遭遇することもあります。? (ヘ)不測の事態に備え、食糧、飲料水を備蓄しておくとともに、パスポ?ート、貴重品、衣類等をいつでも持ち出せるように準備しておき、更?に退避手段についても常時確認しておいてください。?
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興味のある方は外務省のホームページの全体を直接ご覧下さい。
  この資料で面白いのは、外務省が国連(アメリカ)の、そしてハイチの支配層の、視点からハイチの状況を語っているにも係らず、MINUSTAH の役目が何であり、それに対するハイチの民衆の反抗が如何に熾烈であるかを見事に証言していることです。こかから出発して、MINUSTAH が今回の大震災のはるか以前,2004年にハイチに送り込まれた事実上の政治的軍事的占領軍であることを過去の歴史をチェックすることで知り、上の“安全情報”が描くハイチの国情の悲惨が、震災に起因するものではなく、それ以前から連続的に存在するものであることを辿って行けば、報道者(ジャーナリスト)としての好奇心が強く刺激されるに違いありません。ひとたびハイチという小さな窓の中に体を乗り入れて覗き込んでみると、思いもかけないような赤裸裸のアメリカの姿が否応無しに目に飛び込んで来るはずです。

藤永 茂 (2011年10月10日)



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主流である商業営利メディアの対象は1000万人... (おにうちぎ)
2011-10-12 20:32:45
主流である商業営利メディアの対象は1000万人オーダー、調査報道に類する活動をして主としてインターネットやローカル誌で伝えようとしている人たちの相手は、多い方でも1万人オーダー、この現実は心得ておくほかはありません。
日本のインターネット人口は小さくないはずですが、感受性と判断力が伴わないことにはなかなか力になりません。
むろん各個人の生き方の目標は多数派になることでは決してありません。が、調査報道の目標、気づきを促し社会的覚醒を起こすこと、を目指す人びとにとって、社会的に良い(と思われる)影響力を期待するのは、あらゆる発信が政治的色合いを帯びる今日ではずいぶんとむずかしくなっていると思います。
若いネット人口の中から、公正、人権、道義、真実などへの感覚をもつ人が増えることを願っています。今後もこの貴重なブログの拡散に機会あるごとにつとめたいと思います。
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