NO.2585 NHK経営委員長の辞任劇 問われていたのは原発報道をめぐるメディアの責任と在り方。
福島第一の事故以来、問われていたのは原発報道をめぐるメディアの在り方。
東電取締役との兼任を狙っていた数土文夫・NHK経営委員長が、「兼職反対」の世論に追い込まれNHK経営委員長を辞任しました。
市民やメディア関係者が主張したのは、「言論・報道機関であるNHKのトップ(経営委員長)が、政府のもとにおかれる東電の取締役になることは、公共放送の自主自立を危うくし、視聴者の信頼を失わせることになりかねない」というものです。
福島の原発事故後に問われてたのは、原発推進の一端を担ってきたメディアの責任とその在り方でした。
ところが、原発推進勢力はNHK経営委員長を東電の取締役に据えることで、NHKのまるごと取り込みを画策したのでした。
その目論みを市民が許さなかったところに、今回の辞任劇の最大の意義があるでしょう。
「視聴者と経営委員に配慮した」と述べ、「出処進退は自分で決めた」と強調した数土氏は、「(東電の再建問題は)国難だとの思いが高まってきた」として取締役に専念すると言いました。
いったい、原発被害で苦しむ国民の気持ちをどう考えているのか?!
放送・報道に対する見識のなさを暴露したものです。しかも、NHK内部からは兼職批判の声は聞かれませんでした。
兼職は解いたとはいえ、人脈は通じてるわけで、NHKの監視を強める必要があるでしょう。
大手新聞もほとんどまともな批判の声を上げていない中、市民と市民メディアが「兼職反対」の声を上げ、辞任に追い込んだことは改めて異議深いものです。
そんな中、東京新聞が社説で堂々と批判しました。
健闘をたたえたい。
【社説】
NHK委員長 東電兼職は辞すべきだ(東京新聞 2012年5月24日)
東京電力社外取締役に内定している数土(すど)文夫NHK経営委員長が就任の最終判断は「自分でする」と語った。東電兼職は報道機関、NHKの公平性を損ねる。二兎(にと)を追う振る舞いは厳に慎むべきだ。
数土氏は同じ東電の会長に就く原子力損害賠償支援機構の下河辺和彦運営委員長の要請で引き受けたことを明らかにした。兼職批判が気にかかり、いったんは断ったが、再度懇請され応じたという。 その数土氏が、NHK経営委員長の東電社外取締役兼職を「問題ない」と言い張ったことには驚くほかない。
NHKは取材する側にあり、数土氏は東電の役員としてNHKにも取材される側に身を置くことになる。双方の経営陣に名を連ね、正確な情報を伝えられるのか。視聴者は疑念を抱かざるを得ない。
NHKには原発問題などを公平・公正に伝える役割があり、経営委員会はその役割を果たしているかを監視する。NHKの最高意思決定機関であり、会長任命権や経営方針などの議決権を持ち、十二人の委員は衆参両院の同意を得なければならない。委員の互選でそのトップに就いたのが数土氏だ。
放送法は非常勤委員の兼職を禁じておらず、非常勤である数土氏の東電兼職を「法的に問題ない」とする枝野幸男経済産業相の言い分にも一理ある。だが、放送法四条の「政治的に公平であること」も見据えなければならない。
東電は経営再建計画で一時国有化が決まった。数土氏は政府の管理下で政府にあらがえるのか。計画は柏崎刈羽原発の再稼働を前提にしており、反対している人々を向こうに回して推進せざるを得なくなる。報道機関の自主・自立の土台を自ら危うくしかねない。
問題はさらにある。東電の電気料金値上げによって生じる「利益相反」だ。NHKはスタジオの照明や空調などで大量の電力を消費する。値上げで原発事故の賠償費用を稼ぎ出したい東電と、料金を抑えコスト削減を目指すNHKの利害との板挟みが待ち受ける。
数土氏は六月五日に開かれる次回の経営委員会で他の委員の意見を聞き、最終判断すると語ったが、自らの「問題なし」発言が現実と大きく懸け離れていることに気づくべきだ。
政治的な公平をうたう放送法に目もくれず、平然と数土氏を東電に送り込もうとする野田政権にも唖然(あぜん)とさせられる。NHKの屋台骨を揺るがす無神経な人事を速やかに見直すよう求める。
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