発達障害のある男性が姉を殺害し、18年の求刑に対して20年もの懲役刑が言い渡された大阪の裁判について。
あの郵便不正事件で逮捕され、冤罪に巻き込まれた厚生労働省の村木厚子氏が基金を寄せて作った「共生社会を創る愛の基金」が、意見表明をしています。
意見表明そのものは、全く異議はありません。
「共生社会を創る愛の基金」の設立の経過、目的にも必要なことだと賛同できます。
社会の中で最も弱い、生きにくい立場にある「罪に問われた障がい者」を支援するため、「共生社会を創る愛の基金」は、村木厚子氏の「郵便不正事件」に関する国家賠償金を基に活動を開始しました。
障害ゆえに、あるいは、障害に対する無理解ゆえに犯罪に追い込まれることを防ぐ、障害のある人が適正な取り調べを受け、公正な裁判を受けられる、罪を犯した障害者が 社会に復帰し、二度と罪を犯さずにすむそういう社会づくりを目指して、調査研究、各地の草の根活動の支援、地域の中核組織の育成などを行っています。
そうすることで、本人も罪に追い込まれず、家族だけが負担を抱え込むことがなく、また、社会の秩序も保たれると考えるからです。こうした動きは確実に広がっており、また、広げなければなりません。
今回の判決は、社会秩序の維持の観点からやむを得ない選択と考え、求刑を超えて「許される限りの長期刑」としたのかもしれません。しかし、発達障害に対する正しい理解に立てば、本人、家族、社会の3者にとってより良い解決策を求めることは可能です。私たちは今後もこうした「罪に問われた障がい者」の問題を広く社会に訴えていきます。
しかし、一点だけ。
あの障害者自立支援法の制定に中心的にかかわった村木氏のことを思うと、これらの活動に思想的論理的一貫性が見られません。善良な方かもしれませんが、国(政府厚労省)が、「障害者や家族の尊厳を傷つけた」と誤りを認めた自立支援法について、村木氏は関与したものとして一切の反省の弁を述べていません。
(個々の役人がいちいちそういうことを表明するものではないかもしれませんが)、…違和感が拭い去れないのは私だけでしょうか。
大阪地裁判決についての意見表明
2012年8月3日
共生社会を創る愛の基金
運営委員会座長 浅野 史郎
企画委員会座長 野沢 和弘
大阪市内の男性が姉を殺害したとして殺人罪に問われた裁判員裁判で、大阪地裁は被告に広汎性発達障害の一つであるアスペルガー症候群があったことを指摘し「社会内にこの障害に対応できる受け皿が用意されていない現状では再犯の恐れが強く心配される」「許される限り長期間刑務所に収容・・・することが、社会秩序の維持にも資する。」などとして求刑(懲役16年)を上回る懲役20年を言い渡しました。障害者支援の現状に無理解かつアスペルガー症候群についての認識に重大な誤りがある判決と言わざるを得ません。これでは発達障害者の矯正に結びつかず、家族の責任ばかりが強調され、社会秩序の維持にも悪影響を及ぼすことが心配されます。
発達障害への正しい知識や認識に立つことにより、ただ「危険な障害者を隔離する」のではない、本人、家族、社会の3者にとってより良い結果をもたらすやり方があることを強く訴えます。
○「受け皿」はある
判決は「両親が同居を望んでいないため障害に対応できる受け皿が社会の中にないし、その見込みもない」と述べますが、発達障害者支援センターをはじめ福祉施設や地域の福祉サービス提供事業所の支援を受けて、親から独立して地域で暮らしている発達障害者は大勢います。罪を犯した障害者についても、社会復帰を支援する地域生活定着支援センターが昨年度には全都道府県に設置されました。長崎県では罪を犯した発達障害者・知的障害者を受け入れ社会復帰訓練を行う取組が検察庁や裁判所などからも評価され、刑務所への収容ではなく更生保護施設での処遇を求める求刑・判決が今年になって相次いでいます。これは家族の養育がなくても「受け皿」があることを示しており、このような「受け皿」を各地で拡充する取り組みは近年急速に進んでいます。「見込みもない」というのは誤りです。 まして「16年後」にも「受け皿の見込みがない」と断定して「20年」の刑に処すことに何の根拠があるのでしょうか。
判決は「両親が同居を望んでいない」ことが受け皿の不在の理由としていますが、成人した発達障害者の養育の責任を両親に求めることは古い時代の障害者福祉観です。発達障害に関する正確な知見がなかったころ、親の育て方が発達障害の原因とされ、発達障害者の養育は親の義務とされ、多くの親たちがいわれなき偏見に苦しめられてきました。ストレス過重から精神的変調をきたしたり、家族不和や無理心中などの悲劇も数知れず起きてきました。そうした反省から発達障害に関する正しい認識を社会に広め、発達障害者に対する社会的支援の拡充が図られてきました。今回の判決によって家族や福祉関係者の長年にわたる努力を逆行させる事態が生じることを懸念します。
○内省を深めるには特有のアプローチが必要
判決は「刑務所内で内省を深めさせる必要がある」と述べますが、現在の国内の刑務所はアスペルガー症候群の受刑者の特性に合った矯正プログラムがほとんどありません。発達障害者に反省を促すためには、彼らの特性をよく理解した上で矯正プログラムを実施することが必要であり、長期間刑務所に入れておくことだけでは効果は上がりません。それは発達障害者が反社会的だからでもなく凶悪な性格だからでもありません。受刑することの意味を発達障害者が真に理解し内省を深めるためには、発達障害者の特性に合ったコミュニケーション方法や心理的アプローチが必要なのです。
○反省の表現が不得意
判決は「犯行を犯していながら、未だ充分な反省にいたっていない」と述べますが、アスペルガー症候群のような発達障害者の特徴として、相手の感情や周囲の空気を読み取るのが苦手で、自ら深く反省する気持ちがあってもそれを表現することがうまくできないということが指摘されています。捜査や裁判の過程で発達障害者のふるまいがあたかも「反省していない」ように受け取られ、捜査員や裁判官の心証を悪くして厳罰化される傾向があることは、国内外で多くの研究者や弁護士らが指摘しているところです。
○「塀の中」に閉じ込めることは逆効果
判決は「許される限り長期間、刑務所に収容することが社会秩序の維持に資する」と述べますが、これでは、判決自体が矯正の可能性を否定し「危険な障害者は閉じ込めておけ」と言っていることになります。そこには障害者の人権や共生社会の理念はみじんもなく、ただ隔離の論理だけがまかり通っています。
それだけではなく、障害特性に合った矯正が行われずに長期間刑務所に入っていただけでは、むしろ再犯リスクが高まる恐れすらあります。「社会の秩序の維持」とは逆の結果を招きかねません。本人が真に内省を深め社会の中で生きていくすべを身につけることこそが「社会の秩序の維持」のために最も重要なのです。適切な矯正プログラムを受けることもなく、20年間にわたって社会から隔絶された障害者を生み出すことが、本当に「社会の秩序の維持」につながるのでしょうか?
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2012.08.06 |
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あまりにも障害に対して無知・無理解な「差別裁判」である。
ちょっと時間が経過したが,この重大な判決は司法の汚点としても、今後の議論の発展のためにも記録しておかなければならない。
大阪地裁で、姉を殺害した発達障害の男性に対して16年の求刑以上の20年の懲役が言い渡された裁判である。
その理由が、本人に反省が見られず、家族も同居を希望せず、被告の障害に対応する社会の受け皿がない、したがって、「再犯の恐れがあり、許される限り長期間内省を深めさせることが社会秩序のためになる」というものだそうだ。
アスペルガー症候群は、対人関係の理解が困難で反省の仕方、表現方法もが分からないのだ。
裁判員裁判だというが、彼らは障害の特性など十分に理解してなどとは到底思えない。
これなら、単なる「隔離政策」であり、「保安処分」「予防拘禁」である。
障害があろうが自分でやらかしたことだから、自分で責任をとらせるとして、障害へのなんの配慮もなく刑務所に入れる、これこそまさに障害者差別なのである。
刑務所が受刑者の更生や教育を丁寧に行えていないこと、知的障害者がたくさん収容され彼らに適切な援助が出来ていないことも周知の事実である。
必要なのは、障害のある人たちも必要な支援を受けながら社会に参加し、こういう犯罪に手を染めなくても生きていけるようにすることじゃないか。もし、過ちを起こしたら、丁寧な更生・教育で立ち直りを支え、社会参加できるような受け皿や支えを作ることだ。
こういした差別は差別の連鎖を産み出し、益々、障害のある人たちが生きづらい社会を作りかねない。
大変だろうが、弁護側は是非控訴して国民的な議論、理解への一歩にしてほしいと思う。
報道は以下。
■姉殺害:発達障害の被告に求刑超す懲役20年判決…大阪(毎日新聞 2012年07月30日)
姉を殺害したとして殺人罪に問われた大東(おおひがし)一広被告(42)=大阪市平野区=の裁判員裁判で、大阪地裁(河原俊也裁判長)は30日、懲役16年の求刑を超える懲役20年を言い渡した。判決は、大東被告が広汎(こうはん)性発達障害の一種、アスペルガー症候群と認定。母親らが被告との同居を断り、被告の障害に対応できる受け皿が社会にないとして、「再犯の恐れがあり、許される限り長期間内省を深めさせることが社会秩序のためになる」と述べ、殺人罪の有期刑の上限が相当とした。
大東被告は小学5年生で不登校となってから、自宅に引きこもる生活を送っていた。判決は、引きこもりの問題を姉のせいと思い込んだ被告が、姉に恨みを募らせた末の犯行と指摘。動機にアスペルガー症候群が影響したと認定する一方、「最終的には自分の意思で犯行に踏み切った」と述べた。また、判決は被告の態度にも言及し、「(障害の)影響があるとはいえ、十分な反省がないまま社会復帰すれば、同様の犯行に及ぶことが心配される」と指摘した。
■
http://www.chugoku-np.co.jp/News/Sp201207310067.html発達障害で求刑超す判決 大阪地裁「社会秩序のため」 大阪市平野区の自宅で当時46歳の姉を刺殺したとして、殺人罪に問われた無職大東一広おおひがし・かずひろ被告(42)の裁判員裁判で、大阪地裁は30日、犯行に発達障害の影響があったと認めた上で「再犯の恐れがあり、刑務所収容が社会秩序維持に資する」として、求刑の懲役16年を上回る懲役20年の判決を言い渡した。
判決理由で河原俊也かわはら・としや裁判長は、約30年間引きこもり状態だった被告が姉に逆恨みを募らせた動機の形成などに先天的な広汎性発達障害の一種、アスペルガー症候群の影響があったと認定した。
その上で(1)十分に反省していない(2)親族が被告との同居を断り、社会内でアスペルガー症候群に対応できる受け皿が用意されていない―の2点から再犯の恐れがあると指摘し、「許される限り長く刑務所に収容し内省を深めさせることが社会秩序の維持にも資する」と量刑理由を説明した。
弁護側は障害の影響で恨みの感情をコントロールできなかったとして保護観察付き執行猶予を求めたが、判決は「自分の意思で犯行に踏み切った」として、刑の減軽は考慮すべきではないと判断し、さらに検察官の求刑は軽すぎるとした。
弁護側は、閉廷後の取材に対し「鑑定人への尋問もあり発達障害への理解が得られると思ったが、主張が認められず遺憾だ。今後控訴を検討する」と話した。
判決によると、被告は引きこもり生活から抜け出したいという願いが実現しないのは姉のせいだと勝手に思い込み、恨みを強め、昨年7月25日昼、生活用品を自宅に届けに来た姉の腹や腕を包丁で何度も刺し殺害した。
日本発達障害ネットワークの市川宏伸いちかわ・ひろのぶ理事長は「アスペルガー症候群の人は反省していないのではなく、言われることが分かっていないだけだ。裁判員の理解がないとこういう結果になりやすく、裁判員制度が始まるときに心配していたことが起こった」と批判した。
以下、的確な批判の社説を記録しておく。
■
大阪の殺人判決 障害に無理解過ぎる(東京新聞 2012年8月4日)
殺人罪に問われた発達障害の四十代の男に大阪地裁で懲役二十年の判決が出た。再犯の恐れが強いとして求刑を四年上回る厳罰に傾いた。“隔離優先”の発想では立ち直りへの道が閉ざされないか。
大阪地裁での裁判員裁判で被告はアスペルガー症候群と分かった。生まれつき脳の機能に問題を抱える広汎性発達障害の一種だ。
言葉や知能に遅れはない。だが相手の気持ちや場の空気を読み取ったり、自分の思いを表現したりするのが難しい。
裁判官はこうした特性をしっかり理解し、裁判員に分かりやすく説明したのか大いに疑問だ。判決を見ると、障害を理由に刑を重くしたとしか考えられない。
被告は小学五年生で不登校になり、約三十年間引きこもっていた。それを姉のせいと思い込み、恨みを募らせて包丁で殺害した。
判決は「許される限り長く刑務所に収容し、内省を深めさせる必要がある。それが社会秩序の維持にも資する」と述べた。再犯の恐れが心配されるからだという。
根拠としてまず「十分に反省していない」と指摘している。反省心を態度で示すのが苦手といった被告の事情をどれほど酌んだのかはっきりしない。
さらに家族が同居を拒み、加えて「障害に対応できる受け皿が社会に用意されていない」と断じている。なぜ幼少のころから支援を欠いたまま孤立状態にあったのかを問わず、社会の無策を被告の責任に転嫁するのはおかしい。
裁判員の市民感覚はなるべく大切にしたい。けれども、再犯をどう防ぐかという観点にとらわれ過ぎて、犯罪に見合った刑罰を越えて保安処分の色彩の濃い判決になったのは深く憂慮される。
発達障害者の自立を支援する仕組みは一歩ずつだが、着実に整えられてきている。
二〇〇五年に発達障害者支援法が施行され、障害を早期に見つけたり、福祉や教育、就労につなげたりする支援センターが全国にできた。刑務所を出た障害者らの社会復帰を促す地域生活定着支援センターも裾野を広げている。
立ち直りには特性に応じて社会性を身につけたり、コミュニケーションの技能を伸ばしたりする専門的な支援が欠かせない。逆に刑務所には発達障害者の矯正の手だてはないに等しいとされる。
親の愛情不足や悪いしつけが障害の原因という間違った考えも根強くある。判決を他山の石として正しい理解を深めたい。
■
発達障害と裁判/懲役で「秩序」は守れない (神戸新聞 2012/08/04 09:54)
深く首をかしげる判決と言わざるを得ない。
自宅で姉を刺殺したとして殺人罪に問われた男性被告に対する裁判員裁判で、大阪地裁が求刑の懲役16年を上回る懲役20年の判決を言い渡した。殺人罪の有期懲役刑の上限に当たる。
この男性にはアスペルガー症候群という障害がある。社会性に困難を伴う「広汎性発達障害」の一つで、他人とのコミュニケーションがうまく取れないなどの傾向がある。
判決は、男性が姉への逆恨みを募らせた背景にアスペルガー症候群の影響があったと認定した。さらに(1)十分に反省していない(2)アスペルガー症候群に対応できる受け皿が社会に用意されていない‐として再犯の恐れを指摘した。
その上で「許される限り長期間刑務所に収容することで内省を深めさせる必要があり、そうすることが社会秩序の維持にも資する」と量刑の理由を述べた。
本来、量刑は犯罪の軽重や情状などから総合的に判断されるべきだ。「再犯の恐れ」を根拠に長期の懲役に服させることになれば、障害に対する差別や偏見の助長につながりかねない。
社会秩序の維持を理由にした懲役刑は「隔離政策」にならないか。
アスペルガー症候群の人は、反省していてもそれを態度でしっかり表現することに困難を抱えるとされる。そうした障害の特徴をどこまで理解した上での判断なのか、疑わしい。
障害がある人の受け皿整備は、社会全体で取り組むべき課題である。不十分な整備が障害者自身の責任でないのは言うまでもない。
アスペルガー症候群などの発達障害については、療育や自立支援に向けた発達障害者支援法が2005年に施行され、相談に応じる支援センターが全国に設けられている。神戸などの地域生活定着支援センターでは、刑務所を出所した知的障害者らの支援をしている。地道な受け皿づくりはすでに始まっている。
西宮市の六甲カウンセリング研究所の井上敏明所長は「アスペルガー症候群は長期間刑務所に入れて治まるものではなく、周囲の対応の仕方で症状が改善される」と指摘する。
刑事罰だけでなく、発達障害者を長い目で支える受け皿整備が、社会の秩序を守ることになるはずだ。
今回の裁判は市民が参加する裁判員裁判だっただけに、障害者への理解や支援を促す言葉がほしかった。
■
[発達障害と判決] 偏見を助長しかねない( 南日本新聞 8/3 付 )
姉を殺害したとして殺人罪に問われた大阪市の男性被告の裁判員裁判で、大阪地裁は犯行に広汎性発達障害の一種であるアスペルガー症候群の影響があったと認定して、懲役16年の求刑を上回る懲役20年を言い渡した。
検察側の求刑を上回る判決は異例である。被告が十分に反省していないことや、親族が被告との同居を断っている-の2点から再犯の恐れがあり、「許される限り長く刑務所に収容して内省を深めさせることが社会秩序の維持にも資する」という理由だ。
犯行の原因に被告の責任とはいえない障害の影響があったと認めながら、異例の刑を言い渡すのは障害に対する偏見を助長しかねない。発達障害に詳しい専門家から「障害への偏見や無理解がある」という声が上がっているのは当然である。
判決によると、被告は約30年間引きこもり状態だった。その状態から抜け出したいという願いが実現しないのは姉のせいだと逆恨みし、昨年7月に生活用品を自宅に届けに来た姉を刺殺した。
アスペルガー症候群は、相手とのコミュニケーションをうまく取れず、反省の態度を表現するのが難しいといった特徴がある。言葉の発達に遅れはなく、知的レベルは高いとされる。
弁護側が、障害の影響で恨みの感情をコントロールできなかったとして保護観察付き執行猶予を求めたのは、鑑定人への尋問もあって障害への理解が得られると考えたからだろう。
だが、判決は「自分の意思で犯行に踏み切った」として刑の軽減は考慮すべきでないと判断した。 今回の裁判員裁判で、裁判官が障害の特徴などを十分に理解し、量刑判断の在り方も含めて裁判員に丁寧に説明したのかどうか疑問である。
社会に受け皿が用意されていないと断言するのも、おかしい。支援の遅れは社会の問題で、本人の責任ではない。
発達障害者支援法が2005年に施行され、各都道府県に支援センターが設置された。罪を犯した障害者についても、「地域生活定着支援センター」が開設され、保護観察所などと連携して社会福祉士らが相談や助言などにあたっている。
弁護側は「発達障害への理解が得られると思ったが、主張が認められず遺憾だ。今後控訴を検討する」と話した。
今回の判決を問題提起と受け止め、発達障害への理解を社会全体で深めるとともに、受け皿の拡充を図る必要がある。
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2012.08.05 |
| Comments(0) | Trackback(0) | ・障害者と「犯罪」
「国は基本合意・骨格提言を無視するな!」の声を踏みにじり、衆院でわずか数十分の審議で可決し。参院に送付された「障害者総合支援法案」。
その中身は、縷々書いてきたので、簡単に下の表(写真)にゆずります。
(うちの職員が学習会のために書いたもので多少見づらいですが・・・クリック拡大で画面からはみ出しますが、笑)
そこで、ここでは「国が基本合意・骨格提言を無視する」という事がどういうことなのかをかいつまんで抑えておきます。
その前に、
確かに、直接問われているのは障害者福祉をめぐる法案です。
日本の障害者の人口は約650万人、総人口の5%程度と言われています。
世界の障害者人口が10億、約15%と言われ、たとえばアメリカは20%、イギリスは15%と言われ日本が非常に少ないのは、制度や定義によって違うからです。
日本の場合は、身体、知的、精神に障害があり手帳を発行したものしかカウントされていません。諸外国では、機能・能力障害により日常生活に相当の不利益・社会的ハンディを受ける人々を広くカウントしているのが実態です。
障害者関係の法律と言えば、確かにマイノリティーの政策です。
それでも、私たちは「みんな障害者になる可能性があり、障害者に優しい社会はみんなにも優しい、だからみんなの、社会の問題です」と訴えてきました。それは変わりませんが、今度の場合、後述するように、国の仕組みにかかわる大問題を含んでいることをも知って欲しいのです。
さて、本題ですが・・・。
マニフェストというのはいわば単なる「国民との約束」だが(もちろんこれとて重いものであるが)、「基本合意」というのは、抽象的・政治的約束事ではない。
あくまでも法律的な約束です。
日本国憲法は国民の権利・自由を保障するため「三権分立」の原理を取り入れています。
三権分立とは、国家権力が,立法〈立法権〉、行政〈行政権〉、司法〈司法権〉に三分され、それぞれを国会、内閣、裁判所が担う制度です。これらを相互に監視させることにより国家権力の暴走を防ぎ、国民の権利・自由を保障するため効果を期待しているといわれています。
さて、その三権分立の仕組みの中で、国(=政府=内閣)と原告団が約束したのが「基本合意」。
①つまり、行政〈行政権〉が、「基本合意」=「障害者自立支援法は廃止する。それに代わる総合福祉法を制定する」ということを認めたわけです。
②その「基本合意」は、裁判の「和解」という形で締結されました。和解は確定判決に匹敵する効力をもつものです。つまりこれを司法〈司法権〉が認めたということです。
③あろうことか、政府は①で認めたにもかかわらず、これを無視して「障害者総合支援法(案)」を,提案してきたわけです。これが大問題!
④そして、その法案が今、国会(立法府=立法権)で審議されている。
政府=行政と司法という二つの権力が認めた。これを国会がどう認めるのか?!ということがいま問われているのです。
マニフェスト破りのように 政治責任や道義的責任を超え、国の在り方の根幹にもかかわる法的責任が問われているのです。
重ねて、「国は基本合意・骨格提言を無視するな!」「国会は、基本合意・骨格提言を無視した法案を認めるな!」と声を大にしたい!!
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テーマ:障害者の人権・福祉施策 - ジャンル:福祉・ボランティア
2012.05.18 |
| Comments(0) | Trackback(7) | ・障害者と「犯罪」
なんとも、痛ましく怒りが湧いてきます!
「自己責任」と「家族介護」が招いた悲劇!これは日本の障害者問題・介護問題の氷山の一角でしょうね。
・・・ 「三恵さんは幼いころから脳性まひとみられる重度の身体障害のためほぼ寝たきりの状態だった。とし子容疑者は長女と2人暮らしで介護を続けており、とし子容疑者も外出時には車いすを使用していたという。」
重度障害の62歳長女を絞殺容疑 85歳母「介護に疲れ…」産経新聞 1月11日(水)20時32分配信
重度の障害のためほぼ寝たきりの長女(62)の首を絞めて殺害したとして、奈良県警は11日、殺人容疑で同県生駒市鹿ノ台北の無職、西井とし子容疑者(85)を逮捕した。捜査1課によると、とし子容疑者は「娘の介護に疲れ首を絞めた」と容疑を認めているという。
逮捕容疑は11日未明、自宅寝室で、長女の三恵さんの首を絞めて殺害したとしている。同課によると、三恵さんは幼いころから脳性まひとみられる重度の身体障害のためほぼ寝たきりの状態だった。とし子容疑者は長女と2人暮らしで介護を続けており、とし子容疑者も外出時には車いすを使用していたという。
同日午前9時20分ごろにデイサービスの職員が自宅を訪問した際、ベッドの上で死亡している三恵さんを発見。そばにいたとし子容疑者が首を絞めたことを認めたという。
過去ロ:
NO.1196 先立つ子でも、書いたことですが・・・。
ある知的障害の娘さんが40台半ばで亡くなった。ご両親は、70台半ばで、熱心に障害者運動に関わっておられる方だった。
その葬式に集まられた親御さんたちは、その死を、口々に「親孝行だ」とささやき合ったという。親御さんは、「子どもより1日だけ長く生きたい」という。自分が死んだ後が心配だ。兄弟にも負担をかけたくない・・・、だから、先立つ子を「親孝行だ」と。
世の中にそんなバカな話があるだろうか。「親に先立つのは最大の親不孝だ」というのがこの世の常ではないか。それなのに障害のある人たちの生死については、全く逆なのだ。
そう思わざるをえない親の気持ちは分かりつつも、話を聞きながら「バカ親どもが!」とどうしようもない憤りを覚えたものだった。・・・若かったのかもしれない。
果たして、あれから20年近い。
私も、その「障害者の親」になって16年。
まだ実感がない。娘より先に死んでもいいとか、1日も長く生きたいとか・・・。
ただ、「先に逝ってくれ」とは、思わない。今のところは。
こういうことを考えなければならないこと自体が、今日の社会で障害者が生きることの困難、差別の集約的事実を示している。
何で、障害者は親より先に死ぬことが喜ばれなければならないのだ。
安心して生きることを託せる社会を、と思う。
障害があろうとなかろうと。
ツイッターに次のつぶやきがありました。
@mmmkaafa美香*(脱原発、脱洗脳社会に1票) 車椅子の85歳の母親に62歳の知的障害の子供を介護させるような社会なんだよね。私も長い冬休みの息子の介護のために昨年末から殆ど一人になることなく、仕事有休とってずっと一緒に居るもの。
FACEBOOKで、以下のコメントをいただきました。
・「よく聞く話です。障害を持つ親は、1日でも子どもより長生きをしなくてはいけないといいます。障害を持っていても社会の中で生活できる。親も自分のことも考える社会には程遠い世の中です。」
・「安心して生きることを託せる社会を、と思う。障害があろうとなかろうと」同感です。そんな話を学生時代に大脇さんから聞いたり、陶友通信に書いてあったのを一生懸命読んだことを思い出しました。
・「最大の親不孝は、親より先に死ぬことや」
って誰かに言われた気がします。
それを願わなければいけない社会。
ほんと悲しいですね。
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2012.01.12 |
| Comments(1) | Trackback(0) | ・障害者と「犯罪」
千葉・東金の女児殺害遺棄事件に懲役15年(求刑懲役20年)の判決が出たようです。
事実だったのか・・・、報道でしか知る由しかないことですから、結果については、なんとも言いようがないといったところです。
5歳女児殺害に懲役15年 知的障害、訴訟能力認める(東京新聞 2011年3月4日 12時05分)
千葉県東金市で2008年9月、保育園児の成田幸満ちゃん=当時(5)=を殺害、遺棄したとして、殺人罪などに問われた無職勝木諒被告(24)に、千葉地裁は4日、懲役15年(求刑懲役20年)の判決を言い渡した。
栃木力裁判長は、知的障害がある被告の訴訟能力を認め、刑事責任能力についても「精神遅滞による判断や行動制御能力の低下の影響は認められるが、完全責任能力はある」との判断を示した。
量刑理由では「独り善がりの犯行で、浴槽に沈めて溺死させた殺害様態は残忍。幼児が白昼に連れ去られ、社会に及ぼした影響も大きい」と指摘したが、知的障害の影響を理由に「一般人と比べれば刑事責任の非難の度合いには限りがある」などとして刑を減軽した。
判決によると、勝木被告は08年9月21日、東金市内の路上で幸満ちゃんを連れ去り、自宅の浴槽に沈めて殺害、近くの資材置き場付近に遺体を遺棄した。
検察側は、訴訟能力に問題はなく、殺害時は完全責任能力があったと指摘。弁護側は、知的障害の影響で訴訟能力がないとして公判停止を求めた上で、殺害時は心神耗弱だったと主張していた。
被害者参加制度で出廷した幸満ちゃんの母、多恵子さん(40)ら遺族は無期懲役を求めた。
この事件に関しては、
・障害者と「犯罪」 (17) で、経過を見ながら、発言してきました。
この結果については、求刑が妥当なのかどうかなんともいえませんが、今の刑務所の実態の中でどういう矯正教育がなされるのか、いじめに合うのではないか、それとも本人にとっては知的障害故に淡々と日々を送るのか・・・、疑問はつきません。
知的障害があろうが自閉症であろうが、犯罪は犯罪です。
しかし、この事件に関心を持ってみてきて、初期の捜査や報道など疑問は残ります。
検察側は、責任能力ありと判断したようですが、その点にも疑問が残ります。論理的思考や言語能力が著しく低い被告からの調書がどのように引き出され書かれたのか。日々彼らに関わる身においては、疑問です。
更に、弁護団が「指紋不一致」など証拠に基づき無罪を主張していたが、一転、起訴事実を認めた経緯も詳しくはわかりません。(私の調べ方が足りないのでしょうが・・・)
障害者制度改革推進のための第二次意見 法律や制度をより良いものにするための第二次意見 わかりやすい版(案)(PDF)は、障害者の司法手続きに関して、障害者基本法改正に当たって、次のように求めています。
15)司法手続(裁判と捜査、刑務所)
障害のある人が逮捕されたり、裁判に出たりするときに、必要な情報を知らされ、必要なことを言えるようなコミュニケーションの方法(手話や、点字、指点字t触手話、要約筆記、わかりやすいことばなど)が用意されるよう、法律や制度をつくります。
また、警察官や刑務官(刑務所ではたらく人)などが障害のある人のことを理解できるように、研修を行うための法律や制度をつくります。
障害者には特別な配慮が必要なこと、国連障害者の権利条約も「合理的配慮」を求め、「合理的配慮をしない事は障害者差別だ」と、厳しく求めています。
以下の記事の主張が広がることを願います。
知的障害者意思疎通へ「裁判官の教育必要」(東京新聞 2011年3月4日 夕刊)
軽い知的障害がある勝木諒被告に対し、千葉地裁の四日の判決は、訴訟能力や刑事責任能力を認め、懲役十五年を言い渡した。弁護団は当初の無罪主張方針を一転、起訴内容を認めた上で訴訟能力や責任能力を争う異例の展開をたどったが、専門家は知的障害者の裁判には改善すべき点が多いと指摘する。
勝木被告は、この日も初公判からずっと同じ白いシャツに黒いスーツ、サンダル姿で出廷。顔を覆っていた前髪などは切っていたが、あごひげは伸びていた。緊張した様子で前に出て、裁判長の判決を前を向いてじっと聞いた。
これまでの公判で勝木被告は、被害者の成田幸満ちゃんに「ただただ、ごめんなさいと言いたい」と述べたほか、「帰る。ばか」などと言われ、「暴走モードになった」とも話した。
弁護側が事件前の仕事内容や好きなアニメを聞くと、よどみなく詳細に答えた。だが「検察官や弁護士は何をする人」などと聞くと、「うーん」と黙り込んだ。千葉県警の調べには当初、「(幸満ちゃんが)部屋にいて腹が立った」などと供述していた。
判決は訴訟手続きや被告人質問での応答ぶりなどから、訴訟能力を認定したが、今回の公判をめぐっては専門家から懸念が出ていた。
知的障害に詳しい言語聴覚士の湯汲(ゆくみ)英史氏(58)は「知的障害者の言葉は、慣れない人には理解しにくく、聞く側の臆測や予断が入りがち」と指摘。日本発達障害福祉連盟(金子健会長)も二〇一〇年三月、知的障害について「話者の意図や誘導に沿った言動に陥りやすい傾向が強く認められる」として、供述以外に比重を置いた審理を千葉地裁に求めていた。
千葉大大学院専門法務研究科の後藤弘子教授(刑事法)は「最終的に判断する側の裁判官にこそ、障害者を理解する教育が必要。少年事件に少年審判があるように、障害者を専門とする部署をつくることも一つの選択肢」と提案する。
改善の動きは始まったばかりだ。内閣府は今国会に提出する障害者基本法改正案に、捜査当局が障害の特性に応じて専門家の立ち会いなど必要な意思疎通の手段を確保し、関係職員に研修を受けさせることを求める規定を盛り込んでいる。
以下、関連過去ログ:
■NO.838 知的障害者と冤罪。(加筆再掲)
http://toyugenki2.blog107.fc2.com/blog-entry-842.html ■NO.801 知的障害者の犯罪と孤独・・・千葉・東金の女児遺棄事件を考える。
http://toyugenki2.blog107.fc2.com/blog-entry-805.html ■NO.804 適正な取調べと報道を!・・・千葉・東金の女児遺棄事件を考える。 ・・・その(2)
http://toyugenki2.blog107.fc2.com/blog-entry-809.html
■NO.810 適正な取調べと報道を!・・・千葉・東金の女児遺棄事件を考える。 ・・・その(3)
http://toyugenki2.blog107.fc2.com/blog-entry-814.html ■NO.811 重ねて、適正な取調べと報道を。
http://toyugenki2.blog107.fc2.com/blog-entry-818.html ■NO.837 取調べの可視化を!
http://toyugenki2.blog107.fc2.com/blog-entry-841.html ■NO.1365 知的障害者と冤罪 (その2)・・・ 東金女児殺害事件 弁護団が無罪主張へ
http://toyugenki2.blog107.fc2.com/blog-entry-1400.html ■NO.1475 東金女児殺害事件 指紋不一致 無罪主張の根拠に
http://toyugenki2.blog107.fc2.com/blog-category-62.html ■NO.1499取調べの「可視化」は急務です。
http://toyugenki2.blog107.fc2.com/blog-entry-1552.html
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2011.03.05 |
| Comments(0) | Trackback(4) | ・障害者と「犯罪」
障害者と犯罪については色々書いてきました。
参照:カテゴリー ・障害者と「犯罪」
http://toyugenki2.blog107.fc2.com/blog-category-62.html
ここでは冤罪ではなく、「三食つきの刑務所が一番のセーフティーネット」になっている現実を、新聞記事からコピーしておきます。
以下の過去ログも参照ください。
■NO.436 受刑者の出所―知的障害者の復帰に手を・・・朝日の社説を支持する。
http://toyugenki2.blog107.fc2.com/blog-entry-480.html
■NO.1021 「大阪のおばちゃん捕り物帳」と障害者・・・刑務所が一番のセーフティーネット!
http://toyugenki2.blog107.fc2.com/blog-entry-1037.html
ついでに、こんなこともありました。
●oowakitomosan 大脇 友さん
軽度知的障害の仲間がネットで「パチンコ必勝法」を150万で契約。後始末が大変でした。バカと言えばバカだが・・・。 RT @kikko_no_blog: 「パチンコ必勝法」や「競馬必勝法」に騙されるバカが後を絶たないように、今でも「成功本」に騙されるバカがいっぱいいるんだね。
以下、新聞よりコピー。
追跡・累犯:/1 揺れる「更生」/出所しても…(その1)(毎日新聞 2010年10月13日 東京朝刊 )
◇社会の支援こそ必要
知的障害や高齢という事情を抱えつつ、社会と刑務所を行き来する人たちがいる。なぜそうなるのか。身元引受先のない出所者の約15%を自立困難な障害者、高齢者が占めるとの試算もあり、社会支援の乏しさが背景に浮かぶ。裁判員裁判を通じて「罪と更生」が改めて注目される中、刑事司法と福祉のはざまに落ち込んだ「累犯者」の姿を追った。
◇52歳・知的障害者「刑務作業楽しい」
被告席に立つのは3度目だった。今年1月、関西地方の簡易裁判所。京都府の男性(52)はさい銭を盗んだとして2度目の執行猶予中、今度は自転車窃盗の罪に問われた。知的障害があり、知能は5~9歳程度。
弁護人「自転車を盗んだらどうして裁判になるんですか」
男性「窃盗やから。紙(起訴状)に書いてますから」
弁護人「前の裁判で言われたことを覚えていますか」
男性「剣道の練習を頑張りなさいと」
どこかすれ違うやりとり。代わって検察官が質問する。
検察官「なぜ自転車を取ったのですか」
男性「(歩いて)足が痛くなったからね」
罪を認めたが、「泥棒は悪い」と繰り返すばかりで法廷に身を置く深刻さは感じられない。検察は懲役1年を求刑した。逮捕前から男性を支援し、裁判を傍聴した社会福祉協議会の責任者は「誰かに教えられた『音』として『悪い』と話すだけ。なぜ悪いのか、本当の意味で理解していない」と言う。
弁護人は心神耗弱を主張した。判決は知的障害を認定する一方で「物を盗むのが悪いことと十分理解できる」と懲役8月の実刑を言い渡した。
京都府にある男性の実家を訪ねた。84歳になる父親は「本人は警察や検察に言われた通りに答えるのを名誉なことだと思っている」と嘆く。
両親は男性が20歳ごろから知的障害者入所施設に20年近く預けた後、自宅に引き取った。父親が定年退職し、時間をかけて自立の手助けをしようと考えたからだ。家にいれば問題を起こさない。放浪した時だけ警察の世話になる。
執行猶予中、父親は「息子の生活の見守りが必要」と、社会福祉協議会に相談した。母親の認知症が進み、父親自身がんの手術を受けた。男性が家を飛び出し、旅先で自転車を盗んだのはそのころだ。花見や紅葉の季節になったり、生活の変化で不安を覚えると放浪と野宿を繰り返す。社協の責任者は「行動の傾向がつかめ、対策を取る矢先だった。次の罪を犯さないためには福祉の支援こそ必要なのに」と残念がる。
法務省は再犯防止を重要政策に掲げる。軽微な犯罪の場合、福祉施設などの身元引受先がしっかりあれば検察側が起訴を見送ったり、裁判所が実刑を避け、更生を社会に託すケースも出始めている。省内からは「福祉が刑務所に代わる受け皿となりうるのなら、有効だし実情にも合う」(幹部)という声も漏れる。近年、刑務所に刑務作業すらできない高齢者や障害者が少なくないという現状が指摘されていることが背景にある。
◇ ◇
この夏、大阪拘置所で男性に面会した。「夢見るんですわ。泥棒してバットで殴られる夢。だからもうしません」。初対面でも屈託のない笑顔だ。「仕事(刑務作業)は楽しい」「(父親に)元気で頑張ってやっています、と言ってください」。最後も笑顔だった。
弁護人は「刑が重すぎる」として上告したが9月に棄却され、執行猶予が取り消された分も含め1年半の刑が確定した。【長野宏美】=つづく
◇09年の新受刑者のうち 知能指数70未満23%、65歳以上7%
07年版犯罪白書は過去約60年間に発生した犯罪を分析し、罪を犯した人の3割が再犯者で、起こした事件件数では全体の6割を占めている実態を指摘した。
再犯傾向を詳しく調べると、短期間に罪を重ね、刑務所に何度も入る「累犯者」の中に高齢者や知的障害者が多いことが分かってきた。09年の新たな受刑者のうち、65歳以上は2100人で全体の7%。この10年間で約3倍に急増した。知的障害の疑いがある知能指数70未満の新受刑者も6520人で、23%を占める。
福祉関係者からは「地域で適切な福祉の支援を得られないことで生きにくい環境に置かれ、犯罪につながりやすくなっている」との声が上がり始めた。これまで切り離されてきた刑事司法と福祉は連携を求められ、大きな転換期を迎えている。
市民が刑事裁判に参加する裁判員制度が09年5月に始まり、「裁かれた後」にも関心が集まる。社会的に弱い立場にある人たちの犯罪と更生にどう向き合うのか。ともに社会で生活する私たち自身が問われている。
【関連記事】
追跡・累犯:/1 揺れる「更生」/出所しても…(その2止)
追跡・累犯:/1 すぎなみ障害者生活支援コーディネートセンター・赤平守さんの話
毎日新聞 2010年10月13日 東京朝刊
追跡・累犯:/1 揺れる「更生」/出所しても…(その2止)
◇路上生活の経験多く
法務省が再犯防止を重要政策に位置づける中、再犯が多数に上り、社会的支援の弱さが犯罪につながると指摘される知的障害者と65歳以上の高齢者について毎日新聞は再犯歴のある各10人ずつ計20人にインタビューした。罪に至った理由や刑務所出所後の支援状況を聞いたところ、大半が生活苦から再犯に及んでおり、10人が路上生活の経験を持っていた。
刑務所出所者が一時的に身を寄せる民間の更生保護施設や福祉施設、非営利組織(NPO)などに協力を求め、取材に応じると答えた人から順に面会した。その際、取材に正確を期すため、施設職員ら支援者に立ち会ってもらった。
主な罪名別では、窃盗が19人で、大半が食料品などの万引き。1人は詐欺。10回以上の服役経験があったのは4人で、最多は19回。窃盗罪の場合、過去10年で3度以上6月以上の懲役を受けると、常習累犯窃盗罪に問われ、窃盗罪より重い3年以上の懲役刑となる。このため、万引きの繰り返しで人生の半分以上を刑務所で送った高齢者もいた。
また、服役後も身を寄せる場所がなく、再び路上生活に戻ったケースも目立った。前回の刑務所出所(または釈放)から再犯までの期間でみると、判明した18人のうち11人が6カ月未満。出所後の支援がなく、生活苦から再犯に走る実態が浮かんだ。【坂本高志、石川淳一】
==============
◇インタビューに応じた人たち◇
入所回数 主な罪名 路上生活経験 主な発言
【知的障害】
(1)男性(45) 7 窃盗(置き引き) 無 お金をためて結婚したい
(2)男性(27) 2 窃盗(銅線盗) 有 お金の管理は自分ではまだ無理
(3)男性(54) 4 窃盗(万引き) 無 相談に乗ってくれる人がいなかった
(4)男性(31) 3 窃盗(さい銭盗) 有 結婚はしたい。今は特に思う
(5)男性(63) 1 窃盗(万引き) 無 つらいことがいっぱいあった
(6)男性(49) 3 窃盗(万引き) 無 地元だとまたやってしまいそう
(7)男性(58) 4 窃盗(車上荒らし) 有 福祉の支援なんて考えなかった
(8)男性(52) 0 窃盗(さい銭盗) 有 泥棒して殴られる夢を見るんです
(9)男性(40) 4 窃盗(万引き) 無 刑務所に戻りたくないが自信ない
(10)男性(63) 12 窃盗(自動車盗) 無 出所時、生活できる金があったら
【高齢者】※65歳以上
(1)男性(69) 8 詐欺(金券詐取) 無 口先だけで自分を飾ってきた
(2)男性(68) 19 窃盗(万引き) 無 今まで無駄な生活をしてきた
(3)男性(69) 3 窃盗(空き巣) 有 無銭飲食して逆戻りしようかと
(4)男性(66) 2 窃盗(万引き) 有 食事は5日くらい我慢してたかも
(5)男性(72) 13 窃盗(万引き) 有 もう年だし、できる仕事もない
(6)男性(69) 7 窃盗(万引き) 有 できるなら畳の上で往生したい
(7)女性(67) 5 窃盗(万引き) 無 孫が生まれ、絶対最後にしないと
(8)男性(74) 17 窃盗(万引き) 有 刑務所に40年近くいてしまった
(9)男性(72) 3 窃盗(置き引き) 無 本来の自分に戻るチャンスだと
(10)男性(68) 2 窃盗(万引き) 有 60歳の誕生日を留置場で迎えた
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2010.10.29 |
| Comments(4) | Trackback(2) | ・障害者と「犯罪」
鳩山総理は、小沢捜査に対抗するものと見られるのはまずいと思ってか、警察や検察による「取り調べの可視化」には消極的なな答弁をしていましたが、これは急ぐべきです。
私はかつて、知的障害者の犯罪と冤罪について書き、「誤解を恐れずに、ストレートに言えば、知的障害者を筋書きどうりに自白させて、犯罪者に仕立て上げるぐらいは、多少とも知的障害者を知るものにとっては、赤子の手をひねるよりも簡単なこと」だ、「自らを守る力を持たぬ弱者が冤罪被害者になるという、由々しき状況は直ちにただすべきだ!」と書いたことがある。
東金女児殺害事件について、弁護士が独自鑑定し容疑者の知的障害の状況では「犯行不可能」だと主張しています。
東金女児殺害、弁護士が独自鑑定「犯行不可能」(2010年1月25日21時33分 読売新聞)
千葉県東金市で2008年9月、保育園児成田幸満(ゆきまろ)ちゃん(当時5歳)が遺体で見つかった事件で、殺人罪などで起訴された○○被告(22)の主任弁護人の副島洋明弁護士が25日、東京都内で記者会見を開き、○○被告の運動能力や言語コミュニケーション能力に関する独自の鑑定結果を発表した。
幸満ちゃんを抱えて自宅に連れ帰ったり、捜査員と論理的に会話したりすることは不可能だったとして、鑑定結果を証拠採用するよう千葉地裁に提出しており、公判で無罪を主張する。
副島弁護士によると、鑑定は、発達障害の専門家など計5人に依頼。昨年10月から今月にかけて、5人がそれぞれ○○被告と接見し、心理テストなどを行った。その結果、○○被告には起訴事実に書かれたような行為をする能力がなく、「取り調べの方法が不適切で、供述の任意性、信用性がない」としている。
副島弁護士は先月、遺留物から採取されたとする指紋について、「○○被告と一致しない」との鑑定結果を公表。無罪を主張する方針を示していた。
実に難しい問題です。
私は、経過を見ながら現時点では弁護士を支持しています。
私の作業所でも、売り上げのお金が盗まれることが何度かありました。事実を調べ、聞き出すことは実に難しいのです。あいまいにすれば、習い性となり、自分の意思ではどうしようもなくなってしまいます。意志は、言語的思考が担う高次な心理過程ですから、知的な障害は意志にも少なからず関係するのだと思います。従って、私たちは、そういうことが起きない状況、起こさない環境をどう作るかということに腐心します。・・・多少横道にそれましたが・・・。
勿論、私たちの援助・指導する立場からの聞き出し方や接し方と、警察等の取調べは質的に違うものがあるでしょうが、いずれにしても、知的障害の程度にもよりますが、基本的には本人の「言語的表現」は実に頼りないものだということです。「自白」など殆どどうにでも誘導できるのです。
厳密に証拠に基づいた判断が必要だと思います。
こういう場合の冤罪を防止するために、そして取り調べの適正化を図るためにも、可視化は急がなければならないでしょう。政争の具としてもてあそぶなどもってのほかです。
以下、関連過去ログ:
■NO.838 知的障害者と冤罪。(加筆再掲)
http://toyugenki2.blog107.fc2.com/blog-entry-842.html ■NO.801 知的障害者の犯罪と孤独・・・千葉・東金の女児遺棄事件を考える。
http://toyugenki2.blog107.fc2.com/blog-entry-805.html ■NO.804 適正な取調べと報道を!・・・千葉・東金の女児遺棄事件を考える。 ・・・その(2)
http://toyugenki2.blog107.fc2.com/blog-entry-809.html ■NO.810 適正な取調べと報道を!・・・千葉・東金の女児遺棄事件を考える。 ・・・その(3)
http://toyugenki2.blog107.fc2.com/blog-entry-814.html ■NO.811 重ねて、適正な取調べと報道を。
http://toyugenki2.blog107.fc2.com/blog-entry-818.html ■NO.837 取調べの可視化を!
http://toyugenki2.blog107.fc2.com/blog-entry-841.html ■NO.1365 知的障害者と冤罪 (その2)・・・ 東金女児殺害事件 弁護団が無罪主張へ
http://toyugenki2.blog107.fc2.com/blog-entry-1400.html ■NO.1475 東金女児殺害事件 指紋不一致 無罪主張の根拠に
http://toyugenki2.blog107.fc2.com/blog-category-62.html 取調べの「可視化」を急ぐべし!
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2010.01.27 |
| Comments(3) | Trackback(5) | ・障害者と「犯罪」
冤罪があってはならない。
犯罪捜査は慎重でなければならない。
当道場は、特に知的障害者の捜査に当たっては慎重で適正な取調べを要求してきました。
東金女児殺害事件で、「指紋が不一致」という新たな情報が報道されています。メモしておきます。
<東金女児殺害>レジ袋の指紋、被告と不一致 弁護側鑑定(12月2日23時53分配信 毎日新聞)
千葉県東金市で08年9月、保育所園児、成田幸満(ゆきまろ)ちゃん(当時5歳)が殺害された事件で、殺人罪などで起訴された同市東上宿、無職、○○被告(22)の弁護団が、物証とされる指紋の鑑定を民間研究所に依頼したところ、○○被告と一致しない結果だったことが分かった。事件関係者が2日、明らかにした。弁護団は3日に会見し、鑑定結果を公表する見通し。
捜査関係者によると、幸満ちゃんの衣服と靴が入れられていたレジ袋から検出された指紋の一つが、県警の鑑定で○○被告の指紋と一致したという。
この指紋を改めて鑑定したのは、斎藤鑑識証明研究所(宇都宮市)の斎藤保氏。事件関係者によると、レジ袋の指紋と○○被告の指紋が、一部合致しない部分があった。斎藤氏によると、指紋が一致すると判断するためには、指紋線にある12の特徴点がすべて一致しなければ完全一致とはならない。一つでも特徴が異なる「矛盾点」があれば不一致とされるという。
3日は公判前整理手続きが予定されており、弁護側は今回の鑑定結果を、無罪主張の根拠の一つにする方針。【中川聡子、神足俊輔】
主任弁護人の副島洋明弁護士は、「県警の鑑識には重大な誤りがある。これで被告の犯行を裏付ける物証はなくなった。真犯人は別にいる」としているようです。
以下、関連過去ログ:
■NO.838 知的障害者と冤罪。(加筆再掲)
http://toyugenki2.blog107.fc2.com/blog-entry-842.html ■NO.801 知的障害者の犯罪と孤独・・・千葉・東金の女児遺棄事件を考える。
http://toyugenki2.blog107.fc2.com/blog-entry-805.html ■NO.804 適正な取調べと報道を!・・・千葉・東金の女児遺棄事件を考える。 ・・・その(2)
http://toyugenki2.blog107.fc2.com/blog-entry-809.html ■NO.810 適正な取調べと報道を!・・・千葉・東金の女児遺棄事件を考える。 ・・・その(3)
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2009.12.04 |
| Comments(0) | Trackback(1) | ・障害者と「犯罪」
事件から1年、容疑者逮捕から9ヶ月。
東金女児殺害事件の裁判が動き出しているようだ。
3日ほど前から、彼岸花が忽然とその姿をあらわした福岡地方です。
東金女児殺害、無罪主張へ 「自白誘導」と弁護団(東京新聞 2009年9月13日 19時06分)
千葉県東金市で昨年9月、成田幸満ちゃん=当時(5)=が殺害された事件で、殺人罪などで起訴された○○被告(22)の弁護団は「被告の自白は客観的な状況や証拠と合致しない。知的障害に乗じて誘導されており、犯行の事実はない」として、無罪を主張することを決めた。14日の公判前整理手続きで裁判所に伝える。副島洋明・主任弁護人が明らかにした。
弁護団は7月、幸満ちゃんと同じ18キロの重さの人形を使って再現実験をした。その結果(1)拉致から殺害の現場とされる被告宅まで330メートルあり、嫌がる幸満ちゃんを運ぶのは通常の体力の男性では困難(2)市の繁華街なのに目撃者がいない(3)浴槽の浅い残り湯に沈めて殺したとされるのに抵抗した形跡がない―など不自然な点が多かったという。
3日間連続で家宅捜索しても被告の家から幸満ちゃんの毛髪や指紋が見つかっていないことや、殺害動機が変遷していることも不自然だとした。(以上引用。被告名は引用者が伏せました)
誤解を恐れずに、ストレートに言えば、知的障害者を筋書きどうりに誘導し自白させて、犯罪者に仕立て上げるぐらいは、多少とも知的障害者を知るものにとっては、赤子の手をひねるが如く簡単なこと。筋書きが完璧であれば、まんまと濡れ衣を着せられるのであるが・・・。
長年知的障害者に関わる仕事をしてきた私は、この事件を関心を持って見守ってきた。どれだけの証拠があるのかは分からないが、報道された弁護団の主張を読む限り、限りなく冤罪の臭いがしてくる。
以下、関連過去ログ:
■NO.838 知的障害者と冤罪。(加筆再掲)
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http://toyugenki2.blog107.fc2.com/blog-entry-805.html ■NO.804 適正な取調べと報道を!・・・千葉・東金の女児遺棄事件を考える。 ・・・その(2)
http://toyugenki2.blog107.fc2.com/blog-entry-809.html ■NO.810 適正な取調べと報道を!・・・千葉・東金の女児遺棄事件を考える。 ・・・その(3)
http://toyugenki2.blog107.fc2.com/blog-entry-814.html ■NO.811 重ねて、適正な取調べと報道を。
http://toyugenki2.blog107.fc2.com/blog-entry-818.html ■NO.837 取調べの可視化を!
http://toyugenki2.blog107.fc2.com/blog-entry-841.html ★事件のその後については、
Afternoon Cafeさんの
「こんなでっち上げ事件がおきているのに、刑事司法のあり方、犯罪報道のあり方は一向に改善されません(東金幼女殺人事件)」を参照ください。
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2009.09.14 |
| Comments(1) | Trackback(3) | ・障害者と「犯罪」
大阪のおばちゃん、気迫の捕り物やなあ。
でもこの話、それだけでは終わらせるわけにはいかないだろう。
窃盗:71歳女性、ひったくられ取り返す 自転車で350メートル追跡--大阪
◇大阪府警、容疑者逮捕
7日午前8時ごろ、大阪市生野区林寺4の市道で、自転車に乗っていた同市東住吉区のパートの女性(71)が、前かごに入れていた手提げバッグを後ろから自転車で近づいた男に盗まれた。女性は自転車で約350メートル追い掛け、男を取り押さえた。大阪府警生野署は窃盗容疑で現行犯逮捕した。女性にけがはなかった。
男は住所不定、無職、早川英治容疑者(32)。女性は「腹が立ったので絶対つかまえたろうと思った。(容疑者が)若い子やったので、気の毒やわ」と話しているという。
同署によると、女性は被害現場から約200メートルの路上で、自転車を乗り捨てた早川容疑者にいったん追いつき腕をつかんだ。同容疑者は振り切ってさらに逃走。女性は追跡をやめず、150メートル先で捕まえた。バッグに入っていた現金は110円だった。
早川容疑者が乗り捨てた自転車はチェーンが外れていたという。【衛藤達生】
逮捕された男は32歳。自転車のチェーンが外れて、走って逃げようにも逃げられない状態だったと言う。民家の軒下に隠れようとしたところをあえなく逮捕された。
ドジな奴だと笑うに笑えない。「金がほしかった」と言うこの男、「腹が減ってどうしようもなかった。最後は立っていられなかった」と言ったそうだ。その時の所持金は1円玉2枚。
おばちゃんは近所の工場のパート労働者。財布の中身は112円だったという。
腹をすかせたこの青年、逃げおおせたとしてもおにぎり1個。
おばちゃんは、「若い子やったので、気の毒やわ」と話していたという。おばちゃんもこれぐらいの子どもがいたかもしれないし、自身も決して裕福ではない。身につまされたんだろうな。
腹が減る貧困と「助けて」と言えない孤独。 犯罪は犯罪、許せないのは当たり前だが、青年も胸を痛めるおばちゃんも共にかわいそうでもある。
東京都内のデータだが、引ったくりが増えているという。弱者をねらって「容易に」手が出せる犯罪・・・。
不況の影 ひったくり急増 前年比35%増 高齢・女性 被害目立つ(2009年3月8日 東京新聞朝刊)
東京都内で今年に入り、ひったくり事件が急増している。警視庁捜査三課によると、5日現在で502件と、昨年同時期に比べ132件(約35%)増えた。同課幹部は「経済状況の悪化や雇用不安と無関係ではない」と分析。被害者の大半は女性で、高齢者が多い地域の発生が目立つことから、同課は「弱者を狙う卑劣な犯行」として警戒を強める。
都内のひったくり被害は2004年には年間4518件だったが年々、減少。08年は1985件まで減っていた。
道具や技術を要する侵入盗などと違い、バイクや自転車があれば事足りるため「職にあぶれたり、ギャンブルに負けた若者や暴走族出身者らが安易に手を出している」(捜査三課幹部)という。
結局はこの日本社会、「三食つきの刑務所が一番のセーフティーネット」なのである。 山本譲司氏に『累犯障害者―獄の中の不条理―』 という著書がある。
氏はご存知の通り、秘書給与詐取で実刑に服した元民主党衆議院議員である。
受刑中に「障害者の世話係り」を担当するという経験の後に、出所後の調査で実態を鋭く告発している。日本の障害者福祉がいかに貧しいか、刑務所が彼らにとって最初で最後のセーフティーネットとなっている実態を。
知的障害者の場合 法務省の統計では、毎年、刑務所に入ってくる受刑者の2割、約7千人には何らかの知的障害があるという(IQ70以下程度を指標にしている)。知的障害者は対人口比で約2~3%として見ると異常に多いことがわかる。
また厚生労働省の研究班が一昨年公表したサンプル調査では、知的障害の疑いがある受刑者410人の約7割は再犯で入所していた。犯行の動機も「生活苦」が4割で最も多かった。
知的障害者が福祉サービスを受けるには、療育手帳がなければならない。しかし、さきのサンプル調査で対象410人のうち、手帳を持っているのは26人にすぎなかったという。
手帳を得るには、障害者側が申請しなければならない。先ずアクセスに障壁がある。また「18歳までに障害が発生した証拠」も求められる。これも大きな壁になっている。
軽度の知的障害者やいわゆるボーダーの人たちの多くは、貧困層で福祉を利用する事さえも知らず自己申請ができない。そうして貧困の谷間をさまよい、生活苦から軽微な窃盗などの犯罪に手を染めるのである。出所しても貧困は解決されず7割が再犯を繰り返す。
そして、その貧困と知的障害は、世代を連鎖していると言わなければならない現実がある。
経済的・精神的「その日暮し」の貧困から 這い出せないでいる。
参考過去ログ:
NO.436 受刑者の出所―知的障害者の復帰に手を・・・朝日の社説を支持する。 「生きづらさ」を解決するのが政治の仕事 引ったくりの青年も貧困にあえいでいる。
障害のある人たちも、貧困をベースに障害という重荷を二重を背負っている。
彼らの、最初にして最後のセーフティーネットがこの国では刑務所なのである。
貧困も障害も、「生きづらさ」の根源にあり、それゆえに刑務所しか生きるところがないという社会。この国は、そういう国なのだ。この事実が、この国の福祉の貧しさを象徴的に物語っている。
「いまや、刑務所の一部が福祉の代替施設と化してしまっている」日本の福祉の現実! 国民が生きることを支え、「生ききづらさ」の原因を取り除き、無数のセーフティーネットを張るのが、いや、落ちてしまいそうな綱渡りの生き方をしないですむような、一人ひとりの生活を支えるのが政治の仕事だと思う。
是非お読みください。 山本譲司氏の出版の記
「たくさんのクレームが欲しい」を以下紹介しておきます。
この本を出版するに当たって、ひとつの覚悟がある。それは、障害者本人および障害者団体から、本の内容に関してクレームが寄せられることである。「累犯障害者」というタイトルからして、福祉関係者にとっては、かなり刺激的な言葉かもしれない。
しかし私は、見てしまったのだ。彼ら「累犯障害者」の存在を知ってしまったのである。
秘書給与詐取という申し開きのできない罪を犯した私は、五年前の六月、一審での実刑判決に従い、刑務所に服役した。入所した私を待っていた懲役作業は、障害のある受刑者たちの世話係だった。驚くことに、日本の刑務所には、知的障害や身体障害など、社会的ハンディを抱えた受刑者が数多く収容されていたのだ。ところがその事実は、これまで一切伝えられてこなかった。新聞・テレビの大手メディアは、世間を騒がす事件であっても、犯人が障害者だと分かった途端、報道自体を自粛してしまうからである。本の中でも触れている「浅草・女子短大生殺人事件」や「伊勢崎・女性監禁餓死殺人事件」などが顕著な例だ。
日本のマスコミは、努力する障害者については、美談として頻繁に取り上げる。もちろん、それも障害者の一つの姿であろう。だが一方で、健常者と同じように、罪を犯す障害者もいるのだ。
障害者が起こした犯罪――。確かにこれは、マスコミにとって、センシティブな問題であるかもしれない。容疑者の障害を公表すれば、障害者は事件を起こしやすいという、あらぬ誤解と偏見を社会に与えてしまう恐れもあるだろう。しかし、障害者による犯行だからといって、その事実を社会から消し去ってしまっていいのか。結果、罪を犯した障害者は、この社会にはいない者として捉えられ、世の中から排除されているのだ。
議員在職時、「セーフティーネットのさらなる構築によって、安心して住める社会を」などと、偉そうに福祉政策を論じていた私。ところが、現実は全く見えていなかった。我が国のセーフティーネットは、非常に脆い網だったのだ。毎日たくさんの障害者たちが、福祉とつながることもなく、ネットからこぼれ落ちてしまっている。そして、やっと司法という網に引っかかり、刑務所で保護されているのだ。これが、日本の刑務所の現実、いや、日本の福祉の現実だった。いまや、刑務所の一部が福祉の代替施設と化してしまっているのである。
「こんな人たちを刑務所に押し付けられても困るんだが……」
刑務官たちも、障害者への処遇には苦慮していた。結局、獄中での障害者は、福祉的視点でケアされることはなく、ただ薬漬けにされているだけだった。周りの受刑者からもネグレクトされていた。それでも彼らは、出所後、またすぐに刑務所に戻ってくる。
ある日、障害を抱えた受刑者の一人が真顔で語った。
「俺ね、ずっとここで暮らしてもいいと思っているんだ。これまでの人生で、刑務所の中が一番暮らしやすかったから」
私は彼の言葉に、強いショックを受ける。そして、その言葉が、出所後の私を福祉の道へと導いてくれたのだ。
現在の私は、障害者福祉施設に支援スタッフとして通うかたわら、罪を犯してしまった障害者の周辺を訪ね歩いたりもしている。障害のある受刑者たちは、一体どういう理由で服役することになったのか。それが受刑生活のなかで、ずっと気になっていたからだ。
福祉の現場にいると、彼ら障害者にとって日本という国がいかに生きづらいかが、見えてくる。福祉から見放され、その挙げ句、ホームレスになる障害者やヤクザの鉄砲玉になる障害者、さらには売春婦になってしまう障害者などなど、一般社会の中で居場所を失った障害者たちと数多く出会ってきた。そんな彼らの最終的な行き場所が、刑務所となるのである。
一方で私自身、加害者になる障害者よりも被害者になる障害者のほうが何十倍も多いということも分かっている。しかしこの本では、「触法障害者・虞犯障害者」と呼ばれ、福祉関係者から敬遠されている人たちのみを取り上げ、彼らが犯罪に至る経緯を追いかけてみた。なぜならば、我が国の福祉の現状を知るには、受刑者と成り果ててしまった彼らに焦点をあてたほうが、よりその実態に近づくことができるからである。福祉の貧困さが露わになるのだ。
どうか、福祉関係者だけではなく、多くの方々からこの本に対するクレームをお寄せいただきたい。そう願っているし、それがこの本を出版した目的でもある。そして結果として、一人でも多くの人に、「累犯障害者」の問題に目を向けてもらえれば幸いである。(以上、引用)
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2009.03.12 |
| Comments(2) | Trackback(3) | ・障害者と「犯罪」
(NPJ お薦め ブログ 推薦御礼稀少な情報だからでしょうか?)
佐賀市の安永健太さん=当時(25)=が警察官らに取り押さえられた直後に死亡した問題で、佐賀地裁が、遺族側から付審判請求を申し立てられた警察官五人のうち一人を、特別公務員暴行陵虐罪で審判に付す決定をしました。
遺族側は請求を棄却された残り四人について、不服申し立てをおこなう方針です。
付審判請求とは、
公務員権乱用や特別公務員暴行陵虐などの罪について、告訴・告発人が不起訴に不服がある場合、裁判を行うことを裁判所に請求できる制度。付審判決定は起訴と同一と見なされます。
付審判決定は2日付。決定書によると、この警察官は2007年9月25日午後6時5分ごろ、佐賀市内の歩道で、職務執行として安永さんを保護する際、素手で胸などを数回殴る暴行を加えました。
県警はこれまで、警察官らが自転車で蛇行運転する安永さんを発見し、停止を求めましたが、安永さんが従わず、追突したバイクをけるなど暴れたため取り押さえたとし、暴行はなかったと説明しています。
しかし、取り押さえられた安永さんは、心肺停止状態となり、搬送先の病院で、同日午後7時に死亡が確認されました。
遺族は08年1月に特別公務員職権乱用等致死の疑いで署員らを告訴しました。しかし、佐賀地検が不起訴処分としたため、同年4月に付審判請求を申し立てていました。
安永さんの死亡事件を考える会は、「安永健太さんの死亡事件の真相を明らかにするために、裁判も含め真相究明に係る様々な取組みを支援し、二度とこの様な惨事が起きないように、障がい者が地域で安心して暮らしてゆくために、障がい者の権利擁護についても同時に考えてゆくことを目的として活動しています。」
以下、最近の出来事 安永健太さんの死亡事件を考える会より引用して紹介します。
« 歴史的な付審判決定!<0.07%の壁打ち破る>
報道資料
ついに、この日がきました。昨年2008年3月29日の佐賀地検の不起訴を受け、その直後ご遺族が佐賀地裁に対し、同年4月3日に佐賀県警の警察官5名を特別公務員暴行陵虐致死容疑にて付審判請求していた件について、11ヶ月経った昨日3月3日に、直接暴行を加えたとされる警察官1人を特別公務員暴行陵虐罪で付審判を開始するとの決定を下しました。残りの4名の警察官に対しては課題が残りましたが、弁護団としては、暴行に加わっている点からしても、共犯であり、保護の範囲であったとは言えないとの見解を示しています。
ちなみに、この付審判請求ですが、平成に入ってから今までで5700件以上行われていますが、通ったもの、すなわち付審判の決定がでたのは、本当にわずか4件だけで、確立から言えば0.07%といった、非常に厚い壁であります。
<決定のポイント>
遺族側が求めたのは、
①あくまで一連の取り押さえに加担した5名の警察官に対する罪。
②暴行があった取り押さえ行為により、健太さんが死に至らしめられた。ということであります。
今回の決定では、直接暴行をくわえた一人の警察官についての付審判開始であり、残りの4名については、取り押さえに加わっていても付審判開始にはいたらないということです。
また、暴行と死亡との因果関係については、今回の決定では認めず、「陵虐致死」ではなく、「陵虐」となっています。
これらの件について、弁護団は、まず
①4名の警察官に対しては、取り押さえに加わっており共犯である。したがって今後不服申し立ても検討するとのことです。
②「致死」までに至っていない点については、暴行と死との因果関係が充分に認められるので今後も「致死」ということを目指していくとの事でありました。
とにかく、ご遺族も、弁護団も応援してくださった全国の皆様に対し、本当に良い報告ができたと喜んでいらっしゃいました。全国の皆様から寄せられた署名は11万人にも及ぶ勢いで、未だに事務局へ送られてきている状況です。弁護団は、裁判所はこの11万人の声を無視することはできなかったのではないかと、今回の決定について評価しています。考える会としましても、2008年4月18日の街頭署名を皮切りに、各地で行った、取り組みに際し、多くの皆様のご支援とご協力を賜りましたことは、本当にありがたく感謝申し上げる次第です。
今回の結果につきましては、3月14日の緊急報告会にて詳しくご報告したいと思っておりますので、会員の皆様や署名を頂きました皆様、募金、応援のメッセージを下さった全国の皆様、そして、これから応援しようとお考え下さっている皆様、どなたでも参加できますので、是非とも、ご参加ください。参加につきましては、事務局までお問い合わせ下さい。(参加には申し込みが必要です。)
この安永さんの死亡事件は単に障害がある人の問題ではないと思います。警察は最後まで健太さんを障害者とは判らなかったと言っていますが、それ自体もこれから明らかになるのではないでしょうか。健太さんが障害者だとわかっての行為でなかったか。本当に真相究明が急がれます。単なる障害者理解の掛け声では、本当の再発防止にはならないと思います。二度とこのような悲劇をおこさないためにも、引き続き皆様の応援が必要であります。
緊急報告会
とき:2009年3月14日(土)13:00~16:00(受付12:30~)
ところ:佐賀市文化会館 イベントホール
参加費:無料
第一部 緊急報告 付審判請求の結果から
遺族あいさつ
弁護団:付審判決定の評価と今後の展開
考える会:付審判の意味と今後
第二部 特別講演
「障害がある人が地域の中で暮らすことと人権問題」
講師:藤井 克徳 氏
※参加には申し込みが必要です。申し込みに関するお問い合わせは、考える会事務局までご連絡ください。
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2009.03.08 |
| Comments(0) | Trackback(1) | ・障害者と「犯罪」
「プレカリアートのなく頃に」さんから、千葉東金女児遺棄事件の「容疑者」(知的障害のある青年)の弁護団の訴えがトラックバックされて来ました。
担当弁護士が、事件の周辺にある問題をリアルに伝えてくれています。共感できる内容です。
少しでも多くの人に知っていただきたくここに紹介します。
====================================================================
知的発達障害者人権センター基金
会員・支援者 各位
知的発達障害者刑事弁護センター
事務局 副 島 洋 明
ニュースレター・№ 99
-千葉・東金事件弁護団への支援要請-
1 12月9日に母親から弁護人依頼を受け、弁護人となる。
事件は、12月6日に被疑者K君(21才)が死体遺棄罪容疑で千葉県警・東金警察署に任意同行され、逮捕されたことからはじまりました。
地元ではそれ以前、被害児の遺体発見直後(2ヶ月半前)から、K君を容疑者とする取材がはじまり、それは皆さんもご存じの通り、TBSをはじめテレビ、新聞が競ってK君へのさまざまな“予断”にみちた取材報道を繰り返していました。しかし、母親は息子のK君がマスコミの“えじき”になっているということを、逮捕後の報道まで全く知らされていませんでした。
つまり、マスコミは、K君が地元の養護学校(特別支援学校)を卒業した知的障害者だとわかりながら、K君を犯罪容疑者として見込みをつけた取材、撮影を、母親ら保護者への打診も同意もなくやってきております。憲法上では、犯罪容疑者扱いされる人には当然、人権として自己防禦の弁護人依頼権、黙秘権が保障されています。
しかし、マスコミは、K君が知的障害のため通常の人と比べて自己防禦能力が弱いことをわかっておりながら、その「弱さにつけ込む」が如き誘導的取材と撮影をおこなってきております。私はこのことが本当に許せません。
このニュースレターの読者の方々は、これまで私が担当してきた数々の事件のニュースレターを読む中で、警察・検察による虚偽というか誇張した怪しげな情報操作によって、マスコミがいかに社会に間違った犯罪情報を流布してきたか、そのことによって、いかに容疑者とその家族を苦しめ、重罰化におとしいれてきたかをわかっていただけていると思います。(例をあげれば、宇都宮事件では、警察・検察ははじめからさんの知的障害につけ込み、無実の人間を連続強盗犯人にでっちあげていましたし、浅草事件でも、犯行動機や犯行態様でニセの警察情報をたれ流していました。そんな例は枚挙にいとまがありません。)
2 千葉・東金事件弁護団発足。
私が主任(代表)となって、現在のところ4人の弁護士(千葉県弁護士会から現在のところ2名)が金事件弁護団を結成し、被疑者K君の弁護とその母親、そしてガンの末期状態にある父親の支援に入ることになりました。
母親は、ここ数年間、夫(K君の父親/形式的に過去離婚した形となっている。)とK君をその細腕ひとつで支えてきていましたが、この事件のために実質上“職”を失いました。そして、今は予期しない息子の事件のために、ふってわいた大騒ぎに巻き込まれ、毎日眠れぬ生活を送っています。マスコミによるメディアスクラムの被害は甚大です。事件(12月6日)直後には、末期状態の夫(K君の父親)の入院している病院に、母親が勤めていた料理やさんに、そしてK君と母親の自宅(マンション)の3カ所に多数のマスコミ・報道関係者がおしかけ、昼夜を通して取り囲むという状態がつづいていました。私の周囲の関係者は7日から母親と連絡をとろうと動いていましたが、母親は外へ出られず、携帯電話も切り、灯りも消して閉じこもらざるを得ないという状態でした。食べるものも買いに行けませんでした。
それにしても、今回の事件の問題は、マスコミが、とりわけテレビが、知的障害をもつK君を、容疑者としの自己防禦能力のないことにつけ込んで、あたかも“ひっかける”、若しくは“上手にだます”という手法で取材・撮影を強行していたことです。新聞も同じようなもので、K君と結びつけて性的犯罪や凶悪な犯行をにおわせて、おそらく警察による不確かな推測情報、怪しげな情報をたれ流してきています。
K君は、確かに死体遺棄罪容疑で逮捕・勾留されていますが、そのための物的証拠(例えばビニール袋の指紋とか)が確かめられたわけでもなく、弁護人である私自身、警察・検察がつかんでいるというそのビニール袋とK君との関連性はどうなっているのか、また、死体遺棄容疑の実体的証拠なり動機の構成や犯行態様(プロセス)はどうなっているのか、証拠が開示されていない現段階では全くわかりません。現在のような捜査段階での弁護人の役割は、当然のことながら、「無罪推定の原則」にのっとってその捜査・取調べをチェックし、不正や違法な捜査をやらせないということにあります。私は接見の初日(12月9日)に、捜査機関に対して、①取調べでの全面的なビデオ録画化、②供述調書は取調官の“作文”(ストーリー)ではなく、一問一答方式による調書化、そして③被疑者K君の自己防禦能力を中心とした訴訟能力の早急な簡易精神鑑定の実施を要求していますが、警察は、その後の取調べでは全くその要求を拒絶しております。
3 支援要請
-とりわけ弁護団の弁護活動とK君家族の生活支援のために-
この千葉・東金事件弁護団は、おそらく10名近くの“実務”を着実に遂行していく弁護団をつくって、早急な調査活動と警察・検察の取調べに対抗するK君本人への接見をはじめとする弁護活動(連日)をやっていくつもりです。現在も、弁護人によるK君への接見は、連日、土曜日曜を含めてスケジュールを組んでやってきております。
また、K君の家族は、重病の父親をかかえてこれまでも質素な暮らしをしてきておりますが、この事件に巻き込まれて母親は職を失い、収入の道を断たれた状態にあります。これまでも私がやってきた事件は、いつも被疑者の弁護とともにその家族への生活支援は欠かせませんでした。この人たちの刑事事件とはそういうものです。
貧困という問題、社会的孤立という問題、福祉による支援がないという問題、本人と家族を追いつめる差別や虐待の問題、それが常に事件の背景(舞台)となっています。私から、せめて千葉・東金事件弁護団(現在5名、近く10名に)の弁護団活動費用として、会員・支援者の皆様に特別に献金、カンパの要請をさせていただきたい。よろしくお願い申し上げます。
振込先はこれまで通り以下の口座にお願いします。
人権センター基金会費・支援振込先
銀行口座/みずほ銀行 麹町支店(普)2117173 人権センター副島洋明
郵便振替/00130-5-75221 知的障害者刑事弁護センター
以上、転載です。
この事件に関連する私の過去ログも参考にどうぞ。
過去ログ:
NO.801 知的障害者の犯罪と孤独・・・千葉・東金の女児遺棄事件を考える。 NO.804 適正な取調べと報道を!・・・千葉・東金の女児遺棄事件を考える。 ・・・その(2) NO.810 適正な取調べと報道を!・・・千葉・東金の女児遺棄事件を考える。 ・・・その(3) NO.811 重ねて、適正な取調べと報道を。 NO.937 取調べの可視化を! NO.838 知的障害者と冤罪。(加筆再掲) お付き合いついでに
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2008.12.25 |
| Comments(5) | Trackback(2) | ・障害者と「犯罪」
今年3月の古い記事だが、アクセスが多く(あくまでもこの弱小ブログ内で・・笑)関心も高いので、関連する最近の記事も最後にリンクして再掲したい。
千葉県東金の知的障害者が関わったと疑われている事件で、「東金女児遺棄:責任能力「認められる」…容疑者に簡易鑑定」(毎日)と報道され、殺人容疑での立件も視野に取調べが進んでいるという。取調べの可視化を改めて要求する。
以下、再掲。
誤解を恐れずに、ストレートに言えば、知的障害者を筋書きどうりに自白させて、犯罪者に仕立て上げるぐらいは、多少とも知的障害者を知るものにとっては、赤子の手をひねるよりも簡単なことや。
知的障害者に自白誘導 誤認逮捕で慰謝料 宇都宮地裁 「朝日」より
記事はコピーしておくけど、長いから、興味ない人はスルーして、下のほうを読んでくださいね。
04年に二つの強盗事件で逮捕、起訴された後に真犯人が判明し、無罪が確定した宇都宮市に住む知的障害者が、精神的苦痛を受けたとして国と栃木県に計500万円の慰謝料を求めた国家賠償請求訴訟の判決が28日、宇都宮地裁であった。福島節男裁判長は「警察官が知的障害者の迎合的である特性を利用し、被害者供述に合致した虚偽の自白調書を作成した」などと認定。ほぼ原告側の主張に沿って、県警と宇都宮地検の捜査の違法性を認め、国と県に計100万円の支払いを命じる判決を言い渡した。
訴えていたのは吉田清さん(56)。吉田さんの逮捕や勾留(こうりゅう)に「十分な合理的根拠があったかどうか」をめぐり、(1)捜査当局が吉田さんの責任能力をどう認識していたか(2)自白の誘導や調書作成に違法性があったかなどが争われた。
判決で、福島裁判長は吉田さんについて「重度の知的障害があり、質問者に迎合しやすいという特性があった」と指摘。そのうえで「自ら詳細に供述したり指示説明したりするとは考えられず、自白調書などは警察官が大半を一定の方向に誘導して作成された」と県警の取り調べの違法性を認定した。
また、供述調書に添付された犯行現場を示す見取り図を「吉田さんが定規を使って書いた」とする県警の主張に対し、判決は「警察官の説明方法で作成されたとするには大きな疑問が残る」と述べた。この点について吉田さんは公判で、「警察官に無理やり手を持って書かされた」と証言していた。
さらに判決は、物証が全くない強盗事件は「自白が最も重要な証拠資料」だったとしたうえで、宇都宮地検の捜査に言及。「自白調書の裏付け捜査を行うべきだったのに行わず、自白調書の信用性を持たせようと、つじつま合わせの調書作成に終始した」と指摘したうえで、起訴自体が違法だったと結論づけた。
〈冤罪事件の経緯〉 栃木県警宇都宮東署が04年8月、吉田清さんを別の事件で逮捕。その後、ケーキ店とスーパーで起きた二つの強盗事件についても再逮捕した。宇都宮地検は、吉田さんを強盗罪などで起訴。当初、3件の起訴事実を認めた吉田さんは同年末、強盗罪について否認に転じた。その後、強盗事件については別の男が犯行を自供したことで、誤認逮捕が明らかになった。
宇都宮地裁は05年3月、吉田さんの強盗罪について無罪を言い渡した。これを受けて吉田さん側は同年8月、国と県に損害賠償を求めて同地裁に提訴した。
法の正義は、弱者など守らない!法を使い、弱者を餌食にしているのだ。
2,3日前、何気なく見ていたテレビで、ロシアの警察と犯罪についてのドキュメンタリーがあった。かの地では、刑務所にいるのはコーラを数本盗んだり、野菜や豚を盗んだり、貧困から軽微な犯罪を犯したものが殆どだそうだ。警察には、1日20件の犯罪検挙がノルマとして与えられ、安月給の警察が夜中まで犯罪者探しをするというのだ。警察とつるんで、ホームレスなど貧困者を犯罪者に”はめる”「狼」と言う組織的な存在もあると言う。
本物の悪達、マフィアや汚職役人やあくどい金持ちどもはすぐに賄賂を渡して、無罪放免らしい。
裁判官さえもその仕組みの中に管理されてしまっているという。
軽微でも犯罪には変わりはないが・・・、そういう事情が伝えられていた。貧困層が、弱者が犯罪者にされていく・・・。
宇都宮のこの事件は、言語コミュニケーション能力が低く、誘導尋問にも迎合的にひっかかりやすい知的障害者を、警察の筋書きどうりに「自白」させ、検察もそれを鵜呑みにして起訴した、典型的な
冤罪事件である。
残念ながら彼らは、優しく上手に、あるいは脅して、「ね、こうこうでしょ?」なんて言えば、「はい」と言うしかなくなってくる。
あの
志布志事件も、同じだ。つましく暮らす田舎の集落の人たちが、手柄を立てたい警察の餌食になり、抵抗もはかなく罪をでっち上げられたのである。
知的障害者を思いのままに操るのは、赤子の手をひねるが如く簡単です。
自らを守る力を持たぬ弱者が
冤罪被害者になるという、由々しき状況は直ちにただすべきだ!
法務省によると、実刑判決を受けて服役する知的障害者は年間300人だそうだ。数字はわからないが、受刑者にしめる割合としては異常に高いような気がする。
この件では、真犯人が出てきたが、
冤罪により自由の身をとらわれた知的障害者は相当な数に上るのではないだろうか。
勿論、彼らが犯罪を犯さないなどとは言わない。私自身も、数人のそういう知的障害者と関わってきた。その殆どは、貧困からの窃盗。・・・ま、この話は 置いておこう。
小学校の低学年のころだった。「警察は泥棒を捕まえるけど、困ってしまって泥棒をするのだから、泥棒をしなくてもすむように、警察は困った人を助けたり、相談に乗ってあげればいいのに・・・」と幼心に思ったことがあった。
日本国憲法は、こうした
冤罪から
人権を守るために次のように謳っている。
〔自白強要の禁止と自白の証拠能力の限界〕
第38条 何人も、自己に不利益な供述を強要されない。
2 強制、拷問若しくは脅迫による自白又は不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白は、これを証拠とすることができない。
3 何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は刑罰を科せられない。 この通りにやればいいんだよ。
ところがどうだ。この国の法務大臣は、あの
志布志事件を「
冤罪と呼ぶべきではない」と言ったばか者だ!こんな状況では、仲間たちは、この国の
憲法に守られ、安心して生きていけるとはいえないね。
でもこの大臣を選ぶ政治を選んだのは、国民なんだな。そう、あなたであり、私なのです。
何をなすべきか。
憲法を政治と暮らしに生かすために、こつこつと学び、行動するしかないでしょ!
主権者が愚かだと、自分の首を絞めるんだよ!自分の首だけならまだ「
自己責任」だけで救われる。
お隣にいる、弱い人たちまでも巻き添えにするんだよ・・・。
生きているということは、つながっているということなんだから。
追記(09・9・15):東金女児殺害事件の弁護団が無罪を主張する方針です。関連する記事をリンクしておきます。
■NO.838 知的障害者と冤罪。(加筆再掲)
http://toyugenki2.blog107.fc2.com/blog-entry-842.html ■NO.801 知的障害者の犯罪と孤独・・・千葉・東金の女児遺棄事件を考える。
http://toyugenki2.blog107.fc2.com/blog-entry-805.html ■NO.804 適正な取調べと報道を!・・・千葉・東金の女児遺棄事件を考える。 ・・・その(2)
http://toyugenki2.blog107.fc2.com/blog-entry-809.html ■NO.810 適正な取調べと報道を!・・・千葉・東金の女児遺棄事件を考える。 ・・・その(3)
http://toyugenki2.blog107.fc2.com/blog-entry-814.html ■NO.811 重ねて、適正な取調べと報道を。
http://toyugenki2.blog107.fc2.com/blog-entry-818.html ■NO.837 取調べの可視化を!
http://toyugenki2.blog107.fc2.com/blog-entry-841.html ■NO.1365 知的障害者と冤罪 (その2)・・・ 東金女児殺害事件 弁護団が無罪主張へ
http://toyugenki2.blog107.fc2.com/blog-entry-1400.html ★事件のその後については、
Afternoon Cafeさんの
「こんなでっち上げ事件がおきているのに、刑事司法のあり方、犯罪報道のあり方は一向に改善されません(東金幼女殺人事件)」を参照ください。
知的障害者が罪のない無垢な人々とは言いません。同じように汚れたり、美しかったり・・・俺たちとなんら変わらない人間です。ただ、知的に障害があるのです!
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2008.12.23 |
| Comments(5) | Trackback(3) | ・障害者と「犯罪」
最初にお知らせ。
「労働組合ってなにするところ?」のみどりさんがTBを送ってくださいました。紹介します。
いよいよ明日は12月24日。労働相談・生活相談の集中日です。
また、官公庁などが年末年始休業に入ってしまう前に何らかの行動をとるには、この24日から26日が勝負です。
そんな訳で、ここしばらくの間調べてきた困ったときの相談先一覧をまとめておきたいと思います。
困ったときは、諦めたりやけになったりする前に、まず相談です。
こちらのリンクから→困ったときの相談先一覧・総集編
上記の相談先にお住まいの地域のものがない場合も、専門家同士の横のつながりで近くの相談先を紹介してもらえる可能性が高いので、とりあえず抱えている問題に関連性がありそうなところに電話してみてください。
知的障害者が関わったと疑われているこの事件については、「適正な取調べと報道」を訴えてきたところです。取調べの適正化のためには、今こそビデオ記録による「取調べの可視化」を強く求めるものです。
東金女児遺棄:責任能力「認められる」…容疑者に簡易鑑定(毎日)
千葉県東金市の保育所園児、成田幸満(ゆきまろ)ちゃん(当時5歳)が遺体で見つかった事件で、死体遺棄容疑で逮捕された同市東上宿(ひがしかみじゅく)、無職、A容疑者(21)(記事は実名報道)に対する簡易鑑定が実施され、刑事責任能力は認められるとの結果が出たことが分かった。
捜査関係者によると、容疑者は01年に軽度の知的障害と診断されたが、容疑事実に関して判断する能力はあると認められた。県警東金署捜査本部は、容疑者が幸満ちゃんの死亡についても関与した疑いが強いとみており、拘置期限の26日までに殺人容疑で立件できるか判断する。
A容疑者は調べに対し、幸満ちゃんの遺体を抱えて自宅近くの路上に運んだことを認めている。浴槽の水につけたという趣旨の話もしているが、黙り込むことも多いという。
担当の弁護士は取調べをビデオで記録することを当初から求めてきたが、千葉県警東金署は、撮影は行わない方針だと報道されたいたが、一部は記録しているという報道もある。
警察庁は、2009年度(2009年4月)から、取り調べの録音・録画を試行することを決めており、それに先だって、2008年9月から、警視庁、大阪府警、埼玉、神奈川、千葉の各県警で、取り調べの録音・録画の試行を開始しているそうだ。
警察は、殺人容疑での立件も検討しているという。なお更、慎重に適正な取調べを検証するためにも、「取調べの可視化」は不可欠だろう。技術的にも簡単で、なんら問題はないのだ。
そうした中で、東金警察署が録画をしないのは、警察の思い通りの調書を作ろうとしているからだと疑われても仕方がない。
知的障害者の刑事事件については、近くは宇都宮事件という痛恨の教訓がある。
この事件は、言語コミュニケーション能力が低く、誘導尋問にも迎合的にひっかかりやすい知的障害者を、警察の筋書きどうりに「自白」させ調書を作り、検察もそれを鵜呑みにして起訴した、典型的な冤罪事件である。いや、正確に言えば、危うく冤罪となりかけた事件である。その冤罪を防止できたのは、真犯人が現れたという偶然によるものだ。
参考過去ログ:
NO.313 知的障害者と冤罪。 この件については、こちらの弁護士さんの記事がすっきりまとまっていて参考になります。
→
「法と常識の狭間で考えよう」参考過去ログ:
NO.801 知的障害者の犯罪と孤独・・・千葉・東金の女児遺棄事件を考える。 NO.804 適正な取調べと報道を!・・・千葉・東金の女児遺棄事件を考える。 ・・・その(2) NO.810 適正な取調べと報道を!・・・千葉・東金の女児遺棄事件を考える。 ・・・その(3) NO.811 重ねて、適正な取調べと報道を。 お付き合いついでに
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2008.12.23 |
| Comments(0) | Trackback(0) | ・障害者と「犯罪」
東金・女児遺棄事件のその後。報道も少しは「静か」になりつつあるのか・・・。
職場の持ち場変わり不満募らす 東金・女児遺棄容疑者(朝日)
千葉県東金市の路上で成田幸満(ゆきまろ)ちゃん(当時5)が遺体で見つかった事件で、死体遺棄容疑で逮捕された○○容疑者(21)(※筆者注/記事では実名)が事件前の今年7月ごろ、職場の持ち場が変わり、仕事内容が急変したことに不満を募らせ、退職するきっかけになっていたことがわかった。職場関係者などが取材に答えた。東金署捜査本部は、退職が事件前日の9月20日だったことから、事件との関連を調べている。
○○容疑者は同市に隣接する同県山武市の布団工場に05年から勤務。レンタル先から返却された布団を積むなどの作業を熱心にこなし、同僚との関係も良かったという。
関係者によると、7月ごろになって○○容疑者の持ち場が変わり、綿を機械に詰めるなどの比較的高度な作業になった。○○容疑者は仕事をうまくこなせなくなり、作業の遅さなどについて上司などから注意を受けていた。
しかられてもうつむいて黙って聞いていることが多く、その場で言い返すことはなかった。「頑張っているのに」「つらいよ」といった言葉をもらしていた。「胃が痛い」と体調不良を訴えるようになり、8月末からは無断欠勤が始まった。○○容疑者は「(作業が)変わっていやになっちゃった」「一生懸命にやっているのに頭にくる」と同僚らに話していたという。
工場によると、○○容疑者の母親から「働きたくないと話している」と連絡があり、9月20日、正式に退職した。
捜査本部は、○○容疑者の職場への不満が、事件のきっかけになった可能性もあるとみており、工場関係者から話を聴いている。
容疑者の働いていた時の様子が、なんだか手に取るようによくわかる気がする。彼らは、単純な作業でも、自分でできることには誇りを持ち、褒められ認められると、実にこつこつとよく頑張るものだ。しかし、いったん状況が変わると、適応できずに自信をなくし、全くやる気をなくしたりすることは良くある。私は、「自分で自分を立て直す力」と呼んでいるが、それが弱いと言う特徴がある。
本人も良くがんばっていたので、会社ももう一段高いものを要求したであろう事は察しがつくし、悪いことではない。「頑張っているのに」「つらいよ」と言う彼に、もう少しゆっくり丁寧に係わり援助していれば、少し時間がかかっても、新しい仕事を身につけて自信を取り戻し、更に成長した彼がいたかもしれないと思うと、残念な思いがする。
幼いころの写真を見ると、彼はダウン症のようだ(確定は出来ないが)。ダウン症の場合、単調な繰り返し(・・・周りが退屈だろうと思うほどのそれでも)を好み、変化を嫌うことが一般的特徴としてもある。彼にとっての新しい仕事は、相当な重荷であったことが伺える。
しかも、知的障害がもっと重いと「反発する力」も弱いが、軽度ゆえに自意識もあり、「一生懸命にやっているのに頭にくる」のであろう。こう言う意識がまた、重荷感を増幅するのである。(「主観的障害の重さ」と私は呼んでいるが、軽度ゆえの困難である)・・・そして独りで重荷に耐え切れずに、孤独のなかに閉ざされていくのである。共感し、励まし共に問題解決に当たる人をこそ必要としていたであろうと思われ、残念でならない。
会社も頑張って障害者を受け入れてきたのだろうが、今日の障害者の就労支援をめぐる貧困の問題が垣間見える記事だ。
さて、先に「適正な取調べと報道」について書いたが、関連して紹介したい記事がある。
弁護を引き受けた東京弁護士会の副島洋明弁護士は、9日夜初めて接見し、次のように語ったと言う。
〈◯◯容疑者は逮捕について「こういうことになるとは全く信じていなかった」と話し、重大性を認識していない様子という。場違いなほどニコニコしていて、母親に会いたがっており、幸満ちゃんのことは「知らない子だった」と話したという。褒められることと怒られることの区別はつくが、刑事裁判の仕組みは理解していないようで、容疑については「話がくるくる変わり、聞き方一つで答えが変わる」といい、警察に対して、取り調べの様子をすべてビデオ撮影するよう要請した。
しかし、警察は取り調べのビデオ撮影はしないという・・・!
報道について、
「東金女児遺体事件で容疑者を実名報道したメディアへの違和感」と題する記事が、ダイヤモンドオンラインと言うサイトにアップされている。上杉隆というジャーナリストが同業者達への違和感を述べている。(部分的に引用して紹介したい。全文はリンク先でどうぞ。)
・・・にもかかわらず、容疑者の逮捕直後から、筆者は、言い知れぬ違和感に襲われている。新聞・テレビのニュースを追いながら、どうしても、今回の報道にはなじめないからだ。その原因は、容疑者の「履歴」にある。
端的に言えば、容疑者の実名・顔写真報道の問題である。本事件の報道に関しては、記者クラブの横並び意識がもたらした弊害が如実に現れたとみている。
警察発表によれば、容疑者は特別支援学校に通っていた。軽度の知的障害を抱え、その病歴からも、単純に責任能力が問えるかどうか疑問の余地は残る。
にもかかわらず、すべての記者クラブメディアは実名と顔写真で容疑者を報じた。
・・・・このように、容疑者は、精神発達遅滞と診断され、さらに特別支援学校に通学していた経歴を持つのだ。となれば、おそらく精神鑑定は行われるだろう。刑事での責任能力の有無を問われ、場合によっては不起訴の可能性もある。
筆者は、起訴・不起訴の結果の如何を言っているのではない。軽度とはいえ、知的障害のある容疑者の氏名を、全記者クラブ所属メディアが横並びで、一斉に実名報道に踏み切っている点に違和感があるのだ。
現場で苦労をしてきた記者たちには申し訳ないが、今回の報道は、あまりに短絡的で、思考停止に陥っていないだろうか。
・・・横並びで報じたこの結果は、いったい偶然なのだろうか、それとも記者クラブの横並びがもたらした「談合」の結果なのだろうか。
仮に後者だとしたら、メディアは、自らの掲げてきた人権報道を貶めたことになる。
・・・精神発達遅滞の容疑者であれば、供述内容が二転三転し、取り調べが成立せず、公判が維持できないという過去のケースもある。「浅草レッサーパンダ殺人事件」などがその例だ。
当事件は当初、すべて実名報道であったが、精神鑑定の結果、容疑者の責任能力を問えず、いつのまにか匿名報道に変わっている。
時に、報じない「勇気」もジャーナリズムには必要だ。仮に、それによって孤立しても、各々のメディアがそれぞれの判断で報じれば、筆者も違和感を覚えなかっただろう。
現在の日本の報道機関に欠けている最大のものが、そうした孤立する「勇気」なのかもしれない。
赤信号、みんなで渡れば怖くない・・・メディアの自殺行為というべきか。
参考過去ログ:
NO.804 適正な取調べと報道を!・・・千葉・東金の女児遺棄事件を考える。 ・・・その(2) お付き合いついでに
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2008.12.11 |
| Comments(1) | Trackback(2) | ・障害者と「犯罪」
過去ログNO.801 知的障害者の犯罪と孤独・・・千葉・東金の女児遺棄事件を考える。 で、
「事件が冷静に、深く掘り下げられることを期待したい。
この事件が、知的障害者への言われなき差別を助長するように扱われるべきでないことを、特に求めて注視したい。
また取調べに当たっては、一つの事実の聞き出し方一つとっても、知的障害に配慮した取調べが求められる。」と書いた。
「同感」と、心配するコメントを頂いた。ありがとうございました
この事件はその後もテレビのワイドショーでも、大々的に扱われている。
父親ががんで入院して、頻繁に見舞いに行っていたこと。そのころから仕事が手につかず、会社で注意されたのをきっかけに長期に休み退職したこと。母親が、あたかも過保護で、容疑者が母親に依存し母親の言動を気にしていたことなど・・・。
東金の女児遺棄 容疑者「お母さんに会いたい…」(産経)など。
成田幸満ちゃん死体遺棄事件で、逮捕されたA容疑者が東金署捜査本部の調べに対し、「お母さんに会いたい」と寂しさを漏らしていることが8日、分かった。A容疑者は母親と2人暮らしで、最近では母親に頼る生活を続けており、逮捕から2日が経過し、母親への思いを募らせているという。
母親も捜査本部に「(事件を)知らなかった。大変驚いている」とショックを語っている。
またA容疑者が、幸満ちゃんの遺体を現場に遺棄した動機について捜査本部に、「(母親に)心配をかけたくなかった。(帰ってくる前に)ぐったりした女の子を外に持ち出した」と話していることも判明。
ただ死亡の経緯については、黙り込んだり、「覚えていない」と繰り返している。
テレビで印象的だったのは、母親への依存を異常に強調していたこと。
そのことを異常な犯行と結びつけようとする意図を感じた。彼らが母親や身近な人に依存するのは当たり前である。ただでさえ心を預けられるような共感的な人間関係を作ることが困難な時代。ましてや生きる世界が極端に狭められている障害を持つ人たちのよりどころは、極端に身近な人に限定されるのである。母親はそういう存在なのだ。
一般の子供たちの成長や発達のゆがみも問題視されるようなこの時代に、知的な障害のある人の成長や自立の過程は二重にも三重にも困難を抱え、「依存的心性」を持つことは、残念ながら当たり前のことである。
こういう印象付ける報道は、障害を持つ人たちの「成長への困難」と「孤独」への無知のなせる業だ。ここから「異常な人間」を描き犯罪に結びつける報道のあり方には違和感を禁じえない。
今この瞬間にも、どれだけ多くの障害のある子供さんをお持ちの親御さんたちが、息を潜め息苦しい思いをしているだろうかと思うと、胸が詰まる思いだ。私自身も同じ子どもを持つ親として、「今こそ頑張って、真の理解を訴えよう」と言いたい。
重度の知的障害者を息子さんにもたれているヒロシさんは、コメントで以下のように述べている。
障害者に対する偏見
今回の事件のように加害者が知的障害者であると、『やっぱり! 知的障害者は何をするかわからない。 危険なんだ。』と考えます。 でも加害者が大学教授で痴漢だった場合、『やっぱり! 大学教授は何をするかわからない。 危険なんだ。』とは考えない。 大学教授はほとんど立派な人間なんだけど、まれにひどい人もいるんだね。 と考えます。 ましてや加害者が健常者であった場合(大半は健常者)『やっぱり!健常者は何をするかわからない。 危険なんだ。』とは決して考えませんね。 このような考え方が既に偏見をはらんでいることに気づく人は少ないのではないかと常々思っています。
不幸な事件だ。真相がきちんと明らかにされなければならない。
その際、知的障害を持つ人たちへの言われなき偏見を助長するようは報道は、戒められなければならない。
改めて、適正な取調べとともに、報道の適正を求めたい。そしてそのことこそが、事件の解明と障害への正しい理解とによって、再発を防止し、共に生きる地域社会つくりにつながるのだと思う。
紹介したい記事を一つ。 知的な障がいを持つ青年たちの事件や弁護に関わってきた弁護士杉浦 ひとみさんは、
「千葉東金の幼女殺人事件」 で、被害者加害者双方に複雑な思いを致しながら、捜査機関に「取調べの適正」を訴えています。
この事件の被疑者が知的障害のある青年だったことを知りショックを受けました。
それは、これまで関わった知的に障害のある青年たちとだぶって見えるところがあったからです。
彼らは、女性に感心がありながら、対等に同年代の女性と関わる機会も、かかわるだけの自信もありません。小さくて可愛い子どもを相手にするのは、本当に可愛いと思うこともあるでしょうけど、弱い子どもにしか関われないという自信のなさの現れだということが多いです。
私の知っている知的な障がいを持つ青年たちは、可愛いと思い見ていたいと思って凝視したり、可愛いと思って近づいたり、しばらく一緒にいたいと思って付いていったり、ということをしてしまいましたが、でも凶悪なことをするような青年ではありませんでした。
ところが、もしなにか突発的なことが起きたら、青年は驚いて思わない行動にることは十分考えられます。騒がれたり、大声を出されたり、泣き出されたりすると、どうしていいか分からずに、それをとめようとすることもありうると思います。
しかしながら、相手は幼児ですから、力でいえば圧倒的に脆弱です。
被害に遭われた方は、誰が何を言おうとお気の毒です。子どもが亡くなることは辛いですが、どんな思いでその場にいたのか、どれほど怖かったか、親にしてみれば想像するだけで気が狂いそうになるでしょう。
でも、一方で、知的な障がいを持った青年を抱えて、日々の行動に心を砕き、不安に思っている保護者(母親が多いです)がも苦しんでいることが多いです。
事件に至るまでも、なにか起こしたらどうしよう、とどこへでも一緒に行かなければ不安でいられない親御さんもいます。
また、拘束されれば留置場でどんな思いでいるか、取り調べで警察の反応をうかがうようにしながら、一番気にいられる言葉を選んでいないか、と案じます。
双方の思いを考えると、とても複雑です。
ただ、どうしても今、捜査機関に訴えたいのは、取り調べの適正です。
子どもを亡くされた被害者は、まず、真実を知りたいでしょう。なぜこうなったかを知りたいでしょう。
この被害者の最低限の思いを実現させるためにも、この知的障害のあるといわれる青年をきちんと取り調べてほしいと思います。
知的障害に理解のある(不当に擁護する、とうことではありません)弁護士を同席させてでも、本当のことをきちんと聞き取ってほしいです。
警察は職業的に、検察官から(結局の所、裁判官からということですが)文句を言われないような理路整然とした調書を作ろうとしがちですが、世情の常識通りに物事はすすまないこともあります。
真相を紛らしてしまうようなことがないように。
それが、被害者を慮る第一歩ですし、加害者の人権を不当に制限しないことでもあります。
追記:この件でググって見たら・・・、こんな取材・報道もテレビはやっている!許せない!
TBSは気は確かか? 取材過程で偶然容疑者がインタビューに答えることはあるだろう。インタビューの様子を流したのはTBSだけではない。取材先に名刺を渡すこともあるだろう、後で何か思い出したときに連絡をくれと。しかし、このTBSは違う。「知的障害者にハニートラップを仕掛けているようで道徳的に許しがたいという非難や疑問の声」を私もあげざるを得ない。TBSは数字が取れる映像を手に入れるために、容疑者のカラオケで熱唱する姿を嬉々として放映している
だいたい、カラオケ店内の映像はどのような経緯で納めることができたのだろうか? 容疑者が誘ったのか? なら何故仲良くなれた? アニメ主題歌を歌うとき、カメラはモニター方向に振れている。画像の鮮明化から鑑みても、明らかにTBSのカメラだ
日テレニュース24が伝える『「メル友の彼女ができた」とメールを送っていたほか、逮捕前日の夜にはこの女性に電話をしていた。』とは前者は毎日新聞の女性記者の可能性もあるがTBSではないのか? 後者は明らかにTBSの女性記者だ
容疑者は知的障害者なのである。断定はできないが、罪の意識どころか犯行時の記憶さえ、どうなのかわからない。健常者が侵してしまったケースとは違い、何らかの配慮は必要だろう。このような取材が許されるのあろうか? TBSには人権に配慮するという意識など無いと断定せずにはいられない
※ハニー‐トラップ【honey trap】《甘い罠の意》機密情報などを得る目的で、スパイが色仕掛けで対象(外交官や政治家・軍関係者など)を誘惑したり、弱みを握って脅迫したりする、諜報活動のこと。主に、女性の諜報員が男性に仕掛けるものをいう。
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2008.12.09 |
| Comments(3) | Trackback(1) | ・障害者と「犯罪」
昨日のテレビで容疑者の顔が最初に映った時に、すぐに「これは明らかに知的障害者」と思ったが、続報で、やはり・・・であった。
21歳無職男を逮捕 千葉・東金の女児遺棄、容疑認める
千葉県東金市東上宿の路上で9月、同市田間の看護師成田多恵子さん(38)の次女で保育園児の幸満(ゆきまろ)ちゃん(当時5)が遺体で見つかった事件で、東金署捜査本部は、死体遺棄容疑で事情を聴いていた遺体発見現場近くに住む無職A容疑者(21)を6日午後、同容疑で逮捕した。A容疑者は「女の子を抱きかかえて自室から外に出て、遺体を捨てた」と容疑を認める供述をしているという。
・・・捜査本部によると、A容疑者は01年に軽度の知的発達遅滞の診断を受けていたが、通常の社会生活を送っており、捜査本部は刑事責任能力はあるとみている。(容疑者名は引用者が匿名にした)
なんとも痛ましい事件だ。女の子や、ご遺族の無念は計り知れない。
もとより誰であれどういう事情であれ、このような犯罪が許されるのものではない。その上で、幾つかの問題を考えてみたい。
これから容疑者についてのいろいろな情報とともに、何があったかは次第に明らかにされるだろう。
予断は禁物だが、どうしても考えなければならないことがある。
容疑者は、女性に異常な興味があったとか、異常性癖のような報道もある。もし、そういう傾向があったとしても、そういう性癖に事件の本質的な原因を求めるべきではないと思う。
そしてまた、容疑者は軽度ではあるが知的障害者だ。知的障害者一般への偏見が、助長されることを危惧する。
秋葉原の事件でも、そうであったと思うが、事件の奥には「孤独」の問題が深く横たわっていると思う。容疑者は、養護学校を出て3年ほど会社勤めをしていたと言うが、ある日突然出勤しなくなったそうだ。なにが直接的な原因かはわからないが、自分で解決できない問題を背負い込んでしまったのではないだろうか。
現代の若者の「生きづらさ」について研究をしている社会哲学者・
中西新太郎さんは、生きる困難が一人ひとりの内面に封じ込められていると言う。
90年代中ごろから(氏は、
1995年が時代の大きな転換点だと言うが)増大した困難は、「困難の徹底した私秘化」「内面への封じ込め」によって、社会に気づかれなかったと分析する。
それは即ち、困難に置かれた人たちが、ギリギリまで「自分の問題」として解決しようとしたためだと。その背後には構造改革と結びついた「自己責任」というイデオロギーもあるが、それだけではなく、現代の日本の文化の中で、困難を自分以外の他者と共に解決するかたちが崩されていることが大きいと。
中西氏は、そこに至る変化を消費文化にひそむ「抑圧的関係」に見ようとするのだが・・・。
つまり、子どもの消費文化は「固体化」にすすむ。一人ひとりが楽しむものを別々に手に入れ、ばらばらに楽しむ現象が90年代から急速に広がる。象徴的なケータイは何人かで楽しむのではなく個々別々に楽しみを消費する・・・そのなかで文化の中にあった「共同」の要素がなくなると言うのである。
つまり、青少年は、あらかじめ個々別々の世界の中で生きており、他者と共同の世界を持たず、それをどう作るかを知らない、というのである。
話が広がりすぎたが、「孤独」の問題を考える時に示唆に富んだ問題提起だ。
参考:
『若者たちに何が起こっているのか』 花伝社 中西新太郎 著(横浜市立大学国際文化学部教授)
さて、事件の容疑者は軽度の知的障害者である。
「孤独」への条件は普通の若者よりもはるかに揃っている。
たとえばこの記事(陶友通信NO.114)で、障害のある仲間たちにとっては、余暇と呼ばれる自由時間さえにいかに不自由で孤独なものかについて書きましたが、この罪を犯した青年も例外ではなかったろうと思う。
例えば、性の問題についても、昔は「若者宿」など(そこまでは無いにしても。思春期の少年達の縦の集団関係があった)で、あるいはからかわれたりしながらも、性の悩みや話題が共有され、それぞれに受け容れられ学習して解決されていた。しかし、性は久しく商品化され、独りで抱え込み、あるいは暗い扉の中で独りで向き合わざるをえないものとなってきている。学べるのは歪められた「消費される性」の世界しかない。そうしたなかで自己の責任で処理・解決しなければならないものとなっているとすれば、・・・この事件に限らず、昨今の「性癖」による事件は、個人の問題だけで事の本質を見るべきでは無いことを教えているだろう。
事件が冷静に、深く掘り下げられることを期待したい。
この事件が、知的障害者への言われなき差別を助長するように扱われるべきでないことを、特に求めて注視したい。
また取調べに当たっては、一つの事実の聞き出し方一つとっても、知的障害に配慮した取調べが求められる。
追記(09・9・15):弁護団が無罪を主張する方針です。関連する記事をリンクしておきます。
■NO.838 知的障害者と冤罪。(加筆再掲)
http://toyugenki2.blog107.fc2.com/blog-entry-842.html ■NO.801 知的障害者の犯罪と孤独・・・千葉・東金の女児遺棄事件を考える。
http://toyugenki2.blog107.fc2.com/blog-entry-805.html ■NO.804 適正な取調べと報道を!・・・千葉・東金の女児遺棄事件を考える。 ・・・その(2)
http://toyugenki2.blog107.fc2.com/blog-entry-809.html ■NO.810 適正な取調べと報道を!・・・千葉・東金の女児遺棄事件を考える。 ・・・その(3)
http://toyugenki2.blog107.fc2.com/blog-entry-814.html ■NO.811 重ねて、適正な取調べと報道を。
http://toyugenki2.blog107.fc2.com/blog-entry-818.html ■NO.837 取調べの可視化を!
http://toyugenki2.blog107.fc2.com/blog-entry-841.html ■NO.1365 知的障害者と冤罪 (その2)・・・ 東金女児殺害事件 弁護団が無罪主張へ
http://toyugenki2.blog107.fc2.com/blog-entry-1400.html お付き合いついでに
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2008.12.08 |
| Comments(7) | Trackback(5) | ・障害者と「犯罪」
知的障害者の犯罪について以前書いたことがある。
身近な知的障害を持つ人たちを見て思う。
繰り返す犯罪や問題行動。罰すれば直るのであればこんなに簡単なことはない。
社会的に犯罪として裁いたところで、それを反省し自らの行動変容に高めるという能力に欠けるのがその障害の特徴であり実際だ。
特別な「合理的な配慮と支援」が必要なのである。
参考過去ログNO.316 知的障害者と刑事事件。
NO.313 知的障害者と冤罪。
ユキノシタ
咲き始めのピンボケ。
雪が降るさまを表す名まえだとか。
天ぷらのもおいしい。薬効があるとかで・・・、実は母乳の出が悪かったおっかあがどこから聞いてきて植え、はを揉んでは乳首につけたりしたことも。効き目があったかどうかは?
母乳を上げようとおっぱい110番に行ったり・・・。母乳の出がいい人は楽だろうなと思ったり・・・、子育てのころの思い出に結びついたユキノシタ。
「朝日」の指摘は重要だと思う。
受刑者の出所―知的障害者の復帰に手を 朝日社説2008年05月19日
毎年、刑務所に入ってくる受刑者の2割、約7千人には何らかの知的障害があるという。法務省の統計にある。
また厚生労働省の研究班が昨年公表したサンプル調査では、知的障害の疑いがある受刑者410人の約7割は再犯で入所していた。犯行の動機も「生活苦」が4割で最も多かった。
典型例がある。2年前に山口県のJR下関駅舎が焼け落ちた放火事件だ。
犯人の76歳の男性は3月末に懲役10年の判決を受けた。軽い知的障害がある。20代の初めから放火をしては刑務所暮らしを繰り返してきた。今度の事件も、福岡刑務所を出所してからわずか8日後のことだった。
出所はしたが、服役中の労役などでためた20万円は使い果たした。身寄りもない。寒さをしのいでいた駅からは追い出された。ライターで火をつけた紙を段ボール箱に投げ入れ、駅舎を焼失させた。男性は判決の後、「これで心配がなくなった」と話したという。
刑務所しか居場所がないのは本人にとって不幸に決まっている。もしそのために犯罪を繰り返されては、私たち社会全体の安全も損なわれる。
再び罪を犯してしまう知的障害者を減らすには、出所後の生活を最低限支えるセーフティーネットが必要だ。
実際は出所してもなかなか福祉サービスを受けにくい。それは放っておけない。きちんとサービスを受け、生活できるようにしなければなるまい。
それには、受刑者を送り出す刑務所と、受け入れる地元の福祉事務所とが手を携える必要がある。
知的障害者が出所して福祉サービスを受けるには、療育手帳がなければならない。そこでまず手がけてほしいのは、知的障害のある受刑者に手帳を取得させることだ。
現状はお寒い。さきのサンプル調査で対象410人のうち、手帳を持っているのは26人にすぎなかった。
手帳を得るには、障害者側が申請しなければならない。「18歳までに障害が発生した証拠」も求められる。これが大きな壁になってきた。
ここは法務省と厚労省が調整し、刑務所などが代理人となって申請できるようにしてはどうか。障害の証拠も医師の診断を判定材料とすればいい。
刑務所と福祉事務所は、出所者をどこの施設で受け入れるかもあらかじめ話し合ってもらいたい。
民間の経験や知恵を生かすことも大事だ。長崎県の社会福祉法人「南高愛隣会」はこの春、東京都内に事務所を設けた。周辺の刑務所から知的障害のある受刑者の出所時期といった情報を知らせてもらい、療育手帳の取得や福祉施設探しを手がけている。
知的障害者が出所後に再び罪を犯さなくても済むようにしたい。法務、厚労両省の連携が急がれる。
以上、引用。
「現状はお寒い。さきのサンプル調査で対象410人のうち、手帳を持っているのは26人にすぎなかった。」
このお寒い現状はどこから来ているのか?軽度の知的障害者、いわゆるボーダーの人たちの多くは、貧困層で福祉を利用する事さえも知らずに、貧困の谷間をさまよっているのである。
そして、その貧困と知的障害は、世代を連鎖していると言わなければならない現実がある。
経済的・精神的「その日暮し」の貧困から 這い出せないでいる。
過去ログ
NO.266 「ひまわり~!」・・・知的障害者の子育て。のなかで、その実態について少し触れています。
ある知的障害者の親、いわゆる知的ボーダーの両親 についての質問に触れてです。 もうお母さんは10年近く前に亡くなってるので、お父さんと関わっての印象だけですが・・・。
私の経験上、お父さんは明らかに、軽度の知的な障害があるのではないかと思われます。色々な理解や対応の仕方を見て。
これにはあくまで、責任ある「判定」や「診断」に基づく根拠はありませんが、多分、間違いなく・・・と言うところです。
社会生活を営むこと、特に子育ては、複雑な理解や判断、関係の調整・・・とにかく、高度な知的能力が必要です。昔のように、飯さえ食わせれば育つだろうと言う風には、ますます行かなくなって来ています。
お父さんは、とても真面目で大人しく優しい感じの人です。「どうしたらいいか分かりません、よろしくお願いします」と言ってます。だから、悪意は無いし、なかったのです。
しかし、先日も、家に職員が話を聞きに来ても、テレビ見ながらしか話には入れないし、次の日に娘2人を夜に送っていったときも、パチンコに行っていて10時に帰ったぐらいです。
そういう知的に障害があるか無いかの、ぎりぎりの人が結婚し、子育てしているのは、私が関わってきただけでも数件あります。
そういう親に共通しているのは、脳の器質的・機能的な障害よりも、育ちの過程で、きちんとしたしつけや訓練、教育がなされないまま育って来たのではないか、とう問題です。
かつては私は「環境精薄」と呼んでいましたが、環境因子が主な原因と考えられる知的障害者のことです。(これはまったくの私見です。そういう類型化した学説があるかもしれませんが・・・)
話がずれましたが、大体以上のようなことです。
要するに、知的障害ぎりぎりのラインの人のことです。
知的障害は、単純に数値化されるわけではありません。
ぎりぎりの人で、相談に行って公的機関で判定されれば「知的障害者」、判定がなければ実態がどうであれいわゆる「健常者」です。
そして後者は、ほぼ決まって貧困層です。
そういう相談機関や制度があることを知らなかった人たちです。
社会から放置されたところで、そういう障害が再生産されているのです。
これまた共通して、近所付き合い、親戚付き合いが希薄です。
支援や助け合いのない、孤立したところで障害が、世代にわたり再生産されていると言ってもいいでしょう。
ついでに「多産」傾向も、事実です。4人ぐらい。
生活の見通しが立てられない、その日暮ですから、計画出産など出来ないのです。
それ以前に、排卵、妊娠の知識も十分ではないでしょう、多分。
「自然」に、「原因」があっただけ「結果」が、生まれてきたのです。
殆どの場合、兄弟皆、同様の傾向にあります。
以上、引用。
「貧困と(環境因子による)障害」の連鎖を打ち切らなければならないのである。今、障害福祉の利用は契約制だ。
かつては行政が「措置」により福祉とつなぐ権限があり、そのことによって彼らの福祉とのつながりも担保されていたが、いまは本人や家族が自ら福祉を見つけ契約をするというのが基本である。
それが出来ない人たちを「
自己責任による契約」の中に放り込めば、彼らは永遠に社会の貧困の中をさまようしかないだろう。
しかるべき手を打たなければ、彼らはますます増えていくといわざるをえない。 特に、幼児期や学齢期に学校や関係機関が、より積極的に彼らの保護に力を入れて欲しいし、権限も与えたほうがいいのではないか?
ネグレクト(養育放棄などの虐待)は広汎に存在し、
人格障害や
犯罪行動につながるケースも少なくない。
思春期にもなれば、問題は人格レベルで固着し、改善は絶望的だ。
ある専門家は小学低学年まで、それを過ぎたら変えるのは不可能に近いと言っている。
早期の保護が決定的である。
勿論、知的障害者と言えども、犯罪は犯罪に違いない。息子の窃盗癖について、ある父親は「窃盗」という言葉を使わなかった。
「窃取」とした。
知的障害ゆえの行動を社会がどう捉えるのかについて示唆を与えている。
親だから、平謝りするのが常識的かもしれないが、しかし父親は息子の障害とその行動について「
合理的配慮」と理解を求めたのだと思う。
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2008.05.19 |
| Comments(4) | Trackback(6) | ・障害者と「犯罪」
今日は、納期が迫った窯詰めの準備で大忙し。
先日の福岡の「女性刺殺事件」は、作業所のすぐ近く(地図では1センチの距離)の出来事でした。
こうした事件が起きるたびに、「警察はもっと職質をかけろ!」と言う世論があります。
一方、警察の行き過ぎた取締りが問題になっています。
ニュースステーションでも報道されていたので、ご存知の方も多いと思いますが。
2007年9月25日、25歳の知的障害をもった青年、安永健太さんは施設からの帰り、路上を蛇行運転し、交差点でバイクにぶつかり逃げようとしたとして、5人もの警察官から取り押さえられる中、心配停止状態になり、その後なくなられました。
痛々しい無数の傷痕を残し亡くなっていった健太さん。
警察官が関与したこの事件、その真相については不明な点が多く謎だらけです。
警察官の暴行の証言が複数ある中、警察は「取り押さえに問題はなかった。」の一点張りです。真相究明が一向に進まない中、ご遺族は已むに已まれぬ思いで08年117日、警察官数名を刑事告訴されましたが、3月28日佐賀地検が出した答えは「不起訴処分」でした。
しかし、少なくとも警察官の取り押えの中で安永健太さんという一人の人間の命が奪われたことは動かしがたい事実ですし、複数の目撃証人や健太さんの身体に残された多くの傷痕の理由がつきません。
「安永健太さの死亡事件を考える会」(→こちらがホームページ)では、ご家族が4月3日に起こした「付審判請求」を支援しています。
p>(前略) 取り押さえの際、何が問題で、何がまちがっていたのか?警察の障害者に対する認識はどうであたのか?その事実が明らかにならなければ再発防止の取り組みが出来ません。このままではまた必ず同じような悲惨な事件が起こります。そうなれば私達も含めて、この先安心した生活を送る事はできません。安心・安全な社会の実現のためにも、真相を明らかにする事は必要不可欠です。
・・・・・・(中略)
本当に不起訴なのでしょうか?たった一人の青年を取り押さえるのに、事件現場にいあわせたパトカー15台、警察官30名がいたと言う事実、「警察が殴っていた」という複数証言、5人もの警察官が後手錠をかけ、5,6分以上オサ和えつけた状態のままなくなった事実、そしてなくなった健太さんの全体的に腫れ上がった顔と、頭部に残された無数の傷跡、いすれをとっても「保護の範囲内」とは到底言えません。司法解剖の検査結果では、健太さんの心臓には疾患等の問題も無かったということですから、警察官の行動と安永健太さんの死亡原因とになんらかの関係があったことは明白です。
以上、「考える会」ビラより引用。
みなさん。
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2008.04.16 |
| Comments(4) | Trackback(4) | ・障害者と「犯罪」
寒いですね。今年最後の寒波かな?毎年このころには、ドカッと雪が降ったりしますが。大学入試のときを思い出します。
さて、今日も他人のふんどしで済みませんが・・・。
NJP news for the peopl in japanというサイトがあります。
そこに杉浦 ひとみの瞳というブログが紹介されています。女性弁護士です。知的障害者の犯罪に関わっての記事です。ほんとにそうだなって、勇気つけられます。先日、知的障害者と冤罪について(過去ログNO.313)書いたばかりなので、関連して紹介します。
知的障がいある方が犯罪を犯したとき ~ 事件は事件のみにあらず
「息子が警察に逮捕された」電話相談が来ました。
親御さんの心配は、通常親が考える『刑務所へ行くのか、執行猶予になるのか』ということ以前の息子の警察での生活です。
手錠をかけられ怯えきって震えていないだろうか。
「お前がやっただろ」と言われ、警官の目をのぞき込むようにしながら「はい」と答えていないだろうか。
自分がいじめられないですむ術を子どものころから覚えてしまった息子があわれにも警察の言うなりになっていないか。
他の留置者にいじめられていないか。
障害のある人の事件相談は、法的な処理だけでは解決しません。
刑事事件の加害者になったときには、まずは本人の不安をとりのぞくことが必要で、そのためには頻繁に足を運ぶことが必要になります。会っているときは少しほっとしても、その後、理屈で安心感を持ち続けるのはむずかしい場合が多いからです。
次に警察に障害のある人のことを理解させることです。
最近は理解のある警察官も多く「ここにいるより早く帰ったほうがいい」と早期に釈放されるケースもあります。「訳がわからないから捕まえておこう」というやり方は少なくなっています。
しかし親から直ちに彼の特性を聞き出して、警察に伝えることは必要です。
また、これを機会に障害のある人のことを被害者にも理解してもらうことを心がけます。転んでもただ起きない、という発想です。
ある痴漢事件の被害者が女子中学生でした。
学校は保護者に「不審者出没」の連絡網を回します。
そこで、事件終了後その中学校に面談を申し入れました。「彼は危険性のない素直な青年です。純粋に女生徒に近づきたかっただけです。そして、女性とつきあう機会に恵まれないのです」と伝えました。学校は事情を知り少し安堵してくれたようでした。
また、被害者の親御さんにも彼のことを伝えました。「障害のある人とは知らなかった。その人の親御さんは大変なんだろう。」と逆に親の立場で理解して下さいました。被害が重大でなければ、理解してくれる被害者もわりと多いです。みな人の親だからでしょう。
こうして社会の不安と障害ある人への偏見を払拭し、むしろ理解してもらう機会に転化することです。
そして、最後に彼の問題です。
作業所などを探し、彼の居場所を見つけ、支援者を確保することは大切です。親御さんの支えの場ともなります。それでも、同じ彼に何度か警察に呼ばれることもあります。異性に関心のある彼の自然な思いをどうしたらいいか。まだ対処の糸口が見つけられないでいます。
以上、コピーです。
知的障害者と言えども
犯罪は
犯罪ですが、こうした配慮ある取り組みを重ねることで、理解を得たり、
犯罪から守る事ができていくのでないでしょうか?中には罪を認識できずに、迷惑な行為をくりかえす人もいます。その時々の対処が大事だと、身にしみて思います。
「 転んでもただ起きない、という発想です。」そう、色々な問題行動にも前向きに取り組みたいものです。
ところで、大阪弁護会の方たちが「
知的障害者刑事弁護マニュアル」と言うものを作ったそうです。2年がかりで7人の弁護士が20回以上の会議を経て。2006年4月に完成させたそうですが。
「最近、
知的障害がある人が被疑者・被告人になる事件が目立ってきています。それは知的な障害を持つ人の
犯罪が増加したと言う事ではなく、今まで障害に対する
合理的配慮がされず、あるいは障害があることさえ気づかれずに刑事手続きの中に埋没していたものが、表面化して来たに過ぎないと考えられます。
我々弁護士としては、多数の
知的障害者が、障害特性に配慮した弁護を受ける事ができないまま、実質的には重刑を受け、
刑務所に収容されている実態を看過することはできません。」と述べています。
色々な分野からの取り組みが、進んでいるようです。頑張らねば。
そうね、皆がいろいろなところで少しづつ頑張ってるって事!
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2008.03.05 |
| Comments(1) | Trackback(0) | ・障害者と「犯罪」
誤解を恐れずに、ストレートに言えば、知的障害者を筋書きどうりに自白させて、犯罪者に仕立て上げるぐらいは、多少とも知的障害者を知るものにとっては、赤子の手をひねるよりも簡単なことや。
知的障害者に自白誘導 誤認逮捕で慰謝料 宇都宮地裁 「朝日」より
記事はコピーしておくけど、長いから、興味ない人はスルーして、下のほうを読んでくださいね。
04年に二つの強盗事件で逮捕、起訴された後に真犯人が判明し、無罪が確定した宇都宮市に住む知的障害者が、精神的苦痛を受けたとして国と栃木県に計500万円の慰謝料を求めた国家賠償請求訴訟の判決が28日、宇都宮地裁であった。福島節男裁判長は「警察官が知的障害者の迎合的である特性を利用し、被害者供述に合致した虚偽の自白調書を作成した」などと認定。ほぼ原告側の主張に沿って、県警と宇都宮地検の捜査の違法性を認め、国と県に計100万円の支払いを命じる判決を言い渡した。
訴えていたのは吉田清さん(56)。吉田さんの逮捕や勾留(こうりゅう)に「十分な合理的根拠があったかどうか」をめぐり、(1)捜査当局が吉田さんの責任能力をどう認識していたか(2)自白の誘導や調書作成に違法性があったかなどが争われた。
判決で、福島裁判長は吉田さんについて「重度の知的障害があり、質問者に迎合しやすいという特性があった」と指摘。そのうえで「自ら詳細に供述したり指示説明したりするとは考えられず、自白調書などは警察官が大半を一定の方向に誘導して作成された」と県警の取り調べの違法性を認定した。
また、供述調書に添付された犯行現場を示す見取り図を「吉田さんが定規を使って書いた」とする県警の主張に対し、判決は「警察官の説明方法で作成されたとするには大きな疑問が残る」と述べた。この点について吉田さんは公判で、「警察官に無理やり手を持って書かされた」と証言していた。
さらに判決は、物証が全くない強盗事件は「自白が最も重要な証拠資料」だったとしたうえで、宇都宮地検の捜査に言及。「自白調書の裏付け捜査を行うべきだったのに行わず、自白調書の信用性を持たせようと、つじつま合わせの調書作成に終始した」と指摘したうえで、起訴自体が違法だったと結論づけた。
〈冤罪事件の経緯〉 栃木県警宇都宮東署が04年8月、吉田清さんを別の事件で逮捕。その後、ケーキ店とスーパーで起きた二つの強盗事件についても再逮捕した。宇都宮地検は、吉田さんを強盗罪などで起訴。当初、3件の起訴事実を認めた吉田さんは同年末、強盗罪について否認に転じた。その後、強盗事件については別の男が犯行を自供したことで、誤認逮捕が明らかになった。
宇都宮地裁は05年3月、吉田さんの強盗罪について無罪を言い渡した。これを受けて吉田さん側は同年8月、国と県に損害賠償を求めて同地裁に提訴した。
法の正義は、弱者など守らない!法を使い、弱者を餌食にしているのだ。
2,3日前、何気なく見ていたテレビで、ロシアの警察と犯罪についてのドキュメンタリーがあった。かの地では、刑務所にいるのはコーラを数本盗んだり、野菜や豚を盗んだり、貧困から軽微な犯罪を犯したものが殆どだそうだ。警察には、1日20件の犯罪検挙がノルマとして与えられ、安月給の警察が夜中まで犯罪者探しをするというのだ。警察とつるんで、ホームレスなど貧困者を犯罪者に”はめる”「狼」と言う組織的な存在もあると言う。
本物の悪達、マフィアや汚職役人やあくどい金持ちどもはすぐに賄賂を渡して、無罪放免らしい。
裁判官さえもその仕組みの中に管理されてしまっているという。
軽微でも犯罪には変わりはないが・・・、そういう事情が伝えられていた。貧困層が、弱者が犯罪者にされていく・・・。
宇都宮のこの事件は、言語コミュニケーション能力が低く、誘導尋問にも迎合的にひっかかりやすい知的障害者を、警察の筋書きどうりに「自白」させ、検察もそれを鵜呑みにして起訴した、典型的な
冤罪事件である。
残念ながら彼らは、優しく上手に、あるいは脅して、「ね、こうこうでしょ?」なんて言えば、「はい」と言うしかなくなってくる。
あの
志布志事件も、同じだ。つましく暮らす田舎の集落の人たちが、手柄を立てたい警察の餌食になり、抵抗もはかなく罪をでっち上げられたのである。
知的障害者を思いのままに操るのは、赤子の手をひねるが如く簡単です。
自らを守る力を持たぬ弱者が
冤罪被害者になるという、由々しき状況は直ちにただすべきだ!
法務省によると、実刑判決を受けて服役する知的障害者は年間300人だそうだ。数字はわからないが、受刑者にしめる割合としては異常に高いような気がする。
この件では、真犯人が出てきたが、
冤罪により自由の身をとらわれた知的障害者は相当な数に上るのではないだろうか。
勿論、彼らが犯罪を犯さないなどとは言わない。私自身も、数人のそういう知的障害者と関わってきた。その殆どは、貧困からの窃盗。・・・ま、この話は 置いておこう。
小学校の低学年のころだった。「警察は泥棒を捕まえるけど、困ってしまって泥棒をするのだから、泥棒をしなくてもすむように、警察は困った人を助けたり、相談に乗ってあげればいいのに・・・」と幼心に思ったことがあった。
日本国憲法は、こうした
冤罪から
人権を守るために次のように謳っている。
〔自白強要の禁止と自白の証拠能力の限界〕
第38条 何人も、自己に不利益な供述を強要されない。
2 強制、拷問若しくは脅迫による自白又は不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白は、これを証拠とすることができない。
3 何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は刑罰を科せられない。 この通りにやればいいんだよ。
ところがどうだ。この国の法務大臣は、あの
志布志事件を「
冤罪と呼ぶべきではない」と言ったばか者だ!こんな状況では、仲間たちは、この国の
憲法に守られ、安心して生きていけるとはいえないね。
でもこの大臣を選ぶ政治を選んだのは、国民なんだな。そう、あなたであり、私なのです。
何をなすべきか。
憲法を政治と暮らしに生かすために、こつこつと学び、行動するしかないでしょ!
主権者が馬鹿だと、自分の首を絞めるんだよ!自分だけならまだ「
自己責任」だけで救われる。
お隣にいる、弱い人たちまでも巻き添えにするんだよ・・・。
生きているということは、つながっていると言うことなんだから。
追加参考ログ:
NO.801 知的障害者の犯罪と孤独・・・千葉・東金の女児遺棄事件を考える。 NO.804 適正な取調べと報道を!・・・千葉・東金の女児遺棄事件を考える。 ・・・その(2) NO.810 適正な取調べと報道を!・・・千葉・東金の女児遺棄事件を考える。 ・・・その(3) NO.811 重ねて、適正な取調べと報道を。 NO.937 取調べの可視化を!
知的障害者が罪のない無垢な人々とは言いません。同じように汚れたり、美しかったり・・・俺たちとなんら変わらない人間です。ただ、知的に障害があるのです!
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2008.03.02 |
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