NO.1595 「地域主権」法案 自立支援法後の新法にも 制約
早いもので、今日で4月も終わりです。
なんだか地に足が着かないような4月でしたが、皆さんはいかがでしたでしょうか。
さて、これまで、 民主党政権が、「地域主権改革」の名で社会保障への国の責任を放棄しようとしており、それはとりもなおさず、自公政権の「構造改革」の踏襲に過ぎないことを書いてきました。
ここでは、地域主権改革関連2法案の概要(PDF) をもとにおさらい。
同法案によれば、「地域主権改革」の定義は「日本国憲法の理念の下に、住民に身近な行政は、地方公共団体が自主的かつ総合的に広く担うようにするとともに、地域住民が自らの判断と責任において地域の諸課題に取り組むことができるようにするための改革」と、一見もっともらしいものです。
「自治体の自主性を強化し、自由度の拡大を図るため、義務付け・枠義務付け・枠付けを見直し付けを見直し」「条例で自主的に定める余地を認め」るとしています。
要するに暮らしや福祉の諸政策に対する国の許認可権を地方自治体に移行するというものです。次のような事項を対象
①施設・公物設置管理の基準
②協議、同意、許可・認可・承認
③計画等の策定及びその手続等改正の対象となる事項
自治体の自主性を強化し、自由度の拡大を図るため、義務付け・枠義務付け・枠付けを見直し付けを見直し例えば、
①’国が決めていた基準に代えて条例で基準を規定=地方の独自性の発揮
②’国の関与を、廃止又は弱い形態の関与へ
③’計画等の策定義務を廃止へ改正後〔改正の概要(例)〕
○児童福祉施設の設備及び運営に関する基準(児童福祉法)
○公営住宅の整備基準及び収入基準(公営住宅法)を地方自治体の条例に委任
○道路の構造の技術的基準(但し設計車両等の基準を除く)(道路法)
○市町村立幼稚園の設置廃止等に係る都道府県教育委員会の認可は、届出とする(学校教育法)
2.施行日等
①直ちに施行できるもの→公布日
②政省令等の整備が必要なもの→公布の日から起算し3月を経過した日
③地方自治体の条例整備が必要なもの、事業年度単位での施行が必要なもの→平成23年4月1日等○福祉施設の基準について、関係法律の施行の状況等を勘案し、基準の在り方について見直し検討関係法律を一括し改正関係法律を一括し改正(国の基準は基本的に「参酌すべき基準」化)別紙義務付け・枠付けの見直し
障害者総合福祉法(仮称)にも制約
障害者分野の自立支援法の事業に関わる認可権限も自治体に任されることになるでしょう。
例えば施設の居室の床面積やサービス事業の定員、職員配置基準などは、現在は国が基準を定めていますが、都道府県に任せるというものです。
いま、障がい者制度改革推進会議で、障害者自立支援法廃止後を睨んで、これに替わる総合福祉法(仮称)つくりの議論がすすんでいますが、この議論に制約をかけることになりかねない問題です。
また、今でも障害者施策の地域間格差が問題になっていますが、さらに格差が広がったり、低基準での事業経営が求められる恐れもあります。たまったものではありません。
日本障害フォーラムでは、原口総務大臣に意見書を提出し、法案の見直しを求めていくそうです。
「地域主権の美名で、福祉施策に対する国の責任を放棄するな!」と声を大に訴えたいです。
関連して、2010年4月30日(金)「しんぶん赤旗」より転載します。
以上、転載。「地域主権」法案
福祉施設 環境悪化も
職員数・面積 最低基準守る保証なし
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保育所や特別養護老人ホーム(特養)など福祉施設の設備・運営基準について、政府は、28日に参院を通過した「地域主権改革」一括法案で、国の定める最低基準を撤廃し、ガイドライン化したうえで、地方の条例にゆだねようとしています。
これには、「地方任せになれば、いまでも低い職員配置基準がさらに下がる」「保育所の子どもの詰め込みがいっそうひどくなる」などの批判が高まりました。政府は、職員の人数や利用者1人当たりの居室面積、人権に直結する基準については、国が示すガイドラインを「地方が従うべき基準」にし、地方に守らせるとして、批判をかわしています。
ところが、それらの基準を含め、今後国が示すガイドラインが現行の最低基準を維持するものになるのか政府は明言していません。日本共産党の山下芳生参院議員の国会審議での再三の追及にも「省令で決める」としか答えず、国会で責任ある審議ができない状況です。
一方で、厚生労働省は6月中にも省令を改定し、特養の居室面積基準を引き下げる方針であることが29日までに分かりました。1室当たり13・2平方メートル(約8畳)以上とされている個室の面積について、10・65平方メートル(約6畳)に引き下げる方針です。居室面積は、「地方が従うべき基準」とされています。
国の基準そのものを引き下げたうえで、それを「地方が従うべき基準」にするというものです。つまり、「地方に守らせる」という基準でも、現行の最低基準が守られる保証がない実例です。
政府は、山下議員の求めにもかかわらず、省令で決めるという国の「ガイドライン」の中身を国会に示しません。国会審議抜きに、今後、省令で最低基準を引き下げる恐れを強く抱かせます。
保育所はじめ児童・老人福祉、障害者施設の現在の基準は、面積や職員配置でも、防災基準でも諸外国と比べ劣悪です。そのために、グループホームの火災などで犠牲者が絶えないのが実態です。国が国民に保障すべきナショナルミニマムとして基準を引き上げたうえで、財政責任を果たすことこそ必要です。
ところが、「地域主権改革」一括法案は、国の責任を投げ捨て、地方任せにします。さらに現行の不十分な国の最低基準さえ、これを機に、引き下げようという動きは重大です。(西沢亨子)
参考過去ログ:
★NO.1593 「地域主権改革」の名で 社会保障への責任放棄
http://toyugenki2.blog107.fc2.com/blog-entry-1660.html
★No.1594 民主党政権の「地域主権」は、自公政権の「構造改革」の踏襲
http://toyugenki2.blog107.fc2.com/blog-entry-1661.html
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2010.04.30 | | Comments(2) | Trackback(0) | ・福祉・社会保障全般Ⅰ