たぶん、
URAの試験に出ます(嘘)
(注:URA:University Research Administrator の略)
今年から来年にかけて続けて大型研究予算ができます。
まず、先日発表になった
COISTREAM。
【科学】革新的イノベーション創出プログラム(COI STREAM)に注目しよう:2013年11月1日これが年間120億円くらい。文科省とJSTで仕切ってます。
そして、昨日発表になったImPACT。
【科学】革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)が発表されました:2013年12月12日これが5年間で550億円くらい。内閣府総合科学技術会議とJSPSで仕切るんでしょう。
内容的には、このコラムが面白い。
<4> インパクトの大きさに投資する@RISTEX シニアフェロー 奥和田 久美最近は日本でも、産業界などから「DARPAモデルの研究ファンドを日本にも」という要請があり、総合科学技術会議では「ImPACT」という研究支援の検討を始めている。DARPAはご存じの方も多いと思うが、米国国防総省の科学技術開発費の1/4程度を使って、国防高等研究計画局が「固定観念に囚われない自由度の高い研究」への投資しているファンドのことである。DARPA予算は米国連邦政府の科学技術予算の約半分を占めており、規模的にも対象範囲の広さの点でも存在感が大きい。
また日本版◯◯かよ! という感じですが、FIRSTの後釜です。
そして、
山本大臣も一押しのSIP。
【 2013年9月18日 ”戦略的イノベーション創造”の10課題 】@サイエンスポータル編集ニュース総合科学技術会議(議長・安部晋三首相)は、日本の経済再生のために府省庁の枠を越えて来年度から取り組む「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」の3分野10項目の研究課題候補を決めた。
主な課題候補は、エネルギー分野ではマグネシウムや炭素繊維などの革新的構造材料、自動車の低燃費化を目指す革新的燃焼技術、次世代インフラ(社会基盤)分野では、車の自動走行(運転)システムや、センサーやロボットを使ったインフラ維持管理・更新・マネジメント技術、地域資源分野では、高収量や自給率の向上を目指した次世代農林水産業創造技術など。長寿健康分野の課題候補は後に、健康・医療戦略推進本部が決定、追加する。
これが517億円。これは、内閣府と総合科学技術会議が陣頭指揮で課題を見るとJSTが下支えするのではないかと予測。
これらに共通していて、わかりにくいのが、PDだのPMだのという言葉が出てくる点だ。
同プログラムでは、課題ごとにプログラム・ディレクター(PD)を置き、社会や産業界の需要、市場や雇用の規模、国際的な競争力強化の方向性、研究開発の新規性や難易度などを検討し、今年度中に事業化戦略を作る。
ERATOだと研究総括というのだけど、要はプロジェクト全体を見て、予算配分したり研究の進捗を見極めたりする人で、これが大学教授の場合もあれば、企業研究者の場合もある。
アメリカではフリーのPMというのもありそうだけど、日本ではまだいないかもしれない。
研究者を現場監督として、もっと上のレベルでミーティングできる人なのかなあ。
さらに、JSTはPMを使って研究の産業化を加速させるプロジェクトとして
ACCELというのを始めた。
戦略的創造研究推進事業におけるACCELの実施について@JSTJST(理事長 中村 道治)は、戦略的創造研究推進事業などで創出された世界をリードする顕著な研究成果について、プログラムマネージャー(PM)によるイノベーション指向の研究マネジメントにより、技術的成立性の証明・提示(Proof of Concept:POC)、および適切な権利化まで推進するためのプログラム「ACCEL」を今年度より開始しました。
ACCELでは、研究開発課題ごとにJSTが配置するPMが研究代表者と協力して、研究成果を最大限に生かした社会的・経済的価値創造に向けてのビジョン、具体的用途とPOCを設定し、研究開発課題の提案からマネジメントまでを行います。
これが5年で15億円。
第1号は、
「エレクトライドの物質科学と応用展開」。
エレクトライドは、ERATO「細野透明電子活性プロジェクト(平成11年~平成16年)」の成果として、室温・大気中で安定な機能性化合物として見いだされた後、FIRST「新超伝導および関連機能物質の探索と産業用超伝導線材の応用(平成21年~平成25年)」において超伝導も示す同化合物がルテニウムを担持することで高活性のアンモニア合成触媒となることが発見され、当初予定を上回る際立った結果として今後の展開が期待されるとの評価を得ています。
結果が出れば延長されるということでしょうか。
ここにもPMがいます。このPMはJSTの人ですね。
ERATOの技術参事とも違うんでしょうか? 違いそうですね。
新しい名前の予算が次々に出てきて、そこに新しい名前の役職が出来て、やっていることがよくわからない。
もう少し整理してもらえると助かります。
それにしても、ACCELだって、ERATOと同規模ですから、日本の研究ファンドでは最大級といえる額です。
ところが、FIRST以降、次々とさらに大型のファンドが出来、10億円は当たり前、5年30億円から、5円50億円、さらにその上も見えてきそうで、一見、大リーガーの契約金額のようですが、研究者の給与ではないので、お間違えなく。
そして、こうした巨額の資金が科学技術研究予算に投入されるのは、喜ばしいことなのかどうか。
先ほど紹介したコラムでは、この点についてDARPAのファンドモデルの説明としてこんなことを書いています。
① インパクトの大きい研究に投資する
基本的に「ハイリスクだがインパクトが大きい」とみなされる研究を支援する。「インパクトが大きい」ということは、英文ではHigh-pay offまたはHigh-rewardと表現される(DARPAではHigh-pay off、NIHではHigh-rewardが使われている。NSFが好んで使うTransformativeにもやや近いニュアンスがある)。すなわち、「できるかどうかわからないけれど、できたらすごい」という研究を支援する。
官僚の好きな日本語英単語づくりには脱力しますが、その言葉の意味もかなり換骨奪胎されたものです。
② プロジェクトマネージャーに全部任せる
一人のプロジェクトマネージャー(PM)に全部任せる。任されたほうは、他職は休職してでも期間中はプロジェクトに専念する。結果的にうまくいかなくても、PMを務めあげたこと自体が、その後のキャリアにおいて高く評価される。
それにしても、PMとかPDになるにはどんなキャリアが必要なのでしょう。
また、今後、そのキャリアに達する人はどれくらいいらっしゃるのでしょう。
そちらが心配になってきました。
そして、ハイリスクとかインパクトを求めていますが、その意味の違いを認識できているだろうかと。
ちなみに、日本の科学者の方々がよく「ハイリスク研究に支援を」と言われるのを聞くのだが、米国の研究支援では「ハイリスク」という言葉が単独で使われているケースを見かけない。特に、DARPAモデルでは研究の成功確率が低いことは、研究投資の判断材料にはならない。チャレンジする価値は、狙えるインパクトの大きさのほうにあるのだから。目標が達成できたとしてもそのインパクトが小さいと見なされる研究は、成功確率が高くてもチャレンジする価値が無いし、ましてやインパクトが大きいか小さいか判断できない研究に対して、成功するかしないかを考える必要すらない、というのが、このモデルの前提である。
成功しなくてもいいんですかね?
日本では、なかなか成功しないかもしれないけど、成功したらインパクトあるからファンドくださいとは言いにくいし、その研究を誰が選んだのかということにならないですかね?
いわゆる目利き論争ですが。
イノベーションも、インパクトも、ハイリスクも、もう一度どういう意図で使っているか、すりあわせたほうが良くないですか?