シリア暫定政権のオマル情報相に単独取材 「表現の自由に制限なし」
アサド政権が崩壊したシリアの暫定政権のムハンマド・オマル情報相(41)が17日、首都ダマスカス市内で毎日新聞の単独インタビューに応じ、「シリアの融和に反しない限り、表現の自由に制限はない」と語った。国際社会には厳格なイスラム主義的な統治を懸念する声もあるが、穏健な姿勢を改めてアピールした。
オマル氏が日本メディアの取材に応じるのは初めて。オマル氏は、前政権のもとでは国民が厳しい監視下に置かれ、政権側の視点による報道しか許されていなかったと指摘。「表現の自由はシリア解放の目的の一つだった」と語り、今後は「メディアによる政権批判も許される」と明言した。
8日に前政権が崩壊して以降、約700人の各国記者がシリアに入ったといい、「我々は報道内容には介入しない」とも強調した。
暫定政権は、国際テロ組織アルカイダ系の組織を前身とする「ハヤト・タハリール・シャム」(HTS)が主導している。イスラム教スンニ派を基盤とするが、HTSのジャウラニ(本名アフマド・シャラア)指導者は、女性の服装の自由や少数派の権利などを保障する方針を打ち出し、穏健なイメージを強調している。それでも、非イスラム教徒らの間では、イスラム主義が政策に影響することへの懸念が根強い。
オマル氏は「今は政府機構の立て直しを優先している。その後のことは全国民の合意で決まる」と説明。暫定政権は専門委員会を設立して憲法改正を目指す方針で、その内容についても国民の合意を最優先するとの考えを示した。
オマル氏はシリア北西部イドリブ県出身。内戦が始まった2011年に反体制運動に身を投じ、12~19年には記者として政府軍との戦闘を報道した。19年には、HTSが拠点のイドリブ県に設置した行政機構「救国政府」でメディア部門の創設に携わり、23年から「情報相」を務めていた。
HTSなどの反体制派は今年11月下旬、大規模な攻勢を開始し、短期間でアサド政権を打倒。救国政府の「閣僚」が、来年3月までの任期で暫定政権の閣僚となった。
オマル氏は前政権の崩壊について「これほど早く勝利するとは思わなかった」と振り返る。国際社会に対しては「我々は日本を含むあらゆる国と良好な関係を築きたい」と述べ、支援を求めた。【ダマスカス金子淳】