特集
シネマの週末
ベテラン映画記者が一本の映画をさまざまな視点から論評を加えます。チャートの裏側も紹介。
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シネマの週末・この1本
不思議の国のシドニ 喪失と孤独が共鳴
2024/12/13 13:12 1341文字どこに行っても訪日観光客でにぎわっていて、日本人気に感心するばかり。本作が作られたのも、そんな関心の高まりのおかげかも。居心地よさそうな日本が映っている。 フランス人作家のシドニ(イザベル・ユペール)は、自著が日本で翻訳再版され、宣伝を兼ねて来日する。編集者、溝口(伊原剛志)の案内で京都を訪ねると
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シネマの週末・特選掘り出し!
スピーク・ノー・イーブル 異常な家族 「男らしさ」呪縛のスリラー
2024/12/13 13:12 528文字5月に本欄で紹介したデンマーク・オランダ合作映画「胸騒ぎ」は、避暑地で出会った2組の夫婦の交流がおぞましい悪夢と化す恐怖劇だった。悲惨すぎる結末ゆえにネット上で“胸くそ映画”という感想が飛び交った同作品を、「M3GAN/ミーガン」などのヒット作で知られる映画会社ブラムハウスが早くもリメークした。
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シネマの週末・トピックス
お坊さまと鉄砲
2024/12/13 13:12 614文字2006年、ブータン国王が退位して民主主義体制に移行すると宣言。初めての普通選挙が行われることになった。政府は国民を啓発し選挙の仕組みを伝えるため、模擬選挙を計画する。山中のウラ村にも政府の選挙委員がやってきた。その話を聞いた高僧は、弟子の僧侶タシ(タンディン・ワンチュク)に「銃を2丁手に入れてく
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シネマの週末・トピックス
アイヌプリ
2024/12/13 13:12 630文字アイヌの歴史や文化を背景にした映画が次々と公開されている。本作は、現在に生きる等身大のアイヌの家族に密着したドキュメンタリー。北海道白糠町で暮らす天内重樹(シゲ)は、先祖から続くサケ漁の技法など文化を実践し息子に伝えている。カメラはシゲ一家やその仲間を追いつつ、自らのルーツを大事に今を生きる、彼ら
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シネマの週末・チャートの裏側
「懐かしさ」だけでなく
2024/12/13 13:12 557文字いわば、テレビドラマの実写映画化の王道、直球型作品だろう。「劇場版ドクターX」だ。スタート3日間の興行収入は約6億円。大ヒットだが、圧倒的な知名度からすると、もっと欲が出る。客層に理由があろう。ドラマの視聴者同じく、どうしても年齢層が高くなる。 今年のテレビドラマの実写映画化作品には一つの傾向があ
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シネマの週末・この1本
クラブゼロ クセになる気味の悪さ
2024/12/6 13:10 1391文字過ぎたるは及ばざるがごとし。大量消費を組み込まれたシステムは人間を汚染しているが、健康志向と環境保全への意識も、行きすぎるとろくなことがない。「リトル・ジョー」など、刺激的、挑発的な怪作を手がけてきたジェシカ・ハウスナー監督が「ハーメルンの笛吹き男」から着想したという毒気たっぷりの寓話(ぐうわ)的
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シネマの週末・トピックス
フード・インク ポスト・コロナ
2024/12/6 13:10 621文字会社の利益を優先し、消費者の健康をおざなりにするアメリカの食品業界。その実態に迫った記録映画「フード・インク」(2008年)は米アカデミー賞候補になり、日本でも話題を呼んだ。今回の続編でも有名なグローバル企業の商品をやり玉に挙げ、新たな問題を提起する。 低賃金で搾取される移民労働者、衰退する個人農
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シネマの週末・トピックス
劇場版ドクターX
2024/12/6 13:10 621文字2012年にスタートし、第7シリーズまで放送された人気ドラマの完結編となる劇場版。フリーランスの外科医、大門未知子(米倉涼子)と師匠である神原晶(岸部一徳)の前に、東帝大学病院の新院長、神津(染谷将太)が現れる。彼にはある過去があった。 おなじみのナレーションに西部劇風の音楽、銭湯のシーンに「いた
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シネマの週末・特選掘り出し!
大きな家 施設の子らの心の奥へ
2024/12/6 13:10 552文字東京都内のある児童養護施設で暮らす子どもたちや、施設を卒園して学生や社会人として生きる若者たちを丹念に追ったドキュメンタリー映画。俳優の斎藤工がプロデュースしている。 竹林亮監督は低い視点からのカメラワークで、一人一人の生活に密着し、彼らの言葉や生き様を映し出す。親との死別や親の病気、経済的事情、
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シネマの週末・チャートの裏側
現実呼び起こす切迫感
2024/12/6 13:10 564文字11月に公開された邦画の実写作品としては、2番目の興行収入を上げるスタートとなった。「正体」だ。3日間の興行収入は2億300万円。大都市型ではあるが、健闘の部類に入る。殺人罪で、死刑宣告を受けて拘置されていた男の脱獄劇を描く。面白い。存分に堪能できる。 素顔を隠す巧みな逃亡の模様が話の中心点となる
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シネマの週末・この1本
正体 「5役」熱演、横浜流星
2024/11/29 13:08 1390文字高校3年生で一家3人を惨殺し、未成年者犯罪厳罰化の流れの中で死刑判決を受けていた鏑木(横浜流星)が脱獄する。犯行現場で凶器を手にしたまま逮捕された上に、生存者の目撃証言もあり、有罪は疑いないと思われていた。事件を担当していた警視庁の又貫(山田孝之)が彼の行方を追うものの、鏑木は変装し仕事を替えて逃
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シネマの週末・特選掘り出し!
ザ・バイクライダーズ 栄枯盛衰を哀歓豊かに
2024/11/29 13:08 538文字1960年代後半のアメリカでは、バイクに乗ったギャングや流れ者を主人公にしたアウトロー映画が盛んに作られた。本作はシカゴを拠点にしたバイク集団“アウトローズ”の日常を記録したダニー・ライオンの写真集に触発された一作。「ラビング 愛という名前のふたり」以来となるジェフ・ニコルズ監督、8年ぶりの新作だ
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シネマの週末・トピックス
雨の中の慾情
2024/11/29 13:08 635文字売れない漫画家の義男(成田凌)はアパートの大家(竹中直人)から小説家を自称する伊守(森田剛)とともに引っ越しの手伝いを頼まれ、そこで福子(中村映里子)と出会う。義男は離婚したばかりの福子にひかれるが、彼女には恋人がいるようだ。やがて義男、伊守、福子の共同生活が始まる。 監督は「岬の兄妹」「さがす」
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シネマの週末・トピックス
山逢いのホテルで
2024/11/29 13:08 622文字仕立て屋のクローディーヌ(ジャンヌ・バリバール)は自宅で仕事をし、障害のある息子を育てるシングルマザー。毎週火曜日は山間(やまあい)のホテルに行き、快楽を求めて単身の男を選んで誘い、その場限りのアバンチュールを楽しんでいた。ある日、以前に部屋をともにしたハンブルクに住む水力発電の研究家ミヒャエル(
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シネマの週末・私と映画館
原子野の闇で
2024/11/29 13:08 580文字江戸時代からの開港地・長崎で育った。産業といえば三菱造船所などで造る軍艦や魚雷と物騒な物ばかり。小学校に入ったのは日中戦争が起きた年で、その頃までは新地の中国人や、グラバー邸付近に住む外国の人とも仲良く暮らしていた。南京陥落祝賀のちょうちん行列をやった翌年、三国同盟の宣伝に来た金髪碧眼(へきがん)
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シネマの週末・特選掘り出し!
地獄でも大丈夫 善悪の境目をさまよう
2024/11/22 13:11 502文字いじめられっ子のナミ(オ・ウリ)とソヌ(パン・ヒョリン)は、自分たちをいじめたチェリン(チョン・イジュ)がソウルで悠々と暮らしているのを知って、復讐(ふくしゅう)に向かう。怪しげな宗教施設で再会したチェリンは人が変わったような善人になり、「楽園」行きを夢見ていた。 いじめ、カルト宗教といかにも今風
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シネマの週末・この1本
ドリーム・シナリオ 小さな幸せのありか
2024/11/22 13:11 1414文字アカデミー賞俳優であり、風変わりな役柄を好むニコラス・ケイジは、作品ごとに髪形などの風貌を変える怪優として名高い。そのケイジが頭をそって地味な中年男性になりきった本作は、“夢”をモチーフにした不条理ドラマ。奇想天外なストーリー展開と、米ゴールデングローブ賞にノミネートされたケイジの妙演に魅了される
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シネマの週末・トピックス
チネチッタで会いましょう
2024/11/22 13:10 619文字チネチッタ撮影所で、イタリア共産党を題材にした新作を撮り始めた映画監督のジョバンニ(ナンニ・モレッティ)。女優は政治的な映画を恋愛映画だと主張し、プロデューサーとして並走してきた妻(マルゲリータ・ブイ)には離婚を切り出され、フランス人プロデューサー(マチュー・アマルリック)は詐欺師だったことが判明
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シネマの週末・トピックス
海の沈黙
2024/11/22 13:10 618文字世界的な画家・田村修三(石坂浩二)の展覧会で作品のひとつが贋作(がんさく)だと判明し、保有していた美術館の館長が自殺。一方、北海道・小樽で全身入れ墨の女性の死体が発見される。二つの事件から新進気鋭の天才画家と称されながら、突然人々の前から姿を消した津山竜次(本木雅弘)が浮かび上がる。かつての竜次の
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シネマの週末・チャートの裏側
言葉で距離を縮めていく
2024/11/22 13:10 562文字後編は、「派手になるだろう」と、少し前の当欄で書いた。違った。派手にはならなかった。「室井慎次 生き続ける者」のことだ。前編「敗れざる者」は、警察を早期退職した室井の田舎暮らしを中心に描いた。後編も、その流れを突き進んだ。事件は現場で起こらない。 刑事ドラマとして一時代を築いた「踊る大捜査線」とは
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