『銀平飯科帳』の“深川風カキフライ”を再現!
- Mon
- 18:00
- 再現料理
調べた所、何と古代ローマの時代から養殖して生食していたそうで、兵士達が侵略した土地で略奪しないで済むよう、片っ端からカキを海にばら撒いて自給自足する食糧にしていたといわれるほど。
手間をかけて料理をするのが基本の美食大国フランスでも、「カキはそのままが一番旨い」「海が既に調理してくれている」と公言しているシェフが多いみたいで、何でカキだけそんなに特別扱いされているんだろう…と不思議に思ったものです。
どうも、北海道厚岸産の生ガキを食べた時は「こんなミルキーなカキがこの世にあったのか」と感動した記憶がある当ブログの管理人・あんこです。
本日再現する漫画料理は、『銀平飯科帳』にて銀次さんが定番カキ料理を江戸前にアレンジして作った“深川風カキフライ”です!
前回より大分時間が経ち、初めはあまりの不思議体験に戸惑っていた銀次さんも、今やすっかり江戸時代と現代を行き来する二重生活が定着した頃の事。
銀次さんの居酒屋へ顔を出しては的確かつ辛口なコメントをしてくる為、しょっちゅう喧嘩になる昔からの幼馴染・平賀さんが、アメリカから一時帰国したお兄さんと一緒に来店します。
平賀さんは実家の老舗蕎麦屋を継いでいる身ですが、お兄さんは昔から勉強好きで東大卒業後、「蕎麦屋なんか古臭い」と言ってニューヨークでIT企業を立ち上げ、バリバリ働いているという筋金入りの秀才だと語られていました。
確かにお寿司や天ぷらに比べたらまだまだマイナーかも知れませんが、近年グルテンフリーがブームのアメリカで十割蕎麦はヘルシーフード「Soba」として急速に広まってきており、ニューヨークでも蕎麦専門店が何件もオープンしているみたいですので、将来お兄さんがアメリカに蕎麦を本格的に広める橋渡し役になってくれたら面白いだろうな…と思ったのを覚えています(←実際、「坂本龍馬が女性を連れて行きたい店」という斬新なコンセプトながらも、まがい物ではないちゃんとした手打ち蕎麦と創作料理を出して勝負している日本人オーナーの蕎麦屋が成功しているみたいですので、ビジネスとして非常にやりがいがあるのでは?と感じました)。
このように、時流を先取りして常に進歩しようとするお兄さんにとって、伝統を守ろうとするあまり思い切った挑戦を出来ずにいる平賀さんの姿は歯がゆかったらしく、厚岸湾のカキを使用した新定番・牡蠣蕎麦に対して「江戸前の蕎麦屋が、カキを使う必然性がどこにある?」「江戸前で牡蠣なんて獲れないだろ?」「それにカキを食うなら、生ガキにレモンを絞っただけのほうがはるかに旨いだろ?」「カキにたっぷり含まれているタウリンは、レモンのビタミンCで吸収がよくなる。カキとレモンは理にかなった食べ方でもあるんだ」と厳しく突っ込み、平賀さんをムスッとさせていました(←この理路整然とした説明にぐうの音も出ないという図式、『美味しんぼ』の海原雄山氏と山岡さんの会話に通じるものがあると思います;)。
この場面を見て、普段平賀さんに言い負かされてばかりで悔しい思いをしている銀次さんは「いししし…いつもオレが平賀にやられてることをやられてる♡」と内心含み笑いをするのですが、うっかり普通のカキフライを出して「銀次、オレの話を聞いてなかったのか?」「江戸風創作料理の店で、カキフライを出す必然性はなんだ?こんなんでよく店を続けられるなぁ…」と大砲の照準がすっかり銀次さんに変わり、集中砲火を浴びてしまいます。
その上、矛先が別に向いて余裕が生まれた平賀さんから「ふむ、工夫のないタルタルソースのおかげで、ただの洋食になってるな…」(←心なしか、いつもよりも勢いがないのが泣けてきますが;)と援護射撃までされ、あっという間に追い詰められていましたorz。
このシーンを見ると、『プライベート・ライアン』に出てくる某兵士がヘルメットに弾が当たらずに済み、ほっとしてヘルメットを外した瞬間ヘッドショットされたシーンを思い出します…戦場も喧嘩もいつどこで流れ弾が当たるか分かりませんから、油断大敵ですね!
そして翌日、「そういや江戸でカキは食べられていたのかな?っていうか、江戸にカキはあったのか?」という素朴な疑問を抱いた銀次さんは、いつも通り井戸を通って江戸時代へタイムスリップし、平蔵さんに聞くことにします。
すると驚くべき事に、江戸時代ではカキは江戸湾で大量に養殖されている名産品だった事が分かり、平蔵さんの案内で色んなカキ料理を食べ歩く事になっていました(←何と、大正時代に江戸はカキの生産量日本一に輝いていたとの事!もし今でも東京で食用カキが大量に獲れていたら、ひろしまオイスターロードのような地産地消タイプのカキ小屋が、沿岸沿いに沢山並んで観光名所になっていたかもしれませんね)。
この時、平蔵さんは大阪発祥のカキ料理専門店と、江戸っ子好みのカキ料理専門店の二箇所に銀次さんを連れて行ったのですが、大阪風だとカキの土手鍋・カキの酢押し・カキの吸い物・カキめしといった様々な調味料を合わせて趣向を凝らした物、江戸風だと焼きガキやカキの時雨煮など極力手を加えず醤油主体のシンプルな味付けにした物が主流で、味の好みがここまで異なるなんて面白いな~と感じました。
この違いは『みをつくし料理帖』でも説明されていましたが、江戸では醤油のしっかりした塩気と風味こそが味の要で、それ以外はどんな美味しい味付けでも物足りない方が多かったんじゃないかと思います(←『美味しんぼ』でも山岡さんは「牛肉に一番良く合うソースは醤油」と断言してますし、肉・魚介・野菜何でもござれな醤油は本当に最強な調味料ですね。まあ、魯山人みたいにパリの一流レストランで出されたソースを拒否し、わざわざ持参したわさび醤油で鴨を食べる所までいったらさすがにやりすぎですが;)。
それに、カキと醤油は温かくなると美味しくなる温旨系有機酸同士の組み合わせなので、そういう意味でも焼きガキはまさにうってつけの料理なのかもしれません。
こうして、新しい江戸前風創作牡蠣料理のアイディアを掴んだ銀次さんは現代へ戻り、数日後の夜に平賀さんやお兄さんを呼びます。
そして、「日本でも、江戸時代の人たちはたくさん食べてたんですよ」とカキと江戸の薀蓄を語りつつ、“殻つきカキの酒蒸し”(←『美味しんぼ』に出てきた“カキの清蒸風”を江戸前風にした感じで、これも美味しそうでした)を突き出しとして出し、感心されます。
その際、銀次さんが「でもこのシンプルな味付けが続くと、変化球の料理も食べたくなるよね?」と言い、真打ちとして登場させたのがこの“深川風カキフライ”です!
作り方は簡単で、醤油・お酒・みりん・しょうがの味付けで作ったカキの時雨煮に天ぷら衣をつけて高温の油でふっくら揚げ、きゅうりの糠漬けと醤油で作った江戸前タルタルソースを添えたら出来上がりです。
ポイントは、カキの時雨煮は通常のレシピよりもかなり早くにカキを引き上げて極々レア状態に仕上げること、冷えた時雨煮のタレにカキを漬け込んでレアのまま味を染みこませること、揚げ油は100%ごま油を使用してカラッと揚げることの三点で、こうすると江戸っ子好みの和の味わいになると語られていました。
初見時は「天ぷらにタルタル?」といまいち想像できませんでしたが、考えてみたら似たような衣の鶏天やチキン南蛮にもタルタルソースは合いますし、意外としっくりくる組み合わせなのかもしれません(←マヨネーズで天ぷら衣がサクサクになるという裏技もありますし、基本的に相性がいいんでしょうね)。
平賀さん曰く、「カキの旨みが和風に凝縮されたような旨さだ!」だそうで、お兄さんも「こりゃあ旨い!!」「タルタルソースなのに天ぷらに妙に合うぞ!!」と驚いていました。
銀次さんとしては、自分の事より平賀さんの名誉回復をしたかったらしく、「今は東京湾のカキは食べられないけど、江戸前の蕎麦屋がカキを出すって発想はありなんじゃないですかね?」とさりげなくフォローしており、お兄さんから内心「いい友人を持ったな…」とほのぼのされていました。
身が大きくてぷりぷりした質のいいカキが手に入ったので、再現することにしました。
作中には大体の材料と作り方が記載されていましたので、早速その通りに作ってみようと思います!
ということで、レッツ再現調理!
まずは、レアのカキの時雨煮作り。
お鍋(又はフライパン)へお酒、みりん、醤油、少量のおろししょうがを入れて強火でさっと沸騰させ、そこへ軽く水洗いしておいた生カキを投入します。
カキの表面に煮汁がなじむ数十秒くらいで手早くカキを引き上げ、煮汁だけそのまま煮詰めていき、煮汁がトロッとして量が減ってきたら火を消して荒熱を取ります。
煮汁が冷めたら先程のカキが入った器に加えて混ぜ合わせ、数時間かけて味をなじませます(←こうすると、レア状態のまま味が内側までしっかり染みてくれます)。
次は、揚げ作業。
太白純正ごま油と純正ごま油を2:1の割合で合わせた揚げ油を用意し、約180度くらいまで熱しておきます。
この揚げ油へ、汁気をしっかりきってから小麦粉をまぶし、氷水でキンキンに冷やした天ぷら衣をつけたカキを順々に落とし、衣が固まるまで揚げていきます。
レアの時雨煮にした時点で少しは火が通っていますので、ほんの一~二分も揚げれば大丈夫です(←どうしても心配な方は、この時点でしっかり火を通して下さい)。
揚がったらキッチンペーパー等に引き上げ、余計な油分を切ります。
その間、江戸前タルタルソース作り。
ボウルへみじん切りにした糠漬けのきゅうり、マヨネーズ、少量の醤油を入れ、スプーン等でしっかり混ぜ合わせて小皿へ移しておきます。
※糠漬けきゅうりは余分な水分を搾ってから加えると、口当たりのいいソースになります。
千切りキャベツを乗せた大皿へ先程のカキを盛り付け、傍らに江戸前タルタルソースを添えれば“深川風カキフライ”の完成です!
カキから衣越しに磯の香りがふんわりと香り、食欲をそそります。
今までカキを揚げる時は生の状態からしか揚げてこなかったのでちょっと心配ですが、銀次さんを信じて試しに食べてみようと思います!
それでは、江戸前タルタルソースをかけていざ実食!
いっただっきまーす!
さて、味の感想は…殻の中でグツグツ煮え立つカキに、醤油をちょいとたらした物に通じるものがある美味さ!醤油がカキを引き立てており、正直カキフライよりもカキの味をストレートに堪能できる気がします!
レアを心掛けたとはいえ、二度も調理したら火が通りすぎないか不安でしたが、フライよりも揚げ時間が短く衣が薄い天ぷらにしたせいか、全然硬くありません。
生のまま使うよりも、かえってカキの旨味たっぷりのおつゆが内側に封じ込められてこぼれにくくなっており、時間がたっても湿気てデロデロにならず最後までカラッとした衣を保てていました。
100%ゴマ油で揚げたおかげで、他の油にはない香り高い香ばしさと、ゴマ由来のこってりしたコクがたまらない旨味が濃い衣に揚がっており、それでいてサクサクッと軽く油っこくないのが特徴的。
一口かぶりつくと、さっくりした薄衣から半熟のカキがトロッと舌に溢れ出し、カキの濃厚でクリーミーな潮のエキスとゴマ油の風味で口の中が一杯になります。
普通の天ぷらと違うのは、薄すぎずそれでいて噛むごとにじわじわと染み出てくる、辛口の味わい深い出汁醤油のような下味がついている事で、例えるとするなら「江戸前焼きガキ風天ぷら」というイメージでした。
みりんの上品な甘さと、しょうがのキリリとした風味がほのかに漂うのが味の輪郭をはっきりさせており、そのまま食べても充分おいしいです。
あと、江戸前タルタルソースは、糠漬け特有の後引く酸味が効いた意外とさっぱりしたマヨソースで、漬け物じゃないと出ないきゅうりのパリパリシャキッとした爽やかな歯触りがいいアクセントになっていました。
糠の乳酸菌が作用しているせいか、まるでヨーグルトをいれたようなまったりマイルドな味付けになっており、ピクルスみたいにきつい酸っぱさではないので食べやすかったです。
火を通すカキ料理といえばカキフライか焼きカキ派でしたが、カキ天ぷらも甲乙つけがたいくらい美味しいな~と唸りました。
江戸前タルタルソースも意外に天ぷらと合いましたし、他のフライ物にも使えそうな印象を受けたので、日常的に重宝しそうなレシピです。
P.S.
もさん、ゴローさん、コメントして下さりありがとうございます。
●出典)『銀平飯科帳』 河合単/小学館
※この記事も含め、当ブログの再現料理記事は全てこちらの「再現料理のまとめリンク」に載せています。
※レシピの分量や詳しい内容は、以前こちらでご説明した通り完全非公開に致しております。
『ミスター味っ子』の“味吉陽一特製握り寿司六種”を再現!
- Thu
- 18:00
- 再現料理
福岡でちらし寿司と言うと刺身がそのまま乗っている生ちらしか、五目ちらしが主流なのですが、ばらちらしは全ての具材が小さく切られて一口で食べやすくなっている上、生の魚介類だけでなく甘辛く煮付けた椎茸やかんぴょう、穴子、卵焼き、きゅうりなどが酢飯に彩りよく散りばめられているのが特徴的。
最初から具が混ぜられていたり、大ぶりに切って別々に食べたりするのでは出ない、色んな味わいが口の中で一気に弾けて輝く醍醐味はばらちらしならではだと思いますので、福岡でも食べられたらいいのに…と強く感じたものです。
どうも、スシローでまぐろのおはぎなる商品が出たと聞いた時、『ミスター味っ子』に出てきそうなネーミングだと思った当ブログの管理人・あんこです。
本日再現する漫画料理は、『ミスター味っ子』にて陽一君が常連の磯源寿司さんを助ける為に作った“味吉陽一特製握り寿司六種”です!
それは、阿倍さんとのフライ定食対決の決着がついて少し経った頃の事(←詳しい内容は、こちらとこちら)。
隣町から通ってくれている常連・磯源寿司の三木助さんと巧君親子から、毎年行われている寿司コンテストでずっと優勝している最大手のお店・寿司虎さんが調子に乗り、今年からは新聞紙に結果を載せて各店ののれんに順位を書き込むよう強要してきた上、裏でいいネタを買い占めていると聞いた陽一君は激怒し、「そんな横暴許しちゃおけないよ、町内の店が一丸になって寿司虎のわがままをこらしめてやんなきゃ」と協力することになります。
この寿司虎さん、権力を笠に着ての卑怯な妨害・直接煽りながらの脅迫・お金に物を言わせての材料買い占めという料理漫画外道三条件をオールクリアしているキャラで、恐ろしい敵が蔓延している『将太の寿司』界でも一番のゲスキャラと名高い紺屋碧悟さんに対抗できる逸材。
基本的に、敵キャラがまだゆるくて可愛げがあった『ミスター味っ子』界では珍しいタイプのライバルだったりします(←おにぎり対決の大河内さんも大概でしたが、初犯の大河内さんと違い、寿司虎さんは毎年妨害をして勝っては利権をむさぼっている重犯ですので、器が違います)。
店構えも、海外のフリーダムなお寿司屋さんですら真っ青になりそうなカオスっぷりで、2020年の東京オリンピックに向けて開店された劇場型寿司屋・<板前寿司 江戸>様のエキゾチックジャパンな内装が純和風に見えるレベル。
もし『孤独のグルメ』の五郎さんが偶然通りがかっていたら、「うへーっ」「ちょっと無理があるんじゃないのか?」と絶対顔をしかめていたと思います;(←見ようによっては独創的ともいえるので、もしかしたら寿司虎さんにはアートの才能があるのかもしれません)。
また、寿司虎さんは自分がトロや海苔を買い占めた結果、それに劣る代用品で勝負に出るしかなかった他店のお寿司を見て「ハハハ…!苦労のあとが忍ばれて涙ぐましいかぎりだな」と悪代官ばりの大笑いが出来る天性のサディストで、陽一君に「それもこれもみんなおまえのせいじゃないか」と責められても、「材料の仕入れもまた料理人の才覚の一つ!!しかも寿司はネタの出来が最も肝心な料理のひとつ」「新鮮なネタを選びとるルートを常に確保することがまず第一歩だ。その基本を怠ってうちの商売に因縁をつけるたぁそれこそ寿司屋の道理にもとるぜ!!」など、まさにどの口が言う的な正論をいけしゃあしゃあと言う始末。
確かに、エッセイ『寿司屋のかみさん』シリーズのご主人も新人だった時に天然鯛を買おうとすると「あんた、こんな魚を使うのは十年早いよ」と言われた事があったり、今でも知識がないと割高で状態があまりよくない物を売られたりする事はちょくちょくあるそうなので、新鮮なネタを確保できない=それだけ力量不足と言えなくもないかもしれませんが…それを諸悪の根源に指摘されるのは腸が煮えくり返るような思いだったろうな~と陽一君に同情したものです…。
しかし、「町内会でも隠然たる勢力を持っている」と磯源寿司さんから恐れられている割には審査員の人選には口出しできず、特に寿司虎贔屓の人が選ばれている様子もなかったので、実際は裸の王様状態でみんなから嫌われていたんだろうな…と考えると、ちょっぴりかわいそうな気もします;(←表面上は従っているように見えていた町内会も、映画『七人の侍』に出てくる農民みたいに威勢がいい時は体よく利用し、落ち目になったら手の平返しして見捨てるという、したたかなお付き合いをしているに過ぎなかったかもしれないですね。まあ、寿司虎さんは侍ではなく成敗される野武士側なので自業自得ですが;)。
こうして、散々邪魔をされながらも陽一君が諦めずに工夫を凝らして寿司コンテストに出したのが、今からご紹介する“味吉陽一特製握り寿司六種”です!
実を言いますと、酢飯だけは陽一君のアイディアではなく、寿司虎さんが独自に編み出した秘密の酢飯だったりします(←陽一君があっさり解いて自分のものにしていましたが;)。
何種類かブレンドしたお米を昆布と一緒に炊き込み、ほんの少量の塩とお酢を混ぜこむ事で砂糖なしでも自然な甘味が出る最高の酢飯に仕上がるとの事で、初見時は「砂糖をいれずに酢飯が作れるの?!」とびっくりしたものです。
けれども、調べてみると大昔の江戸前寿司では酢飯に砂糖を使わないのは当たり前で、近代に入ってからは味覚の変化や価格の安定化、加えて砂糖を入れた方が冷めてもおいしいという事もあって砂糖入りの酢飯が常識となったみたいで、現代でもお酢や調味料に工夫してお酢だけの酢飯を作っているご家庭もあると知り、なるほどな~と思いました。
あと、使う醤油は一般家庭に置いてある生醤油ではなく、お酒・みりん・醤油・お水などを少し煮詰めて作る煮切り醤油!
何でも、普通の醤油だと味が強すぎて魚の味が分かりにくくなる為、大抵のお寿司屋さんでは自家製の煮切り醤油が出されるのだそうで、何とあの回転寿司でも業者製とはいえ煮切り醤油を使っているのだとか(
陽一君の場合、そこにガリを漬けて仕上げ直前に刷毛代わりにしてお寿司に塗ってもらい、より風味ある味わいにして提供していました。
そして肝心のネタですが、作中では合計九種類のお寿司が完成図に載っていたものの、どんな工夫をしているのか詳しく語られているのは六種類のみでしたので、当ブログではそれらだけを取り上げていこうと思います。
一つ目&二つ目は、海苔を買占められて窮地に陥った陽一君が、海苔以上に美味しい巻物を作るために発明したかつお節シートで作った、“かっぱ巻き”と“マグロ軍艦”!
通常、海苔を使わず巻物を作るとなると思い浮かぶのは青菜や昆布ですが、前者は「海苔巻きのような磯の香りがない」、後者は「海苔巻き特有のパリッとした感じがない」とダメ出しされ、途方に暮れます(←海外では「ペーパーみたい」と嫌われている海苔ですが、例え裏巻きにする方法でも世界に広まったということは、それだけ寿司において重要な役割を果たしているからなんだろうなと思います)。
そこを陽一君は、何とかつお節を町工場でシート状に加工して海苔代わりに使うという驚きの方法で「歯ざわり良く海の香りに満ちている」巻物を作ることに成功したのでした。
といってもそのまま普通に巻いて終わりにしないのが陽一君流で、“かっぱ巻き”はきゅうりを千切りにして回りに梅じそをまぶしてから巻いたり、“マグロ軍艦”はマグロの赤身寿司の周りにかつお節シートを巻いて軍艦風にしてから上にとろろをかけたりと遊び心満点でした。
三つ目は、トロを買い占められてもくじけず生食用の霜降り牛肉を使って作った、“牛肉寿司”(←ちなみに、買占めを知ったのは真夜中だったのですが、いきなりお店を飛び出したかと思うとすぐこのお肉を持って戻ってきました。結局最後までどこで買ったのかは謎で、「まさか『アウターゾーン』的な世界で手に入れた闇肉…?」と未だに不気味に思うシーンです;)!
最上のトロと味わいが似ている霜降り牛肉でトロ同然の満足感を与え、脂のしつこさはきゅうりの薄切りを間に挟んでさっぱりさせるのがミソだと作中で説明されてました。
四つ目は、見た目にも美しく子どもでも食べやすい一口サイズに仕立てる為に陽一君が考案した、“赤貝の細工寿司”!
半分に切った赤貝と酢飯をボール状に握った物を花びらに、裏漉しした卵の黄身と酢飯をボール状に握った物を花芯に見立て、まるで紅梅の花のように美しく仕上げた細工寿司で、会場からも歓声が上がってました。
五つ目は、現在お寿司屋さんで主流のすり身を入れてカステラ状に焼き上げる厚焼き卵や、出汁巻き卵とは一味違う“かしわ卵”!
魚のすり身や片栗粉みたいな粉物を一切入れず、卵本来の味を引き立てる味付けをして極々薄く焼き上げ、柏餅みたいに酢飯を包み込むシンプルなお寿司で、昔はあちこちで見られたものの今では絶滅寸前の卵焼きとの事。
茶飯の知識といい、変わり揚げの知識といい、かしわ卵の知識といい博識なので、こう見えて陽一君は実はかなりの勉強家なのかな?と思います(←肉屋のおじさんの証言だと、学校の成績はまずまずみたいですが;)。
六つ目は、寿司虎さんの東京湾で獲れた小ぶりな高級穴子ほどではない品質の穴子でも対抗できるようにと陽一君がひと手間加えた“穴子寿司”!
穴子自体はごく普通のツメを塗った白焼きタイプですが、酢飯に山椒の実の塩漬けを散りばめて鮮やかなアクセントを付け加え、塩味と甘味の対比をはっきりさせる事でネタの弱点を補ったと語っていました。
「本当に自分に作れるだろうか…」とずっと迷っていたのですが、最近前々から探していたある材料が手に入り、「よーしやってみるか!!」と一念発起しました。
作中には大体の材料とレシピが載っていますので、早速その通りに作ってみようと思います!
ということで、レッツ再現調理!
まずは、砂糖を使わない酢飯作り。
研いで通常通りの水加減をしたブレンド米入りの炊飯器へ出汁昆布を加え、約一時間程放置して水を吸わせた後、普通に炊きます(←昆布は惜しみなくたっぷり使う事をおすすめします。使い終わった昆布は今の季節だと、お鍋の具にすると楽に消費できます)。
炊けたらすぐに寿司桶(又は大き目の平皿)へあけて塩を適量入れたお酢を回しかけ、しゃもじで切るようにしてさっくりと混ぜ合わせます。
お米がお酢を充分に吸ったのを確認したら清潔な濡れ手ぬぐいを上から被せ、人肌くらいの温度になるまで少し冷ましておきます。
※お酢は甘味が強めで尖った酸味がない純りんご酢を主体に、酒粕を使った穀物酢と黒酢を少しずつ足して調節したものを使用しました。
次は、ガリ漬け煮切り醤油作り。
小鍋にお酒とみりんを入れて強火にかけ、アルコール分を飛ばしたら醤油と少量のお水を入れてさらに煮立て、数十秒沸騰させたらすぐに火を消して別の容器に移します。
荒熱が取れたらしっかり漬け汁を切ったガリを投入し、そのまま冷蔵庫で冷まします。
ここまできたら、いよいよ握り寿司作り。
最初は、“穴子寿司”の用意。
一貫分に握った酢飯に実山椒(←原作では塩漬けでしたが、当管理人は塩漬けを醤油味に煮た自家製薬味を使用してます。再現度が低くてすみません)をあちこちにちりばめ、ツメを薄く塗った穴子を乗せて握ります。
※穴子と赤貝はお店でどうしても手に入らなかったので、恥ずかしながら回転寿司で買ってきたネタを追いはぎして使用しましたorz。余った酢飯は、家にあった海苔と納豆で手巻き寿司にして美味しく頂きました。
二番目は、“赤貝の細工寿司”の用意。
ぎゅっと水気を絞っておいた調理用ガーゼに、甘酢にくぐらせて半分に切った後飾り包丁をいれた赤貝と、小さくボール状に握った酢飯を乗せてねじりこみ、丸型に握ります。
これを、五個作っておきます。
続けて、茹でて裏漉しした卵の黄身と小さくボール状に握った酢飯をガーゼに乗せてねじりつつ握り、先に準備した五個の赤貝寿司と一緒に紅梅の形になるよう先に大皿へ盛り付けておきます。
三番目は、“かしわ卵”の用意。
ボウルへ卵、みりん、砂糖、塩、醤油、出汁を入れてよくかき混ぜ、漉し器にかけてサラッとした液体状にします(←砂糖と醤油と出汁はほんのちょっとずつにし、卵の味を活かすようにします)。
この卵液を、油を少し敷いて熱しておいたフライパンに流し込んでごく薄く焼き、破かないよう注意しながらひっくり返して裏面もさっと火を通します。
焦がさぬよう程よく焼いたらまな板へ移し、包丁で四角く切り分け、一貫分に握った酢飯の上にそっと乗せます。
※こちらのサイト様に書いてあるレシピを参考にしました。
四番目は、かつお節シートを使った“かっぱ巻き”の用意。
かつお節シートだけは流石に自作する訳にはいかず、どうしようかな~と前々から悩んでいたのですが、ネット検索した所、何とにんべん様がかつお節を海苔のようにシート状にした商品・手巻きかつおを販売していらっしゃった為、すぐに入手しました!
このかつお節シートを巻きすに敷き、その上に酢飯を薄く広げます(←のりしろ用の空白を作らないと、うまく巻き終えずにぱっくりと切腹してしまいますので気をつけて下さい)。
そこへ細かく刻んだ梅じそと細く切ったきゅうりを乗せ、クルクルッと巻いて細巻きに仕立て、しばらく巻きすを巻いた状態のまま放置してなじませます。
酢飯とかつお節シートがなじんで成型できたら取り出し、一口サイズに切ります。
五番目は、同じくかつお節シートを使った“マグロ軍艦”の用意。
一巻分の酢飯にマグロの赤身を乗せて握り、周りに軍艦用のサイズに切ったかつお節シートを巻きつけます(←巻き終わりは酢飯をのり代わりにしてくっつけるとうまくいきます)。
この上に、皮をむいてすりおろした山芋をたっぷりかけておきます。
六番目は、“牛肉寿司”の用意。
生食用として売られている牛霜降り肉の刺身を準備し、極薄にスライスしたきゅうりを間に挟んで一貫分の酢飯と共に優しく握りこみます。
※今回、こちらのサイト様で生食の牛刺し用として売られている安全で良質なお肉を使用しました。余った牛刺しは付属のタレで頂きましたが、今や幻となりつつある焼肉屋の上質な牛刺しそのもののとろけるような美味しさで感動しました。赤身に見える部分にもちゃんと脂がさしていています。
握り終えたお寿司を全種類大皿へ盛り付け、最後にガリ漬け煮切り醤油が入った小皿を添えれば“味吉陽一特製握り寿司六種”の完成です!
似たような色合いで少し地味な見た目になってしまいましたが、『ミスター味っ子』ファンとしては感無量な一皿で、不覚にも写真を撮りながら胸がジーンと熱くなりました;。
砂糖を使わなくて本当に酢飯になるのかとか、ガリを煮切り醤油に漬けたら辛くならないかとか、かつお節シートはどんな味がするのかとか色々疑問はありますが、自分の直感を信じて食べてみようと思います!
それでは、ガリを刷毛代わりに煮切り醤油をつけていざ実食!
いっただっきま~すっ!
さて、味の感想は…今までにない斬新な創作寿司の数々に感心!ネタかと思いきやどれも正統派に近い美味さでした!
ガリを漬けた煮きり醤油は甘ったるくも酸っぱくもなく、醤油をさらにこっくりとまろやかに熟成させたような奥深い塩気で、ネタや酢飯と抜群の相性です。
みりんの落ち着いた甘味とガリのフレッシュな辛味が僅かに舌を走り、醤油のコクをくっきりと浮かび上がらせる感じで、例えるなら「辛めの濃口旨味醤油」というイメージでした(←近い物を挙げるならたまり醤油ですが、こちらはそこまで甘くないのが最大の違いです)。
一番意外だったのは酢飯で、りんご酢のフルーティーで優しい甘酸っぱさと、昆布の滋味深い出汁が効いた自然な甘味が塩によってさらに引き立っており、砂糖なしでも充分酢飯として成り立っています。
確かに砂糖を使った酢飯よりも甘さは弱くさっぱりしていますが、その分お米の個性がしっかり分かる上に後口がすっきりして非常にキレがいいのが特徴的で、ネタが持つ甘味を100%活かせる所が気に入りました。
赤貝の細工寿司は、シコシコした弾力やコリコリの歯応えを併せ持つ身と、鮮烈な磯の風味や潮の旨味が際立つ赤貝を、煮きり醤油のコクが臭みを消しつつワンランク上の味に仕立てており、まさに「江戸前の仕事」を感じる美味しさです。
裏漉しした黄身の寿司は口にした途端、一瞬の内にパラッとほどけて酢飯と調和し、ホクホクした淡い甘さの余韻が残るのが日常では味わえない儚げな味わいで、うっとりします。
お寿司と言うより、もはや懐石料理に出てもおかしくない一品でした。
かしわ卵は、透けそうなくらい薄い卵ですっぽり覆われた酢飯はまるで高級和菓子みたいに品がよく、厚みがなくても出汁や甘味が主張してくるのに驚きます。
クレープや薄焼き卵よりもずっと薄いのですが、粉類が全く入っていないせいか凄まじく口溶けがよくて羽のように軽く、卵の自然な旨味を雅やかに楽めます。
茶巾寿司のような華はないですが、卵が主役の素朴な心和む味わいで、「極薄の出汁巻き玉子」というイメージでした。
あと、肝心のかつお節シートですが…残念ながら海苔の代用になるパリッと感はありませんでした;。
どちらかと言えばほわほわパフッとした口当たりで、握って時間が経った海苔や昆布巻きのようにしんなりと酢飯に馴染む感じです。
ただ、陽一くんの言う通りかつお節が持つ強烈な旨味エキスと香ばしさは他のどんな巻物にもない特色で、淡白な具にインパクトをつけるにはうってつけの新素材だと思いました。
そのままだとイマイチありきたりになってしまう具も、かつお節でバシッと辛口に味が決まるのが秀逸です(←今回のきゅうりやとろろマグロは勿論、いかオクラ・まぐタク・納豆が合いそうでした)。
かっぱ巻きは、きゅうりを千切りにする事によってシャキシャキ感がぐっと増し、清涼感が何倍にも強調されています。
梅干しよりも酸味が和らいでいる梅じそを使用している為そこまで酸っぱくはなく、それでいて程よくさっぱりさせる上品な巻物で、かつお節と煮切り醤油によって梅おかかをもっと贅沢にしたような複雑な味付けになっているのがよかったです。
マグロ軍艦は、あっさりしたマグロの赤身がとろろによってボリューム感が出ているのが美味で、かつお節から出る濃密な出汁成分で味が膨らみ、普通の山かけよりもがっつり濃くなってとろろご飯を彷彿とさせる旨さに仕上がっていました。
煮きり醤油と合わさってほんわりした味がキリリと引き締まり、ヅケ風に味付けされたマグロが酢飯にぴったりです。
牛肉寿司は、さすがにトロ同様とはいかないものの匹敵する程柔らかく、魚肉にはないしなやかな弾力とじわりじわりと時間をかけてゆるやかに溶けていく優雅な口当たりが印象的。
噛むごとにトロ以上にズシンとくる力強い肉の旨味と、濃厚かつ繊細な脂のコクが少しずつとろけ出し、それを酢飯ががっちり受け止めて口一杯に広がるのが最高で、やはり最上の牛肉とトロは違うようでどこか通じる物があるな~と感心しました。
あ、挟まっているきゅうりはパリパリと砕けて食感にアクセントを与えているのは良かったですが…脂分を消す役割はどうやら荷が重かったようです;(←『北斗の拳』に出てきた「ないアルの修羅」とラオウ並に力量の差がありました)。
穴子寿司は、ねっとり甘辛いフワトロ穴子が酢飯とふんわり崩れた後、山椒の清々しい香気と若々しい辛さが鼻をスーっと抜け、適度な塩気が穴子とツメの存在感を際立たせているのがナイスでした。
少し舌に痺れるような癖が残りますが、口の中を一気にクリアにしてシャッキリさせる為、コースの途中に緩急をつけるのにうってつけだと思います。
本音を言いますと、「これはさすがに…」というネタがあるのではないかと危惧していたのですが、実際にして作ってみると拍子抜けするくらいおいしかったです。
中でも、砂糖を使わない酢飯やガリ漬け煮切り醤油は日常でも気軽に使える感じでよかったので、家で海鮮丼を作る時はちょくちょく作りたいな~と思いました。
P.S.
無記名さん、無記名さん、無記名さん、kawajunさん、コメントを下さりありがとうございます。
こちらの記事だけまとめ記事にあるにも関わらず表示されなかったのは、記事を数日後に自動的にアップするまで未表示にする予約投稿という扱いにし、後でまとめに加えるのを忘れてしまわないよう、一足早くまとめ記事に表記していたからです。
今後も恐らく同じことがあると思います、紛らわしくてすみません。
kawajunさん、お気遣いして下さってわざわざコメント欄にてご説明頂き、ありがとうございます。
●出典)文庫版『ミスター味っ子』 寺沢大介/講談社
※この記事も含め、当ブログの再現料理記事は全てこちらの「再現料理のまとめリンク」に載せています。
※レシピの分量や詳しい内容は、以前こちらでご説明した通り完全非公開に致しております。
『紺田照の合法レシピ』の“鶏手羽元と蕪のオーブン焼き”を再現!
- Sun
- 18:00
- 再現料理
限りなく近い例を挙げるなら、「情熱!!チャーハン」とか、「ジューシィー!!肉団子」とか、「激おすすめ!!店長の刺身盛」という感じで、味に自信があるからこそかな?と思いました(←実際、おいしかったです)。
ただ、「熱々!!アヒージョ」は思わず油風呂を連想してしまい、危うく吹きかけて不審者になる所でしたorz。
どうも、料理を選んでいる時ずっと『魁!!男塾』が頭に思い浮かんでいた当ブログの管理人・あんこです。
本日再現する漫画料理は、『紺田照の合法レシピ』にて紺田君が霜降肉組の組長・美月さんとその息子・羽牟助君の為に作った“鶏手羽元と蕪のオーブン焼き”です!
ある日、紺田君は霜降肉組の美しき五代目組長・美月さんに命じられ、あるスーパーで月に一度行われる大規模タイムセールに参加します。
紺田君は腕っ節の強さと強面が評判の、どちらかといえばカチコミ要員と見なされている組員な為、一緒についてきた羽牟助君から不思議がられていましたが、美月さん曰く「ウチの人選能力を舐めたらアカンで」「あの“袋詰め”の手際の良さは相当なもんや」だそうで、前からお買い物要員として目をつけていたみたいでした。
大きいお屋敷や手入れの行き届いたお庭から察するに結構なお金持ちですので、スーパーの特売を日頃からチェックしているとは意外でしたが、考えてみればお金持ちほど普段は質素な生活をしていると言いますし、無駄使いをせずいざという時に備えてきっちり貯金している姿勢は部下からすると頼もしい限りだろうな~と思います(←かつてマイケル=ジャクソンが「This and this and this…」と欲しい物を片っ端から大人買いして伝説になった通称マイケル買いや、『セレベスト織田信長』みたいにセレブ中のセレブ達が既存の「贅沢」という概念が崩壊するレベルで繰り広げるラグジュアリーなおもてなしバトルみたいに、庶民感覚で読んでいたら気が狂いそうになるお金持ち伝説の方が、見ている分には夢があって好きですが…)。
ただ気になるのは、回想シーンに出てきた袋詰め画像で、ちょうど人間くらいの大きさの物をシートに包んだ紺田君が「3体何とか入りました」と恐ろしい発言をしていた事ですが…。
これまで紺田君は、ロシア出張の際にマフィアからシステマを習得したり、上司を銃弾から護衛している内に武器を持たせた阿修羅をスタンド化したオーラを自在に出したり、先輩にゲーセンのレーシングゲームを鍛えられてプロも驚きのドリフトを身につけたりと、仕事中の業務がきっかけで私生活でも役立つ技術を身につけていましたが、まさか食料の袋詰めという所帯じみた技術をも上達させるとは…ここまでくると、もはや天晴れです。
…きっと、築地でマグロの出荷を手伝っていたんでしょうね!大型のマグロは、身長2m近くになるのも珍しくないですし(←視線を逸らしながら)!
定番野菜のみならず、お肉類まで詰め放題という破格のセールでしたが、紺田君が美月さんに指令されていた今回の標的は、「手ごろな価格のわりにボリューミーでゴージャス感のある鶏肉界の豪腕」と紺田君も絶賛していた部位・鶏手羽元!
しかし、お買い得品を前に普段の三割増くらい殺気立っている主婦たちの中においても(←イ○ンの火曜市や激安スーパーではよくある事。当管理人もセール会場では荒野を彷徨う一匹の獣になります)、一際異彩を放つ凄腕の主婦が紺田君に目をつけてぶつかり、「あら?ごめんなさいボウヤ、迷子かしら?」と威嚇します。
その名も、詰め地獄の蕪子!
しかし、紺田君も
それを見て「このガキ生意気な…」とカチンときた蕪子さんは、自分の取り分を増やす為にわざとトングで紺田君の袋を裂いてやろうと画策し、「アンタ…地獄に落とすわよ!!」と襲い掛かろうとしますが(←「堕ちる」ではなく「落とす」なのが本家よりも凶悪度が増してますね。『蜘蛛の糸』のカンダタに負けない悪役っぷりです)、何と誤って自分の袋を破ってしまうというドジっ子シーンを披露してしまい、無常にもセールタイムは終了していました。
このまま立ち去っても良かったはずなのですが、「手羽元の煮物…だんなと息子の好物なのに…」と急に善なる母へとクラスチェンジして嘆く蕪子さんに、何と紺田君は「少し取り過ぎたみたいです」「折半で取り引きしませんか?」と鶏手羽元を分けていました。
齢十八歳にしてこの聖人っぷり…当管理人だったら後光が差して見えて、思わず拝んでしまいそうです。
その後、紺田君は美月さんと羽牟助君にお願いされて鶏手羽元で夕食を作る事になり、もみくちゃになった店内と蕪子さんから着想を得てある新料理を作ることにします。
それが、この“鶏手羽元と蕪のオーブン焼き”です!
作り方はとても簡単で、鶏手羽元に塩麹・にんにく・お酒・粗挽きブラックペッパーを合わせてぐちゃぐちゃにもみ込み、三十分ほど寝かせてからくし形切りにした蕪と一緒に高温のオーブンで焼き上げて出来上がりです。
ポイントは、鶏手羽元は骨に沿って包丁で切れ目を数箇所入れることと、オーブンで焼く時は途中ひっくり返して表裏を焼くようにすることの二点で、こうすると味が全体によく染みこむと説明されていました。
塩麹に漬けた鶏手羽元をオーブンで焼く料理は今や定番となっていますが、そこに蕪やにんにく、粗挽きブラックペッパーを合わせたレシピは意外にも見かけない為、これは紺田君の完全な創作レシピといえそうです。
実際に食べた美月さんによると、「な、なんちゅう旨さや!!」「パリッとした皮に対ししっとりと軟らかな肉の食感と旨み…」「これで杯交わしてもええくらいやわ…!!」な美味しさだったそうで、羽牟助君も「蕪も甘くてごっつ旨い!!」と目を輝かせながら食べていました。
やっと蕪がお手頃価格でスーパーに出回るようになってきたので、再現することにしました。
作中には詳細なレシピがきっちり記載されていますので、早速その通りに作ってみようと思います(←ちなみに、分量つきの詳しいレシピはこちらに載っています)!
ということで、レッツ再現調理!
まずは、鶏肉の下ごしらえ。
鶏手羽元は包丁で骨に沿ってあちこちに切り込みを入れ、ボウルに入れます。
そこへ塩麹、おろしにんにく、お酒、粗挽きブラックペッパーを投入し、手でよ~くもみ込んで味をなじませ、三十分程冷蔵庫で寝かせます。
※シンプルな料理ですので、ブラックペッパーは挽き立てがおすすめです。当管理人の場合、すり鉢でホールのブラックペッパーを叩き潰してから使いました。
次は、焼き作業。
蕪は茎を一センチくらい残して葉を切り落とし、茎部分についている泥をしっかり洗い落としてから皮をむいてくし形に切ります(←この料理に葉は使いませんが、蕪の葉は栄養満点で味も美味なので、ベーコンやコンソメと一緒に炒めて副菜にしました)。
この蕪と、先程の漬け終わった鶏手羽元をクッキングシートを敷いた天板に並べ、高温のオーブンで焼きます。
片面が焼けたのを確認したらひっくり返し、もう一度オーブンに入れて裏側も焼きます。
※焼き時間のおおよその目安は、片面十分ずつだそうです。
何度か様子見して全体に火が通っているのを確認したらオーブンから取り出し、そのままお皿へ盛り付ければ“鶏手羽元と蕪のオーブン焼き”の完成です!
香ばしく焼けたにんにくと鶏肉の香りが強烈に漂い、食欲をそそります(←焼いている最中から既にその香りはキッチンに広がっており、「おいしそうな匂いがする」と夫もいち早く気付いていました;)。
見た目も蕪の緑と白がこんがり焼けた鶏肉の色合いに映えて見るからにおいしそうで、画像を撮りながら「早く食べたい…!」とうずうずしました。
それでは、冷めない内に取り分けていざ実食!
いっただっきま~す!
さて、味の感想は…和風仕立てのようでどこかエスニックのような不思議な美味しさ!蕪の絶妙な火の通り加減が病み付きになります!
塩麹のふくよかで熟成された塩気と、にんにくのガツンとくる力強い風味が融合した甘辛にんにく塩味が濃厚な鶏手羽元にばっちり合っており、優しいのにこってり系という一風変わった美味しさに仕上がっていました。
挽き立てブラックペッパーの目が覚めるくらいスパイシーな香気がいいアクセントになっており、癒し系な味付けにも関わらずキレのいい後口になっているのが特徴的です。
にんにく塩味はよくも悪くも味がはっきり濃い為、最初は夢中で食べてても途中からペースが落ちやすいのですが、こちらは塩麹を使用して複雑かつマイルドな塩気で刺激をやんわり抑え、尚且つ塩味と同じ比率でまったりした甘味が効いているので最後まで飽きずに食べられました。
塩麹効果で柔らかい肉質になった鶏肉に、蕪から出た滋味深いエキスが染み込み、さらにしっとりしているのがよかったです。
半生状態に焼いた蕪のシャクシャクボリッとした小気味良い歯応えと、煮た蕪の透明感すら感じるホロリとほどける淡い口当たりが両立しており、噛めば噛むほど肉厚な蕪からジューシーな甘いおつゆがジュワジュワと溢れるのにうっとりします(←茎と葉の瑞々しい歯触りもナイス!)。
鶏肉のがっつりした濃口の旨味と、蕪のあっさり爽やかな味わいの対比が見事な一品で、交互に食べると止まりませんでした。
塩麹とにんにくの組み合わせは初めてでしたが、正反対の味わいなのにこんなにもぴったり合うとは思わず、びっくりしました。
鶏肉以外でも使えそうな味付けですので、色々試してみる予定です!
P.S.
無記名さん、ノリスケさん、おもちさん、kawajunさん、コメントして下さりありがとうございます。
●出典)『紺田照の合法レシピ』 馬田イスケ/講談社
※この記事も含め、当ブログの再現料理記事は全てこちらの「再現料理のまとめリンク」に載せています。
※レシピの分量や詳しい内容は、以前こちらでご説明した通り完全非公開に致しております。
『ミスター味っ子』の“小西和也特製ベーコン巻きステーキレモンバター添え”を再現!
- Wed
- 18:00
- 再現料理
長年不思議でしたが、よく考えたら「かっこいいお兄さん」「キレイなお姉さん」を一番の売りにすると、お菓子よりもキャラ目当ての、かつて子供達がビックリマンチョコレートのカードだけ抜き取りお菓子を捨てて社会問題になった事例のような、食欲以外の欲にお客さんが目覚める危険性があるかもしれません。
そういう恐れがないのに、料理の経験が豊富そうでアットホーム、そして美味しそうなイメージを抱かせやすいおじさん&おばさんキャラは、まさにいい事尽くめなんだと改めて思いました。
どうも、その昔永谷園のお茶漬けにおまけとして入っていた東海道五拾三次カードを集める渋い幼少期を送っていた当ブログの管理人・あんこです。
本日再現する漫画料理は、『ミスター味っ子』にてステーキ対決の際に陽一君の対戦相手・小西さんが作った“小西和也特製ベーコン巻きステーキレモンバター添え”です!
唐突ですが、連載開始して早々、天下の味皇料理会で何十年もキャリアを積んだイタリア料理部主任と、料理勝負の経験もイタリアンの知識もゼロのまま戦って勝利した陽一君は、今流行の「異世界でチート能力を持つ最強主人公」並にすごい主人公だったんだな~と思います。
普通に考えれば、『ドラクエⅤ』で主人公が幼少期に幹部クラスのゲマと戦闘になったり、『魔法騎士レイアース』で異世界に召喚された直後の少女達がいきなりレベル50くらいの女魔導師に殺されかけたりした時と同じくらい絶望的な勝負だったはずなのですが、そこをあっさり勝っちゃったのですから、初見時は「次の対戦相手はどんな人なんだろう」と非常に気になったのを覚えています。
けれども、次に戦ったのは隣町のラーメン屋さん、その次に戦ったのはまだ無名だった同世代の一馬君で、その大胆な展開に当初は戸惑ったものです(←通常、バトル物はホップステップジャンプの要領で徐々に強敵になっていくのがセオリーですので…)。
ただ、知名度&社会的地位がある=真に才能があるとは必ずしも言い切れないのはどの業界も共通していますので、ある意味シビアな現実を描いているのかもしれません。
基本的に『ミスター味っ子』界に出てくる対戦相手は、とても有名で技術も超一流の料理人か、天才料理少年か、そこそこ知名度があって腕前もいいけど性格or外見に癖があるという、かなり特殊な料理人がほとんど。
しかし、今回ご紹介するステーキ勝負の対戦相手は、小西さんを除くと珍しく「性格も身なりもごく一般的なよくいる市井の料理人」というタイプの方々で、色々と
後々、審査員の方々から「マスタードソースを生かすにはもっと肉汁を出す工夫をしないと」「肉汁のない肉とポテトではそれこそ胸やけになってしまうよ!!」「ダメだな」「ああ、これもダメだ!!」などとボロクソに言われ、結局店名のみで名前は非公開だった彼らですが、<レストラン・ラ・シャイ>さんのオイル漬けで肉質をしっとりと柔らかくする方法や、<杉屋>さんの野菜エキスで肉の繊維を柔らかくする方法は現代でも使われている程完成度が高く、「輸入牛を安く手軽に柔らかくさせる」という一応の目的はクリアしているので、少し言い過ぎではないかと同情しました;。
もしかしたら、一口ずつでいいとはいえ、二十枚ものステーキを温かい内に手早く黙々と食べなくてはいけないという、フードファイター並に過酷な試食でヘトヘトになった影響で、審査員の方々もつい辛口になったのかもしれませんね…(←しかも、そのほとんどが何も対策されずガチガチに硬かったみたいですから、内心うんざりするのも無理ないです。硬いステーキを切るのは地味に力がいりますしorz)。
ちなみに、ステーキの調理中に小西さんは「どうだ!この肉のやわらかさ!」「ステーキは肉質のやわらかさが第一のポイント!!」と大きな声で独り言を言ったり、「この基準をクリアした店はいくつあるかな!?」と会場を観察しつつ実況したり、「やはりオレは肉料理の天才!!…料理の世界の頂点に立つべき男なんだぜ!!」「この勝負どうやらオレとオマエの一騎打ちになりそうだぜ!!」「ならば最後は…ステーキソースの勝負だぜ!!」と一人で盛り上がったりと、すごくテンションが高かったのが印象的でした(←語尾に「だぜ!!」が多いせいか、どうしてもスギちゃんや『ポケモン』のサトシ君が頭をちらつきます;)。
表面上は余裕を見せて陽一君を挑発していましたが、内心は「やっと大舞台だぜ、俺の実力を見せつけてやる!」とワクワクしていたのかと想像すると、いくら口が悪くても憎めずほのぼのします。
味皇様は「わがままな性格で他人との協調がどうしてもできない男」と小西さんを評していましたが、途中陽一君に「そのソースには致命的な欠陥があるぞ!!」「ステーキは熱いうちが命!!熱いまま食べさせるところに値打ちがあるんだぜ!!」「冷えたステーキなんかとても食えたもんじゃないぜ!!」と乱暴ではあるものの助言と取れなくもない発言をしたり、「あんたこそ皿をよーく温めといたほうがいいよ!!」と陽一君に言い返されて「お…おう」と言いたげな顔になって汗をかきつつ黙ったりと、そこまで偏屈な悪い人には思えませんでしたので、「わがままというより、単に不器用で人付き合いが苦手なだけなんじゃ…」と感じたものです。
このように、少々ぶっきらぼうで周囲から浮き気味の小西さんですが、松岡修造さんばりに熱い肉料理への情熱と才能は本物ですので、味皇料理会みたいな巨大組織に宮仕えするよりも、個人店でのびのび働く方が向いてたんじゃないかなと思います(←すごく美味しいお店なら、気難しい店主でも繁盛するケースは多々ありますし。特に<美食倶楽部>は、頑固親父界の星ともいうべき成功例だと思ってます)。
そんな小西さんが、持てる技術を全て注ぎ込んで作ったのがこの“小西和也特製ベーコン巻きステーキレモンバター添え”です!
作り方は簡単で、ステーキ用の牛肉をパパイヤ酵素で柔らかくしてベーコンを巻いた後焼き上げ、ステーキの上にパセリとレモン汁を混ぜておいたバターを乗せ、温めておいたトマトを添えたら出来上がりです。
そのままだったら硬くて肉汁が出ない外国産の赤身肉を、パパイヤが持つ酵素によって柔らかい肉質に仕立て、ベーコンとバターで足りない肉汁を補うという細やかな心配りが効いた洋風ステーキで、「肉のやわらかさ、肉汁の多さ、ソースの旨味、付け合わせ、焼きかげん!どれをとってもこれは最高のステーキといえましょう!!」と審査員さんも絶賛していました。
実はこのパパイヤ酵素、外食産業では有名な食肉改良剤の主要成分として使用されており、その効果は既に立証されている為、小西さんには先見の明があったのだと思います。
これだけ肉汁たっぷりだとしつこくなりそうですが、そこはレモンやトマトを使うことでさっぱりさせるなどきっちりカバーしており、陽一君のステーキに使われた大根おろしや小梅の工夫に比べるとザ・王道な調理で、冒険をしつつも正当派な仕上がりになる所はさすがステーキハウスの料理長だな~って感じです。
ポイントは、ベーコンにもちゃんと火を通してステーキになじませるように焼くことと、パパイヤ酵素が効きすぎて肉がグズグズにならないよう気をつけることの二点で、ゴージャスな見た目に反して意外と手間をかけず作れるのに驚いたものです。
パパイヤがなかなか見つからなくて挑戦できずにいましたが、先日あるスーパーでやっと見つけられたので再現することにしました。
作中には大体のレシピが書かれていましたので、心にルネッサンス情熱を抱きつつ早速その通りに作ってみようと思います!
ということで、レッツ再現調理!
まずは、レモンバターの用意。
ボウルへ常温に戻して柔らかくしたバター、細かく刻んだパセリ、レモン汁を入れてよ~くかき混ぜ、ラップに筒状になるよう包んでキャンディーっぽく両側をねじって形を固定し、冷蔵庫に入れて固めます。
固まったら、使用前にちょうどいい大きさにカットします。
※バターとレモン汁は分離しやすいですが、ある程度混ざれば気にせずそのままラップへ移しちゃって大丈夫です。冷える内に自然と固まってくれます。
つぎは、牛肉の下準備。
パパイヤから種を取り除いて皮をむいたら実をすりおろすか叩き切りにし、調理用ガーゼで包んだステーキ用の赤身牛肉(←今回も安いオーストラリア産肩ロースステーキ牛肉です)にまぶし、冷蔵庫で半日~一晩放置します。
この時、皮も使うとより効果的では?と思ったので試しに使ってみました。
※原作ではパパイヤ酵素でしたが、純粋な肉用パパイヤ酵素100%の粉末が見つからず、こちらもトレハロースを始めとする他の成分が混ざっていましたので、本物のパパイヤで代用しました。忠実な再現でなくて申し訳ございません。
時間が経ったらパパイヤやガーゼの中から牛肉を取り出し、塩水でさっと洗った後余計な水気をキッチンペーパー等でしっかりふき取ります(←下記画像では分かりづらいかもしれませんが、この時点で結構柔らかかったです!)。
この牛肉にベーコンを巻きつけて爪楊枝で固定し、塩と胡椒を軽く振った後、フライパンでベーコン共々両面をミディアムレアの手前になるまで焼きます。
ベーコンとステーキを鍋肌に押し付けながら焼くと、段々密着してきますので、途中で爪楊枝を外します。
※取り除いたパパイヤは、皮以外電子レンジにかけて牛肉の汁を加熱しきってしまえば充分おいしく食べられます!不思議と、生のままより熱を加えたほうがずっと甘かったです。
次は、仕上げ作業。
別のフライパンでスライスしたトマトの両面を少し焦げ目がつくまで焼き、先程のステーキと一緒に直火にかけてあらかじめ温めておいたステーキ皿へ移します。
火の通り具合が完璧になったらすぐに火からおろし、木製プレートに置きます。
熱々のステーキの上に切っておいたレモンバターを乗せ、急いでテーブルへ運べば“小西和也特製ベーコン巻きステーキレモンバター添え”の完成です!
トマトの赤、レモンバターの黄色、パセリの緑がステーキに映えており、予想以上に華やかな仕上がりになっているのに驚きました(←溶けたバターが牛肉にとろ~っと垂れているのもビジュアル的にたまりません)。
ただ、焼けたベーコンが思っていたよりしなっとなったのが計算外で、もっと厚めのベーコンだったらシャキッとした出来になっていたかな…と少し悔しかったです;。
果たして、味の方は一体どうなっているのか…食べて確認したいと思います!
それでは、冷めない内に切ってソースを絡め、いざ実食!
いっただっきま~す!
さて、味の感想は…見た目通り正統派なステーキで満足!霜降り肉のようにはなりませんが、パサつきやすい赤身肉でも充分しっとりと潤ってます!
意外にもパパイヤの味は肉に全く残っておらず、重曹肉や何も下処理していない肉同様に牛肉本来の美味しさが保たれていました(←他の野菜や果物を使うと、匂いなどの癖が残って主張しすぎる事があるのです)。
重曹は肉の繊維を程よくほぐす感じで、肉質自体が「ちょうどいい食感を残した柔らかステーキ」に変化する感じでしたが、こちらは赤身肉を噛む時特有のギュッとした頼もしい噛み応えを保ちつつ、しなやかですぐ噛みきれる柔らかさにして食べやすくしているという感じで、「極力元の肉質のままギリギリまで柔らかくさせたステーキ」というイメージなのが印象的でした。
陽一君の牛脂ステーキのような一体感や脂の旨さのインパクトはなかったものの、その分赤身じゃないと出ない細やかで深い旨味エキスを純粋に楽しめるようになってますし、ベーコンから出た熟成された塩気がひと味違ったコクを出して味にメリハリをつけ、バターの芳しいまろやかさがリッチな風味をプラスして調和しており、おかげで肉料理らしい重厚感があるのに最後まであっさり頂ける一品になっています。
ベーコンの甘味を帯びた濃厚な脂、パセリの爽やかな香り、トマトの瑞々しい果汁、レモンバターのさっぱりとこってりが両立した酸味が肉汁に合わさるとそれだけでもう上等なソースで、お肉を浸して食べると上品なボリューム感が出て、まるで老舗洋食レストランのメインディッシュのように優雅で本格的な味わいになっていました。
焼きトマトは香ばしくトロトロにとろけるジューシーな甘酸っぱさが箸休めに最適で、例えるなら「固形のシンプルなトマトソース」みたいな感じで、口の中に残る油分をすっきりさせてくれるのがよかったです。
大人向けの洒落たステーキで、ご飯よりも断然ワインやパンに合います。
夫にも試食をお願いしましたが、陽一君のステーキよりも気に入ったと言っていました(←当管理人はご飯やビールと合わせるなら陽一君、炭水化物ナシでワインやハイボールで食べるなら小西さんという、ずるい結論を出しました;)。
正直、ボッチは勝負を左右する程強力な装置でもなかったので、個人的に同点引き分けにしたいな~と感じた再現でした。
P.S.
ゴローさん、ノリスケさん、コメントを下さりありがとうございます。
ノリスケさんからご質問頂いた試作回数の件ですが…正直まちまちです;。なかなかうまくいかない時は最高三回やり直したことがありますが、大抵は一発勝負で、見た目がどうしても気に入らなかった時はもう一回挑戦する事もあります(←それっぽい文章の時は、ほぼほぼ二回作ってます)。
●出典)文庫版『ミスター味っ子』 寺沢大介/講談社
※この記事も含め、当ブログの再現料理記事は全てこちらの「再現料理のまとめリンク」に載せています。
※レシピの分量や詳しい内容は、以前こちらでご説明した通り完全非公開に致しております。
『まかない君』の“浩平のモツカレー”を再現!
- Fri
- 18:00
- 再現料理
こういう行き違いはグルメ本でもあり、たま~に地元を紹介したガイドブックを見たりするのですが、高級グルメ系も庶民派グルメ系も「こんなお店、あったっけ…?」と全く見覚えがないお店が地元民御用達のお店として紹介されている事も度々で、我ながら福岡県民失格だな~と思います。
こういう事はある程度仕方ないと思うのですが、「九州の人は唐辛子を胡椒と呼んでいる」という大嘘(←今まで胡椒と呼んでいる人を一人も見た事がありません…orz)を載せた某有名グルメ漫画には、未だに「こらーーーっ!」と言いたい気持ちになります;。
どうも、関東風のモツ煮が大好きな当ブログの管理人・あんこです。
本日再現する漫画料理は、『まかない君』にて浩平君が失われた誇りを取り戻す為に夕食に作った“浩平のモツカレー”です!
一見帰宅部風に見える浩平君ですが、実は正体不明の怪しい男達しか所属していない
残念ながら正確なサークル名や活動内容は分かっていないのですが、浩平君曰く「ボンクラのツクダ煮」「むくつけきボンクラ濃縮還元100%」な先輩方と色んな謎料理を自炊したり合宿したりする意外と活動的なサークルだそうで、椎名誠の怪しい探検隊シリーズに少し似ているな~と思いました(←一見オタサー風に見えますが、本物のオタサーよりも肉食系というか生命力が強そうなのが特徴的で、肉体派な文学青年の集まりっぽいです)。
ただ、椎名誠先生の野外サークルは自炊した料理を食べてキャンプして終わりではなく、お酒を飲んで一晩中ドンチャン騒ぎしたり、五キロある島の周囲を一周泳いだり、わざわざ雑魚を釣りに行ったりと肉食系な匂いがするのに対し、浩平君のサークルは自炊修行の為だけに山ごもりするというアクティブなんだか引きこもりなんだか分からない摩訶不思議な雰囲気で、地元の方に見つかったら即通報されないか読んでて心配になったものです。
自炊と言っても単に料理するだけではなく、「ガスコンロひきずってうさぎとびとか、菜箸での逆立ち歩きなんかを特訓するよ」という冗談なんだか半分本気なんだか分からない活動もするみたいで、まるで昔の料理漫画に書かれてそうな料理修業だな~と苦笑しました(←『グルマンくん』の釜型の下駄を履いて崖に落ちぬよう走り続けるランニングとか、『鉄鍋のジャン』の巨大な青龍刀の上に立って重い中華鍋を振る練習とか、『将太の寿司』の超高速で動くマグロを素手で針一本打ち込んで仕留める試験とか、そういう死に直結する修行がサラッと出てくるのが熱血系料理漫画の恐ろしい所;)。
また、登場する先輩もボンクラというよりは漫画チックなサバゲー軍団と呼びたくなる癖の強さで、ある人はつのだじろう先生画の忍者ハットリ君風、ある人は水木しげる先生の戦争漫画に出てきそうな兵隊風、ある人は劇画タッチの顔で突如豪快に笑い出す長髪男性というこってりしたキャラが勢揃いしており、浩平君が加わるとまるで袋菓子に入っているシリカゲルの小袋並に周囲から浮きまくっているのが印象的でした。
一回、浩平君がサークル合宿で料理を食べる貴重なシーンが描かれていたんですが、本当にサバゲーっぽい武装をした先輩方に囲まれており、普段着でヒョロヒョロした浩平君はどう甘く見積もっても捕虜にしか見えずポカーンとしたのを覚えてます(゜д゜;)。
この時先輩達が作っていたのは、かつて弥生ちゃんが失敗したモツ入りのカレーで、生のモツではなくスーパーでよく売られている味付きモツを使用したのが功を奏し、「とりわけ我らの若い血をくるわせるのは…ミソ漬けモツの…カレーの匂い!」と大喜びで食されていました(←アウトドア料理なんて野生の極みなのに、美味しさの表現が19世紀末の退廃文学チックなのに激しく違和感がありますが…)。
なお、意外なことですが、モツカレーは弥生ちゃんだけではなく過去に浩平君も大失敗したことがあるそうで、それがトラウマでずっとリベンジを考えていた料理だと語られていました。
どういう失敗だったかと言うと、「下茹で済みのモツをそのままカレーにしたら、くさみが強すぎてえらく不評だった」という今の浩平君では考えられないケアレスミスで、確かにこれは心残りだったろうな~と思います。
正直、当管理人も下処理済みって書かれていたら「もうこのまま料理に使っていい」という意味に解釈しがちで、過去にそれで「刺身用鯵の切り身をそのまま一口大に切り、食べたら小骨が口の中にザクザク刺さる凶悪な刺身を作ってしまった」という失敗がありましたので、浩平君に親近感を感じたものです(←こういうチェックミスゆえの失敗を繰り返したせいか、「そのまま焼いて下さい」「あとは調理するだけの状態です」という表記にすら疑心暗鬼になり、ついもうひと手間かけてしまう難儀な性格になりました;)。
こうして、無事山から帰還した浩平君が合宿で作ったモツカレーを参考に自分なりのアレンジを加えて作ったのが、“浩平のモツカレー”です!
作り方は簡単で、にんにく・しょうが・玉ねぎ・赤唐辛子・味付きモツをいためた後、トマト・カレー粉・野菜ジュース・オクラ・ししとう・玉ねぎを加えて煮込み、仕上げにウスターソースと塩で味を調えたら出来上がりです。
ポイントは、味付きモツにちゃんと火が通ってから次の材料を入れることと、モツの脂を和らげる役割のトマトは気持ち多めに加えることの二点で、凶悪な個性を持つモツを如何に制御するかが成功の鍵であるように感じました。
あと、浩平君はカレーの日だと「その方が楽しくない?」という理由でいつもご飯に何か炊き込むんですが(←こちらのカレーの時もそうでした)、今回は珍しく白ご飯をあわせています。
恐らく、モツのように濃い具が入ったカレーだと、炊き込みご飯の味が負けるかチグハグするかのどちらかだったのが原因かと思われます(←モツ煮とかこてっちゃんとか、確かにモツ料理には白いご飯が似合うイメージですもんね)。
生のモツだと下処理の茹でこぼしが大変ですし、味が染みるのに時間がかかりそうですので、手間を考えると気軽には作りにくいですが、味付きモツならそれらの問題は一気に解決しますので、便利なレシピだな~と感心しました。
試食した凛さんや佳乃さんによると「ふむ、こってりと味が深いな」「うん。いい、いい。くさみも全然ないしおいしいよ」な出来栄えだったそうで、ようやく浩平君は忌むべき過去と決別する事が出来たのでした。
モツもカレーも大好きですし、セールで味付きモツが安かったので再現することにしました。
作中には詳細なレシピとコツがきっちり記載されていますので、早速その通りに作ってみようと思います!
ということで、レッツ再現調理!
まずは、炒め作業。
お鍋(又は大きめの深いフライパン)に油をしき、細かく刻んだにんにくとおろししょうがを入れて弱火でじっくりと火を通し、香りが立ってきたらみじんきりの玉ねぎを投入して中火でさらに炒めます。
途中、種を取り除いて千切った赤唐辛子を加えて混ぜ合わせ、玉ねぎがほんのりキツネ色になるまで根気強く炒め続けます。
次は、煮込み作業。
玉ねぎが充分に炒まったら味付きモツを投入して混ぜ炒め、モツが白っぽくなって火が通ったらザク切りにしたトマトとカレー粉を加え、トマトを木ベラでつぶしながら煮込みます。
加熱によってトマトがペースト状になるまで煮えてきたら野菜ジュースを注ぎ、し形切りにした玉ねぎも入れて煮込みます。
段々煮詰まって全体にとろみが出てきたら、ヘタを取ったししとうと二~三等分に斜め切りにしたオクラを投入し、弱火にしてゆっくりと煮込みます(←玉ねぎもこのタイミングで入れてもいいそうですが、ししとう&オクラと玉ねぎの最適な煮え加減は同時入れだと難しいと思い、少しタイミングをずらして入れました)。
やがて、カレーがいい具合にグツグツ煮えてトロっとしてきたら、ウスターソースと塩で味を調え、ぐるぐるとよ~く混ぜ合わせます。
味が調整できたのを確認したら火を止め、炊き立てご飯をよそった平皿に熱々のカレーをかければ“浩平のモツカレー”の完成です!
予想していた味付きモツの匂いは全くせず、これだけ見たら普通の野菜多めのカレーと変わらない感じで、カレー粉の力は偉大だな~と思いました。
モツカレーは以前食べた事がありますが、原型を留めていない程煮込んだものでそこまで味が分からなかった為、こちらはどんな味がするのか楽しみです。
それでは、スプーンで一口分すくっていざ実食!
いっただっきまーす!
さて、味の感想は…重厚感とあっさり感が両立して美味!いつもは居酒屋常連のおつまみモツが、オシャレ系欧風カレー店のヘルシー夏野菜カレーみたいな味に変身してます!
野菜類の瑞々しいエキスと、モツの荒々しいまでにこってりした脂分をギュ~ッと濃縮し、限界まで磨きあげたようなとてもフルーティーなカレーで、水を一滴も使わない無水カレーだからこそ出せる武骨ながらも奥深いコクがたまりません。
カレーの辛さは辛口でヒリヒリするくらいなのですが、一口食べて最初にくるのはトマトや玉ねぎを始めとする多くの野菜の強烈なまでに密な甘味で、液体というよりはカレー味の煮込み野菜ペーストといいたくなるようなもったりしたルーがまったりととろけます。
最後に辛さが一気に来るのですが、同時に味噌を思わせる香ばしい味わいや様々な風味が舌をスーっと抜けていくのがバランスがよく、爽快でした(←砂糖を入れたと疑いたくなるほど糖度が高いのですが、あくまでも自然な甘さでべとつかず、さらりと清々しい後口なのが印象的)。
味噌ベースのもつ煮風の下味がついたモツは、余計な臭みや脂っこさは一切ないのに噛めば噛む程ガツンと濃い旨さが舌に響く感じで、ウスターソースのスパイシーな風味や唐辛子の強い辛味が効いた個性的なカレールーの中でも抜群に存在感があります。
モツから溶け出した肉汁は、旨味たっぷりなものの普通の肉よりもなかなか癖があるんですが、熟したトマトのフレッシュで甘酸っぱい果汁が脂をすっぽり包み込んで緩和させている為、びっくりするくらい洗練された仕上がりになっているのが特徴的でした。>
ししとうのパリッとした歯応えとほのかな辛苦さ、オクラのザクザクトロッとした粘りと青みを帯びた味わいが心地よいアクセントになっており、夏野菜の爽やかさがまったりしたカレーをキリッと締めていたのがよかったです。
意外と簡単に作れるのに、ここまで本核的な味になるなんてびっくりで、「無水カレーってすごい!偉大!」と唸りました。
本当に手間いらずで思い立ったらすぐに作れますので、今度はきのことかゆで卵も入れたアレンジバージョンも試してみようかなと思いました。
P.S.
無記名さん、ノリスケさん、kawajunさん、コメントして下さりありがとうございます。
●出典)『まかない君』 西川魯介/白泉社
※この記事も含め、当ブログの再現料理記事は全てこちらの「再現料理のまとめリンク」に載せています。
※レシピの分量や詳しい内容は、以前こちらでご説明した通り完全非公開に致しております。