『ミスター味っ子』の“堺一馬特製豚肉抜きハンバーグ”を再現!
- Tue
- 18:00
- 再現料理
100円の割には食べ応えがあっておいしく、お肉みたいな味がするのにから揚げよりはさっぱりしており、好きなメニューだったのですが…。
代わりに「カツオの竜田揚げ」が新登場したんですが、マグロとは微妙に味が違っていて量も少なくなっており、「戻ってこないかな…」と遠い目になっている今日この頃です。
どうも、夫がサーモンや生鮭ばかり食べている横でいくらばかり食べている当ブログの管理人・あんこです。
本日再現する漫画料理は、『ミスター味っ子』にて一馬君があるTV番組でピンチをもろともせずに作った“堺一馬特製豚肉抜きハンバーグ”です”!
それは、大河内さんとのおにぎり対決が終わって少し経った頃のこと。
夕食を終えて一段落ついた法子さんは、自称「当代一の毒舌グルメ」・倉田道明さんというグルメ評論家が毎週日本全国から挑戦者の料理人を募り、「うまい!」と言わせたら賞金二百万を進呈するという料理勝負番組を陽一君に勧めるのですが、「興味ないね俺は」と『FF7』のクラウドみたいな事を言って不機嫌になります。
料理勝負好きですぐに熱くなる陽一君なら興味津々で見るのでは…と思ったので意外でしたが、程なくしてその理由が判明します。
それは、倉田さんの度が越えた毒舌と目に余る悪行っぷり!
倉田さん曰く、「俺が意地悪でうまいっていわないんじゃないかって!?そんなことはないよ!!」「舌に関してはグルメの意地にかけて嘘はつけんのよ」「長年の美食追及の結果、俺の舌が今の料理より進化しちゃったわけだな」だそうで、悪意はないと主張しているのですが、その割には「今の日本にはもう、オレの舌を満足させる料理人なんていねーんじゃねーの」「まっ今回のお二人もせいぜいきばってやってみてちょうだい」と余計な挑発を連発。
その上、一生懸命料理をしている挑戦者の背後から「手ぎわが悪いねえ」「もっとてきぱきやんないと旨味が逃げる」「おいおい火がちょっと強すぎんじゃないの」「料理の持ち味をこわさないぎりぎりを見切らなくちゃな」「なんだなあ…こりゃダメだわお客さん。今回もちょっと期待できそうにないわ」など、まるで料理動画にチクチクと小言をコメントするネット小姑のような嫌味を連発していました;(←数々の伝説を持つ「MOCO'Sキッチン」のもこみちさんなら、オリーブオイルドバァ・野菜ザクザクッ・塩ファサーでネチネチ言われても笑顔でスルーして美味しく調理してくれそうだと勝手に予想)。
有名な食通との事ですので、調理の工程でよっぽど見過ごせない何かがあった可能性も無きにしもあらずですが、観客を巻き込んで笑い者にするかのような趣向ってどうなんだろう?と疑問に思ったものです(←これがお笑い芸人だったら「いじってもらえた!チャンス!」の世界なんですけどね…;)。
これらの所業だけでも大概ですが、極めつけが試食シーンで、挑戦者の料理を一口ずつ食べるや否や「ダァメだこりゃ!!食えたもんじゃねえや!!」と叫んでひっくり返すという暴挙に出ており、TV前の陽一君を「本当に料理の好きな人なら、あんなことは…けっしてできないはずなんだ!!」「出された料理に誠意も真心も感じない、そんな食通なんて…そんなの…本当のグルメなんかじゃないよ!!」と激怒させていました(←今のご時世、バラエティではクレームを避ける為に「この後スタッフが美味しく頂きました」というテロップを必ず入れるくらい食べ物関係にはうるさくなっているというのに、倫理的にも芸能生命的にも恐ろしい事をしますね;。今、倉田さんが毒舌料理番組をしたらネットもTVも大炎上しそうです)。
毒舌なグルメ評論家というと『鉄鍋のジャン』の大谷日堂が真っ先に思い浮かびますが、数々の外道行為を行った大谷日堂ですら食べ物を粗末にするシーンはなかった為、呆れたのを覚えています。
とはいえ、大谷日堂は食に対するマナーがある代わりにジャンと五番町飯店を潰そうと執拗につけ狙ったり、自分に恥をかかせた料理人を杖で殴ったり、ジャンを土下座させて頭をグリグリ踏み付けたりと人間相手には厳しいのですが、それらを上回るくらいジャンとその祖父には散々気の毒な目にあわされててバランスが取れていますので、倉田さんみたいなモヤモヤ感がないのが特徴だと思います。
こうして考えてみると、『こち亀』の両さんが悪巧みをしては失敗して武装した大原部長に追い回されたり、『家政婦は見た!』の市原悦子さんが派遣先を家庭崩壊させて戻った後必ずドジをして怪我をするなど、過激な行動をしてても憎まれないキャラはお約束として毎回制裁を受けており、笑えるギャグオチになっているのが最大の共通点だと感じます。
最初は関わりたがらなかった陽一君ですが、「これは料理人全体への挑戦よ」「ここは一発!ミスター味っ子の力を見せつけてやんなさい!!」という法子さんの言葉で一念奮起し、同じ理由で挑戦者に名乗りをあげた一馬君共々倉田さんの番組に出場する事になっていました。
お題はハンバーグで、陽一君は例の“パン包み串焼きハンバーグ”を作ろうとしていたのですが、何と本番五分前に豚挽き肉を運んでいたトラックが事故にあって届かないというアクシデントが発生!
急遽、豚挽き肉の代わりとなる他の食材を足したハンバーグを作る羽目になります。
この時、陽一君はある西洋食材に目をつけていたのですが、一馬君はそれとは真逆の食材を豚肉の代用品として使うことにします。
その食材とは、何とアジ・アンチョビ・ハム!
どれもハンバーグとは無縁に見える為エキセントリックな発想に思えますが、作中の説明によるとアンチョビとハムの旨味がハンバーグに潤いを与えて肉汁を出させ、アジがふっくらとした柔らかいパテに仕上げるとの事で、その見事な焼き上がりに会場中がどよめいていました。
調べた所、アジやハムは分かりませんでしたがアンチョビの方は挽き肉との相性がよく、一部のプロはハンバーグに隠し味として入れる事もあるのだそうで、びっくりしました(←塩漬けして発酵させた魚と挽き肉をあわせて蒸しハンバーグ状にした香港の家庭料理・鹹魚蒸肉餅というのも存在しますし、案外魚と肉という組み合わせはありなのかもしれません)。
唯一のネックは、大量の魚のすり身を入れることによって発生する臭みとえぐみでしたが、それを一馬君はしょうがの絞り汁をパテに混ぜ込むというアイディアで見事克服しており、試食した倉田さんは「これはなんというピュアな味と香り…!!」「魚のコクと旨味だけが生き、一点の生臭さもないすばらしいうまさだっ」と絶賛していました(←魚料理に親しんでいる日本人ならではの発想という感じですね)。
おまけに焼き方まで工夫しており、先にハンバーグの側面を焼いてから普通に上下を焼くことによって肉汁の逃げ場を完全にふさぎ、この上なくジューシーな仕上がりにしていました。
個人的に、オーブンで全面を同時に焼いた方が肉汁がより封じ込められるのでは…
「本当においしいんだろうか…」「案外いけるかも…」と相反する思いがあって悩んでいましたが、ルネッサンス情熱が蘇ってきたので再現する事にしました。
作中には大体の材料とレシピが載っていますので、早速その通りに作ってみようと思います!
ということで、レッツ再現調理!
まずは、パテの準備。
アジは三枚おろしにして皮・小骨・ぜいごなどを取り除いた後、包丁二刀流で細かく叩いてミンチ状にします(←臭みが気になる場合はお酒をふるのもありです)。
ハムはかなり小さくなるまで細かく切り刻み、アンチョビは小骨を絶つように心がけながら何度も叩き切りにしてみじん切りにします。
ボウルへ先程のアジ、ハム、アンチョビ、牛挽き肉、塩、こしょう、生卵、しょうがの絞り汁を入れ、全体に粘りが出てくるまでしっかりと練り合わせます。
最初赤っぽかった挽き肉が、うっすら白っぽくなってきたらOKです。
次は、焼き作業。
先程用意したパテを厚めの小判型に成型し、油をしいて強火に熱したフライパンで側面を全て焼いていきます(←お箸など先端が尖っているものを使うと非常に崩れやすいので、木ベラのように平たいもので押さえながら焼き、入れ替える時は素手でころころ回しながら焼き固めることをお勧めします)。
※事前に冷凍庫で短時間冷やし、表面だけ少し固めたほうが焼きやすいです。
側面を全て焼き終えたら片面をフライパンにつけてフタをした後中火で焼き上げ、焦げ目がついたらひっくり返して再度フタをし、じっくり蒸し焼きにします。
パテの中央にまで熱が通ったことを確認したらお皿へ盛り付け、焼いた後のフライパンにデミグラスソースを加え、肉汁を溶かしこんで上からかければ“堺一馬特製豚肉抜きハンバーグ”の完成です!
見た目は普通のハンバーグとさほど変わらないのですが、香りは焼き魚やさんが焼きのような和風よりの香ばしい匂いが強い為、頭が混乱します;。
今に至るまで肉と魚の合い挽き肉を試した事がないので味の想像が全く付きませんが、勇気を出して食べてみようと思います!
それでは、一口大に切り分けていざ実食!
いっただっきまーす!
さて、感想はと言いますと…肉と魚が交互に行き交う摩可不思議な美味しさ!和テイストの創作洋食といった出来映えでした。
外側は少しゴツゴツしたやや硬めの食感で、どことなくさつま揚げを思わせるようなしっかりした口当たりでしたが、内側は普通のハンバーグよりも大分柔らかく、ふっくらふわふわと口の中で崩れるしっとり優しい食感が特徴的。
アジ:牛ひき肉:アンチョビ:ハム=5:3:1.5:0.5という比率の味わいで、例えるとするなら「魚風味なのに肉々しいハンバーグ」というイメージでした。
意外にもハムはそんなに味がせずあってもなくても分からない感じでしたが、アンチョビのコクある油分と熟成された深い塩気が全体に旨味の濃い味付けをしており、他の挽き肉料理にはない「出汁が効いている」感じを出してます。
作中で言われている通り生姜のキリリとした風味と爽やかな辛味は魚肉の臭みを消し、牛肉に合うよう味を調節していましたので、結構重要なアクセントだと思いました。
正直、最初の一口は「魚ハンバーグ?焼きつみれ?」と連想するくらい魚の存在感が強いですが、噛むごとに牛挽き肉のこってりした旨味が徐々に姿を現して魚勢に対抗するイメージで、慣れない内は戸惑ったものの面白くておいしかったです。
あと、確かにパテはふんわりしてボリューム感が出ていましたが、残念ながら肉汁はほとんど出ておらず、多少パサつきが出ていたのがネックだと思いました。
しかし、デミグラスソースのまったりした肉汁のコクや濃厚な肉類のエキスが加わると肉らしさがグッと増し、ジューシーとまではいかずとも充分カバーできていたのでほっとしました。
肉類の中では結構匂いが強い方の牛肉も、魚肉の前ではこんなにも大人しくなってしまうんだな~と勉強になりました(←ステーキとお刺身だったら、ステーキの方が味の濃さでは勝つのに…謎です)。
アジは魚の中でも脂が淡白なほうに分類されるのでジューシーにという訳にはいきませんでしたが、これが脂分の多い旬のイワシやトロだったら結果は大分違っていたと思いますので、機会があったらまた挑戦してみたいな~と思いました。
P.S.
無記名さん、無記名さん、コメントしてくださりありがとうございます。
●出典)文庫版『ミスター味っ子』 寺沢大介/講談社
※この記事も含め、当ブログの再現料理記事は全てこちらの「再現料理のまとめリンク」に載せています。
※レシピの分量や詳しい内容は、以前こちらでご説明した通り完全非公開に致しております。
『クッキングパパ』の“荒岩流フライドチキン”を再現!
- Fri
- 18:00
- 再現料理
それだけだったらいいのですが、夫的に挽き肉や加工肉を使った料理は肉料理に分類されないらしく、少し前に鶏団子鍋を作った時、「おいしそう!だけど、お肉はどこ?」と普通に返されて絶句したのは未だに忘れられません…orz。
結局、その時は他のメニューに使う予定だった鶏肉も入れて何とかなりましたが、それ以来挽き肉料理を作る機会はめっきり減っている今日この頃です(←挽き肉料理+肉料理ならいいんですが、手間も費用も二倍かかる上にカロリーオーバーするのであまりしません;)。
どうも、骨付き肉も食べにくいと嫌がる夫ですが、鶏肉のお酢煮だったら骨が取れやすいせいか食べてくれるのでほっとしている当ブログの管理人・あんこです。
本日再現する漫画料理は、『クッキングパパ』にて荒岩主任が虹子さんのお願いを聞いて夜中に作った“荒岩流フライドチキン”です!
ある初夏の日、いつもの金丸産業営業第二課の面々は田中君の誘いでビアガーデンへ行く事になります(←荒岩主任は辞退して帰宅;。家事もある上に昔からこういうドンチャン騒ぎがあまり好きではないのか、飲み会は結構な確率で断ってます)。
みんなそれなりに飲んで盛り上がるのですが、田中君は大ジョッキのビールを乾杯早々一気に飲み干す飛ばしっぷりで、みんなあっけに取られていました(゜д゜;)。
何でも、ビールを究極においしく飲む為お昼から一滴も水分を取っていなかったらしく、ただでさえ飲兵衛なのにますますヒートアップしていました(←初めの一杯を気持ちよく飲む為、サウナをギリギリまで我慢して最終的に大変な事になった『クレヨンしんちゃん』の野原ひろしさんを思い出します;)。
その気持ちは分からないでもないですが、アルコールは水分補給にならないどころか逆に体中の水分を奪って脱水症状にしてしまう恐ろしい一面がありますので、せめて合間にお水を飲まないと…と心配になったものです(←アルコールの分解を早め、飲酒で失ったビタミンも補給できるトマトジュースでビールを割ったレッドアイを飲むのもいいですね)。
おかげですっかり出来上がった田中君は「今夜は飲むぞーっ」と燃えるものの、けいこちゃん達は付き合いきれないとばかりに全員帰ってしまい、「夜はまだこれからっつーのによ」とすっかり白けるのですが、隣のテーブルで同じように他のメンバーが帰ってしまった虹子さんと偶然会い、ビールをもっと飲もうという意見が見事に合致!
「今夜は2人で飲みあかそうーっ」と大盛り上がりし、次のお店に突入していました(←酔っていたというのがあっても、上司の妻と夫の部下という間柄なのにここまで打ち解けるなんて、改めてお二人はコミュ力の化け物だと実感します;)。
それにしても、酔うとアルコールに呑まれて醜態を晒しがちな田中君と違い、どんなに酔っても自己を保って気持ちよく飲む虹子さんの様子は見ていて爽快で、『エヴァンゲリオン』のミサトさんの清々しい呑みっぷりに通じるものがあるな~と思いました。
実を言いますと、次に行った雰囲気のいいバーで眼鏡を外した虹子さんの素顔を見た田中君は「おっや~っ。主任の奥さん、メガネとると意外と美人だぜいっ」「キャ、キャワイイな~っ。ステキだな~」とときめいており、普段若い女の子を追っかけているとは思えない
連載初期はグルグル模様の分厚い眼鏡着用で、素顔を知るのは荒岩主任だけだった為モテキャラ扱いされていませんでしたが、田中君を除いても高校時代の彼氏・丸田さん、会社の部下・山岸君、ティートさんといった人達に魅力を感じられており、何気に結構モテモテだった虹子さん。
荒岩主任もまこと君も密かに好かれる隠れモテタイプですので、脅威のモテモテ一家だな~と羨ましく思ったものです(←「モテ力は遺伝するのかな?」と一瞬思いかけましたが、遺伝どころか母にアッシー君扱いされた方々の怨念が乗り移ったかのような悲惨な青春時代を思い出し、「人による」と考えを改めました。
しかし、胸がキュンとして目がハートになったのもつかの間、すぐに荒岩主任の怖い顔が脳裏をよぎり、「おっ俺なに考えてんだー!?主任の奥さんだぞーっ」と背筋が凍った田中君は、続けて「人妻」「上司の奥さんと―」「成熟」「フリン」という
このお話が発表された1987年は「不倫=許されざる大罪!」という厳しい風潮があり、男女共に大バッシングされる傾向があったので田中君の気持ちも分かるような気がしますが、最近は『昼顔』・『不機嫌な果実』・『奪い愛、冬』などといった過激な不倫ドラマが普通にお茶の間でブームしていて感覚が麻痺しているせいか、「ときめいただけでそこまで怯えなくても…」と苦笑しました(←年々、『黄昏流星群』に出てくる熟年不倫が清純に見えるレベルのドロドロ不倫劇が増えている気がします…(((( ;゚Д゚)))ガクブル)。
これが『不倫食堂』なら、次のページをめくると「あれ?飛ばしたっけ?」と思わず前のページに戻ってしまう程クライマックスな不倫シーンに突入するという職人芸的早業不倫が繰り広げられる所ですが、カトちゃんの「ちょっとだけよ~」「あんたも好きねぇ~」なゆるいピンクシーンはあっても生々しい不倫など無縁な『クッキングパパ』ですので、ドキドキしてドジをする田中君を虹子さんがあやすだけで終わってました;。
その後、フライドチキンを食べたくて注文しようとしたものの売り切れていてがっかりした虹子さんは荒岩主任に電話し、「どうしてもあなたのフライドチキンが食べたくなっちゃったの~」とお願いするのですが、「いいさ、帰ってきなっ」「鶏肉は冷蔵庫にあるから、作っといてやるよっ」と快く受け入れられ、大喜びしていました(←もう外で飲むより、荒岩主任のいる家で居酒屋ごっこした方が余程クオリティの高い飲み会が出来そうです;)。
こうして、悪酔いしてヘロヘロになった田中君を連れて帰宅した虹子さんに荒岩主任が手早く出してくれたのが、この“荒岩流フライドチキン”です!
作り方はなかなか手が込んでおり、へお酒・醤油・こしょう・ごま油・パプリカパウダー・にんにく・しょうが・玉ねぎ・りんご・セロリの葉・ローリエの葉を混ぜた漬け汁に鶏手羽元を入れて三十分以上漬け込み、フライパンで全面を焼いてから蒸し器で十五分蒸しあげ、卵白をつけて薄力粉をまぶした後に高温の油でさっと揚げたら出来上がりです。
ポイントは、鶏手羽元は串で数箇所穴をあけてから漬け汁につけること、焼く時は中に火が通りすぎない程度に焼き目だけをつけるようにすること、薄力粉をまぶしたら軽くはたいて約十分放置し粉を安定させること、揚げる時は表面だけからりと揚げて火を通しすぎないことの四点で、こうすると衣も肉も仕上がりが安定してぐっと美味しくなると説明されていました。
その昔、『ミスター味っ子』でもフライドチキンが扱われた事がありましたが、そちらでも「硬い肉質の鶏を柔らかく骨離れのよいフライドチキンにする方法」として事前に蒸す方法が取り上げられており、揚げる前に蒸すのは意外とポピュラーなやり方なんだな~と感心しました。
揚げる前に火を通したら逆に硬くなりそうだと最初は思いましたが、考えてみればトンポーローも茹でる→焼く→煮込む→蒸すと色々火入れしてもトロトロに柔らかいですし、蒸したり茹でたりした後に揚げると肉汁を封じ込めるだけでなく、吸油率も下がってヘルシーになる事が最近分かっているそうですので、実は一番理にかなった調理法なのかもしれません(←実際、中華にも蒸した鶏を素揚げにする料理が存在します)。
作るのが大変そうなので尻込みしていたのですが、他に調べても見つからない程独創性の高いレシピでしたので、好奇心に抗えず再現する事にしました。
作中には詳細なレシピがきっちり記載されていますので、早速その通りに作ってみようと思います!
という事で、レッツ再現調理!
まずは、鶏肉の下ごしらえ。
ボウルへお酒、醤油、こしょう、ごま油、パプリカパウダー、おろしにんにく、おろししょうが、おろし玉ねぎ、おろしりんご、刻んだセロリの葉、ローリエの葉を入れ、ざっと混ぜ合わせます。
この漬け汁へ、串で数箇所穴をあけた鶏手羽元を加え、時々かき回しながら三十分以上かけて味をなじませます(←焼いたり蒸したりしますので、しっかりした味がいい方は数時間くらい漬けた方がいいかもしれません)。
次は、火入れ作業。
油を薄くしいて中火に熱したフライパンへ鶏手羽元を並べ、菜箸で転がしながら全体に軽く焼き色をつけます(←中まで火を通さず、あくまで表面を固める程度でOKです)。
全面に焼き目がついたらすぐに火からおろします。
※漬け汁がついた状態のまま熱すると、焦げ目がつかないのにどんどん火が通っていってしまいますので、事前にキッチンペーパー等で汁気をしっかりふき取ってから焼いた方がいいです。
続けて、鶏手羽元を蒸気がもうもうに立っている状態の中火にかけた蒸し器へ移し、約十五分かけて蒸し上げます(←蒸した直後の鶏肉は滑りやすいので、取り出す時に要注意!)。
時間が経って蒸しあがったらさっと取り出し、コシがなくなるまで溶いた卵白をまんべんなくつけた後に薄力粉をまぶし、約十分寝かせて粉を落ち着かせます。
この時、粉が薄付きになるよう余分な粉ははたいておきます。
※スタンダードな小麦粉だけでもいいのですが、原作では米粉(又はだんご粉)を使ってもおいしいと勧められていましたので、米粉バージョンも作っています。ちなみに、米粉の方が小麦粉よりも粉がつきにくいので気をつけて下さい;。
衣が安定したら180度くらいに熱した揚げ油へ投入し、表面だけカラッと揚げます(←もう中央には火が通っていますので、衣が固まったらすぐに引き上げて大丈夫です。火が通り過ぎるとカチカチになりやすいので要注意!)。
キッチンペーパー等で油分をしっかり切ったらお皿へ飾りつけ、仕上げにプチトマトなどを添えれば“荒岩流フライドチキン”の完成です!
左側は小麦粉の衣のフライドチキン、右側は米粉の衣のフライドチキンという風に分けて盛ったのですが、見た目的にそこまで変わってなかったので分かりづらかったです。
ここまで本格的にフライドチキンを作ったのは初めてですので、味が楽しみです!
それでは、揚げたてホカホカの内にいざ実食!
いっただっきま~す!
さて、味の感想は…今まで作った骨付きフライドチキンの中で一番美味しくて衝撃!プロっぽい味になってます!
正直、焼いたり蒸したりする過程でエキスが抜けてないか不安だったのですが、実際に食べると逆に手羽元ならではの濃厚な旨味が濃縮されており、余分な脂や臭みが抜けている分鶏の旨さがしっかりと際立っていました。
味付けはにんにくや生姜のがっつりした風味、セロリの葉やローリエなどの奥深い香り、野菜類の甘さが濃すぎず薄すぎず効いた上品な和風香味醤油味で、市販の唐揚げみたいに調味料が前に来ない分、こってりした鶏肉のコクがストレートに口の中へ溢れだすのにうっとりします。
あと、自家製だとどうしても骨に身が残りやすく歯切れが悪い感があったのですが、こちらは蒸したおかげか鶏のお酢煮に匹敵する程の骨離れで、噛みついただけで骨から身がズルッと簡単にむけるのが食べやすく爽快でした。
あらかじめ火を通して肉汁を封じ込めた為、時間が経ってもだれずに油切れのいい衣から、しっとりプリプリした柔らかい鶏肉が飛び出る醍醐味はケンタッキーのフライドチキンに似ており、和風のケンタッキー味と言ってもいいのでは…と思います。
小麦粉の衣は肉にしっかりフィットしてエキスを吸い込んでいるせいか粉自体も旨味と食べ応えが強く、サラリとした舌触りとカリッとした香ばしさが特徴的。
米粉の衣は竜田揚げ風の肉から少し浮いてザクッとした食感がある割に軽くあっさりした仕上がりになっており、噛むごとにほんのり感じるもっちり感とサクサクパリッとしたソフトな口当たりが印象的でした。
いずれにしろ、どちらの衣もベタッとした重さは微塵もないライトな食感です。
手間も時間もかかるので気楽に作れる訳ではないですが(←こんな手の込んだフライドチキンを、夜中に電話一本でささっと作ってもらえるなんて…虹子さん愛されてますね〜!)、数あるフライドチキンレシピでもかなり上位に位置する味なのでおすすめです!
揚げ物なのにくどさがないのであっという間に食べつくし、「最近油物がきつくなってきたのに…すごいフライドチキンだな~」とびっくりした再現でした。
P.S.
あめふらしさん、kawajunさん、ノリスケさん、コメントして下さりありがとうございます。
当管理人もあめふらしさんのご指摘された事実を数年前に知っていたのですが、確かにショッキングな内容でしたね;。その後、kawajunさんと同じ理由で「やっぱり味っ子はすごい!」と改めて考えるようになり、独創的な料理を作るきっかけを与えてくれた事に感謝しています。ただ、あの、ノリスケさんが仰っていた熱石板味噌の土手囲みは、できましたらご勘弁を…orz。
●出典)『クッキングパパ』 うえやまとち/講談社
※この記事も含め、当ブログの再現料理記事は全てこちらの「再現料理のまとめリンク」に載せています。
※レシピの分量や詳しい内容は、以前こちらでご説明した通り完全非公開に致しております。
『ミスター味っ子』の“味吉陽一特製イカのドライカレー詰め”を再現!
- Mon
- 18:00
- 再現料理
一度で二度おいしいカレーを食べたかったので、具を少しずつ交換こしてはちょっぴり豪勢なシーフードカレー風にして食べていましたが、エビと違ってから揚げにするというひと手間が加えられていたイカはカレーとぴったりで、エビの出汁が染みたカレールーに絡めて食べるとよりおいしく感じたのを覚えています。
どうも、家でカレーを作る時はとろけるチーズのトッピングが欠かせない当ブログの管理人・あんこです。
本日再現する漫画料理は、『ミスター味っ子』にて陽一君が初めて参加した味皇GPの一回戦で出した“味吉陽一特製イカのドライカレー詰め”です!
駅弁対決が終わってしばらく経った頃、陽一君は味皇料理会から第28回味皇GPの参加者として選ばれたという招待状が届きます(←『将太の寿司』の「新人寿司職人コンクール」みたいな物で、その年最も優れた最高の若手料理人を選ぶ栄誉ある大会との事。「食の世界のジャパンカップ」とも言えそうですが、「若手限定」というのが唯一の相違点ですね)。
他に出場するメンバーは、フランス料理部主任・下仲基之さん、大阪代表・堺一馬君、九州代表・小西和也さん(
中学生ですので留年はありませんが、味皇GPに二回参加して各一ヶ月ずつ休んだ他にも、青森の駅弁対決で十日間(←二回目は一ヶ月)、博多での連戦で一週間、別荘地のフルコース対決で二週間、香港での中華勝負で三週間、山間の流しそうめん対決で一ヶ月など、まるで世界各地を飛び回る敏腕商社マンみたいな出張生活を半年近く送っている為、「フォローする法子さんや学校の先生は大変だったろうな…」と溜息が出たものです;(←もしや、『ミスター味っ子Ⅱ』で七年放浪の旅に出たのは、この頃の刺激的な体験を忘れられなかったのもあるんじゃ…)。
小西さんは「やはりきたか」「おまえとはもう一度会いそうな予感がしていたぜ」など、前回劇画調デビルマンみたいなおっかない形相だったのが嘘だったようにのんびり歓迎してくれましたが、一馬君と下仲さんは陽一君を警戒しているせいかどこかピリピリしており、お祭り気分だった陽一君を戸惑わせていました。
余談ですが、基本的に下仲さんは少々キザながらも温厚で優しいお兄さんキャラとして作中で活躍しているのに、何故か第28回味皇GPにおいてだけは石ノ森章太郎や手塚治虫作品に出てくる悪役みたいなダーティーで目つきの悪いブラック下仲さんに変化しており、読み返すたびに「この時期、下仲さんに何があったんだろう…?」と心配になります;。
陽一君と初めて話した時も、「ひとつお手やわらかに頼むよ」と一見にこやかに見えて実は目が笑っていない永田町の政治家みたいな白々しい挨拶をしたり、先輩の小西さんに対しても「今や野に埋もれさびついたその腕で、どこまでこの私に通用するかな」とかなり上から目線の挑発をしてますので、後々オムレツ対決で陽一君と再会して「やあ(にっこり)」「君の方こそ元気で何よりだ」と急にフレンドリーになった際も、しばらくは「何か裏があるんじゃ…」と疑り深い目で眺めたのを覚えています(←※何もありませんでした)。
まあ、「ハッハハハ、ボーイ、大人をからかっちゃいけないよ!」と嘲笑して子供を蹴飛ばした『キン肉マン』のテリーマンさんといい、初対面の富樫さんに「汚い顔をしている」と女子相手なら戦争が始まる暴言を放った『魁!!男塾』の飛燕さんといい、最初はアレでも後にいい人になるキャラは沢山いますので、ここは「連載初期
一回戦の課題料理はシーフードカレーで、陽一君は「シーフードカレーのキーポイントはルーに魚介類の旨みをだすこと」と考えて様々な材料を試すのですが、具に味が残るよう煮込んだら出汁が出ず、かといって長く煮込んだら具がボロボロのカチカチになってしまい、苦戦します。
けれども、仕入れに来た魚市場の横にある港でサザエのつぼ焼きをご馳走になった陽一君は、カレーに魚介の旨味を効果的に出す方法を思いつきます。
それは、何とサザエのワタをルーのベースにすること!
何でも、カレー粉と水を入れたお鍋でサザエのワタを軽く茹で、裏漉ししてルーに溶かすとどんな食材よりも海のコクと香りが出るのだそうで、試食した法子さんも「ワタなんて入れると普通は苦くて食べられないはずなのに、スパイスに消されて全然苦くない!」と感動していました。
『美味しんぼ』の山岡さんがマッドクラブのカレーを作った時は、スリランカのモルジブ・フィッシュを参考に、ルーへカツオ節の出汁やカニの身を入れる事で海の幸のコクと統一感を出すのに成功していましたが、陽一君は魚の味が最も凝縮されて複雑な苦味もあるサザエの肝を使い、カレーへ一味違う深みを与えている所が絶妙だと思いました(←前にパイナップルカレーを作った時、インスタントコーヒーの苦味でルーに深みが出た事を応用したものと推測されます)。
ただ、もったいない事に使うのはサザエのワタだけで身は使わないらしく、早々とサザエの身を手で押しのけた陽一君を見て「まさか、いつも失敗作を捨てる時みたいにゴミ箱へポイしたんじゃ…(((( ;゚Д゚)))ガクブル」「というより、いっそ身もカレーに入れたらよかったんじゃ…?」と初見時は色々と気になったものです;(←出汁だけ楽しめればいいと残される確率が20%近くある、味噌汁のシジミの身に対して感じる不憫さに通じるものがあります)。
これでルーの問題は解決するのですが、次に陽一君は「このごはんには海の香りが絶対必要なんだ」と言ってライスにも工夫を凝らします。
その工夫とは、イカにドライカレーを詰めること!
ゲソを入れて炒めたドライカレーをいかめしのように詰めてルーと煮込むことにより、イカのエキスをご飯全域に行き渡らせて海の香りをつけるという一見破天荒なアイディアですがこれが大当たりで、「まさにシーフードカレーの決定版だ!」と審査員から絶賛されていました。
一馬君達もご飯にはそれなりに工夫をしていましたが、ご飯に海の香りをしみこませるという発想はさすがになかったみたいで、みんなあっけに取られていました;(←「フン…確かに形はおもろい」「しかし問題は味…味やで」と悔しがる一馬君の姿は負けフラグが立ちまくっており、一回戦で敗退しないかハラハラしたのはいい思い出です)。
当管理人は凡人ゆえ、「海の香りを染みこませるって、魚介類を混ぜ込むしかないよね…?じゃあ、いっそルーとシーフードとご飯を一緒に炊き込んで…ってそれカレーピラフ;!」というありきたりな発想しか出来なかった為、改めて天才の発想と言うのはすごいな~と実感しました。
そういえば、この後陽一君は海水を使った炊き込みご飯を作っていたからそれはどうだろうと考えましたが、想像しただけで口の中がしょっぱ辛くなったのですぐにやめました。
サザエとイカが同時に手に入らなかったのでずっと先延ばしになっていたのですが、先日やっとタイミングよく揃ったので再現する事にしました。
作中には大体の材料と作り方が記載されている上、辻学園様が『ミスター味っ子』の文庫本で再現レシピを載せておられますので、それらを参考になるべく忠実に作ってみようと思います!
ということで、レッツ再現調理!
まずは、サザエの下準備。
サザエの殻を清潔なタワシでよ~くこすり洗いして汚れを落とし、塩とカレー粉を少量ずつ混ぜたお水が入ったお鍋に並べて火にかけ、沸騰してから約十分茹でます。
茹で上がったらすぐに引き上げ、殻から中身を取り出してフタを取ります(←生の時は結構手こずりますが、一旦ゆでると軽く振るだけで中身がポロンと出てくるので、とても簡単です)。
なお、この時の茹で汁はカレールーを作る時のベースのスープとなりますので調理用ガーゼ等で漉しておき、捨てずに取っておきます。
サザエは身の部分とワタの部分の二種類に切り分け、ワタは漉し器で丁寧に漉してペースト状にします(←ちょっとした小石や破片とかが混入しているケースも珍しくないので、なるべく細かい網目の物を使った方が良いです)。
※今回使用するのはワタだけですので、身は好きな調理法で食べちゃってOKです。当管理人の場合、薄くスライスしてバターと醤油で炒めておつまみにしました。
次は、付け合せの極細フライドポテトの用意。
じゃがいもは皮をむいて極細の千切り状にした後水にさらしてで澱粉を取り除き、しっかり水気をきったら高温の油でカリッとするまで揚げます。
揚がったらキッチンペーパー等に取り出し、余計な油分を切っておきます。
今度は、イカのドライカレー詰め作り。
イカの内臓、目、骨などを取り除いてキレイに洗い、キッチンペーパー等で水気をよくふき取ったら胴体は薄皮をむき、ゲソは細かく刻んでおきます。
バターを入れて中火に熱したフライパンへゲソを加えてさっと炒め、硬めに炊いたご飯を投入してゲソをなじませたらカレー粉をふりかけます。
全体にカレー粉が行き渡ったら火からおろしてバットに移し、荒熱を取っておきます。
※後々濃い目のカレールーをかけますので、塩分は足さなくて大丈夫です。
このドライカレーを先程用意したイカの胴体へ八分目程度に詰め込み、ゲソを一緒に縫いつけるようにして爪楊枝で口を閉じます。
このイカを、油を薄くしいた中火のフライパンで全面に軽い焼き目がつくまで焼き上げておきます(←後々カレールーと煮込みますので、中まで火を通さず表面を固める程度がいいです)。
ここまできたら、いよいよカレールー作り。
バターを入れて熱したフライパンへ細かくみじん切りにした玉ねぎ、にんにく、しょうがを加えてじっくり炒め、段々キツネ色になってきたら小麦粉とカレー粉を投入してさらに炒めます。
粉っぽさがなくなってしっとりしてきたら、白ワインとトマトピューレを注いで混ぜ合わせ、アルコール分が飛ぶまで熱します。
そこへサザエの茹で汁、魚のブイヨン、ローリエを足して沸騰させ、沸き立ってきたら弱火にしてそのまま数十分~一時間くらいかけて煮込みます。
徐々に煮詰まってきたらサザエのワタのペーストを加えて混ぜ合わせ、少し煮込んでなじませたらイカのドライカレー詰めを投入して数分煮ます(←この時ローリエを取り除きます)。
イカはあまり火を通しすぎず、「ちょうど火が通りきったかな?」くらいの煮え加減で引き上げ、お皿へ盛り付けておきます。
イカの上から熱々のカレールーをたっぷり注ぎ、傍らに極細のフライドポテトを添えれば“味吉陽一特製イカのドライカレー詰め”の完成です!
作中で言われていた通りルーの色が黒ずんでいて、「本当だったんだな~」と感動しました(←光の当たり加減もあるものの、わずかではなく結構黒くなっていますが;)。
おなじみのスパイシーな香りの中には、確かに海の幸特有の潮風のような風味も混ざっており、これは味の方にも期待が持てます!
それでは、ルーを少し絡めていざ実食!
いっただっきま~す!
さて、味の感想は…確かにこれはシーフードカレーの決定版!サザエとイカがこんなに相性がよかったなんてびっくりです!
生米を詰めるいかめしだと内部を膨らませる必要があるので加熱が長くなり、どうしてもイカが硬くなりがちなのですが、こちらは既に火が通ったドライカレーを使用してさっと煮るだけで済んでいる為、プリプリむっちりした弾力とさっくりした軽い口当たりが両立した、刺身と煮イカの中間みたいな食感になっています。
中のご飯もべとつかずふっくらハラリと舌の上で軽くほどけるのが食べやすく、イカの旨味が染み込んでシンプルながらもしみじみ滋味深い炊き込みご飯風のドライカレーに、ゲソのコリコリした歯応えがいいアクセントになっていました。
爽やかで透明感すら感じるねっとりとろけるようなイカの甘さを、サザエの海を凝縮したような自然な潮味を帯びた出汁がさらに引き立て、何とも言えない濃密な甘辛さが出ているのがナイスです。
ルーは肉を使ったカレーのような派手なコクや重厚感はなかったものの、魚介類だからこそ出る穏やかで奥行きのあるエキスと、サザエのワタの舌に深く響く強烈な磯のコクが入り混じった、非常にインパクトのあるシーフード味で、イカスミをさらにこってりさせたような美味しさだと思いました(←下品ですが、鼻血が出そうになるくらい濃度が濃い旨さ)。
そのままだときついワタの苦味も、カレーのスパイスによって癖や臭みだけが消えて苦味も食べやすくまろやかに緩和されており、風味と旨味だけが純粋に活きているのがよかったです。
付け合わせの極細ポテトも、太いポテトにはないサクサクカリサリしたクリスピーな食感と、不思議にも増した芋の素朴な甘味が濃厚なカレーの箸休めにぴったりでした。
「手間がかかるからグランドメニュー入りは難しくても、数量限定か予約制にしたら絶対受けるんじゃ…」と夫と語り合うほど完成度が高く、何故現在でもそこまで普及していないのか不思議なくらいでした。
サザエのワタと言ってもカレーに溶け込むとコクだけ残って独特の味は消えていますので、ワタが苦手な方でもいけるんじゃないかなと思ったくらいです。
こちらも、色んな方に作って頂けたらな…と感じた再現でした。
P.S.
無記名さん、コメントしてくださりありがとうございます。
●出典)文庫版『ミスター味っ子』 寺沢大介/講談社
※この記事も含め、当ブログの再現料理記事は全てこちらの「再現料理のまとめリンク」に載せています。
※レシピの分量や詳しい内容は、以前こちらでご説明した通り完全非公開に致しております。
『クッキングパパ』の“高菜巻き”を再現!
- Thu
- 18:00
- 再現料理
大抵はカップヌードルに入ってる乾燥海老のようにくるりと丸まって寝ているのですが、体が充分に温まると熱くなる→けど出たら寒い→そうだ空気に触れる面を大きくしよう!という感じで、今度は真っ直ぐ揚がった海老天状態にピーンと体を伸ばして寝る有様で、自然布団から押し出されて風邪気味になっている今日この頃です…。
どうも、頭から足先まで冬越えの肉がぷっくりついているせいか、寝転ぶ姿が太巻きみたいになっている猫達をほほえましく思う当ブログの管理人・あんこです。
本日再現する漫画料理は、『クッキングパパ』にて荒岩主任がおすそ分けされた自家製高菜漬けを使って作った“高菜巻き”です!
それは、田中君と夢子さんがまだ結婚する前の微妙な関係だった頃のこと。
親戚の世話好きなおば様から「とにかく会うだけでも…」と強引に誘われた夢子さんは、お互い意識するようになっていた田中君のデートの誘いを断って休日に鹿児島へ帰り、お見合いをする事になります(←今や婚活サイトや出会い系アプリが「お見合いおばさん」役として活躍している為、本家の方は絶滅寸前ですが、『クッキングパパ』ワールドではまだまだ健在の模様;)。
こういう場合、婚活漫画だと「異性としてはちょっと…」な方を紹介されてがっくりする展開が多かったりするのですが、夢子さんのおばさんは凄腕の良物件ハンターだったらしく、イケメン・公務員・好青年と三拍子揃った男性が紹介されており、このまま真剣にお見合いをしていたら田中君危なかったのでは…?と心配になる程でした。
しかしこの時、夢子さんに断られて傷心中だった田中君は、全国温泉巡りの旅に出ていた花田君から「温泉に一緒に行かない?」と誘われて鹿児島温泉巡りに来ており、偶然夢子さんがお見合いしているホテルのレストランで鉢合わせするというミラクルが発生!
その際、映画『卒業』みたいに夢子さんを連れて逃げていたらドラマチックに盛り上がったかもしれませんが、残念キャラな田中君は既にお酒の飲みすぎでベロンベロンになっており、お見合いの席に泥酔状態で絡んだ挙句「先輩にはオレといういい男がおるやろうが」とテーブルを叩いたはずみにバランスを崩し、テーブルやお料理ごとひっくり返って頭を打って気絶するという、ホテルに向こう五十年は出入り禁止されてもおかしくない失態を演じてお見合いの席をぶち壊すというトンデモ行為に及んでいました(゜д゜;)ポカーン。
『美味しんぼ』で山岡さんとお見合いしていた元婚約者に、「何てひどい趣味だ。よくそんな服を着て人前に出て来れるね」と言い放った男性に匹敵するレベルのお見合いキラーっぷりです(
正直こんな醜態を見たら百年の恋も冷めてもおかしくないはずなのですが、天使を通り越してもはや観音菩薩級に心が広く慈愛深い夢子さんは、断りきれなかったお見合いだからいいのよと前置きした上で「だから…ありがとう田中くん」と逆にお礼まで言い、その日の夜には三人揃って円満に博多まで帰っていました;(←年下の夢子さんに甘える年上の田中君…まさか最近流行しているバブみを数十年前に先取りしているとはびっくりです)。
何だか少し腑に落ちないですが、気の合う仲間と一緒に夜中のドライブをしつつ目的地へ向かうというシチュエーションは大人だからこそ出来る青春というイメージで、個人的に好きなシーンだったりします。
その後、花田君の車の調子が悪くしょっちゅう止まってしまう為、朝までに到着しなければいけない田中君と夢子さんは途中下車して終電に乗り、花田君だけ走ったり止まったりを繰り返しながらまったり博多方面へ向かう事になります(←余談ですが、アクシデントがあって仲間達が離れ離れになり、それぞれ目的地へ向かうという展開があると何故かワクワクします。ただ、あんまり長く離れ離れだとダレるので、映画『クレヨンしんちゃん 暗黒タマタマ大追跡』の構成がちょうどいいバランスだと勝手に認識してます)。
そんな中、慣れない道にすっかり迷った花田君は深夜にある山中に迷い込み、運悪く車もエンストして止まってしまった為、今夜は車中泊することに。
けれども、ちょっと歩いた先にポツンと小さな宿があるのを発見した花田君は気になって敷地内に入り込み、そこで素晴らしく澄んだいい泉質の内湯があるのを発見して疲れていたのもあって入浴し、そのあまりの気持ちよさにお湯に浸かったまま熟睡しちゃってました;。
携帯なし、一人ぼっち、深夜の山奥、人気のない宿、真っ暗で静かに湯気が立つ温泉…とここまで不気味でホラーな設定が盛り込まれると、『世にも奇妙な物語』や『アウターゾーン』に出てくる恐ろしくて奇妙な世界に迷い込んだのでは?と普通なら怯えそうなものですが、花田君は浮世離れ&旅慣れしているせいか全然気後れしておらず、この人ならたとえ本物の幽霊旅館や迷い家でも飄々と攻略できそうだと苦笑したのを覚えています。
幸い、宿の管理をしているご夫婦はいい方達で、朝までぐっすり寝込んでいたのを発見されて「ははは…そりゃのんきやな」「なんか、はん(訳:あなた)から金もらう気がせんど」と笑って許してくれたのですが、それでは気がすまないと花田君は浴場の掃除を手伝ったり、買い物に行ったり、洗濯や掃き掃除をしたりなど色々手伝い、何だかんだで数日滞在してすっかり宿になじんでいました(←ちなみにこちらは実在する温泉宿で、地元では皮膚病が治るなど知る人ぞ知る秘湯との事。作中に乗っている「入浴料:大人300円」の値段は現在でも変わっておらず、良心的すぎると感動したものです)。
思えば、先程ご紹介した奇妙な世界系作品に属する『笑ゥせぇるすまん』でも温泉宿に滞在する主人公の話がちらほらあるのですが、そちらは「藤子不二雄Ⓐ先生は温泉地に何か恨みでもあるんだろうか…?」というくらいあんまりなラストが多かった為、花田君はいい環境に恵まれてよかったな~とほっとしました(←日頃から変に自分を抑圧せず純粋な善意だけで行動しているので、仮に喪黒さんに会っても「ドーン!!!」な展開にはならないでしょうが;)。
その後、連絡が全く入らずやきもきしていた田中君達の前にやっと花田君は顔を出し、「温泉のおっちゃんおばちゃんが、別れ際にいっぱいくれたんだ!!」という自家製高菜漬けをその場にいた金丸産業社員達に配っていました。
中でも大量におすそ分けされたのが荒岩主任で、花田君としては「いつも博多にくるたびなにかとお世話になってますから」とお礼のつもりで渡したそうなのですが、もらいっぱなしじゃ悪いという理由でその日の夕食に招待されていました。
こうして、花田君から貰った高菜漬けを使って荒岩主任が準備した夕食が、この“高菜巻き”です!
作り方は簡単で、高菜漬けの葉部分を巻きすに敷いて酢飯を薄く広げ、その上に細く切った長芋・練り辛子と醤油で味付けした納豆・細かく叩いた梅肉、わさび醤油に漬けたまぐろ・練り辛子と醤油で味付けした納豆・刻みネギ、焼肉のタレを絡めて焼いた牛カルビ肉・キムチの組み合わせでそれぞれ置いて巻き、一口大に切ったらできあがりです。
ポイントは、高菜漬けは一旦水で洗ってよく絞ってから使うこと、酢飯は多く乗せすぎないことの二点で、こうすると水っぽくならず高菜にちゃんと酢飯が付いてうまく巻けるとの事でした。
大分県日田市の伝統料理“たかなずし”が元ネタだそうで、1986年には当時の食糧庁がふるさとおにぎり百選の一つとして選んだそうです。
元祖は納豆・山芋・ネギのみというシンプルな作りみたいですが、荒岩主任は試行錯誤したのか色んな具を使っており、ビールのおつまみにしても合うようなバラエティ豊かな味付けにしていました。
漬物で作るお寿司というと青菜巻きが真っ先に思い浮かびますが、高菜漬けで作るとまたひと味違うようで、どういう味がするのか昔から気になったものです。
地元で評判の高菜漬けが手に入ったので、いい機会だと思い再現する事にしました。
作中には詳細なレシピがきっちり記載されていますので、早速その通りに作ってみようと思います!
ということで、レッツ再現調理!
まずは、具の下ごしらえ。
納豆は一旦何もかけずによ~くかき混ぜてから練り辛子と醤油で味付けし、小ネギは小口切りに、梅干は種を取り除いてから細かく叩いてペースト状にしておきます(←納豆は醤油を入れすぎるとゆるくなって巻きにくくなりますので、要注意です!)。
長芋は流水で汚れ等をしっかりこすり洗いして落とし、皮がついた状態のまま細長く切ります。
焼肉用スライスカルビ肉は熱したフライパンで両面をこんがり焼き上げ、お好みの焼肉のタレを回しかけて煮詰めながら絡め、濃い目の味をつけておきます。
まぐろのサクは細長く切ってからボウルに入れ、醤油と練りわさびを加えて味をなじませて浸け、ヅケ状にしておきます(←小さく切られているまぐろは、再現とは全く関係のないおつまみのまぐろとろろ用ですのでスルーして下さい;)。
次は、巻き作業。
高菜漬けは水で漬け汁を軽く洗い流して水気をしっかりきり、その上手でしっかりと絞っておきます(←あんまり強い力でやりすぎると、葉がぼろぼろに破れますので気をつけて下さい)。
その間、炊きたてご飯を水分を含ませた飯台(又はボウル)へ移して寿司酢を回しかけ、しゃもじで切るようにしてさっくりと混ぜ合わせて酢飯を用意します。
この酢飯を、巻きすの上に広げて敷いておいた高菜漬けの上に乗せ、薄く均一に広げます(←上と下の部分に少し空きを作り、のしりろ部分にしておきます)。
※酢飯は、ミスター味っ子のお寿司再現の時にマスターした砂糖抜きの酢飯にしました。昆布・塩・リンゴ酢などのブレンド酢だけなのに、本当に自然な甘さでくどくない美味しさですのでおすすめです!
中央よりやや下に、長芋、梅肉、納豆を細長く乗せ、強すぎず弱すぎずの力加減でくるくる、キュッキュッと巻き込みます。
これで、巻物自体はほぼ出来上がりです。
あとは先程と全く同じように高菜漬けと酢飯を巻きすにセットし、続けてまぐろ・納豆・刻みネギ、焼肉・キムチの具の組み合わせでどんどん巻いてきます。
※巻いてすぐに切らない場合は、ラップで全面を覆うと乾燥しません。
全ての巻物を巻き終えたら、一回一回包丁をぬぐいながら程よい大きさに切り分けていき、それぞれお皿へ盛り付ければ“高菜巻き”の完成です!
予想以上に高菜漬けの何ともいえない野趣溢れる香りが強く、色んな意味で海苔巻きよりも自己主張が強いな~と思います。
高菜と酢飯という組み合わせは地味に初めてなので、どんな味になるのか楽しみです!
それでは、出来立てほやほやの内にいざ実食!
いただきま~すっ!!
さて、味の感想は…高菜ご飯好きには間違いのない美味しさ!青菜巻きとは似て非なる味わいです!
青菜はもう少し葉に歯応えがあり、きゅッとしてしっかりした口当たりですが、高菜はしんなりジャクッとした柔らかい張りのある食感で、よりご飯に馴染んでいるように思いました。
高菜の方が乳酸発酵させた漬物特有の後引く酸味と、ほんのり油分があるような独特のコクがある為、青菜よりもずっと癖があって合わせる食材を選ぶ感じではありますが、その分旨味も濃く病み付きになります。
葉自体に適度な塩分がついていて醤油がいらない為、それぞれの味付けの違いがさらに映え、具の個性がはっきり出やすいのが特徴的でした。
長いも巻きは、シャクシャクした鮮やかな歯触りと次第にトロトロと崩れてくる粘りが心地よい長芋に、爽やかな酸味が効いた梅干しが抜群の相性。
そのままの組み合わせだと少し物足りない所を、納豆の熟成した味が程よいボリューム感をプラスし、ネバネバパワーも旨さも二倍にしています。
山かけまぐろ軍艦を連想させる、さっぱり上品な後口が良かったです。
鉄火巻きは、わさびのピリッとした辛味と濃い醤油味が染み込んだ粋なヅケまぐろが不思議と高菜にマッチしていて、生臭みすら緩和しているのに驚きです。
納豆もネギのあるなしではこんなに味が違うのかという垢抜けようで、ネギのキリリとした風味が全体を引き締めていました。
例えるとするなら「あっさり仕立ての爆弾納豆巻き」というイメージの美味さです。
焼肉巻きは、この中で一番こってりかつがっつりした一品で、「ごま油なしの焼肉とキムチのキンパ巻き」みたいな味付けでした。
焼肉ダレの力強い濃厚にんにく醤油味と、牛カルビのガツンとくる旨味のコンビが焼肉屋風寿司って感じで、高菜が脂っこさをすっぱり断ち切るのが秀逸。
キムチの海鮮出汁が効いたピリ辛味が酢飯に染みて、和風の具では出ない深みが出ているのがナイスです。
今まで高菜漬けといえば、ごま油や醤油で炒めてご飯に乗っけるのが一番おいしいと信じていただけに、お寿司風にしても合うんだな~と目からうろこだった再現でした。
イカ+明太子+納豆+長芋の組み合わせで巻いてみても美味しそうなので、一度試してみようと思います。
P.S.
kawajunさん、たかなかさん、ノリスケさん、あめふらしさん、コメント・ご要望・ご質問を下さりありがとうございます。
黄色文字の件、承りました。今後、気をつけてみますね。
あと、“堺一馬特製チキンカレー”のお水の件ですが…自分の記憶や夫の返事でも、「そういえば、どっちもお水を飲まなくてもおいしく食べられた!」という恐るべき結果でした;(←食後に飲み物は飲みましたが、どちらも量的にそんな変わらなかったような…。
●出典)『クッキングパパ』 うえやまとち/講談社
※この記事も含め、当ブログの再現料理記事は全てこちらの「再現料理のまとめリンク」に載せています。
※レシピの分量や詳しい内容は、以前こちらでご説明した通り完全非公開に致しております。
『ミスター味っ子』の“堺一馬特製チキンカレー”を再現!
- Sat
- 18:00
- 再現料理
公式の設定によると、近年たま~にしょくぱんまんの配達を手伝うこともあるそうですが、基本カレーが丘で昼寝したり気ままにすごしているとかで定まった仕事はないらしく、「ピリッとした江戸っ子的性格で頭にも中辛カレーが詰まっているのに、それとは相反して甘口な生活を送っているな~」と苦笑したものです。
どうも、最近カツカレーパンという新商品が出つつあると聞いて「その発想はなかった!」と衝撃を受けた当ブログの管理人・あんこです。
本日再現する漫画料理は、『ミスター味っ子』で陽一君とカレー対決で初めて戦った一馬君が作った“堺一馬特製チキンカレー”です!
後に味皇GPへ関西代表として出場して有名になる一馬君ですが、初登場時はまだ十五歳くらいのあどけない少年で、陽一君とはお互い第一印象は最悪だったものの、勝負後は同い年という事もあってすぐに仲良くなっていました。
携帯どころかネットもない時代、「中学生で気が強い勝負好きな天才料理人」という狭すぎるジャンルでここまでピンポイントに気が合う仲間を見つける事は至難の業だったはずですので、今考えれば貴重な出会いだったと思います(←現代なら、マッチングアプリやSNSで気の合う仲間を探す事は簡単そう…と想像しましたが、よくよく考えれば陽一君も一馬君もそういうのに疎くて向いてないので、やはり難しかったかと。お二人の性格上、すぐ炎上しそうですし;)。
また、原作には登場していない裏設定ですが(←詳しくはこちら)、作者の寺沢先生曰くどうやら一馬君はいいとこのぼんぼん育ちで、小さい頃から美人で上品なお姉さんに見守られつつ好きな料理をして過ごしていたのだとか。
永田さんの援助があるとはいえ、最新式の機材に囲まれた厨房で最高級食材を湯水のように使い、ばんばん気前よく料理する姿を見ては「すごい度胸だな~;」と感心していましたが、そういう生まれだからこそ物怖じしなかったんだろうな~と思うと、妙に納得したものです。
このように、才能や実力のみならず生まれもサラブレッド級という嫌味なくらい恵まれている一馬君ですが、それでも昔から根強い人気があるのはその明るい性格だけでなく、高い能力を持っていながら陽一君には後一歩及ばず勝てない、永遠の引き立て役で三枚目のライバルともいうべき立場が定着しているからで、見ていると歯がゆくてつい応援したくなるからでは?と推測してます(←いわゆる判官贔屓ですね。あんまり強すぎてもつまらないのは、どの世界でも同じみたいです)。
他の作品で似ているキャラを挙げるとするなら『ドラゴンボール』のベジータがしっくりくる感じで、「主人公に次ぐ能力の高さゆえ、パワーアップした主人公や新しい敵の強さを示す為に敗北する」というかませシーンがある所までそっくりな為、そういう不遇さが陽一君よりも肩入れしたくなる理由の一つだったりします;。
ちなみに、実家がお金持ちの割に初期の一馬君は「夢が…一軒の店やて?小さすぎるでっさん…!オレの夢はまだまだ始まったばっかしやで」「一軒の店を持つのはその夢のほんのとっかかり!悪いがおっさんもそのための足がかりにしかすぎんのや」となかなかの野心家で、人のいい永田さんを利用する気満々でした(←中学生の身でパトロンに一流店をプレゼントされるという、銀座の高級クラブのママもびっくりなサクセス話を持ちかけられているというのに、さらにその先を見ている一馬君の発想が壮大すぎてもう…。一瞬、<美食倶楽部>一店舗で満足している雄山氏がつつましく見えるという恐るべき錯覚を起こしかけました;)。
しかし、『ミスター味っ子Ⅱ』で再登場したアラサーの一馬君は、現在体調を崩している永田さんを「昔から世話になってる人」だと語り、会社を乗っ取るには絶好の機会にも関わらず息子のように支えていたのでほっとしました(←最初はドライな考え方をする性格だったのに、段々悪になりきれない一面が目立ってくる所がまたベジータっぽいです;)。
大人になってからは料理人としてでなくゼネコン会社の社長代理として働き、国内外含め飲食店関連の建設工事を行い経営者の視点で料理界を変えようとしているのが意外でしたが、思い返せば『ミスター味っ子』時代から料理を多角的な視点で捉えたり、コオロギ君を始めとする弟子達の教育や指示が非常に上手だった印象がありますので、ある意味当然の帰結だったのかもしれません。
とはいえ、そんな中でも一馬君は料理人としての自分も忘れておらずたまに料理をする描写もあるのですが、大人になって身につけた得意料理は焼きそばや関西風うどんなど故郷・大阪の料理ばかりで、人間グローバルな視点を持つようになると『美味しんぼ』の日本全県味巡りのように原点回帰したくなるのかな?と感じたものです。
そんな一馬君が“味吉陽一特製パイナップルカレー”に対し、「最後に勝つのはこの堺一馬や!!味吉陽一が日本一の天才なら、オレは世界一の天才やで!!」と絶対の自信を持って出したのが、この“堺一馬特製チキンカレー”です!
作り方は相当に手間がかかっており、玉ねぎ・にんじん・にんにく・しょうが・三十六種類のスパイスなどを炒め、二日ヨーグルトに浸けた軍鶏のもも肉を汁ごと投入して煮込み、サフランライスの上にかけたら出来上がりです。
薬味は陽一君と同じく三種類で、刻んだキウイを混ぜたカッテージチーズ、マーマレードジャム、きゅうりのピクルスという比較的凝った物を用意していました(←調べた所、何とハウス食品様のサイトでも「カレーに合う薬味」として全て紹介されてましたので、その正当性は折り紙付きです!)
今では常識となっているヨーグルトに硬い鶏肉を浸けて柔らかくする方法も、昔は斬新かつ画期的な下処理法で、「こんなやり方を知っているなんてすごいな~」と小さい頃感心したのを覚えています。
残念ながら、三十六種類のスパイスが何なのか作中には明記されていないのですが、一馬君が言うには「インドから直輸入した三十六種に及ぶスパイス。だが、そいつも配合をひとつ間違うとブタのエサにもならん」「そのスパイスの…膨大な組み合わせの中のたった一つの黄金配合…そいつを決める舌がオレにはある!!」だそうで、気合を入れて調合したみたいでした(←あまりにも途方がなさ過ぎて頭がくらくらする表現な為、このシーンを読むたび「ことばの意味はわからんが、とにかくすごい自信だ!」で最終的には片付けてしまいます;)。
スパイスの調達や配合がとにかく難しくてずーーーっと再現できなかったのですが、この度やっと三十六種類のスパイスを手に入れることが出来たので、一念奮起して再現してみることにしました。
作中には大体の作り方が書かれていますので、早速その通りに作ってみようと思います!
ということで、レッツ再現調理!
まずは、カレーにつける薬味の準備。
小鍋に牛乳を入れて60度くらいの温度に熱し、レモン汁(又はお酢)を入れて木べらでかき混ぜ、ほわほわと固まって分離してきたら調理用ガーゼ等を敷いたザルで越して適度に水切りをします。
この白い固形の物体がカッテージチーズですので、少量の塩を入れてほんのり味付けし、いちょう形切りにしたキウイを加えてざっと混ぜたら薬味のは出来上がりです。
※今回、マーマレードジャムは国産の無添加でホームメイド風の市販品を、ピクルスは小型のきゅうりが使用された外国産の市販品を使用した為、薬味は一種類しか手作りしておりません。再現度が低くてすみません。
次は、スパイスの調合と炒め作業。
一馬君のような黄金配合が出来る天才ではない、あくまで一素人が四苦八苦して行うものですので完全とはいいがたいですが、一応三十六種類は使用してバランスもその都度確認するよう気をつけてみました(^^;)。
基本のスパイス二十種類は、GABANのカレーキットを使用し、ターメリック、クミン、コリアンダー、みかんの皮、フェネグリーク、フェンネル、シナモン、カイエンペッパー、ガーリックグラニュー、ジンジャー、ディル、オールスパイス、カルダモン、クローブス、スターアニス、セイジ、タイム、ナツメグ、ブラックペッパー、ベイリーブスのパウダースパイスをミックスしました。
これだけでも充分スパイシーで香り高く、まさに完璧と言っていい風味のよさでした。
次は、同じパウダースパイスであるセボリー、ステビア、アニス、キャラウェイ、セロリシード、アムチュール、マジョラム、ローズマリー、レモングラス、オレガノ、パセリの十一種類を
これら三十一種類のスパイスを一旦ざっと混ぜ、油をひいて弱火に熱したフライパンで五分程度炒めて香りをさらに引き出し、よく冷ましてから消毒した密閉容器等に移して一晩寝かせます。
翌日、残りのホールスパイスであるカレーリーフ、アジョワンシード、カロンジ、ブラウンマスタードシードを多めの油を入れたフライパンへ入れて弱火でじっくりと熱を通して香りを活性化させていきます。
やがて、種タイプのホールスパイスがパチパチと音を立てて香りを出してきたら、みじん切りにしたにんにくとしょうがを入れて炒め、続けてみじんきりにした玉ねぎを投入してしんなりするまでさらに炒めます。
※これでやっと三十五種類!しかし、最後のスパイスであるゴラカは柔らかく戻してペースト状にした上で煮込み作業の時に入れないと意味がないので、この段階では入れていません;。その時、初めて「三十六種類のスパイス入り」と銘打てます。なお、GABAN以外のスパイスは、「どの資料にも、どのネットページにも、三十六種類もスパイスを調合してその内容を詳しく書いている人がいないorz!」「というより、カレーに使うパウダースパイス自体三十六種類もないから、ホールスパイスで数合わせするしかない!」「実際は同じスパイスなのに、こっちとあっちでは名称が違う?!また調合表の見直しだ!」という絶望的な状況から、青息吐息で資料をかき集めて自分なりにメチャクチャに合わせたものですので、プロの方からすると失笑物だと思います…。
段々玉ねぎが飴色に近くなってきたらさいの目切りにしたにんじんを入れて混ぜ合わせ、にんじんに火が通ってきたら前日から熟成させていた三十一種類のカレー粉とペースト状にしたゴラカを加え、しっかり炒めます。
これで、三十六種類のスパイスをあわせたカレーの具の準備は完了です。
次は、煮込み作業。
前回同様、軍鶏の血統を継いでいるはかた地鶏の骨付きもも肉から肉を切り出し、骨は煮込みやすいよう調理用ガーゼに包んで袋状に、肉は無糖ヨーグルトに漬け込んで二晩寝かせます。
これらの骨と肉を、先程のスパイス入り具材と僅かな水を入れて煮立てたお鍋へ投入し、じっくり中火で煮込んでいきます(←水分は水を注いで補うのではなく、無糖ヨーグルトを入れることで調節して下さい。その方が味に深みが出ます)。
カレールーに自然なとろみが出てきたら、塩とマスタードを加えて味の微調節を行ったり、足りないスパイスを確認しながら補ったりしてさらに煮込みます。
最終的にトロッとして味もスパイスも決まったら骨袋を取り出し、用意万端です。
その間、サフランライス作り。
炊飯鍋(又は炊飯器)へ研いだお米、ぬるま湯に十五分くらい浸けて色を出したサフラン、お水を入れて一時間水を吸わせ、やや硬めに仕上がるよう気をつけて炊きます。
炊き上がったら全体をさっくり混ぜてすぐにフタをし、蒸らしておきます。
蒸されてふっくらしたサフランライスをお皿に盛り、その上から先程のカレーをたっぷりかけ、三種類の薬味と一緒にテーブルへ運べば“堺一馬特製チキンカレー”の完成です!
台所だけではなく部屋中がもう「カレー!本格カレー!」という感じ、それもお店みたいな香気が隅々まで漂っており、思わずうっとりします。
ここまで本気を出してスパイスを調合して事がないので、どういう仕上がりになっているのか全然想像がつきませんが、一馬君を信じて食べてみようと思います!
それでは、出来立て熱々の内にいざ実食!
いっただっきまーす!
さて、味の感想は…スパイスが効いてるとか本場風とかを超越し、もはや香りの大洪水!三十六種類分のスパイスの力って、暴力的なまでに五感に訴える力があるんだな~と実感です!
陽一君の鶏肉は弾力がまだある感じでしたが、一馬君のはヨーグルトによってさっくりホロリとした角煮に近い柔らかさに仕上がっており、それでいてジューシーなのが特徴的。
カレーの個性が強いので並のご飯だと存在が食われるところでしたが、サフランライスの高貴な香り高さががっちり受け止めていた為、バランスよく調和していました。
ベースに野菜がほとんど入っていない分、ドライな辛さが舌へストレートに効いてきますが、甘味を出すスパイスや炒め玉ねぎの風味、マイルドなヨーグルトのおかげでいつまでも残らずスッとキレよく引き上げる大人の味という印象で、癖になります(←欧風カレーの濃密なコクとインドカレーの本格的なスパイシーさをミックスさせたような、不思議な美味しさ)。
辛味、甘味、酸味、苦味、渋みなどが複雑に入り交じり、そのどれもがはっきりと主張してくるのですが、ヨーグルトのまったりした濃い脂肪分がそれらを中和してまとめあげつつ一体化させており、結果凄まじく奥深い旨味の塊のようなルーになってます。
加えてすごかったのが膨大な量の匂いが一つになって生まれた豊潤な香りで、重くて癖があるのに軽やか、素朴なのに華があって甘やか、むせかえるようにワイルドな匂いと思いきや爽やかなど、様々な風味が矛盾しつつも口の中で混然とした渦となって果てしなく続くのが恍惚ものでした。
よくカレーは香辛料のオーケストラと言われますが、このカレーはそんな品よくまとまっておらず、あえて言うなら「荒々しい古代の炎の祭典」みたいなイメージのカレーです。
一つ難点をいうなら、あまりにも多いスパイスがルーに少しざらつきをだしている事ですが、ご飯と一緒だとすぐに絡んで気にならなくなるので然程深刻ではありません。
薬味類は本当にカレーの味わいをそれぞれ引き立ててくれる名脇役という感じで、強烈なパワーのあるカレーから一時休みたい時に最適でした。
ピクルスはサクサクした甘酸っぱさで舌の上をさっぱり洗い流し、マーマレードはほろ苦い甘さでマンゴーチャツネを足したかのようなフルーティーな味わいにし、キウイのカッテージチーズ和えはあっさりしたチーズのフレッシュでクリーミーな塩気とキウイの甘さがカレーの刺激を和らげて優しい後口にするのに成功しており、感心です。
陽一君のカレーも勿論美味しかったんですが、一馬君のカレーを食べた後だとスパイスの奥深さと言う点では話になりません(←京極さんの「なんちゅうもんをくわせてくれたんや…」というセリフが頭をよぎるほど。いえ、陽一君のカレーは決してカスではありませんよ!?)。
実際、夫も一馬君のカレーを数口食べて「一馬君の勝ちだろ?」と断言していました;。
正直、スパイスに重点を置くなら確かに一馬君の勝ちかもしれませんが、野菜や果物が鶏肉とまったりした旨さを生み出しているトロピカルな陽一君のカレーも全く別の旨さがあり、単純に比べられるものではないと当管理人は感じましたので、卑怯かもしれませんが引き分けにしたいと感じた再現でした。
P.S.
ミントさん、コメントしてくださりありがとうございます。
ご質問とご要望をお受けしていたスマホ用テンプレートの件ですが、先日やっとカスタマイズが完了しましたので変更いたしました。これで少しでも読みやすくなっているといいのですが…(^^;)。
●出典)文庫版『ミスター味っ子』 寺沢大介/講談社
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※レシピの分量や詳しい内容は、以前こちらでご説明した通り完全非公開に致しております。