『風流つまみ道場』の“レタスのカニマヨがけ&カニと豆腐のレンジ蒸し”を再現!
- Thu
- 18:00
- 再現料理
食感は、ズワイガニは繊維の一本一本が繊細でしっとりジューシーなのに対し、タラバガニは比較的繊維が太くてしっかり引きしまった噛みごたえで、どことなくホクホク感があるのが特徴的。
旨味は、ズワイガニは若干甘味が強いのに対し、タラバガニは意外とあっさりしている感じでした。
当管理人は「茹でるならタラバ、生ならズワイかな?」と思いましたが、相方さんは食べ応えのあるタラバガニが気に入ったようで、また機会があったら違うカニを食べ比べしてみたいな~と思いました(←結構費用がかかるので、当分は出来ませんがorz)。
どうも、普段は香り箱にポン酢やわさび醤油をつけて食べるだけで十分満足している当ブログの管理人・あんこです。
本日再現する漫画料理は、『風流つまみ道場』にて錦ちゃんが辰五郎さんの為に作った“レタスのカニマヨがけ&カニと豆腐のレンジ蒸し”です!
それは、ある冬の休日の事。
マンションのお隣さんという気安さから、日頃からお互いの部屋をよく行き来している飲み友達・辰五郎さんとマユミさんカップルが、錦ちゃんの元へお酒を持って遊びに来ます(←辰五郎さん曰く、「ココで飲むとうまいんだよね」との事;。料理の腕も<夕月>のママがピンチヒッターにするくらい上手ですので、もういっそ独立して飲食店を開いたら大当たりするのでは…?と思いました;)。
この日はお昼からのんびり飲んでいたみたいで、三人ともすっかりくつろいでいたのですが、あんまり気分がよかったせいか、辰五郎さんは唐突に「錦ちゃん、ボクカニが食べたいなあ。何かカニのおつまみ教えてよー」と言い出します。
生まれつきヤ○ザのような強面で、普段もそこまでニコニコするタイプではない為怖いイメージがある辰五郎さんですが(←しかし、実は牛乳と鰻に恐怖するちょっと臆病な甘えん坊で、マユミさんには弱し;)、この時は一度も見た事がないような満面の笑みを浮かべており、初見時は「人の家でいきなりカニを食べたいとは、何て大胆な…でもいい顔してるな~;」と苦笑したものです。
幸い、マユミさんが「ダメよダーリン、そんなゼータクな食材」と止めてくれましたので、「えー、じゃカニ缶でもいいけど」と渋々ながらも譲歩していましたが、それでもマユミさんは「カニ缶=何千円もする高級品」というイメージがあったようで、プンプン怒っていました;。
けれども、気を使った錦ちゃんが「ええ、タラバだとそーゆー高級なのもありますけど、ベニズワイガニのほぐし身の缶詰なら500円以下のお手頃値段で買えますよ」という豆知識を披露した為、結局その日はカニ缶尽くしで飲むことになってました。
どうやら錦ちゃんは、『酒のほそ道』の宗達さんと同じく「こんな○○で気軽に飲むなんて、無理だよ~」と言われると、かえって試してみたくなるチャレンジ精神の持ち主みたいで、ますます料理人向きなのでは…と感じました;(←但し、宗達さんの方は無類の酒好きが災いし、人が飲んでいるのを黙って見ていられなさそうなので、今のまま飲兵衛サラリーマン生活を続けるのが無難そうです;)。
こうして、仕方なくマユミさんが買ってきたベニズワイガニのほぐし身缶を使って錦ちゃんが作ったのが、“レタスのカニマヨがけ&カニと豆腐のレンジ蒸し”です!
作り方は両方とも簡単で、“レタスのカニマヨがけ”は茹でレタスの上にカニ缶・マヨネーズ・塩・黒胡椒・ラー油を混ぜたソースをかけるだけ、“カニと豆腐のレンジ蒸し”は水切りした木綿豆腐・カニ缶・長ネギ・日本酒・醤油・塩を混ぜ合わせて電子レンジで三~四分加熱するだけで出来上がりです。
ポイントは、“レタスのカニマヨがけ”はレタスを決して茹ですぎない事とカニ缶を惜しまずたっぷり使う事、“カニと豆腐のレンジ蒸し”は木綿豆腐の水切りはしっかりではなく十五分くらいで軽く済ませる事で、これなら急いでいる時でもちゃちゃっと準備できそうです。
調べた所、ベニズワイガニは本ズワイガニに比べるとどうしても身入りが悪くて水っぽいみたいで、ラズウェル細木先生も「ちょいと格落ちの亜種」だと書かれているのですが、それでも調理次第で「じゅうぶん美味しい」「ゴージャスな気分」になれると話されています(←考えてみれば、身入りの悪さも缶詰になれば関係ないですし、最大のネックである水っぽさも、他の材料で旨味を補ってしまえば大して気になりませんので、確かに!と納得したものです)。
正直、もしこれが高いカニ缶を使ったレシピだったら「失敗できない!」と身構えて挑戦できなかったかもしれませんが、ワンコインで手に入るベニズワイガニのほぐし身ならマヨネーズと混ぜようが、ラー油をかけようがそこまで抵抗を感じませんので、助かるな~と思いました;。
※ちなみに、レタスにカニ餡をかけた料理はよく見かけますので、「レタスにカニマヨをかけるってよくある料理なのかな?」と後々検索した事があるのですが、驚くべきことに類似レシピは全く見当たりませんでした。ラズウェル細木先生の独創性、恐るべし!
その後、辰五郎さんとマユミさんはワクワクしながら試食するのですが、“レタスのカニマヨがけ”は「シャキシャキしたレタスの食感に、カニの旨味が加わってリッチな味わいだな」と舌鼓を打ち、“カニと豆腐のレンジ蒸し”は「ほーッ、アツアツのカニと豆腐がいっしょになって不思議なうまさだなあ」とハフハフ言いながら頬張るなど、どちらも大好評でした。
実は、この二品の他にも“セパレートカニ玉”という、“カニの卵白焼き”に似て非なる料理も作られているのですが、こちらも「カニと白身のフワフワの食感に、トロリとした黄身がからんでもーうっとり」と受けがよかったです(←後日作った所、こちらも美味しかったので、宜しければ単行本でご確認してみて下さい)。
まさに「お値段以上、ベニズワイ」な体験をし(←ニトリのCMみたいなフレーズですが;)、すっかりテンションが上がった辰五郎さんは、「マユミ、帰ったら作ってくれッ」とご機嫌状態でおねだりします。
…が、家計を預かるマユミさんとしてはこれ以上の出費は控えたかったようで、「錦ちゃん、これってカニカマでもできるよね?」「いくらベニズワイでも、いくつもあけてたらたまったもんじゃないわよ。たしか冷蔵庫にカニカマあったよね」とぴしゃりと言い切り、「カ…カニカマ…?」と哀しげな辰五郎さんを残してさっさと席を立っていました;。
一巻の初登場時は妖艶なマリリン・モンローっぽいキャラだったマユミさんですが、巻がすすむごとに「色っぽいけど家庭的」なキャラへと変わり、冷蔵庫の在庫も常に把握しているくらいしっかりしてきたのが頼もしかったです;(←また、当初はどことなくミステリアスな雰囲気だったのが、「ウチの実家から梅干しが送られてきて~」「お中元で山ほど素麺をいただいて~」など、どんどん生活感溢れる物になってきたのも印象的;)。
先日、ズワイガニのほぐし身缶二つを五百円ちょっとで購入できたので、再現する事にしました。
作中には詳細なレシピがきっちり記載されていますので、早速その通りに作ってみようと思います!
という事で、レッツ再現調理!
まずは、“レタスのカニマヨがけ”作り。ボウルへ紅ズワイガニのほぐし身缶を汁ごとカパッと開けたら、続けてマヨネーズ、塩、黒胡椒、ラー油を加え、菜箸でまんべんなくよ~く混ぜ合わせます。
※この時、マヨネーズを入れ過ぎるとくどくなってカニの味が半減してしまいますので、緩いとろみがつくくらいの量が最適だと思います。
その間、塩を足して沸騰させたお湯入りのお鍋へレタスの葉を投入してサッと茹で、キッチンペーパー等で水気をきっちり拭き取って一口大にザクザクカットしておきます(←面倒ですが、一枚ずつ作業した方が茹で過ぎも防げ、色も変化しにくいです)。
このレタスをお皿へ盛り付け、先程のカニマヨソースをたっぷりかけたら、用意完了です。
次は、“カニと豆腐のレンジ蒸し”作り。
木綿豆腐に十五分くらい重石を乗せて水気をきり、手で大雑把に崩しながらボウルへ入れ、紅ズワイガニのほぐし身缶を汁ごと加えて菜箸でザクザクかき混ぜます。
その際、ペースト状とまではいかなくても、豆腐全体にカニが行き渡ってトロトロフワフワに細かくなるまで混ぜた方が、舌触りが格段に良くなります。
そこへ、長ネギのみじん切り、日本酒、醤油、塩を入れてさらに混ぜ合わせ、味見をして塩加減がちょうどよかったらグラタン皿へ移します。
そして、そのままラップをせずに電子レンジへ入れて三~四分程加熱し(←電子レンジによって時間は変動しますが、大体500Wが目安です)、真ん中へ千切りにしたしょうがを散らしたら、準備万端です。
両方の料理とも同時進行で作り上げ、冷めない内に急いでテーブルへ運べば“レタスのカニマヨがけ&カニと豆腐のレンジ蒸し”の完成です!
“レタスのカニマヨがけ”は色鮮やかなグリーンレタスに純白のカニマヨソースがくっきりと映えて目に嬉しく、“カニと豆腐のレンジ蒸し”はレンジから出した瞬間一気に立ち上るほっこりした出汁の香りが鼻に心地よく、どちらもよく出来た一皿だと思います。
頭の片隅に「カニ料理は高くて手間がかかる」というイメージがあったので、こんなにお手軽に用意できたことに少々戸惑いを感じていますが、見た目は非常に美味しそうなので期待が持てます。
それでは、いざ実食!
一番目は、“レタスのカニマヨがけ”。
いただきま~す。
さて、感想はといいますと…高級和食系居酒屋で出てきそうなお味!火を通すことで甘味が増したレタスと、カニのリッチな味わいが調和した、立派な一品料理です!
レタスを熱湯に通したらベチャッとしそうで心配でしたが、実際に食べると確かに表面はややしんなりしているものの、へなへなで元気がないというよりはしなやかな張りが生まれたという感じで、「ジャクッ」「バリバリ」「シャキッ」とした瑞々しい食感にハマりました。
イメージ的には「アルデンテに茹でたコシのあるレタス」みたいな歯ざわりで、くったりしたおかげでソースとよくなじみ、普通のサラダよりも一体感が生まれています。
一方ソースは、カニ缶の奥深い旨味がたっぷり詰まった汁で程よく割られたせいか、思ったよりもマヨマヨしておらず、比較的あっさりしたコクが特徴的。
一口で言うなら「潮の香りがするカニ入り和風シーザーサラダ」ともいうべき味付けで、カニのまろやかなエキスとマヨネーズが組み合わさる事によって生まれる優しいクリーミーさが、さっぱりフレッシュなレタスと抜群に合っていました。
ラー油の後引く香ばしい辛さと、黒胡椒のドライでキレのある辛さが組み合わさって、独特の複雑なピリ辛加減になっているのが癖になります。
二番目は、“カニと豆腐のレンジ蒸し”
いただきまーすっ!
さて、感想はといいますと…思ったよりも濃い美味しさで驚き!カニ鍋で、ぐずぐずになるまで放置した豆腐の味に少し似てます。
木綿豆腐を使ったのですが、適度に水分を抜いて空いた隙間へカニ缶の汁がいっぱい染み込んだせいか、まるで絹漉し豆腐で作った湯豆腐のように滑らかで淡い口当たりに仕上がっており、うっとりします。
熱々だと茶碗蒸しを彷彿とさせる儚いふるふる感が美味で、如何にも料亭風の上品な一品という印象ですが、冷めてくると大豆の甘味が一段と際立ち、木綿豆腐本来のしっかりした食感が蘇ってくる為、面白いな~と感じました。
ベニズワイガニの繊細なようで力強い旨味出汁を、淡泊な豆腐が余す所なく受け止めて引き立てているのがいい感じで、品のいい薄塩味なのがかえっていいバランスになっていてよかったです。
時々、長ネギのシャリシャリした食感が口の中を刺激するおかげで、カニと豆腐のふんわりホロリとした柔らかさがさらに際立つのがナイスでした。
例えるとするなら「カニの淡雪蒸し豆腐」という感じで、しょうがのキリリとした香気が後口を引き締めるのが小気味良いです。
ある程度食べ薦めると、お皿の底におつゆが少し溜まってくるのですが、それがまたカニ風味の澄まし汁っぽくて美味でした。
カニ缶で作ると値段に見合った高級感のある味になりますが、こっそりカニカマで作っちゃってもまた違った感じでおいしく出来ますので、便利なレシピです;。
どちらも簡単に作れて日本酒にピッタリですので、いろんな方にお勧めしたいです。
P.S.
実を言いますとこの記事、数日前の下書き作業中に誤って公開状態にした上、二時間ほど気付かず「画像貼り付け→セーブ→文章の書き込み→セーブ→感想の書き込み→セーブ(ゲームと同じく、こまめにセーブするタイプです…)」というリアルタイム更新を途中までしてしまい、深く反省した記事でもありますorz(←なので、本当は二月中旬にアップする予定だったのを、急遽直近の日付でアップする事にしました)。
毎度毎度、同じような失敗をして一部の方々をご困惑させてしまった事、深くお詫び申し上げます。
そして、ほんの一瞬の公開だったにも関わらず見つけて一拍手して下さった名無し様…驚きつつも少し感動しました、ありがとうございます;。
●出典)『風流つまみ道場』 ラズウェル細木/芳文社
※この記事も含め、当ブログの再現料理記事は全てこちらの「再現料理のまとめリンク」に載せています。
※レシピの分量や詳しい内容は、以前こちらでご説明した通り完全非公開に致しております。
『まかない君』の“オニオンチキンラーメン”を再現!
- Mon
- 18:00
- 再現料理
不思議な事に、少しだけ長く煮てもそこまでフニャフニャにならず、むしろ生麺っぽさが増すような感じすらしており、癖になってます(←特に、マルちゃん正麺やラ王袋麺みたいな「まるで生麺!」系インスタントを、さらに生麺っぽくさせるのに絶大な効果を発揮します)。
どうも、どん兵衛の袋そばにとろろ昆布・刻みネギ・一味唐辛子を合わせるのにハマっている当管理人・あんこです。
本日再現する漫画料理は、『まかない君』にて浩平君が弥生ちゃんと二人でお留守番している時に作った“オニオンチキンラーメン”です!
それは、弥生ちゃん達との同居生活もそろそろ三年目へ突入する頃のお話。
ある休日、佳乃さんが所用で一人外出する事になった為、浩平君はまたしても弥生ちゃんと二人きりでお留守する事になります。
とはいえ、佳乃さんは夕方までには帰宅して晩ご飯は家で食べると明言していますので、この時みたいな一触即発の危うい状態になる可能性はかなり低かったのですが、それでも佳乃さんは浩平君のほのかな恋心に勘付いているせいか、半ば冗談で「弥生と二人っきりだからってけしからんことしちゃダメだよ」と際どいジェスチャーをしながら釘を刺してました;。
正直、浩平君は弥生ちゃんへの複雑な想いを無理に成就させる気はないみたいで、余程の急展開がない限りはプラトニックな片思いのまま終わらせようとしている節がある為、仮にまた夜中に二人きりという事態になったとしても大丈夫だと思うんだけどな~…と苦笑したのを覚えています(←事実、浩平君は少しむうっとしながら「言われなくてもしないよ!」と即座に断言してました;)。
凜さんといる時の浩平君は「年上のしっかりしたお姉さんを頼りにしている弟」という感じですが、佳乃さんといると「年の近いお茶目な姉とじゃれあっている弟」という印象で、同じようで全く違う姉弟関係の描き分けに感心します。
幸い、鈍い弥生ちゃんはそんなお二人のやり取りを露とも知らず、「浩平お昼なに!?」と食い気を優先するあまりに突然部屋へ入ったり、「ノックくらいしてよ」「はい、ノックノック」(←ふざけて頭を軽くコンコンしてます;)「…じゃお昼は抜きってことで」「ごめん!謝るからお昼作って!いたいのいたいのとんでけー」という漫才みたいなやり取りをしたりと、大学生同士の従姉妹というよりはまるで高校生のお兄ちゃんと小学生の妹というイメージで、改めて「あの日は本当に奇跡が重なったんだな…」としみじみ思いました;。
それにしても、好きな女の子と自分の部屋で二人きり&至近距離で頭をナデナデされるというかなりおいしい展開なのに、照れ笑いしつつも軽く流してお昼の話が出来る浩平君の鋼の自制心には、いつもながら感心させられます;(←心の防御力を計測したら、少なくとも呂布くらいのレベルに到達してそうです)。
その後、浩平君が賞味期限が過ぎる直前のチキンラーメンで作ったお昼ご飯が、この“オニオンチキンラーメン”です!
作り方はすごくお手軽で、オリーブオイルをひいて熱した小鍋へ玉ネギ・ベーコン・トマトジュース・お水を入れて炒め煮し、沸騰したらチキンラーメンを入れて袋に書いてある時間通り火を通して器へ移し、最後にとろけるスライスチーズと冷凍パセリを乗せたら出来上がりです。
ポイントは、玉ネギは色づくまでややしっかりめに炒めることと、トマトジュースとお水の割合は単行本に載っている通りに調節することの二つで、簡単に見えて所々に細かいこだわりが見えるのが如何にも浩平君らしいな~と感じました。
初めは「トマトジュースでインスタントラーメンを…!」とちょっと衝撃でしたが、浩平君曰く「缶詰のトマトが液体になったものと考えれば料理に使ってもおかしくはないよね」との事で、妙に納得したものです。
作者の西川魯介先生がおっしゃるには「おいしいトマトシチューのような味わいです」だそうで、トマトジュース抜きで作るとかえって少ししつこい味になったと作中で表現されていました。
また、このレシピはチキンラーメンではなくサッポロ一番塩味で作るとまた違った美味しさになるとも書かれており、好奇心を刺激されたのを覚えています(←何でも、チキンラーメンはトマトジュースと合わせると香りが薄まるのに対し、サッポロ一番塩味はスープの個性がきちんと残るらしいです)。
調べた所、トマトに含まれる強烈な旨味成分・グルタミン酸は、インスタントラーメンのスープに含まれるイノシン酸と非常に相性がよく、合わせると旨味がさらに倍増するとの事でしたので、見た目の奇抜さに反し、とても理にかなった組み合わせで面白いな~と思ったものです。
完成後、実食した弥生ちゃんは「おいひー!」「濃厚なのにさっぱりしてるのはトマトのせいかなぁ」と喜びながら食べており、浩平君はその横顔を微笑みながら眺めていました(←料理を美味しいと言ってもらえるのは誰からでも嬉しいものですが、浩平君にとって一番嬉しいのは、やはり弥生ちゃんなんだな~というのが伝わってきます^^)。
その後、三時になった時弥生ちゃんは「おやつはあたしが作るよ!」「クラッカーのマシュマロサンド!」と言って台所に立つのですが、念の為浩平君が後ろで見守っていると、案の定フォークに刺して炙っていたマシュマロをうっかり炎上させてしまい、結局浩平君が代わりに作る事に;。
しかし、浩平君がマシュマロを炙ってクラッカーで挟む→お皿へ置く→弥生ちゃんが食べるというのが何回か続いた為おやつは一向に出来上がらず、遂に浩平君は「こら!作るそばから食べてったらいつまでたってもお茶出来ないじゃないかっ!」と怒っていました;(←浩平君は「おかげで餌を与える親鳥気分を満喫したよ」と言ってましたが、傍から見ているとわんこマシュマロサンドという感じで、弥生ちゃんがひょいパクひょいパクと食べるごとに内心「はいどんどん!」「はいじゃんじゃん!」とかけ声をかけながら読んでました;)。
しかし、最終的には弥生ちゃんからの「食べさせてあげるから、あーんしな」という甘い誘いにあらがえず(←この時やあの時と同じく、魅惑的なシチュエーション。もっとも、弥生ちゃんは一切計算せず素で行っている為、末恐ろしいな~と感じます;)、結局浩平君までクラッカーのマシュマロサンドをあ~んとつまみ食いさせてもらい、思わずテレッとしていました。
…が、その一部始終はいつの間にか戻って来ていた佳乃さんにはっきりと目撃されおり、背後から「見ーたーぞー(ニヤニヤ)」と突っ込まれた浩平君は、気の毒な事に派手にせき込みます;。
恐らく、三年目もこんな風にほのぼのとした空気で同居生活は続いて行くんだろうな~と思った回でした。
チキンラーメンとペットボトル入りのトマトジュースが近所のスーパーで安く売られていたので、再現する事にしました。
作中には詳細なレシピがきっちり記載されていますので、早速その通りに作ってみようと思います!
という事で、レッツ再現調理!
まずは、スープ作り。オリーブオイルをひいて熱した小鍋へスライスした玉ネギを入れ、ほのかなきつね色に色づいてくるまで炒めます。
段々しんなりしてきたら、拍子切りにしたベーコンを加えてこんがりするまでよく炒め合わせ、そこへトマトジュースとお水を投入してコトコト煮ます(←詳しい割合は単行本に載ってます)。
やがて沸騰してきたら、チキンラーメンを入れて袋に書いてある時間通り煮込み、麺を粉々にしないよう気を付けつつ、徐々に優しく麺をほぐしていきます。
時間が経って煮えたら火からおろして具ごとラーメン丼へ移し、その上へすかさずとろけるスライスチーズを乗せてとろけさせます。
とろけるチーズを乗せたらすぐに刻んだ冷凍パセリを散らし、そのまま急いでテーブルへ運べば“オニオンチキンラーメン”の完成です!
チキンラーメンのスープから漂うあの濃いチキンの香りよりも、トマトスープの香りの方が圧倒的に強く、出来た時は驚きました;。
とはいえ、チーズのとろけ具合もツルツルそうな麺も見るからにおいしそうでしたので、これは味が楽しみです!
それでは、麺がのびない内にいざ実食!
いっただっきまーす!
さて、感想はと言いますと…水で作ったチキンラーメンとはガラッと印象が変わっていてびっくり!インスタント感があまりしない麺料理です!
一口食べて思ったのは、「トマト味のラーメンというより、トマトソースをかけた極細で柔らかめのスープ・パスタみたい」という、何とも頼りない感想;。
ただ、ベーコンのこってりしたコク、チキンスープのしっかりした旨味、トマトジュースの甘酸っぱい出汁が効いたジャンクな甘辛トマト味はこのペラペラの麺にぴったりで、例えるとするなら「チキンナポリタン」というイメージでした(←ヤワヤワなのに、どことなくコシがある麺という点でもそっくりです)。
溶ける直前までトロトロにとろけたチーズが、まるでしゃぶもちのようにべっとりと麺に絡んで一体化し、ちょうどいいこってりしたアクセントをプラスしているのがいい感じで、それがアマトリチャーナの味付けにやや似ているのもあり、さらにパスタっぽさが強調されていました。
長めに炒めた玉ネギから出た奥深い甘味と、香ばしい風味がスープ全体をより濃厚にさせており、麺ではなくパンを入れて食べたら「トマト仕立てのオニオングラタンスープ」ともいうべき一品になりそうです。
ただ、弥生ちゃんの言う通り、トマトのさっぱりした酸味のせいか後口は結構あっさりしていて、見た目によらず軽い感覚で食べられました。
意外にも、チキンラーメンの濃いチキン味と香りはトマトスープの影に完全に隠れ、スープの材料の一つという感じにしかなっていないのになかなか衝撃を受けました。
チキンラーメンとトマトスープの相性の良さに驚き、他にもいろいろ試してみたくなりました。
今度は、サッポロ一番塩ラーメンでも試してみようと思います!
●出典)『まかない君』 西川魯介/白泉社
※この記事も含め、当ブログの再現料理記事は全てこちらの「再現料理のまとめリンク」に載せています。
※レシピの分量や詳しい内容は、以前こちらでご説明した通り完全非公開に致しております。
『華中華』の“麻婆チャーハン&麻婆餡のぶっかけチャーハン”を再現!
- Fri
- 18:00
- 再現料理
しかし、二十代前半の時に当時の友人と久々に行ってみた所、昔の記憶よりも会場は大分狭く、屋台も見慣れた食べ物ばかりで、そこまで煌びやかでも人出が多い訳でもなく、改めて「思い出補正ってすごいな~;」と苦笑いし合ったのを覚えています(←母に聞いた所、「昔からそんな感じだったよ~」との事でしたので、祭りが段々変化したという訳でもなさそうです。残念ながら、数年前に祭自体が廃止となった為、追体験すらもできなくなりましたが…orz)。
とはいえ、祭りへの憧憬は未だ健在で、色んな物を見知った今となってはあの高揚感はもう望むべくもないと知りつつも、「祭り」と聞いては胸がざわつく今日この頃です。
どうも、屋台で買って食べるペソペソしたやきそばやヘナッとしたお好み焼きが妙に好きな当管理人・あんこです。
本日再現する漫画料理は、『華中華』にてハナちゃんが「横浜中華街チャーハン対決」に出場する際に会場で売り出した“麻婆チャーハン&麻婆餡のぶっかけチャーハン”です!
前回、楊貴妃さんを通じて様々なチャーハンを知ったハナちゃんは「凄いですね」と感心しますが、周囲が強豪揃いなのを改めて思い知らされたせいか、対決用の新チャーハンのアイディアが思いつかなくなります。
ハナちゃんが言うには、「顔を見知っている上海亭のお客さんの為」なら自然と毎日新しいチャーハンを思いつくそうなのですが、「対決で勝つ為」という漠然とした目的意識だと全然アイディアが浮かばないらしく、結局対決まで一週間をきっても新チャーハンを決められずにいました(←誰かの為なら全力を尽くせるものの、「有名になりたい!」「高評価されたい!」という欲求はイマイチない性格が、ここにきて災いとなった感じです;)。
その為、つい気弱になったハナちゃんは、偶然道端で会った島野さんから「横浜中華街チャーハン対決」に出すチャーハンについて聞かれた際、「あ、いえ…それがまだ決めかねていて悩んでいます…もし良ければ…」とアドバイスをもらおうとするのですが、島野さんは「ダメよ、お華!いくら元弟子でも、今回はライバル同士…相談には乗れないわ」とはっきり断ります。
そして、落ち込むハナちゃんに「でも、一つだけ言っておくわ…。ちょっとでも迷いや不安を持ってこしらえた料理は味に狂いが生まれ、お客様に満足していただけない」「一度決めたらそれに一点集中よ、お華!」とさりげなく助言し、立ち去っていました(←一度は拒否しながら、必要最低限のヒントを残していく所に島野さんの人の好さが伝わります;)。
一見冷たく見えるかもしれませんが、これまで師匠として接してきた日々で「この子は最終的には一人で大丈夫」だと見極めて信用しているのが前後の会話から読み取れますし、何より壁が高ければ高い程一人で乗り越えた時に得る経験値は計り知れないという事を実感してきている分、あえて突き放さざるをえないんだろうな~という事情も透けてみえましたので、そういう程よい距離感を感じられるこのシーンは、結構好きだったりします。
幸い、そういう島野さんの気持ちはハナちゃんにおのずと伝わっていたようでかえってはっぱをかけられ、最終的には「世界で一番大切で愛している夫・康彦さんに喜んでもらえるチャーハンを作ろう」と、食べる人の顔を明確に意識する事で新チャーハンの構想を固めるのに成功していました。
当初は意外でしたが、ハナちゃんとしては「料理人のわたしにとって最強の武器の一つ」である良質な野菜をいつも提供してくれる康彦さんへの感謝の気持ちを、晴れ舞台で正式に表明したかったんだろうな~と後々考え、納得したものです。
そこで、ハナちゃんが上海亭のおじいさんたちと色々相談しつつ完成させた新チャーハンが、この“麻婆チャーハン&麻婆餡のぶっかけチャーハン”です!
作り方は簡単で、しょうがの香味油・豆板醤・鶏ひき肉・豚ひき肉・豆鼓・甜麺醤・長ネギ・花山椒を炒め合わせてベースとなる肉餡を作り、“麻婆チャーハン”は基本チャーハンへ肉餡を混ぜ合わせ、“麻婆餡のぶっかけチャーハン”は基本チャーハンの上へ水溶き片栗粉でとろみをつけた肉餡をかけたら出来上がりです。
ポイントは、豚ひき肉は背脂多めのタイプ・鶏ひき肉は胸肉をミンチにしたタイプを使うこと、最初に香味油へ豆板醤をしっかりなじませて風味を際立てること、長ネギや花山椒は肉餡に甜麺醤の味がきっちり染みて辛味油が浮いてからにすることの三つで、ぱっと見はよくある麻婆餡ですが、細部をよく観察するとハナちゃんらしい工夫が見えるのが印象的でした。
通常、麻婆豆腐の肉餡はにんにくやにんにくの芽を足し、醤油も加えてガッツリ系の味付けにするレシピが多いのですが、どうやらハナちゃんは仕事中の方でも匂いを気にせず軽く食べて頂けるような配合にしたみたいで、康彦さんの為にと言いつつもちゃんとお客さんの事も考えて念頭にレシピ作りしているのに、「いい子だな~」とほっこりしました。
ハナちゃん曰く、「康彦さんはお肉が好きで、チャーハンにお肉が入ってると喜んでくれる」「47店もがひしめき合う会場ですから、他を圧倒するには匂いも大切だと思い…花山椒、甜麺醤、豆板醤が生きた麻婆チャーハンを考えました」という理由で麻婆味を選んだと語っており、おじいさんも「商売の経験から言えば、今みたいな不景気時は、ボリュームがあってお得感のある物に皆、惹かれるもんだ」と賛成していました。
確かに、多くの屋台があって目移りする中、一番決め手になるのは胃袋へ直接訴えかけてくる匂いですので、ハナちゃんの狙いは的確だと初見時は感心したものです(←代表的な例を挙げるとするなら、焼きそば・焼きトウモロコシ・イカ焼きあたりでしょうか。…が、実は以前ハナちゃんは康彦さんにあるチャーハンをプレゼントする際に辛い物好きだと聞いていましたので、もしかしたらそれも影響したのかもしれません;)。
本当は、豚ひき肉に鶏ひき肉をブレンドしたのは、100%国産物のお肉を使いつつ大会規定の予算内に収める為の苦肉の策だったのですが、実際に試食してみると豚の背脂がさっぱりめの鶏ひき肉になじんでしっくりくる美味しさだったようで、好評でした(←最高の野菜を育てている康彦さんも素晴らしいですが、毎回ハナちゃんの為に長年の経験とツテを駆使して品質のいい格安の食材を用意するおじいさんとおばあさんも、影の功労者だと思います)。
あと、実を言いますと、ハナちゃんは当初“麻婆チャーハン”一本で勝負をかけるつもりだったのですが、後々起こったあるハプニングに対処しようとして急遽考え出したのが、“麻婆餡のぶっかけチャーハン”。
こちらも、とっさに思い付いた割には「澱粉のとろみが熱さを保ってくれて、寒風でも簡単には冷めないね」「体が温まる」と喜ばれていました。
島野さんが見抜いていた通り、どうやらハナちゃんにとっては逆境も自らをさらに磨き上げる格好の修行でしかなかったらしく、安心して眺める事が出来たのを覚えています。
しかし、「横浜中華街チャーハン対決」にはハナちゃん率いる上海亭だけではなく、こちらでご紹介した通り凄腕の島野さんがいる満点大飯店、ふわふわ卵が売りの大丸菜館、なりふり構わずの銀河楼飯店、そして変装した竹三郎さんが潜む凱旋門酒家など数多くの名店が参加している為、さすがのハナちゃんといえど楽に勝てそうな雰囲気は微塵もありません。
果たして、「横浜中華街チャーハン対決」は今後どのような展開を迎えていくのか…続きは、各店のチャーハンを一つずつ再現しながらご紹介していこうと思います!
麻婆豆腐をかけたチャーハンは食べた事がありますが、とろみのない麻婆餡を混ぜ込んだチャーハンは未体験でしたので再現する事にしました。
作中には分量つきの詳細なレシピがきっちり記載されていますので、早速その通りに作ってみようと思います!
という事で、レッツ再現調理!
まずは、ベースの肉餡作り。油をひいて弱火で熱したフライパン(又は中華鍋)へしょうがのスライスを入れてじっくり温め、香味油を作ります(←香りが十分ついてきたら、途中しょうがを取り出します。このしょうがはそのまま食べると、チップみたいでおいしいです)。
この香味油入りのフライパンへ豆板醤を加えてしっかりなじませ、鶏胸肉のひき肉と、背脂多めの豚ひき肉を投入し、木べらで細かくつぶしながら強火で炒め合わせます。
ひき肉が完全に合わさり、色も白っぽく変わってパラパラしてきたら、包丁で細かく刻んだ豆鼓と甜麺醤を加えて混ぜ、全体に調味料をしっかり染み込ませます。
※表面に辛味油が浮いてきて、ひき肉が食欲をそそる濃い茶色になってきたら、充分味が染みていると思います。
味見をして甜麺醤と豆鼓の味が染みきっているのを確認したら、刻んだ長ネギと少し砕いた花山椒をふりかけ、ざっと混ぜ合わせます。
これで、ベースとなる肉餡は準備完了です!
あとは、この肉餡の半分を基本チャーハンに加えて炒め合わせたり、もう半分を小鍋に移して煮込んだ後水溶き片栗粉を回しかけてとろみをつけて麻婆餡を作ったりと、仕上げに向けてそれぞれ用意します。
基本チャーハンに肉餡を混ぜた方はお皿へ丸く盛り付け、麻婆餡にしたてた方は既に丸く盛り付けておいた基本チャーハンの上にとろみのついた餡をたっぷりかけて刻み長ネギを飾れば“麻婆チャーハン&麻婆餡のぶっかけチャーハン”の完成です!
双方共に同じ肉餡とチャーハンを使っていますが、意外にも仕上げが違うだけで見た目がかなり異なっており、ちょっと驚きました。
ただ、味の方はどれだけ変わるのか全く予想がつかない為、「果たして同じなのか…それとも違ってくるのか…」とワクワクが止まりません!
それでは、熱々の内にいざ実食!
いっただっきま~す!
さて、感想はといいますと…どちらも本格的な味わいで美味!驚くべき事に、とろみがあるのとないのとでは味がそこそこ違います!
豆板醤のビリッとくる強い辛さと、しょうがの清涼な風味が存分に溶け込んだ辛味油は、平凡な基本チャーハンを一瞬にしてパンチの効いた華のある美味しさへと変化させており、食べるごとに力が湧いてきます。
味付けはほぼ想像通り「豆腐抜きの激辛爽快な四川麻婆豆腐味」「中華風のこってり甘辛肉味噌味」というイメージだったんですが、豆鼓の熟成された香りや塩気、そして花山椒の痺れるような刺激や鮮烈な芳香で深みがぐっと増していた為、がっつり系な割には繊細な仕上がりだな~と感じました。
にんにくと醤油が入っていない分、香辛料がより素直に引き立っている感じで、後味すっきりなのがナイスです。
また、柔らかい口当たりで肉汁たっぷりジューシーな豚ひき肉と、結構しっかりした噛み応えでさっぱりした旨味が特徴的な鶏ひき肉の組み合わせは確かに相性抜群で、油分のバランスが取れている事といい、食感がバラバラなのがかえって飽きない事といい、いい組み合わせだと感じました。
麻婆チャーハンの方はご飯全体にひき肉が混ざって麻婆風のタレが行き渡り、フライパンで香ばしく炒めた為、どこを食べても濃いめでガツンとくる「中華風ビビンバ」と例えたくなる甘辛焼き飯という印象。
しかし、餡かけチャーハンの方は基本チャーハンとの混ざり具合によって味がランダムに変わったり、トロリと滑らかな舌触りの餡がご飯に絡んで喉を滑り落ちていくまでの過程が心地よく、不思議と辛味がマイルドであっさり系な後口になっていたのが特徴的でした。
正直、両方とも似たような味だと予想していただけに、この相違は嬉しい誤算でした。
どちらもおいしいですが、寒風吹きすさぶ屋外で食べるのはやはり“麻婆餡のぶっかけチャーハン”が向いているように思いますので、ハナちゃんの狙いは正しかったな~と感じました。
P.S.
sunaさん、前回はご指摘下さりありがとうございます。
恥ずかしながら、ナツメヤシと棗(ナツメ)の違いは全くの不勉強であった為;、その違いについて大変興味深く拝見させて頂きました。
今回、使用した干しナツメはユウキ食品の薬膳食品シリーズの紅棗だったのですが、ネットで調べた所こちらで「ナツメ」「大棗」「黒棗」という表記に並んで「紅棗」という表記が並んでいた事や、「薬膳食品と書かれているなら大丈夫(…多分)!」という大雑把な思い込みで使用しており、間違いである可能性について考えもしませんでしたorz。
不確かな知識で誤った再現をしてしまい、誠に申し訳ございません。
この場で改めてお詫びすると同時に、ご親切に教えて頂いた事に御礼を申し上げます。
●出典)『華中華』17巻 原作:西ゆうじ 作画:ひきの真二/小学館
『華中華』18巻 原作:西ゆうじ 作画:ひきの真二/小学館
※この記事も含め、当ブログの再現料理記事は全てこちらの「再現料理のまとめリンク」に載せています。
※レシピの分量や詳しい内容は、以前こちらでご説明した通り完全非公開に致しております。
『薬膳仙女マダム明』の“鳥の甘酒蒸し”を再現!
- Mon
- 18:00
- 再現料理
どうやら、軽く燻製にした鶏手羽を素揚げにしただけみたいなんですが、まるでスモークチーズみたいな味がする香ばしい皮をばりっと噛み破ると、何とも言えない塩気が染みた肉汁がブシュッと噴き出てとても美味で(←危うく服に飛びちりそうになりましたので、汚れていい服じゃないときつそうです;)、これはビールに合いそう…と興奮しました。
残念ながらお持ち帰りは出来ないとの事でしたので、一度夜に立ち寄ってみたいな~と考えています。
どうも、鶏手羽の軟骨はどこまで食べるのが礼儀なのかいつも悩むものの、結局ゴリゴリした部分まで食べてしまう当管理人・あんこです。
本日再現する漫画料理は、『薬膳仙女マダム明』にてマダム明がある女性の為にレシピを教えていた“鳥の甘酒蒸し”です!
それは、まだ留華ちゃんが入店する前のこと。
<桃源楼>の常連の一人である会社社長・太田和雄さんは、いつもならプライベートでこっそり一人で来店する方だったのですが、ある日珍しく二人連れで訪れます。
お相手は、感じがよくて誠実そうな美人秘書・田所美知子さんで、表向きは「いつも良くやってくれるので助かっている」ので、そのお礼をする為の来店だったんですが、マダム明は一目見て「お好きなんですね、あの方を」と見抜き、田所さんが化粧直しをしにお手洗いへ行っている隙に、太田さんの恋の悩みを聞きます(←マダム明は、自分に向けられる恋心は少女漫画の主人公並に鈍感で全く気がつかないのですが;、他人に向けられている恋心は鋭い勘と洞察力でいち早く察知するという特技があります)。
会社を興してからはずっと真面目に働き続け、10年前には奥さんを亡くし、お子さん達が全員巣立ってくのを見届けていく内に、いつの間にか60才を超えていたそうなのですが、そんな矢先に献身的にサポートしてくれた田所さんに恋心を抱いているのに気がついたとの事。
とはいえ、太田さんがいうには、「わたしはもう年だよ…あの田所くんはまだ29才だ」「こんな年よりが愛をうちあけても田所くんは迷惑なだけだ」「だいいちわたしは社長だから、どう気配りしても立場を利用してせまっていると思われるに違いない」「そういうのは田所くんの気持ちの負担になるから何も言えないんだよ」という理由で躊躇していると語っており、マダム明は何とも言えずに静かにその話を聞きます(←本気で相談しているというより、どれだけ無理そうか誰かに聞いてもらう事で諦める気持ちを固めようとしている感じなのが切なかったです…)。
しかし、マダム明はお手洗いから戻ってきた田所さんを見た瞬間、この恋はもしかしたらうまくいくかもしれない…と思い、微笑を浮かべます。
それは、田所さんの化粧直しが「食事の際に落ちた口紅を直す」というだけの「通常マナー」を超え、まるで好きな人と食事している時のような、「この人の前できれいに装いたい」という気持ちが全身からにじみ出ているような、輝く仕上がりになっていた為(←口紅や髪を整えるだけではなく、お化粧を全体的に付け足し、ブラウスのネクタイも華やかにむすび直したりとかなり力が入っていたようですので、確かにこれは脈があるかも…と当管理人も思いました)。
正直、お化粧直しは毎回丁寧にされるタイプの方もいらっしゃいますので、確実な見分け方ではないのが辛い所ですが;、それでも「会社での付き合い」と「好きな人」とではやはりどこか気合が違いますので、マダム明の観察眼に感心したものです。
それから数日後、今度は田所さんが一人で<桃源楼>へ来店し、「疲労回復」「体力増強」に効果がある食事を注文し、真剣な表情で一口一口味わいながら食べ始めます(←<桃源楼>では「○○に効くものを」と言えば、自動的に最適な食事が出てくるシステムですので便利だな~と思います。自分で調べてから注文するのも手ですが、毎回だと面倒なので長続きしないのが難点です;)。
その様子を見たマダム明は、「ご自宅でも薬膳料理を食べたいのかもしれない」と思って微笑ましく感じ、「何でもきいてくださいませ」「作り方をお教えしますので、メモを取ってください」と話しかけます。
当初は「…そんな、出していただいたものをメモにとるなんて失礼なこと…」と遠慮していた田所さんでしたが、マダム明としては「お客様の健康のお役にたつためなら本当は毎食食べていただきたいんですけど、そうもいきませんからどうぞ覚えて下さって、家でも召し上がってください」「日本のお客様に召し上がっていただくには、日本で手に入る素材を使うことが大切だと思っています。その人が生まれて暮らしている土地が産み出してくれたものが、その人の体を支えてくれるはずですから」という考えだった為、気にせずメモにしてくださいと言って様々なレシピを教えます(←儲けるのが目的ではなく、日本に薬膳を広めるのがお店の真の目的だという事と、「地産地消」って色んな意味で理に適っているんだな~という事を、改めて実感させられるシーンです)。
その際、マダム明が「これならとても簡単にできます」とお勧めしてたのが、この“鳥の甘酒蒸し”です!
作り方は本当に簡単で、小型の土鍋へ甘酒・塩・しょうが・鶏手羽肉・干しナツメの実を入れてフタをし、土鍋がすっぽり収まるサイズの大きい鍋へ入れてその回りに水を張ってからフタをし、間接的に蒸し煮にしたら出来上がりです。
ポイントは、干しナツメの実は必ず水で戻してから入れることと、強火で沸騰させた後は弱めの中火にしてゆっくり火を通すことの二つで、初めて読んだ時は「材料を入れて火にかけるだけで出来るなんて…!」と感動したのを覚えています;。
マダム明曰く、「体があたたまり血行がよくなり、鳥の皮や骨の成分が老化防止や骨・肌の強化になります」との事で、若々しさを保つのにいい一品だと説明していました。
麹が体や食材にもたらす絶大な効果は最近になってようやく広まってきましたが、『薬膳仙女マダム明』の原作者である楊愛蓮先生は1998年当時に既にその素晴らしさに気づいていたらしく、その先見性には舌を巻いたものです。
実を言いますと、田所さんは自分の健康の為ではなく、太田さんが少しでも健康でいられるよう<桃源楼>の料理を研究しに来たみたいで、マダム明に「社長に召し上がっていただきたくて…秘書の身ですから、ご自宅で召し上がるものにまで口出しはできません」「せめて会社でおひるを召し上がる時とか、おやつの時間などに社長のお体に良い物を…と思って」と、真摯に話します(←ただ、それだとこの“鳥の甘酒蒸し”を太田さんに用意するのは難しそうだな~と、他人事ながら心配してしまいました。土鍋ごと持って行くのも、給湯室で作るのも難しそうですし…;)。
そこで、ますます確信を深めたマダム明は「社長のことをお好きでいらっしゃるのですね」と直球に聞くのですが、案の定田所さんは「あ…わたしは秘書として社長のお体が心配なだけです。尊敬してますから、あの…」と顔を真っ赤にしており、マダム明は「まあ…口とはうらはらになんて正直な顔の色でしょう」と人の悪いニコニコ顔をしていました;。
おかげで、恋のキューピットとして一仕事する気になったマダム明は、その後「もしNOと言われたら、それ以降気まずくなっていくかも…それならいっそ、今のままならとりあえず傍にいてくれるわけだし」「でもわたしはその…もしOKされてもその…あっちの方が」と消極的な太田さんに毎日すれば効果が出る簡単な体操を教えたり(←単行本に詳しく載っていますが、アダルト度ゼロですので人前でも気軽に出来ます;)、老化防止の菊酒をプレゼントしたり、お二人がいい雰囲気で会えるようセッティングしたり、最終的にはもじもじして煮え切らないお二人に「じゃあ、お二人とも相手がお嫌なんですね」と言って「いいえ!」と言い合うよう仕向けたりし;、何とかカップル成立させていました。
マダム明によりますと、「男女の仲は<正直に素直に>が一番ですわ」だそうで、余程こじれない限りはそれが何よりの改善案だと話しており、単純なようでなかなか難しいな~と苦笑しました;(←意外にもマダム明は精神的な駆け引きはあまり好きではないみたいで、好感が持てます)。
一向に冷え性がなおらず、肌もパサパサになってきたので再現する事にしました;。
作中には分量つきの詳細なレシピがきっちり記載されていますので、早速その通りに作ってみようと思います!
という事で、レッツ再現調理!
まずは、煮込み作業。小型の土鍋へ、甘酒、ブツ切りにしたしょうが、鶏手羽肉、水で戻した後種を取った干しナツメの実を投入し、塩で少しだけ加えて甘みを引きたてます。
この土鍋を、フタ付きの大鍋の中央へ置き、その周りに水を張ってフタをし、強火にかけます(←土鍋よりも大分大きいサイズのお鍋じゃないと、土鍋が傷つきますので要注意です)。
お鍋が沸騰し出したら中火にしてじっくり火を通し、鶏手羽肉に熱が通るまで時間をかけて間接的に蒸していきます。
やがて、鶏手羽肉の中にまでしっかり火が入っているのを確認したら土鍋を取り出し、火傷しないよう鍋底についた水滴を拭き取ってテーブルへ運べば“鳥の甘酒蒸し”の完成です!
表面に鶏の骨や皮から出た薄い琥珀色のエキスが膜を張り、下に乳白色の甘酒が沈んでいるのがきれいで、効能だけではなく見た目も嬉しいおやつだな~と感じました。
今までに食べた事がない組み合わせなのでドキドキしますが、ナツメと甘酒が入り混じった甘やかな香りが素晴らしいので、これはいけそう…とワクワクも止まりません。
それでは、別器へ取り分けて実食!
いっただっきま~すっ!
さて、感想はといいますと…おかずというより完全におやつな一品で美味し!甘い味付けなのに鶏と合うとは、びっくりです!
最初は「甘い手羽先…」と少し怖かったのですが、実際に食べると「塩味控え目で醤油抜きの甘味が強めな照り煮風」というイメージで、そこまで違和感がありません(←手羽先は鶏の部位の中でも淡泊な旨味と柔らかな肉質が特徴的な所ですので、もしかしたらそれで反発しなかったのかもしれません)。
二重の鍋の中でゆっくり優しく蒸したおかげで、今まで食べたどの手羽先よりもしっとりジューシーでプルプルに潤った肉質なのが素晴らしく、それがトロトロの甘酒とぴったりなじんでいてうっとりしました。
ナツメのフルーティな風味、しょうがのすっきり清々しい香気、そして鶏の骨の滋味溢れるエキスが溶け込んだ甘酒は、濃密かつ素朴な甘さと共に薬効がじんわり染み渡る奥深い美味しさで、スープ風に生まれ変わったというよりは、「中華風薬膳甘酒」ともいうべき全く新しい飲み物へ進化したような感じです。
鶏皮から出た油脂がまんべんなく混ざっているせいか、普通の甘酒よりもトロンと舌に纏わりつくようななまめかしい舌触りで、それでいてべっとり残らずサラッとした口溶けなのが官能的で、まさに大人のデザートといった趣でした。
ナツメは見た目によらず酸味が控えめで、本体の味わいは乾燥させて戻した柿か杏っぽいのですが、エキスは蜂蜜そっくりのねっとりした甘味で、それが甘酒に蜂蜜を煮溶かしたような複雑な甘さをプラスしていてよかったです。
土鍋に入っているので冷めるのが遅くて、最後までじんわり温かく、寒い日に飲むと体がほかほかに温まります。
また、不思議にもナツメは餡子にも味が似ている感じで、そのせいかちょっと和風にも思えたのが面白かったです。
●出典)『薬膳仙女マダム明』 原作:楊愛蓮 作画:花小路小町/メディアファクトリー
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※レシピの分量や詳しい内容は、以前こちらでご説明した通り完全非公開に致しております。
『作って食べよう!全国有名駅弁』の“摩周の豚丼”を再現!
- Thu
- 18:00
- 再現料理
今売られている焼豚丼もおいしいのはおいしいのですが、牛肉にはないあっさりした旨味と、柔らかい口当たりが美味な煮豚丼は個人的に好みでしたので、復活次第また食べに行きたいな~と考えています。
どうも、連日流れている牛すき鍋のCMに影響されて夕食をすき焼きにした事は一度や二度ではない当管理人・あんこです。
本日再現する漫画料理は、『作って食べよう!全国有名駅弁』にて森口さんが営業部の後輩・吉井君にお願いされて作った“摩周の豚丼”です!
普段、女性陣からは「キモッ」「鉄オタ」「駅弁マニア」と散々な呼ばれ方をされ、上司からも「馬鹿な事言ってないで仕事しろ!」とガス抜きついでに怒られやすい吉井君ですが;、話が進むにつれ、そんな彼にもやっと彼女が出来ます。
お相手は、取引先の一つである<やまとデパート>に勤めている美人社員・岡安美雪さん。
当初は吉井君の一目惚れから始まった片思いだったのですが、ある駅弁をプレゼントされたのをきっかけに両思いになってお付き合いする事になり、それからというもの催事の打ち合わせを口実に何かと会ったりしてはいちゃついている為、双方の会社からは苦笑いされながら見守られている状態です;(←もっとも、実際に駅弁を作ったのは森口さんで、二人の橋渡し役をしたのは宮本さん。その為、お二人はこのカップルにとってはキューピットのような存在で、よく頼られています;)。
ムードメーカーでどこか憎めない性格なものの、いつも失敗をやらかしては「ノーン!」と叫んでいじられる吉井君と、明るくしっかり者でちょっと変わった感性を持つ岡安さんのカップルは、一見デコボコに見えて実は相性ぴったりで、おっちょこちょいな宮本さんと面倒見がいい森口さんのコンビに、どことなく似ているような気がしたものです(←但し、このお二人はお互いを「いないと寂しい存在」だと思いつつもその気持ちが恋愛感情かどうかは今一つ分からないみたいで、恋人を通り越してもはや兄妹みたいな関係になっている為、見ている方がヤキモキします…;)。
今回ご紹介するのは、その岡安さんが後輩・小室哲子さんの教育を任される事になり、新しい北海道フェアの企画を一緒に立てなくてはならなくなった時のお話。
小室さんはおかっぱ頭に眼鏡という地味な容姿の上、声が小さくて小柄なせいか日頃その存在になかなか気づいてもらえないという、どこの職場にも一人はいそうな気の毒な新入社員;。
しかし、仕事に対して情熱がない訳ではなく、ある打ち合わせで「カニじゃなくて、特選銘菓とお肉の北海道フェアなんてどうかなって…」と岡安さんに提案し、その目玉商品として豚丼をプッシュします。
北海道と言えば、まず最初にカニ・ウニ・いくら・甘えび・ホタテといった華やかな海産物が頭に浮かびますので、始めはあまりピンときませんでしたが、よく考えてみれば北海道にはジンギスカンという王道料理がありますし、その他にも日本一の飼育数を誇る牛肉や種類豊富なジビエもあって肉の分野も十分魅力的ですので、小室さんの目の付け所は結構いいのでは…と感じたのを覚えています。
けれども、この話が掲載された2011年当時、豚丼は大手チェーン店で「牛丼の代替品」「牛肉輸入が回復するまでの、一時的なサブメニュー」として出回っていた時期であまり印象がよくなく、その案を聞いた岡安さんと吉井さん(←今回の催事には<丸亀商事>も参加する為、一応担当者として来てました;)は大反対!
ジンギスカンはいいとしても、豚丼ではとても顧客の心は惹きつけられないと決めつけ、「あの~、だからこの資料を…」「あの、豚丼と言っても北海道の豚丼…」とぼそぼそ声ながらも必死に訴えかける小室さんの意見を聞こうとせず、結論は次回にまわされていました;。
当管理人は豚丼も牛丼と同じくらい大好きですので、初見時はこのシーンを見て(´・ω・`)という表情になっちゃいましたが;、この頃は現在広く知れ渡っている帯広系豚丼は全国的な認知度が低く、単に「牛丼の肉を豚肉に置き換えてみました」という豚丼の方がまだ主流で、尚且つチェーン店でいつでも食べられるイメージがついていましたので、「催事場で出す程ではない」という判断になっても仕方ないのかもしれない…と渋々ながら納得したものです(←ちなみにそれは宮本さんも同じだったらしく、給料日前に「おいし~!薄切りの肉に味が染み込んでてもう絶品!」「安いしうまいし、豚丼は給料日前の私の恋人よ~!」と満面の笑みを浮かべており、親近感を感じました;)。
が、その後、吉井さんは同じく重度の駅弁マニアである亀さんと会社で顔を合わせたおかげで、「そうだ、北海道には摩周の豚丼という有名駅弁があった!」という事を思い出し、豚丼でも十分催事場の主役に出来ると確信します。
摩周の豚丼とは、北海道の摩周駅で売られている駅弁で、発売元であるぽっぽ亭様がお店でお出ししている豚丼を、そのままそっくり駅弁にした豪快なお弁当(←何と2005年に新発売された時、京王百貨店駅弁大会でいきなり売上第二位になるという快挙を成し遂げています!)。
肉厚で柔らかな豚肉を甘辛いタレで味付けした、いわゆる帯広系の豚丼で、宮本さんが言うには「この秘伝のタレと豚肉の油の出会いが豚丼の醍醐味です」との事でした。
こうして、北海道フェアに豚丼を取り上げる事を決意した吉井さんは、岡安さんに帯広系豚丼の素晴らしさを理解してもらう為、森口さんにまたなんちゃって駅弁を作ってもらうよう懇願し、嫌々ながらも承諾してもらいます(←ちなみに、吉井さんは今回だけではなくその前後でも森口さんのなんちゃって駅弁を使って企画を立てており、最終的には功績が買われて新設された課の担当者に抜擢されるという大出世を果たしています;。甘え上手のお願い上手は世渡り上手でもあるんだな~と再確認し、「ちゃっかりしてるな~」と苦笑いしましたが、おかげで実力以上のものを求められてかなり困っていましたので、ちょっと気の毒でした;)。
その際、森口さんと助手役として呼ばれた宮本さんが早朝に集まって作ったのが、この“摩周の豚丼”です!
作り方は意外と簡単で、真っ二つに切った豚ロース肉の両面を焼いた後一旦取り出し、そのフライパンへ麺つゆ・お水・砂糖・水飴を加えて煮詰めてタレを用意し、また豚ロース肉を戻し入れて絡め、十穀米を敷き詰めたお弁当箱に盛り付けたら出来上がりです(←付け合わせのゴマ俵のレシピもありますが、長くなりますのでそちらは作る時にご紹介します)。
ポイントは、豚ロース肉は生姜焼き用の微妙に厚いタイプを使うこと、タレの材料を入れる時に取り出した皿へにじみ出た肉汁を加えること、軽く焦げて炭火焼きっぽい香りが立つまで煮詰めることの三つで、単純に見えて実は凝ったレシピなんだな~と感心したものです。
以前、“極黒豚めし”という似た系統のガッツリ系駅弁も再現した事があるのですが、甘辛醤油味という部分は同じでも、タレの隠し味は全く違っているのが衝撃で、原作者の守靖ヒロヤ先生はちゃんと各々の味付けの個性を研究された上でレシピを作成されているのだな~と、好感を抱きました。
調べた所、水飴は元々焼き鳥のタレのベースに使われる事が多い隠し味で、照りツヤを出す・マイルドな甘味を足す・香ばしい匂いを出すという効果があるのだそうで、これならご飯が進むあの独特の旨さを再現するのも夢じゃないかも…とお腹がすいてきたのを覚えています;。
その後、このなんちゃって版“摩周の豚丼”を<やまとデパート>へサンプルとして持ち込んだ吉井さんは、当初反対派だった岡安さんを見事説得するのに成功し、何とか一息つきますが、この駅弁は他にも予想外の効果をもたらします。
それは、一見暗くて大人しく見えた小室さんに「そう!これです!私がずっと言いたかったのはこの駅弁なんです!」と興奮した大声を出させ、明るい素の顔を引き出したこと(←それからあれよあれよという間に、本当は勝気でテキパキした、口も頭も達者な女の子であることが判明していました;)。
どうやら、今まで声が小さく控え目だったのは、入社したてで緊張している状態を「素」だと思われたまま今日までズルズル来てしまい、本来の性格を出すタイミングを完全に見失って途方に暮れていたからというのが真相らしく(←地味によくありそうな事ですね;)、その日からはごく自然に明るいキャラとして職場になじめたようでした。
ですので、本来はそのきっかけを作った吉井さんは恩人のはずなんですが、鋭い観察眼で「このお弁当あなたが作ったんじゃないでしょ!」と見抜き、「お願い~!美雪ちゃんには内緒にしておいて~っ!!」「どーしようかなぁー」というやり取りをしてからは上下関係は完全に逆転しており、思わず「やり手だな~」と苦笑しました;(←とはいえ、後に岡安さんと吉井さんが大ゲンカした時は何だかんだ言いつつ仲を取り持っていましたので、内心放っておけない人だとは思っているみたいです)。
後に、仲良しだけれども複雑な家族関係で素直になれずにいる切ないエピソードが描かれていますので、いつか再現ついでにご紹介できたらな~と考えています。
先日、催事場で本物の“摩周の豚丼”を購入して食べる事が出来ましたので、再現する事にしました。
作中には分量つきの詳細なレシピが記載されていますので、早速その通りに作ってみようと思います!
という事で、レッツ再現調理!
まずは、ゴマ俵作り。フードプロセッサーへ、骨と皮を取り除いて大雑把に切ったタラを入れてスイッチを入れ、約一分かけてすり身状にします。
段々ねっとりしてきたら、皮を剥いてすりおろした山芋、卵白、片栗粉、塩、千切りゴボウ、千切りにんじんを足し、再度スイッチを入れて細かくします。
その内、タラのすり身に野菜類が細かく刻まれて混ざるようになったら中から取り出し、何等分かに分けて俵形にまとめ(←手水をつけて丸めるとやりやすいです)、全面に炒った白ゴマをまぶします。
このタネを蒸気がモワモワ上がった蒸し器に入れ、十五~二十分かけて蒸しあげたら、ゴマ俵は出来上がりです。
次は、豚肉の準備。強火にかけて油をなじませた大きいフライパンへ、真っ二つに切った生姜焼き用豚ロース肉を並べ、両面をこんがり焼きます。
焼きあがったら一旦別皿へ移し、肉汁がついたフライパンに麺つゆ、お水、砂糖、水飴を加え、全体が混ざるようゆっくりゆらしながら煮詰めていきます。
ここへ、豚ロース肉を置いたお皿ににじみ出てきた肉汁も足して、しっかり混ぜ合わせます。
やがてタレが水飴風にトロリと煮詰まり、軽く焦げた炭火焼きっぽい香りが漂ってきたら、先程の豚ロース肉を戻し入れてタレを全体に絡め、火を止めます。
その間、お弁当箱にゴマ俵、山クラゲ、味噌漬けたくあん、紅しょうがを盛りつけ、炊き立ての十穀米を詰めておきます。
焼けたばかりの豚ロース肉を十穀米の上へ飾りつけ、その上へ残りのタレをかけ回せば“摩周の豚丼”の完成です!
ちなみに、下にある画像の一番目はなんちゃって、二番目は本物なのですが、見た目はあんまり似ていなくて落ち込みましたorz(←しかも、本物の駅弁にはゴマ俵ではなくまりも羊羹がついていましたので、尚更ちぐはぐなような…;)。
ただ、冷めても尚香ってくる香ばしい風味は似ていた為、これはひょっとすると…とワクワクしたものです。
それでは、割りばしを割っていざ実食!
いっただっきまーす!
さて、感想はといいますと…肉がやや薄めで噛み応えが物足りないものの、それを除けば結構似ていて旨し!あの独特なタレが、ほぼそのまま再現出来てます!
作中にあった通り、水飴が焦げた香りは炭火焼きの匂いにそっくりで、豚肉から出た濃厚な脂が混然と入り交じったタレが奥まで染みたその美味しさは、例えるとするなら「ウナギの蒲焼き風豚丼」という感じでした。
砂糖よりも甘味が深く、蜂蜜よりもあっさりしている水飴の甘さは、脂肪と赤身が半々でバランスがいい豚肩ロースにぴったりで、その上足りない旨味は麺つゆの和風出汁が補ってくれていた為、即席の割にはよく出来たタレだと思います。
醤油は一切入れていませんが、麺つゆに含まれる醤油の塩気だけで十分ご飯が進む重厚がっつり系甘辛照り焼き味に仕上がっており、醤油が最小限でいっそ清々しい程甘いのがかえって功を奏し、意外と後味がどくないのに感心しました。
このこってり極まりない豚肉を、武骨な噛み心地と力強い味わいが特徴的な雑穀米ががっちり受け止め、見事に調和しているのがよかったです。
また、ゴマ俵を食べるのは初めてですが、一口かぶりついた途端たっぷりまぶしたゴマが口の中でプチプチと賑やかに弾け、中からふんわりむっちりした淡泊な白身のすり身が顔を出すのが美味で、地味ながらも印象に残る味わいで好きになりました(←柔らかくて口溶けがサラッとしたカマボコというイメージです)。
ゴボウのザクザクした食感と香ばしい風味がいいアクセントになっており、それがゴマの素朴な油分とよく合っていました。
熱々の内に食べるのもおいしいですが、冷めても味がおちませんので、まさにお弁当向きの豚丼です。
ビールにも合いますので、ご飯抜きでおつまみ用につくるのもありだと感じました。
残念ながら、ゴマ俵だけは再現度を推し量る事が出来ませんでしたので、いつか本物を食べて確認したいな~と思いました。
●出典)『作って食べよう!全国有名駅弁』 原作:守靖ヒロヤ 作画:上農ヒロ昭/日本文芸社
※この記事も含め、当ブログの再現料理記事は全てこちらの「再現料理のまとめリンク」に載せています。
※レシピの分量や詳しい内容は、以前こちらでご説明した通り完全非公開に致しております。