『華中華』の“成人式チャーハン”を再現!
- Sat
- 20:00
- 再現料理
その名もずばりサムライソースで、生誕地は何とベルギー。
味の方はマヨネーズ、唐辛子ペースト、レモン汁などを加えたピリ辛ソースだそうで、あちらではフライドポテトにつけて食べるのが主流との事。
何と、大きな瓶詰めの物が広く出回っているくらいすっかり定着しているのだとか。
残念ながらどのような経緯で誕生したのかははっきり分かっていないそうですが、一体ピリ辛味のどこが侍なのか、考えるだけで夜も眠れません…。
どうも、一昔前は「富士山、芸者、侍、忍者」だった海外での日本の認識が、最近ではそれに「アニメ」が加わるようになったと聞いてびっくりした当管理人・あんこです。
今回再現する漫画料理は、『華中華』にてハナちゃんが二十歳になった記念として二十品目の材料を使って作った“成人式チャーハン”です!
これは、ハナちゃんが満点大飯店へ来てまだ二年目だった頃のお話。
数え歳二十歳になるハナちゃんは実家から成人式へ着ていく振袖を贈られてきたものの、通常よりもパーティー予約のお客さんが数倍増えて賑やかになる成人の日に私事で仕事を休むわけにはいかないと考え、修行に専念する為成人式を欠席する事を決めます。
一日でも早く一人前の中華料理人になるという目標の為とはいえ、ろくに休まず息抜きもせず毎日働きまくっているハナちゃんを見ると、つい目頭が熱くなりました(つД`)。
ちなみに、この頃のハナちゃんは夜になるとすぐに居眠りしてそのまま朝まで爆睡というシーンがかなり多く、新社会人が慣れない生活の中四苦八苦している様子がヒシヒシと伝わってきます;。
本当に心底疲れていると、座っていようが立っていようが目の前が急に真っ暗になる感じで半ば気絶するような眠りが訪れやすいですが、ハナちゃんも同じ感じなのかな~と思うと共感すると同時に、非常にヤキモキさせられてしまいます(当管理人自身、遠い地で妹さんが社会人一年生として苦労しているのを案じている為、他人事とは思えませんorz)。
全く、死後もなお「幽霊達と墓場合コン~(´∀`*)♪」と毎晩水を得た魚の如く活き活きしている楊貴妃さんとは対照的です;。
しかし、このまま何もせずに成人の日を過ごさせるのはあまりに気の毒になった楊貴妃さんは、ハナちゃんへの餞別代りに、料理人としても一人前の大人としても一歩前進させるためにある料理の課題を出します。
その課題とは、「成人式…二十歳にちなんだ二十種類の食材のチャーハンを新しく考え出す」というもので、それを聞いたハナちゃんは面白そうだし記念になるという理由で挑戦する事にします。
言葉にするだけなら簡単そうに見えますし、実際炒め物や煮物などといった料理なら二十種類の材料を使うのも比較的容易に思えますが、問題は課題がチャーハンだという事。
具材が多すぎるとご飯よりも具のボリュームがありすぎてただの炒め物になってしまう、かといってそれぞれの量を減らしすぎても逆に食材のよさが目立たずに二十種類も使う意味がなくなってしまう…。
意外にも手ごわい難問に、ハナちゃんは仕事中悩みに悩みぬきます。
そんな時、ハナちゃんは深夜に帰宅途中、飲み会で遅くなって終発を乗り過ごしてしまった康彦さん(この時はまだお二人は結婚しておらず、お見合いして一回ご破算になったもののちょくちょく会うようになるという不思議な間柄です;)と偶然会い、チャーハンの相談がてらハナちゃんのお部屋に泊まってもらって、一緒に材料について考える事になります。
※なお、大抵こういう場合漫画だといい雰囲気になることがほとんどですが、お二人は超がつく程初心で尚且つ二十品目のチャーハンという課題をクリアーする為に真剣に悩んでいたせいか、色っぽい展開は全くありませんでした(^^;)。
ここまで徹底してピュア展開だと、ある意味お約束だと思わなくもないです;。
その際、「十五穀米はどうでしょう?雑穀ですが体にいいし、美味しいので人気なんです」という康彦さんのアドバイスや、楊貴妃さんのイタズラでハナちゃんの口から飛び出てしまった「結納」というキーワードで康彦さんが閃いたおめでたい食材・昆布とスルメ、そして基本チャーハンの材料である卵、ネギ、白米を組み合わせて揃った二十品目の材料でハナちゃんが創作したのが、この“成人式チャーハン”です!
作り方はなかなか独創的で、十五穀米と白米を合わせて炊いたご飯で作った基本チャーハンへ、細く切って醤油・日本酒・マヨネーズで和えて柔らかくさせたスルメ、塩昆布、長ネギを投入し、炒めたら出来上がりです。
楊貴妃さん曰く、康彦さんはハナちゃんから結婚を即OKされた時に備えて結納の事を勉強したからこそスルメや塩昆布がすんなり思いついたとの事で、「肝心の結婚がダメだった代わりに、チャーハンで役に立つとはね~」と、康彦さんが聞いたらショックを受けそうな独白をしながら笑っていました;。
けれども、この事がきっかけで一度は遠ざかったお二人のご縁はさらに強まった観がありますので、チャーハンに役立ったことも決して無駄な事ではなかったのだと個人的には思います。
その後、早速ハナちゃんは成人の日当日のお昼に上海亭で“成人式チャーハン”をお客さん達に振舞うのですが、「うまい!」「美味しい上に健康的でおめでたいなんて…最高ね!」とおおむね好評!
さらに、二十歳の方は五百円のはずが二百円に値下がりするというお得なサービスまで行なった為、この日は満点大飯店の勢いに負けないくらい大繁盛した一日になっていました。
ちなみに、“成人式チャーハン”は楊貴妃さんによって「二十品目の食材を使う→合格!」、「味わい→抜群だから合格!」、「一人前の大人は自分一人の力だけにこだわらず、人の力も借りれる→康彦から気持ちよく借りてたから合格!」という評価を得て百点満点の評価を下されており、課題もしっかりクリア扱いになっていました(^^)。
それにしても、「大人とは、自分一人だけで何とかしようと意固地になる人ではなく、無理な事は無理・助けてもらいたい時は助けて欲しいと素直に他人から甘えすぎずに力を借りれる人の事を指す」という楊貴妃さんの考え方は深い、と目からウロコが落ちました。
普通は一人で何でも出来る人が大人のように思われがちですが、よくよく考えてみれば頑固になりすぎて人の意見を聞かず突っ走る人よりも、柔軟に色んな意見や助けを借りれる人のほうが確かに色んな意味で大人のような気もします。
成人式はもうとっくに過ぎているのでどうかとも考えたのですが;、久々にこの話を呼んでいくうちに無性に食べたくて仕方がなくなったので、ほぼ衝動的に再現する事にしました。
巻末の詳細なレシピを使い、なるべく忠実に作ってみようと思います!
という事で、レッツ再現調理!
まずは、各食材の用意。ボウルへ調理用ハサミで細長く切ったスルメ、醤油、日本酒、マヨネーズを投入してよく混ぜ合わせ、スルメが水分を吸ってしんなりするまで放置します(約三十分~一晩のどちらでも可)。
※分厚い物よりも、やや薄めのスルメの方が食べやすくていいかもしれません。
白米と十五穀米を合わせてからお水と一緒にオカマの中へ入れ、そのまま普通に炊きあげます。この時、やや硬めに炊き上がるよう気をつけます(但し、雑穀が入っている分余計水気が必要になるので、水加減は白米の時よりも気持ち多めがおすすめです)。
次は、チャーハン作り。
先程用意した十五穀米入りのご飯を使い、中華鍋(又はフライパン)で以前に作り方をご紹介したハナちゃん流基本チャーハンのレシピ通りに基本チャーハンを長ネギ抜きで作りあげ、途中乾燥したタイプの塩昆布を加えて味付けを調整します。
※後で醤油マヨ味のスルメを入れますので、ちょっと薄めでOKです。
仕上げに準備しておいた味付きスルメと刻み長ネギを投入し、ざっと混ぜ合わせます。
その際、スルメについている醤油マヨネーズはチャーハン全体に馴染むのに少々時間がかかる為、一粒一粒のご飯粒へ行き渡るようしっかり炒めます。
チャーハンと具と調味料がきっちり混ざり合ったのを確認したら火を止め、そのまま丸い形に盛りつければ“成人式チャーハン”の完成です!
そこまで濃い目に味付けしていないはずなのですが、十五穀米特有の色合いのせいかややこってりそうな色に仕上がりました。
じっと目を凝らしてみると、白米だけではない様々な粒々があちらこちらに見えて、食べる前からもう「歯ごたえが楽しそう」とワクワクさせられます。
昆布のいい香りが食欲をそそりますし、期待大です!
それでは、出来立てほやほやの内にいざ実食!
いただきま~すっ!
さて、味の感想ですが…噛めば噛む程さらに美味しくなっていく深みのあるチャーハン!意外にもちょうどいい塩具合でパクパクいけちゃいます!
一見すると乾物ばかりで何だか硬そうにみえてしまいますが、実際に食べると白米とそう変わらぬふっくらハラリと優しいほどけ加減で、柔らかく戻った乾物の程よい噛み応えが心地よいです。
塩昆布の磯の香り漂う味わい深い塩気と、マヨネーズのまろやかなコクがチャーハン全体に混ざり合い、しょっぱいだけではなく奥行きのあるマイルドな甘塩味に仕上がっていました。
粟・ひえ・白ごま・黒ごまのプチプチ感、麦のプツプツ噛み切れる歯切れのよさ、もちきびのもっちりした口当たりがいいアクセントになっており、たまに小豆や黒豆が歯に当たると「お!」という気分になり、口元がほころびます。
十五穀米は独特の癖があるので苦手な方も多い食材ですが、チャーハンにする事によってその癖が軽減されると同時に旨味へと転化していて、白米だけでは出ない風味豊かな甘味や香ばしい匂いがプラスされているのに感嘆しました。
噛むごとにスルメや塩昆布から強烈な旨味を感じる出汁がジワジワと溢れだし、食べ進めていくにつれてどんどん複雑な味わいへと変化していくのが面白いです。
刻みネギのシャキシャキ感が後口を爽やかにしているのが単調さを防いでバランスをよくしていますし、健康にもよくおめでたい、まさにお祝いの席にぴったりな一品だと感じました。
一見、目新しい要素がないように感じられるチャーハンですが、いざ食べてみると想像とはかなり違った味なので驚かされます。
十五穀米ではなく、十六穀米や二十穀米みたいにもっと癖の強そうなお米で作ってみてもおいしそうです。
再現料理を作り続けていると、今回のように見た目通りにはいかない変わった美味しさの料理と出会う機会が多い為、刺激的で当分やめられそうにありません(^^*)。
●出典) 『華中華』 原作:西ゆうじ 作画:ひきの真二/小学館
※この記事も含め、当ブログの再現料理記事は全てこちらの「再現料理のまとめリンク」に載せています。
『ポジティブ・クッキング』の“ネギトロワンタン”を再現!
- Tue
- 23:50
- 再現料理
カリッとしていて、香ばしくて、こしあんの甘さが程よくて、かんだ途端にふわっと黒糖の風味が立ちのぼるのが例えようもなく美味ですっかり虜になっています。
どうも、要は濃い緑茶に合ってたっぷり餡子が使われているお菓子ならば何でも気に入ってしまう厄介な性を持っている当管理人・あんこです。
今回再現する漫画料理は、『ポジティブ・クッキング』にて前向きな奥様・原春代さんが初めてアイディア料理コンテストに入賞したお料理・“ネギトロワンタン”です!
漫画『ポジティブ・クッキング』とは、高橋留美子先生の短編集『運命の鳥』に収録されている短編作品の内の一つ。
『運命の鳥』とは、高橋留美子先生にとって第四集目に当たる短編集ですが、日常生活を舞台にした作品の中でもさらに日常的でごく身近でもありそうなお話が多いのが特徴的で、日常の中の非日常を描く事がほとんどだったそれまでの作品集とは少々異なるような印象を受けます(例を挙げるとするなら、ペンギンや座敷わらしなど一風変わった生き物ばかりが登場してくる『Pの悲劇』が最も対照的だと思います)。
本日ご紹介する『ポジティブ・クッキング』は、中でも一際その傾向が顕著な短編で、ざっと軽くあらすじを説明すると以下の通りになります。
主人公であるごく普通のサラリーマン・原真一さんの妻・春代さんは凝り性な上大の料理好きで、それが高じて時折料理教室に通い、夕食の席で習ったばかりのアレンジ料理を作るのが生き甲斐になっているお茶目な女性。
もともと、同居していたお義母さんの介護を五年以上してきて看取った経緯から何年も料理は手抜きばかりで腕がなまっていた事、そして一周忌を過ぎる頃にお友達から一緒に行こうと誘われて真一さんとお義父さんも「いいんじゃないか?」「授業料払うよ」と背中を押して貰った事がキッカケで行き始めた料理教室でしたが、気まぐれで応募したアイディア料理コンテストにて二回連続で入賞した事が原因で、完全にオリジナル料理作りにハマってしまいます。
どんどん加速化していく春代さんのアレンジ料理熱、そしてそれに比例するかのようにして悪化と放置の一途を辿っていくお家の食生活…。
遂には、(自業自得とはいえ)真一さんは病院へと運ばれてしまう羽目に陥ってしまいます。
果たして、真一さんは無事春代さんの心と料理の腕を、再び家庭へ向ける事が出来るのでしょうか?!
…と、少々大げさになりましたが、以上が主なストーリーになります(^^;)。
これ以上はネタバレになってしまいますので(←「このブログで、そんなセリフを言うのは今更だ」という突込み、ごもっともですorz)控えますが、すったもんだしつつそこは巨匠・高橋留美子先生の力でうまくまとめられ、ハラハラさせられつつも安心して見られるラストですので、肩の力を抜きつつ一家庭のゴタゴタを覗き見してみたいというプチ・「家政婦は見た!」の市原悦子タイプの方にはおすすめしたい一作です。
ちなみにこの春代さん、何かと保守的で無感動気味な真一さんとは正反対の、極めてポジティブかつ明るいパワーの持ち主で、読んでいるとこちらも元気になってきます。
本にレシピが載っているのを見た周りの奥様方から賞賛されたら「私の簡単レシピ、近所の奥さんにも大評判でさ~。万人受けするっていうか~」と活き活きしたり、料理教室で知り合った料理が苦手な新妻達に自宅で簡単レシピを教えるようになったら「ねえ、教室開こうか!」と目が輝いたりと、くるくると移り変わる前向きな笑顔が見ていて飽きません;。
最終的には、何とテレビ出演(?!)まで決定するのですが、その時もポジティブ・パワーは健在で、「なんてったって、テレビよテレビ。これが評判になって、私、カリスマ主婦になっちゃったりして~」と夢見る乙女の表情になっており、現実的な真一さんから覚めた視線で「もはや、突っ込む気にもなれん」と呆れられていました;。
正直、当管理人は奇跡的にこういう事態になったとしても怖気づいて尻尾巻いて逃げるであろうタイプな為、自分に自信を持って正々堂々と頑張れる春代さんには憧れと応援する気持ちを強く持ちます(^^;)。
しかし、基本的に明るいお話ではあるもののそこは流石高橋留美子先生といった感じで、所々にしっかり春代さんの複雑な心境を窺わせるようなシーンも、重すぎず軽すぎず実にうまく描かれています。
その中で一番印象的だった場面が、「最近、うちの飯手抜きの簡単レシピばっかりじゃないか!?外で作るくらいなら、もっとうちの飯を…」と食って掛かる真一さんに対し、春代さんが静かに「だって、どうでもよさそうだったから」と目が笑ってない笑顔で言い返すシーン。
実を言いますと、真一さんは食べる物にそこまで興味が持てないタイプの男性で、春代さんがどんなに家で工夫した料理を作っても「まあ、いいんじゃないか(心の声:正直、どうでもいい)」と受け流しながら暮らしていた模様で、まともに「おいしい」や「ありがとう」を言っていなかったとの事。
ただ、直接それで文句を言われなかった事から、「気付いていないんだろうな」と真一さんは楽観視していたようですが、どうやら春代さんにはばっちり伝わっていたようで…;。
このやり取りを見ると、真一さんに対して気の毒と思いつつも「そりゃあ、当たり前に黙々と食べる人に義務として作るよりも、お世辞交じりでもおいしいって喜んでくれる人の方に力を注ぎたくなっちゃうだろうな…(´Д`;)」と春代さんに対してもやや同情したものです。
何でもない日常の一コマだったとしても、感謝の気持ちを素直に表現する事は決して怠ってはいけないのだという教訓を、ヒシヒシと感じさせられます。
一見大したように見えないことでも、塵も積もれば山となるということわざの通り溜まると立派な心離れの原因になり得ますので、相手の好意に甘えてばかりなのも考え物かもしれません。
さて、今回再現するのは、そんな春代さんが最初にアイディア料理コンテストで「お手軽賞」に入賞した作品で、元はと言えばお義母さんが倒れたばかりの頃に真一さんに作った想い出の料理・“ネギトロワンタン”!
作り方は「お手軽賞」に輝くだけあってとても簡単で、ネギトロ・大葉・茹でタケノコ・醤油を混ぜた物をワンタンに包んで茹でたらもう出来上がりです。
漬けタレはポン酢で、審査員曰く「肉よりヘルシーで簡単」なのが選んだ理由だったとの事(ネガティブな入賞者だったら思わず不安になってしまいそうな程、えらくシンプルな評だな~と思わず苦笑です;)。
春代さんはお友達に「一番の手抜き料理だったんだけどね~」と明るく話していましたが、続けて「お義母さんの介護をしている合間に考え付いた」と話していたのを深読みすると、この時期色々考えて辛かった中生み出したからこそ、より感慨深かったんじゃなかろうか…としんみりした心境になります。
それまで、「ワンタンや水餃子よりは、焼き餃子!」という考えだった当管理人ですが、母が台湾ご出身の奥様から習ってきた本場レシピのワンタンを食べたり、妹さんから大分前に薦められた事があったりした為、そろそろ小さなこだわりは捨てるべきだと思い再現に踏み切りました。
残念ながら詳しい製作工程は書かれていませんでしたが、マグロを使った餃子がおいしかった経験から失敗の心配は少ないはずですので、早速作ってみようと思います。
という事で、レッツ再現調理!
まずは、タネ作り。ボウルへスーパーで売られていたネギトロ(商品名は「ネギトロ」ですが、何故かネギは混ざっておらずマグロのコマ切れのみしか入っていませんでした;)、みじん切りにした大葉、細かく刻んだ茹でタケノコを投入し、菜箸で軽く混ぜます。
そこへ刻みネギと醤油を加えてさらに混ぜ、味の調整が終わってある程度まとまったら市販のワンタンの皮で一つ一つ丁寧に包んで行きます。
ひき肉だと、相当練らないとジューシーな出来にならない為最後にはヘトヘトになる事が多いですが、今回はネギトロ使用で練り作業は一切なかった為、鼻歌交じりで楽~に包み作業を終えることが出来ました(^^*)。
全て包み終えたら、お鍋で沸騰させておいた熱湯の中へ次々に投入し、少し経ってからワンタン同士がくっつかないようそろっと優しく混ぜつつ茹でます。
やがて、ワンタン全てがお湯の上にプカプカと浮かびだしたら火を止め、茹で汁ごと器に移します。
ワンタンの上に刻みネギを散らし、仕上げに傍らへ小皿に入れたポン酢を添えれば“ネギトロワンタン”の完成です!
うっすらと透き通った白い皮と、目にも鮮やかな長ネギの緑色の対比が綺麗で、夏らしい色合いだな~とうっとりします。
プカリと浮かんだワンタンの姿が見るからに涼しげな感じで、見るからに食感が軽そうなのが印象的でした。
魚肉を使った餃子は今まで何度か食べた事がありましたが、魚肉を使用したワンタンは初めてなのでどんな味なのか楽しみです。
それでは、ポン酢にちょんちょんとつけていざ実食!
いっただっきまーす!
さて、味の感想ですが…食欲がない時でも、喉の奥へスルスル消えていく旨さ!確かに、お肉よりもヘルシーでさっぱり食べられます!
ワンタン特有のツルンとしたなめらかで滑るような舌触りの皮から、お肉より大分ふんわり柔らかい口当たりに仕上がっているマグロ肉が大葉の爽やかな香りと共に飛び出し、それと同時にサクサクと小気味良い食感のタケノコが絶妙なアクセントとなって歯に響き、噛むごとに一体となっていくのがとても心地いいです。
それまでワンタンの皮はツルツル感ばかりが印象に残っていましたが、じっくり味わってみるとシコシコしたまるで麺のような弾力と小麦のほのかな甘さが徐々に浮かび上がってくるのが分かり、思っていたよりもずっと繊細な味であるのが分かりました。
お肉使用のワンタンだと肉汁や濃い味によってそこまでは分からなくなる感じですが、このワンタンは魚肉使用でしみじみ優しいあっさりしたコクな為、ワンタンの皮の良さがよりダイレクトに伝わります。
また、上に散らしたネギのシャキシャキッとした歯触りと、中に入っているネギの甘味がダブルでワンタンの味わいを底上げしており、この料理はネギがかなり重要な役割を果たしていると思いました。
面白い事に、火が通ったネギトロは「油分に欠けているのにフワフワなツナ」とい例えたくなるような独特の味わいになっており、そのせいか不思議と初めて食べる気がしません。
心配していた臭みの方も、ネギの力によってほぼ気にならないようになっています。
ワンタンから出た出汁によって「少し薄めかな?」と感じるくらいおいしく変身している茹で汁といい、程よい酸味のポン酢といい、どれもこれもワンタンにぴったりで大満足でした!
餃子のカリッとジューシーな味わいもいいですが、この季節だとワンタンのツルッと涼しげな口当たりの方が軽く食べられてありがたいです。
ポン酢にラー油をいれてみたり、たけのこをクワイにしてみたり、マグロをカツオにしてみてもまた違った味になってよさそうでした。
本当に手間要らずで作れてヘルシーなので、おすすめです。
●出典) 『運命の鳥(高橋留美子傑作集)』 高橋留美子/小学館
※この記事も含め、当ブログの再現料理記事は全てこちらの「再現料理のまとめリンク」に載せています。
『けずり武士』の“蜆肉飯と味噌漬け豆腐”を再現!
- Fri
- 23:50
- 再現料理
特に、母の塩麹へのはまり具合はかなりの物で、一日に必ず一食には塩麹を使った料理が出てきている為「はまっているな~」と少し苦笑しています(思えば、これと決めた事をしつこいくらい繰り返す性格は母に似たのかもしれません)。
発酵食品はちょっと加えるだけで料理に深みを出してくれるので、重宝しています。
どうも、豆腐の塩麹漬けは豆腐の味噌漬けとどう違った味わいに仕上がるのか興味津々になっている当ブログの管理人・あんこです。
本日再現する漫画料理は、『けずり武士』にて主人公・荒場城一膳さんがお気に入りの飯屋<双葉屋>で食べたある日の日替わり定食に組み込まれていた“蜆肉飯と味噌漬け豆腐”です!
漫画『けずり武士』とは、身分がかなり高そうだと推察できる謎の人物・<御大様>の取次役であるお調子者で勝気な女性・由麻さんにその確かな剣の腕を見込まれた貧乏侍の主人公・荒場城一膳さんが、役人や法が裁けぬ悪人を裏で始末する闇稼業を請け負って成敗しつつ、江戸ならではの美味しい料理を食べて心を癒す日々を描いた、お江戸グルメ&仕置き人風剣客漫画です。
汚職まみれの役人・タチの悪い女衒・毒を売り捌く偽医者など、暴力や法の抜け目を利用して甘い汁を吸う人間がはびこるのを防ぐのが、荒場城さん・由麻さん・その忠実な護衛である盛吉さんのお仕事。
斬り合い場面が多いのでシリアスなシーンも多いのですが、奔放で口が達者な由麻さんと、最初は威勢がいいものの段々由麻さんのペースに巻き込まれていく荒場城さんの歯切れがいいやり取りや(「荒場城の旦那~!」「働け!アラバキ!」と呼びかける由麻さんの姿は、なかなかに愛らしいです^^)、テンポのいいギャグも所々混じっている為、結構分厚い内容ながらもするする読めてしまう隠れた名作です。
正直、初めて表紙を見た時は「何だかネタっぽい題名だな~;」と思いましたが、我が身を削るようにしながらもほんの一握りの誰かを救う為に生きる荒場城さんと、江戸の地で華やかに花開いた食文化を象徴する削り節の双方を連想させる『けずり武士』という題名をつけた湯浅ヒトシ先生の命名の巧みさに、作品を読了した後には舌を巻きました。
一見単純そうに見え、その実深い意味合いを持つ所は題名だけでなくまさにこの作品のストーリーその物ですので、派手さはなくとも読めば読むほど味が出てくる作品を好む方には是非お勧めしたいです。
中でも秀逸なのが、作中の至る所で登場するお料理と、荒場城さんの豪快な食事描写!
赤紫蘇まぶしの握り飯、鮎の焼き味噌つけと南蛮漬け、江戸前握り寿司、炒りだし卵、牡丹鍋などがとにかく美味そうで、さらにそれらをまるで子どもみたいに無邪気で屈託なく大口を開けて貪る荒場城さんの食べっぷりが見事な為、読んでいるとこちらまでつられてついゴクリと喉が鳴ってしまいます(^^;)。
この作品は、所々で江戸の食文化を詳しく説明する柱文がいくつかあり、読み勧める内に自然と江戸時代にどのようなものが食べられていたのか、何が人気だったのかという事が学べて楽しいのも大きな魅力の一つです。
けれども、だからと言って江戸グルメ漫画と一刀両断してしまうにはあまりに惜しい程色んな要素の詰まった作品で、例えばなかなか迫力のある斬り合いみシーンや時折説明される様々な流派の剣術を重視して見れば「剣客漫画」、単なる町娘とは思えない素性不明の美女・由麻さんや親友・天本祐之助さんとの交流を注意深く見れば「江戸を舞台とした人間ドラマ」など、見所満載です。
なお、荒場城さんは人を斬り殺した時、それが生前どのような人物だったとしても「心が削がれる」という表現をします。
作中を見る限り、「削がれる」体験をすると荒場城さんは絶対に何かを食べており、その都度心が洗われて「満たされた」と言っては殺人後の思いつめた表情が一転、元の屋根裏バエの旦那(←蝿のように素早い事から、岡場所の女性達より命名されていました;)へと戻っていきます。
その為、荒場城さんがおいしい物を食べる事に人一倍執着するのは生来の食いしん坊がなせる業なのはもちろんの事、それを除いたとしても誰かを殺した後に「削がれたら食わねば」とひとりごちるのは、埋めがたい寂寥感を無意識の内に埋めようと心が欲してならないからかもしれません。
しかし、状況が変わっていたら自分だったかもしれない誰かを犠牲にしながらも、胃が空になるほどの猛烈な吐き気に襲われても、自己嫌悪のあまり悪夢見る日々を続いたとしても、荒場城さんは「これが己の選んだ役割であり、そこから派生する結果もまた、己で受け止めるしかない」と重い独白をし、逃げずに全てを受け止めます。
この辺を読むと、道を外す人間を成敗するほどの強さは持ってはいるものの、それを「自業自得」と一言で切り捨てるほど冷酷になりきれない人間臭い弱さを持っているのが垣間見え、そのもろさが危うくも魅力的な主人公だと思います。
今回再現するのは、荒場城さんが江戸の地へ引っ越してきて以来に足しげく通っている飯屋<双葉屋>のメシ小町として評判の看板娘・お婉さんが、有り金がたったの三文(現在の貨幣価値に換算すると、何と六十円!)しかなくお腹をすかせている荒場城さんに「うちは通いのお客様には掛売り(ツケ)もしておりますのよ、ご心配なさらず」「今年は大豆が豊作だそうで、このような献立が安く上がるのです」と言って出した日替わり定食の内の二品、“蜆肉飯と味噌漬け豆腐”!
二つとも作り方は簡単で、蜆肉飯は酒で煮出した蜆の煮汁で炊いたご飯と醤油等で味付けした蜆を混ぜ合わせたら出来上がり、味噌漬け豆腐は水気をきって和紙に包んだ豆腐を味噌に一晩漬け込んだら準備完了との事でした。
味噌漬け豆腐はともかく、蜆肉飯は最初に全部合わせて炊く方式のレシピが多かった為、ご飯と具が別扱いのレシピは大変珍しかったのを覚えています。
作中の説明によると、大豆は高タンパクでありながらコレステロールを全く含まず食物繊維、ミネラル、ビタミン類など豊富な栄養素まで併せ持つというまさに「ミラクル食品」だそうで、そのせいかヨーロッパでは「畑の肉」、アメリカでは「大地の黄金」という異名を持つのだとか。
そう考えると、味噌・醤油・豆腐・おから・湯葉・納豆・きな粉・油揚げなどといった古来からの大豆食品が昔から現在まですっかり定着している日本は、かなり恵まれた国なのでは…と思わず唸ってしまいました。
味噌も豆腐も蜆も好物な為、始めてみた時から是非作ってみたいと熱望していました。近所のお店でぷっくり肥えたいい蜆が見つかったことですし、早速再現してみようと思います。
という事で、レッツ再現調理!
まずは、味噌漬け豆腐作り。豆腐をキッチンペーパーやふきんなどで包んで重しをし、水分がしっかり抜けたら和紙でぴっちり隙間なく包み込み、味噌の中で焼く一晩漬け込みます(より濃厚な味がご希望の場合は、二~三日がベストです)。
時間が経過し、豆腐に味噌がすっかり漬かったのを確認したら取り出して和紙を取り除き、食べやすい大きさに切り分けます。これで、味噌漬け豆腐は出来上がりです!
豆腐は充分漬かると、何ともいえない飴色がかった光沢が表面についている為、すぐに見分けがつきます。
※味噌はお好きなものを使用してOKです。今回、当管理人は合わせ味噌を使いました。
次は、蜆肉飯作り。水に三~五時間程度浸けて砂抜きを行なった蜆を、殻をこすりつけ合わせるようにしながらよく洗い、日本酒と共にお鍋へ入れて沸騰させて火を通します。
その際、フタをして一気に強火にすると蜆はすぐに口を開けるので楽ですが、あんまり火を通しすぎると蜆は情けないくらい小さくガチッと硬くなるため、注意していい頃合の時に火からおろします。
蜆の身と煮汁の二つに食材を分け、蜆の身は日本酒と醤油で程よく味付けし、炒ったカツオ節を投入して絡めて合わせます。一方、煮汁は冷ましておきます。
先程冷ました煮汁とお水とお米とでご飯を炊き上げて軽く混ぜ、仕上げにさっきの醤油味の蜆を汁ごと投入してざっくり切るようにして混ぜ合わせます。
この時混ぜたらすぐに食べるのではなく、フタをして十分くらい放置して蒸らすと米粒に蜆風味の醤油がじんわり広がるので、必ず寝かせてから食卓へ運ぶよう気をつけます。
各料理をそれぞれの器へ盛りつけ、他にも煮豆、味噌汁、沢庵漬けも用意してお皿へ飾り付ければ“蜆肉飯と味噌漬け豆腐”の完成です!
大豆製品ばかりなので、一見華がなくて地味ですが、その分栄養たっぷりそうで頼もしいイメージです。
味噌漬け豆腐からは既に味噌の香り、蜆肉飯からは磯の香りが漂ってきており、匂いでまず胃袋を鷲づかみにされる感じでした。
豆腐を味噌で漬けるのは人生初だったので、一体どんな風に漬かっているのか非常に楽しみです。
それでは、出来立てほやほやの内にいざ実食!
いただきまーすっ!
一番目は、“蜆肉飯”。いっただっきま~す。
さて、味の感想ですが…深いとしか言いようのない、滋養溢れる美味しさ。食べれば食べる程、静かにじんわりと舌へ響いていきます。
ご飯と一緒に炊き込まず後から混ぜ込んだせいか、しじみの身に味がしっかりと染みつつもふっくらとした弾力になっており、数回噛むだけで楽に噛み切れてしまうような柔らかい出来栄えです。
カツオ節から直に出た濃厚でキレのいい辛口出汁をたっぷり溶け込ませ、贅沢に仕上がった江戸風濃口醤油味がしじみのあっさりかつ奥深い旨味とぴったりで、シンプルながらも飽きのこない海鮮ご飯でした。
「甘味を抜いてさっと煮、優しい口当たりに仕立てたしじみの佃煮風」と例えたくなるしじみと、出汁が抜けながらも尚強い旨味成分が残っているカツオ節の相性が抜群で、正直ここまでしじみとカツオ節が合うとは意外です。
単品だと控え目すぎて目立てないしじみですが、カツオ節の強い風味によって味の輪郭がくっきりと浮かび上がる感じで、そのせいかメリハリのついた美味さが堪能出来ました。
なまじ、最初から醤油を入れて炊かなかったおかげでしじみの淡い、まるで穏やかなさざ波のような出汁が押し殺される事なくご飯一粒一粒に活きており、そのせいか貝類ならではの自然な甘さを味わいつつ醤油の濃い味を楽しめます。
お酒の香りがわずかな臭みを消すと同時に、さらに旨さを高めているのもよかったです。
二番目は、“味噌漬け豆腐”。いただきます!
さて、味はと言いますと…豆腐だと思って口にすると、いい意味で不意打ちを受ける熟成された味わい。こってりしているのにさっぱりして美味です!
クリームチーズにそっくりなねっとりなめらかな口溶けと、モッツァレラチーズみたいなムチムチした歯応え、そしてまるでカマンベールチーズのような濃厚なコクと強い塩気が特徴的な味わいで、それでいて全くしつこくないサラリとした後口が印象に残ります。
元が大豆なのでクリーミーなチーズに似ている味でありつつも、注意深く味わうと徐々に植物由来の自然な甘味が溢れだしてくる不思議な美味しさでした。 味噌のふくいくとした風味が効いているせいか様々な旨さが交差している感じで、こっくりとろけていく奥行きのある味わいな為一向に飽きがきません。
味噌の単に塩辛いだけではない複雑な塩味と、豆腐のまろやかな油分が組み合わさるとこんなにもチーズっぽい深いコクとまったりした酸味が生まれるのかと、ちょっと感動しました。
重厚感の不足や風味の差異があるのでチーズその物とまでは言えませんが、ハード系チーズに匹敵する旨味がありながら特有の癖や匂いがない分、食べやすさでは勝っていると思います。
今回は麦味噌ベースの合わせ味噌を使ったせいかオーソドックスに甘辛い後口でしたが、使う味噌を色々変えてみるとまた違った味わいになって多種多様な出来栄えが期待出来そうだと感じました(一度白味噌で作った事がありますが、それだと甘さがより際立っていました)。
見事なまでに大豆尽くしの献立でしたが、満足度の高くて健康にもよさそうなところが気に入りました。
大豆の煮物は小さい頃苦手でしたが、今食べると大豆ならではの素朴な味わいがしみじみおいしく、懐かしい気分にさせられます。
蜆肉飯の王道的な旨さは勿論、噂には聞いていた豆腐の味噌漬けがまさかここまで美味だったとは、嬉しい誤算でした(^^)。
●出典)『けずり武士』 湯浅ヒトシ/双葉社
※この記事も含め、当ブログの再現料理記事は全てこちらの「再現料理のまとめリンク」に載せています。
『澤飯家のごはんは息子の光がつくっている。』の“炊飯器のおからチーズケーキ&プリントースト”を再現!
- Mon
- 23:50
- 再現料理
なので、近頃はいい加減慣れつつあったのですが、今日の夕方に公園脇の道を歩いている時、小学三~四年くらいの男の子から「あの、今何時ですか?」と不意打ちで聞かれたのには「初パターンだΣ(゜Д゜;)!」と大いに戸惑いました;。
どうも、結局きょどってしまった挙句「はい、今は六時半ぐらいだよ」という中途半端な情報を提供してしまい猛省した管理人・あんこです。
本日再現する漫画料理は、『澤飯家のごはんは息子の光がつくっている。』にて主人公・澤飯光君が家族や周囲のお友達と一緒に作った“炊飯器のおからチーズケーキ&プリントースト”です!
漫画『澤飯家のごはんは息子の光がつくっている。』とは、料理上手なお母さんを亡くして自炊の必要性を強く感じたごく普通の中学一年生の主人公・澤飯光君が、家事の面ではかなり頼りないお父さんとまだまだ幼い幼稚園生の妹・瑞穂ちゃんの為に、かつてお母さんが作ってくれていたご飯の記憶を少しずつ辿りつつ懐かしい料理を作って生きていく、ちょっぴり切ない要素が混じったほのぼの日常系料理漫画です。
お母さんが亡くなって約半年たった光君は、呆然とした状態からようやく立ち直ろうとしますが、我に返って真っ先に気付いたのは、食生活・住環境・健康が少しずつ、そして確実に悪化しつつある我が家の実態。
お母さんがいなくなってからというものの、仕事に忙しいお父さんは家にまで手が回らず部屋は荒れ放題、その上家族全員がメタボ・ニキビ・食欲不振・胃痛にまで悩まされている事に冷静になって初めて気付いた光君は、それまで「僕らは母ちゃんに、生かされていた」という事実を心身ともに実感します。
何気ない日常を保つ為の、目には見えにくい地味な作業の一つ一つがどれだけ重要な事だったのかを、お母さんの死を受け入れる事によって水のように淡々と悟る光君の横顔シーンは、この作品の中でも一、二を争うほど秀逸な場面だと思います。
そこで光君は、今では苦しいだけではなく懐かしく思い返せるようになったお母さんの料理の数々を思い出しつつ、料理が全く作れない状態から半ば手探りしつつ日々のご飯を作るようになります。
自身を「大阪人の母と東京人の父を持つ<ハーフ>」となかなかユニークな表現をする光君の作る料理は特に関西よりでも関東よりでもなく、どこかの家庭で普通に食べられていてもおかしくない定番のご飯ばかりですが、「お味噌汁にはいつも麩が入っている。花麩は一人一個」「クリームシチューはケチャップライスと共に食べる」「モダン焼きには、焼きそば麺を刻んで混ぜる」など所々澤飯家独自のルールが垣間見えるのが面白く、読んでいるうちに「我が家なら○○して食べるかも…」と比較したりして読めるので、自然と親近感を感じさせられます(^^;)。
その後、物語が進むごとに光君一家はお隣に住む大学一年生の幼なじみ的女性・杏姉ちゃんや、同じ中学校の熱血体育会系スポーツ少年・壱吾君とも時折家族ぐるみで食卓を囲むようになり(今作品は、そんな家族+αのドタバタな交流劇も見所の一つです^^)、その結果光君の家事の腕も次第に上達していきます。
その為、澤飯家の食卓は段々賑やかな物になっていき、光君は何かと料理をおねだりされる事が多くなるのですが、ここで忘れてはならないのが光君は決して料理好きではないという事。
大抵の料理漫画だと、主人公達は大抵料理好きで炊事が得意という設定になっている事がほとんどですが、光君はたま~に生々しく、リアルに「何で、母ちゃんおらんねん!」「何で、父ちゃんやらんねん!」「僕だって、普通の中学生みたいに遊びたいのに」と心の中で怒ったり、「何で僕だけが!」とみんなの前で大声を出してしまったりと、なかなかもどかしいシーンもあります。
本作品はほんわか可愛い少女漫画の絵柄なので、当初このシーンを見た時は結構ドキリとしてしまう描写をするな~と少々驚いたものの、決して一方的な理想の子ども像のみ書かなかった山田先生に対し、深く好感を抱いたのを覚えています。
しかし、光君は一巻の終わりで、妹・瑞穂ちゃんの「ヒカ(光君の事;)、おいしーよっ!!」という笑顔を見て、下記のように独白するようにまで成長します。
―誰かと食べるご飯は、上手やなくても、手抜きやとしてもおいしい。
―誰かが喜んでくれると嬉しい。だから僕は、面倒だって作るんや。
―お母ちゃん、僕はお母ちゃんの紡いでくれた命を食べて生きています。
面倒でも、疲れていても、当たり前扱いされて感謝されなくても、理不尽だと思っても、誰かやらなくてはいけない。そうでなければ、快適に生きていけない。だから、今日も一日投げずに生きていく。
『澤飯家のごはんは息子の光がつくっている。』は、そんな毎日を送りつつも「やっぱりきつい」とやさぐれそうになった時にふと手にとり、ほっと癒されるのに最適な良作です。
今回再現するのは、光君から「また来てや」という言葉をもらって以来、二日に一回のハイペースで澤飯家へ通うようになった杏姉ちゃんが、ダイエット成功記念としてネットから拾ってきたレシピを参考にみんなと力を合わせて作る事になった“炊飯器のおからチーズケーキ”!
作り方は簡単で、クリームチーズ・甜菜糖・卵黄・はちみつ・豆乳・レモン汁・おから・小麦粉・メレンゲを混ぜて用意した生地を炊飯器へ流し込み、炊飯スイッチを押して炊いたらもう出来上がりです。
カロリーを気にする杏姉ちゃん、虫歯を防ぎたい瑞穂ちゃん、甘い物がそこまで好きではないお父さんというそれぞれ難しい注文をする三人全員に好評だったチーズケーキで、みんな熱いうちに頬張って「おいし~!」「炊飯器なのに、結構本格的なチーズケーキだなー」と和気藹々としながらおやつタイムを楽しんでいました(^^*)。
個人的に、おやつは人数が多ければ多い程食べるときの幸せ度数が上がる食べ物だと思っている為、このシーンを見るたび「いいな~、一回こんなおやつパーティーを開きたいな~」とつい羨ましくなります;。
実を言いますと、炊飯器でケーキを作ると機種によっては壊れてしまう可能性もあるのでずっと躊躇していたのですが、最近偶然にガラクタ置き場;から見つけた炊飯器の説明書に「連続して炊飯機能を使わなければ、使用可」という記述を見つけたため、チャレンジしてみることにしました。
作中のレシピになるべく忠実に沿いつつ、早速作ってみようと思います!
という事で、レッツ再現調理!
まずは、生地作り。ボウルに約三十秒電子レンジにかけたクリームチーズと甜菜糖を加えて泡だて器で混ぜ、やがてねっとりしてきたら卵黄、はちみつ、レモン汁を入れてよ~く混ぜ合わせます。
全体が黄色っぽいクリーム状になったら、少しずつ豆乳を注ぎつつ、さらにグルグル混ぜます(三番目の画像は、勢い余って一気に豆乳を投入してしまった衝撃図です。皆様は気をつけてくださいorz)。
なめらかな液体状になったら、生おからとふるいにかけた小麦粉を何回かずつに分けて入れ、ダマにならないよう慎重かつ丁寧に合わせていきます。
※生おからは炒ってから使ってもいいですが、そのまま入れても充分おいしかったので特に気にしなくてOKです。
そこへ、卵白をツノがピンと立つまでしっかり泡立てておいたメレンゲを生地へ三回くらいに分けて加え、粟をつぶさないように気をつけつつ、ゴムベラでそっと混ぜ合わせていきます。
この時、上部分だけを混ぜるのではなく、底から持ち上げるようにして回しながら混ぜるのがベストです。これで、ケーキの生地は出来上がりです。
次は、いよいよ焼き作業。
…とはいっても、先程の生地を炊飯器の釜に流し込んでフタをし、そのまま炊飯スイッチを押すだけで作業は終了しちゃいます。オーブンみたいに温める作業がないので、すごく楽でした;。
※一回だけでは炊けない可能性が高いので、場合によっては二~三回目の炊飯スイッチを押す事も必要になります。
但し、連続して炊飯機能を使うのは炊飯器にとってかなりの負担になりますので表面が固まった時点で取り出し、電子レンジで強制的に火入れしちゃうのも一つの方法です;。
中まで火が通った事を確認したら炊飯器の中からドスンとケーキを取り出し、大皿へ丸ごと一個置けば“炊飯器のおからチーズケーキ”の完成です!
作中だと炊飯器の底部分の全面がフライパンで焼いたみたいに茶色くなっている見た目でしたが、当管理人の焼き方がおかしかったのか、どことなく虎模様を思わせる焼き目になっていましたorz(一瞬、失敗をごまかそうとあれこれ考える余り「虎柄=大阪のおばちゃんが好む=関西風」という大変苦しい考えが頭をよぎりました。関西方面の皆様、申し訳ございません;)。
ただ、香りの方はチーズケーキそのものの芳しい香りだったので、食べる前からおいしそうな予感を感じて幸せな気持ちになり事ができました(^^*)。
それでは、一人前サイズに切り分けてお皿へ取ったら、いざ実食!
いただきまーすっ!
さて、味の感想ですが…ふっくらモチモチした幸せな焼き上がりで、思わず頬がゆるむ一品。おからのケーキの中では一、二を争う旨さです!
結構大量におからを混ぜ込んだはずなのに、全く大豆の匂いやモソモソした感じがせず、それどころか非常になめらかな舌触りなのが嬉しいです(おそらく、メレンゲによって大量に混ざりこんだ空気の力だと思います)。
なかなかずっしりとお腹にたまるタイプの食べ応えのあるケーキなのですが、豆乳や甜菜糖などといった低カロリー食材を使ったり、ノンオイルに仕立てたりしたせいかヘルシーな味わいで、胃にもたれないのがナイスでした。
クリームチーズの淡くてクリーミーなコクが心癒される、基本あっさりした味が特徴的です。
本格的なチーズケーキというよりは、ヨーグルト入りチーズケーキ特有の優しくてほんのり甘酸っぱい味わいの方に似ており、レモン汁の爽やかな酸味が後口をさっぱりさせていました。
ホットケーキみたいなほかほかふんわりした口当たりと、蒸しパンみたいにもっちりしたが弾力が楽しめるお得なケーキで、例えるとするならば「蒸しパン風ふかふかおからチーズケーキ」だと思いました。
炊飯器だからこそ出来る、表面のツルツルカリッとした表面が普通のチーズケーキとは目先が変わって面白い感じで、中のモチモチ感といい対比になっています。 蜂蜜の自然な甘味が印象強い、家庭的な旨さのダイエット向きチーズケーキだと感じました。
炊飯器の癖によって焼く回数が変わったり、火の通り加減を見計るのが難しかったりと正直初心者向けのケーキではない感じでしたが;、炊くことによって生まれる独特の食感が面白いケーキです。
おから抜きで焼いたり、上白糖や牛乳を使ってもっとこってりさせたりと色々応用が利きそうなので、またチャレンジしたいユニークなレシピでした。
○おまけクッキング・“プリントースト”
さて、“炊飯器のおからチーズケーキ”の他に当管理人の印象に強く残ったおやつがもう一つあります。
その名もズバリ“プリントースト”で、まだ光君のお母さんがご存命だった頃によく作ってもらっていたという想い出の一品。
作り方はあっけない程簡単で、軽く焼いたトーストの上にプリン(作中の絵を見るに、どうやらプッ○ンプリンみたいでした;)を砕きながらぬったらあっと言う間に出来上がりです。
壱吾君に「(お母さんを)スゲーと思って」「会いたかったな」と言わせしめ、そのあまりの美味しさに二枚目へと突入させたアイディアトーストで、一風変わった感じですが妙に惹かれて以来ずっと作ってみたいと思っていた為、“炊飯器のおからチーズケーキ”の再現後にすぐ作ってみました。
一枚のトーストにプッ○ンプリン一個を乗せてちょうどいいくらいなので、用意するのが本当に楽でした(^^;)。
熱いトーストの上に冷たいプリンが乗っているというのはちょっと違和感がありますが、意外にもしっくりはまっていていけそうな感じだったので、これは味の方にも期待が持てそうです。
それでは、出来たての内にいざ実食!
いっただっきま~す!
そして、肝心な味の方ですが…感動して、思わずもう一枚焼いてしまった程魅惑的な旨さでした(´Д`*)!
ちょっと溶けてカスタードクリームみたいになった下の部分と、プリンの形のままでプヨッとした上部分の両方ともトーストと相性抜群で、簡単に作ったにしてはなかなか凝った旨さです。
味自体はカスタード風味ですが、カスタードクリームみたいに重くはなくサラッとした口溶けなので食べやすいです。
カラメル部分のほろ苦さが所々で舌を刺激していいアクセントになっているのがまた複雑な旨さにさせていますし、まさに言う事なしでした!
ひんやり冷たくてプルプル身を震わせながらとろけていくプリンと、熱々で香ばしく焼き上がったサクサクのトーストの取り合わせが絶品で、甘い者好きな方に大オススメな癖になる一皿です!
●出典)『澤飯家のごはんは息子の光がつくっている。』 山田可南/小学館
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『美味しんぼ』の“究極のメニュー&至高のメニューのカツオのたたき”を再現!
- Thu
- 22:30
- 再現料理
水か…甘茶か…ギリギリ譲歩して甘酒だったのか…。いや、もしかしたら南蛮人直伝のホットチョコレートだったのか…。
通説を覆しかねない空想に、ワクワクが止まりません。
どうも、もし千利休の茶室で信長さんが髑髏のお椀をクルクル回していたとしたら、相当シュールだと思う管理人・あんこです。
本日再現する漫画料理は、『美味しんぼ』にて山岡さんと海原雄山氏が<カツオのたたき対決>の場でそれぞれ作った“究極のメニュー&至高のメニューのカツオのたたき”です!
これは、山岡さん・栗田さん・まり子さん・近城さんら四人の繰り広げる複雑な四角関係が、まだまだ終わりをみせる気配がなく青春真っ盛りだった頃のお話;。
当時、東西新聞社で意欲的に取り組んでいた<世界味めぐり>シリーズで、高知県の土佐湾で行なわれるカツオの一本釣りの取材に来た山岡さん達四人組は、撮影終了後に近城さんが一押しする土佐料理専門の料亭へ足を運ぶ事にします。
しかし、何とそこは海原雄山氏が常連客として通うお店で、運悪く海原雄山氏が食事がてら究極のメニューをボロクソにけなしている所に鉢合わせしてしまった山岡さんは、「まさか俺に聞かれているとは知らず、言いたい放題抜かしていたようだな(゜Д゜#)」「お前如きおおたわけが聞いていようといまいと、私のいう事はいつも同じ ( ´,_ゝ`)プッ」など案の定攻撃的な言葉の応酬をしてしまい、さながら犬と猿のように一気に険悪なムードになって睨み合う羽目になります。
それにしても、普段は東京にいてお互い避けている節があるお二人が同じ時期、同じ場所、同じ料理を選んで出会ってしまうとは、仲が悪いように見えて実はすごく気の合う親子なんじゃないかとつい勘ぐってしまいます;。
漫画『ジョジョの奇妙な冒険』では、これと似た現象をよく「スタンド使いは惹かれ合う」という表現を使いますが、それと同じく『美味しんぼ』界では「美食使いは惹かれ合う」ものなのかもしれません…(´Д`;)。
この時山岡さんは、次の対決についてまだ何も用意をしていなかったのにも関わらず、雄山氏から「ふふふ…士朗、高知で恥をかいてみるか」「カツオのたたきを作ってみろ。私も作る」と挑発されたのに乗ってしまい、突発的に至高のメニューVS究極のメニューの<カツオのたたき対決>をする事を独断で決めます。
ちなみに、山岡さんはこの時点で会社の許可は一切とっておらず、当然の帰結として後から高知にやって来た社主たちからきっちりしめられていました;。思えば、この頃から山岡さんは半ば私怨で究極のメニューの担当をしていたのだな~と苦笑してしまいます(^^;)。
その際、山岡さんの率いる究極のメニュー側と、雄山氏が仕切る至高のメニュー側が各々でこだわりを持って作り出した新しいカツオのたたきが、今回ご紹介する“究極のメニュー&至高のメニューのカツオのたたき”です!
“究極のメニューのカツオのたたき”は完全に和風で、往来のたたきと決定的に違うのは身の切り方と味付けの仕方。作り方は比較的簡単で、皮の下数ミリまで火を通したカツオを拍子切りにして氷詰めの器に飾り、しょうが・みょうが・青しそ・にんにく・すだちといった薬味類、醤油と日本酒と梅干しを煮切ったものをあわせたつけ汁を添えたら出来上がりです。
山岡さん曰く「分厚く切ると歯ざわりが悪く、薄く切れば歯ごたえが楽しめないので拍子切りにしました」だそうで、つけ汁はかけるのではなくあえて別々にする事によって、カツオの身が汁を吸い過ぎてべしゃべしゃになるのを防いだとの事でした。
一方、“至高のメニューのカツオのたたき”は打って変わって西洋料理風!
作り方はこちらもお手軽で、表面に醤油をぬって寝かせたカツオのサクをごく薄く切ってお皿に並べ、上からケッパー・にんにく・青じそ・バジル・タイムをすりつぶしたペーストを加えて混ぜたフレンチドレッシングをかけたら出来上がりです。
雄山氏が言うには「本当に旨いカツオは秋の戻りカツオだという。私もその説に賛成だ」「そこで、この若いカツオの風味には脂を含んだソースをかけて、戻りカツオの濃厚な味を作り出してみた」という理由でこの料理を作ったと話していました。
雄山氏にしては大変珍しく、そのままの素材の持ち味を活かすのではなく、全く別の季節ならではの旨さを人為的に生み出す料理法で、最初読んだ時はちょっとした違和感を感じたのを覚えています。
そして肝心な勝負の結果は、ズバリ雄山氏&至高のメニュー側の勝ち!
勝敗の理由は、あくまで一本釣りのカツオにこだわって他の漁法で獲れたカツオを探そうともしなかった山岡さんと、それに対して血抜きの重要性や一本釣り以上に最良な漁法を貪欲に探した雄山氏とでは、後者の方が一歩先を見据えているからという理由で、至高VS究極の一番最初の対決で唐山陶人先生が「食材が本物かどうかだけで勝負を決めるなんて、つまらんわい!」とあれほど主張していたにも関わらず、素材の良し悪しで勝ち負けが決まっちゃっていました;。
その為、個人的には「調理法だけを評価した勝敗も見てみたかったな~(´・ω・`)」と残念に思わなくもないのですが、作中で審査員をつとめた新入行員達に雄山氏が話した「仕事に慣れてきた時は基本を忘れやすい、それに気をつけたまえ」「常識よりさらに一歩二歩奥へ踏み込んで、考える努力を惜しまぬことだ」という教訓は非常にためになるので、これは料理勝負と言うよりは形を変えた新人教育の一環だったのだと考えれば何となく納得させられたエピソードでした。
やっと初カツオが手頃なお値段で近所のスーパーにて出回るようになった為、再現をする機会にこぎつける事が出来ました;。
相変わらず詳細なレシピはありませんでしたが、作中のあちらこちらで作り方がそこそこ詳しく書かれていたため、それらを参考に早速作ってみようと思います。
という事で、レッツ再現調理!
まずは、カツオの下ごしらえ。究極のメニュー用のカツオは、カツオの皮→身の順に火を通しすぎてしまわぬよう表面だけさっと焼き、幅七~八ミリの厚さに切ったらさらに横へ倒して、今度は約一センチ幅の拍子切りにします。
切り終えたら透明な器に青しそと共に盛り付け、冷蔵庫で冷やしておきます。
至高のメニュー用のカツオは、刷毛で醤油をカツオの表面にぬってしばらく冷蔵庫で寝かせ、よく切れる包丁を使用してごくごく薄~い削ぎ切りにしてお皿へ放射線状に飾り付けます。
※カツオのような赤身の身は基本柔らかめで、薄く切ろうとしてもすぐにぐずぐずになってしまいますい為、どうしても薄切りが難しい場合は一旦凍らせてから切るのもありです!
その間、究極のメニュー側の薬味であるしょうがはすりおろし、みょうがは千切り、青しそはザク切り、にんにくは芯を取ってから薄切り、すだちは真っ二つに切って器に乗せておきます。あと、生醤油に日本酒と梅干しを煮切ったものを混ぜた特製つけ汁も準備します。
また、至高のメニュー側はにんにく、ケッパー、青じそ、バジル、タイムをすり鉢でつぶしてペースト状にしておき、それを塩・こしょう・マスタード・オリーブオイル・レモン汁などで作っておいたフレンチドレッシングに加えてよ~く混ぜ合わせ、特製ドレッシングを用意します。
充分に冷えた究極のメニュー側のカツオを氷入りの容器へ入れ、その横へ先程の薬味類と特製つけ汁を添えれば“究極のメニューのカツオのたたき”は完成です!
どちらかと言いますと、たたきというよりはまるでタルタルステーキみたいな見た目だと感じました。
作中で書かれて合ったとおり用意したおろししょうが・みょうがの千切り・青しそ・にんにくの薄切り・すだちが乗った薬味プレートが涼しげなイメージをさらに高めており、これこそまさに「初夏の料理」と呼ぶに相応しいです。
砕いた氷を敷き詰める事によって指が痺れるくらい器が冷たくなっているのが夏場にはたまらなく、早く食したい気持ちで一杯になります。
次に、至高のメニュー側のカツオが乗ったお皿の上からさっき作っておいた特製ドレッシングをやや多めに振り掛ければ“至高のメニューのカツオのたたき”は完成です!
パッと見た限りではカツオというより、まるで色の薄い馬肉のようなイメージだった為、少し戸惑いました;。
バジルや青しそ類の爽やかな香りが心地よく、これもこれで今の季節に最適な「初夏の料理」だと思います。
カツオのたたきを洋風に食べるのは初めてなので味の想像はつきませんが、見るからに美味しそうなので期待が持てます。
それでは、双方ともまだ冷たい内にいざ実食!
究極のメニュー側は特製つけ汁につけ、至高のメニュー側はドレッシングをよく絡ませて、いただきま~す!
さて、“究極のメニューのカツオのたたき”の感想はと言いますと…カツオの身をしゃっきり食べられて美味し!様々な薬味が選べて面白いです!
山岡さんの言う通り、拍子切りにするとカツオのモチモチした柔らかさを堪能しつつ、十分な噛み応えをも楽しむ事が出来る為、とにかく食感が秀逸です。
梅と日本酒の煮切りが加わって絶妙なしょっぱ酸っぱさがたまらないつけ汁がカツオにまたぴったりで、たたきと刺身を二で割ったような味わいが特徴的でした。
社主達が言う通り「カツオの身がキリキリと冷えていて!」「何とも言えん歯応えだ!」に仕上がったカツオが美味で、時間が経っても身がふやけたりしないのが最大の利点だと思います。
長ネギは、爽やかな香りやシャリシャリ感がカツオの旨さを純粋に味わわせる印象。
にんにくは、サクサクした食感と力強く濃い風味がカツオをがっつり食べさせるイメージ。
みょうがは、シャキシャキッとした歯触りやキリリと鮮烈な香気がカツオを引き締める感じ。
しょうがは、ピリッとくる鋭い辛味と清々しい香りがカツオをさっぱり食べさせる印象。
青しそは、ザクザクザク感や鮮やかな香りがカツオを一番シンプルに引き立てる感じ。
すだちは、ほんのり甘さを帯びたすっきりした酸味と爽快な風味がカツオをわずかにしめ、即席酢締めにしたようなキュッとした味わいにしてくれました。
薬味の組み合わせ次第で味の変化が自由自在なので、違った旨さを新発見するのも愉快です(例・みょうが+すだち=爽やかマリネ風など)。
さて、“至高のメニューのカツオのたたき”の味ですが…山岡さん側とは打って変わって、完璧にイタリアンな一皿!意外にもしっかり歯応えのあるカツオが美味です!
当初は「ただでさえ柔らかなカツオを薄切りにすると、グズグズになりそう」と心配していましたが、実際に食べてみるとフレンチドレッシングに含まれるレモン汁によってちょうどいい塩梅に水分が抜けて身が締まり、極薄なのにも関わらずしなやかな弾力とシコシコジャクッとした歯触りとが融合した素晴らしい食感に仕上がっています。
そのせいか、カツオなのにどことなく鶏刺しに似た食べ味で、食べて何度も不思議な思いにとらわれました。
作中で雄山氏が言った通り、確かに「戻りガツオの濃厚な味」が洋風のソースで擬似的に再現されていて程よいこってり感が生み出されていますが、初カツオの赤身だからこそ味わえるあっさりした旨味とプリプリした若々しい肉質もちゃんと存在感を主張してくる為、初カツオにも戻りカツオにもない独特な味わいなのが印象的です。
バジルの華があって爽やかな香り、青しその「和」を感じさせる清々しい風味、タイムの優雅でシャープな香気、にんにくのガツンとくる旨さ、ケッパーのフローラルな香りを帯びた上品な酸味がフレンチドレッシングによって一つにまとめられており、例えるとするなら「カツオのマリネ風爽やかカルパッチョ」というイメージでした。
血の匂いが多種多様な香草によって完全にかき消されているのがいい感じです。
ただ、やはりこれはたたきではなく完全な創作料理だと思いました;。
作中では至高のメニュー側が圧倒的大勝を収めていましたが、個人的にこれは料理法だけで判断するならアプローチの仕方が全く違う料理なので、一概にどちらが優れているか断言できないと感じました。
究極のメニュー側は古くから存在するカツオのたたきをより洗練させたもの、至高のメニュー側は完全に新しいカツオのたたきを模索して完成させたものというイメージで、どちらも素晴らしいと言う点では甲乙つけがたいです。
前者はきりりと喉が絞れるくらい冷やした日本酒、後者はひんやり程度に冷たくしておいた白ワインが似合う感じだと思いました。
○追記(2012.06.16に一部追加)
またまた懲りずに、右のプロフィール欄にある「再現料理を予定中の漫画」一覧へ『けずり武士』、『澤飯家のごはんは息子の光がつくっている。』、『ひよっこ料理人』、『ポジティブ・クッキング』の四作品を新たに追加しました。
今月から来月にかけては、少なくともそれらから三~四作品をチョイスして再現&記事作成できそうですので、もしご縁がありましたらご一読して頂けますと幸いです。
●出典)『美味しんぼ』 原作:雁屋哲 作画:花咲アキラ/小学館
※この記事も含め、当ブログの再現料理記事は全てこちらの「再現料理のまとめリンク」に載せています。