『フェルマーの料理』の“理想のナポリタン”を再現!
- Thu
- 23:50
- 再現料理
洗濯物を干すのは室内、生活用品の購入も通販で済ませるようになってからというもの、どんどん堕落している気がしています。
思ったより食材の減りが遅かったり、夫と休日が合わない日が続いた時など、約2週間近く家から出なかった時もあり、ある意味自ら望んで
どうも、先日久々に外出して桜を目の当たりにし、やっと春の訪れを感じた当ブログの管理人・あんこです。
今回再現する漫画料理は、『フェルマーの料理』にて主人公・北田岳君が自分なりの「式」を見つけて辿り着いた“理想のナポリタン”です!
『フェルマーの料理』とは、この世の真理を数式によって見出せるような数学者になりたいとずっと憧れ、あらゆる数学コンクールで金賞を受賞する程天才的頭脳を持っていたものの、18歳で参加したある数学オリンピックの会場で「僕は…なれない」と唐突に悟った主人公・北田岳君と、夢破れて学園内の食堂でバイト中だった岳君がしていたある工夫に非凡さを感じ、「お前の数学的思考は料理のためにある」とスカウトした若き天才料理人・朝倉海さんがおりなす、数学と料理のマリアージュというありそうでなかった新感覚料理漫画です!
実は、前作『てんまんアラカルト』と同じ世界のお話で、最終巻から約5年時が流れた設定になっています(←『てんまんアラカルト』が連載終了したのは2013年、『フェルマーの料理』が連載開始したのは2018年ですので、現実世界の時の流れとほぼ同じです。粋です)。
しかし、前作の主人公・七瀬蒼司君を始めとする主要キャラは一切登場しておらず、唯一、蒼司くんの親友でクールな優等生サブキャラ・朝倉海さんだけが中心人物として再登場しております(←時系列が同じ作品で例えるなら、『ドラクエ』シリーズや『ドラゴンボール』のように主人公の子孫が主役を継ぐタイプではなく、『幻想水滸伝』のように前作主人公以外の血統が主役になるタイプのお話ですね)。
最終回に意味深かつ衝撃的な退場をしていましたが、あれから何があったのか、23歳という若さで「高校中退後本場フランスのパリで修行し、スーシェフとして最先端のフレンチシェフとして活躍」「帰国後すぐ都内で開いたレストランは、史上最年少で一つ星を獲得」「ジャパンフレンチの新星」という、異世界転生したなろう系主人公ばりにチートキャラになっていました。
元々才能はあったものの、それでは追い付かないくらいの凄まじい成長で、思わず『ベルセルク』のグリフィスみたいに蒼司君達を贄にして使徒になったのかと心配になりました。
というのも、18歳の時は大人びていたものの常識的なキャラだったのに、今では冗談抜きで最終回の「あの人」に何か捧げたとしか言えないレベルで暗黒面に堕ちた人格となっており、かなりエキセントリックになっていた為。
「宇宙史上まだ誰も発見していない唯一無二のレシピを築き上げること」「料理の歴史は人類の歴史そのものだが、先人の築き上げた歴史をおれの手によって分断する。すなわち、俺以前と俺以後に」という、イエス・キリストばりに壮大な存在になる野望を抱いており、それに役立たない人間は利用するだけして躊躇なく切り捨てるという、ネット上でよく極悪非道と呼ばれる『鉄鍋のジャン』の秋山醤以上に容赦ないキャラに変貌していて岳君から何度もドン引きされていますので、前作の伏線回収も含め目が離せない作品です。
そんな海さんとは正反対と言ってもいい人物が、今作主人公の岳君。
普段は内気で押しが弱い草食系男子っぽい性格ですが、数学や料理の事になると途端に生き生きとするのが見ていて微笑ましく、『てんまんアラカルト』以上に癖も気も口調も強い登場キャラばかりの中において、貴重な癒し要素です。
この岳君の最大の武器は、「綿密な計算と理論をもって一品にむかう」と評されている通り、「数式の正誤が<分かる>じゃな<見える>」という根っからの数学脳(←実際、下の画像にある通り岳君は物でも人でも数式が目の前に浮かんで見えるそうで、まるで『DEATH NOTE』で人の寿命が浮かんで見えた死神みたいな能力だと感じました)!
主観的な感覚という要素も大事にしつつ、どんな理論を使えば無駄なく美味しい「式=レシピ」が成り立つかと悩み、時には失敗しつつも着実に数式を組み立てて成功していく描写は、これまでにないもので非常に新鮮でした。
通常、漫画界ではこういう頭脳に頼りがちなデータ系キャラは敵サイドの方に多い存在で、大抵データを上回る超人的成長を見せる主人公サイドに敗北するのが非常に多く、ワンパターンだと感じていたので驚いたものです(←『テニスの王子様』の乾さんが有名ですが、『HUNTER×HUNTER』に出てきた187番のニコルさんも地味に忘れられないです)。
また、今作は料理漫画では珍しくバトル要素やトーナメント開催がなく、冗長にならずテンポよく話が進むのが個人的に高ポイントなので、いろんな方にお勧めしたいです!
今回再現するのは、記念すべき最初のエピソードで海さんに拉致された岳君が一縷の望みを託して作っていた“理想のナポリタン”。
作り方は意外と簡単で、油をひいて熱したフライパンで玉ねぎ→ウインナー→ピーマンの順に炒め、具が炒まったら片側に寄せてケチャップをフライパンに直に入れて混ぜ、最後にマヨネーズと白ワインビネガーを和えて冷やしていおいたスパゲティーを投入して炒め合わせたら出来上がりです!
ポイントは、スパゲティーは1.8~1.9ミリの太さの乾麵を使用すること、袋に記載された時間より2分長く茹でて氷入りの冷水で締めること、水気をきったスパゲティーはマヨネーズと白ワインビネガーでマリネして冷蔵庫でさらに冷やすこと、玉ねぎは飴色になるまで炒めてメイラード反応を起こすこと、ケチャップを入れる時は必ず具を片側に寄せてからフライパンに直に触れるようにして入れて香ばしさを出すことの5点で、こうすると思い出として美化されているナポリタンの味に追いつく旨さに仕上がるとのことでした。
ナポリタンに使う麺は柔らかいほうがいいのは既に周知されていますが、それでもオリーブ油を和えて寝かせる方法が主流の為、マヨネーズと白ワインビネガーを使うというアイディアは初耳でびっくりしました(←何でも、マヨネーズは既にお酢と油と卵が乳化されている為、表面をコーティングするだけでなく風味付けもできるとのこと)。
おまけに、味付けも実質ケチャップしか使わない質素さも前代未聞で、これまでウスターソースや醤油を隠し味に使っていた身としては半信半疑で読んだものです。
あと、これに加えて岳君が「誰でもやっている」と考えて無意識にやっていた工夫が、人が最も心地よく感じ料理への期待が高まるとされる45度に温めたフォークで、これが決定打となって海さんは岳君に数学と料理の才能があると確信したと語られていました。
最近無性にナポリタンが食べたくなったものの、マンネリ化した自分のレシピで作るのは抵抗があり迷っていたのですが、作中の描写を見て挑戦したくなり、再現することにしました。
単行本には分量付きの詳細なレシピが記載されていますので、早速その通りに作ってみようと思います!
ということで、レッツ再現調理!
まずは、パスタの下準備。
1.8~1.9ミリの太さの乾麵スパゲティをあらかじめ塩を溶かしておいた熱湯の鍋に入れ、指定されている時間よりも2分長く茹でます。
スパゲティが茹で上がったらザルにあけ、氷入りの冷水でよく締めてきっちり水気をきった後、マヨネーズと白ワインビネガーを混ぜておいたボウルへ加えマリネし、そのまま冷蔵庫で冷やして寝かせます。
次は、炒め作業。
皮や根っこをとった玉ねぎは繊維にそって薄切りに、ウインナーは斜めに薄くスライスし、ピーマンは種とヘタを取り除いてから縦にやや狭い幅へとカットしておきます。
野菜をすべて切り終えたら、油をひいて熱したフライパンへ玉ねぎを入れて飴色になるまでじっくり炒め、続けてウインナーを投入して混ぜます。
ウインナーがうっすら肉汁が浮くくらいまで焼けたらピーマンも加えて炒め合わせ、全体に程よく火が通ったのを確認したら一旦具材をフライパンの片側に寄せ、熱されたフライパンの面へ直接ケチャップをかけて火入れします。
この時、すぐに具材と和えず、具材のエキスがこびりついたフライパンの肌にケチャップをそわせながら混ぜ、ちょっとだけに詰めるようにして火を通すと、ソースがより味わい深くなります。
※作中では明記されていませんでしたが、調理中の絵から察するにHeinzのケチャップが使用されていると考えてほぼ間違いなかった為、そちらを使用しました。
片側に寄せた具材を中央に戻してケチャップソースソースを和えたら、そこへ冷蔵庫で冷やしておいたスパゲティを投入し、隅々までしっかりと絡め合わせます。
その間、45度前後のお湯を張った容器へフォークを入れ、食べる直前まで温めておきます。
スパゲティにケチャップソースや具材が行き渡ったのを確認したら火からおろし、そのままお皿へ盛り付ければ“理想のナポリタン”の完成です!
作中で言われていた通り、トマトの香りがいつも作っているナポリタンの物より強く香ばしい印象で、ケチャップだけでこの香りが出るのはすごいと思いました。
いつもはもっと調味料を使ったり、スパゲティはアルデンテにしたりと全く違うレシピで作っているので味の想像がつきそうでつかず、どんな仕上がりなのか興味深いです!
それでは、45度に温めたフォークでスパゲティを巻き、いざ実食!
いただきまーすっ!
さて、味の感想は…「ずっとこんなナポリタンを求めていた!」と頭と舌にガツンときた郷愁溢れる旨さ!ありきたりな定番を極限まで追求すると、遂には非凡になると痛感する一皿です!
「ケチャップうどん」と表現される事がある程、ナポリタンは麺の柔らかさが重視されている料理ですが、こちらは昔懐かしいあの心地よいもっちりした弾力に加えて爽やかなツルツル感があり、一歩間違えれば野暮ったくなるモッチャリ感がまるでありません。
白ワインビネガーやマヨネーズの効用か、ほのかな酸味とまろやかな油分が絡んだ麺はそれ単品で既に美味しく、後を引く味付けに一役買っていました。
また、鍋肌で直接炒めつけられたケチャップは、高温によってトマトの瑞々しい甘さや香りが凝縮されて蘇っており、華やかと表現したくなるフルーティーな味わいがたまりません(←後でHeinzのケチャップを味見したところ、他社に比べてスパイシーかつトマト感が強い味でしたので、それもこの特別感のある味に関係していそうだと推測)。
ここに、メイラード反応が起きた飴色玉ねぎの香ばしいコクやウインナーの肉汁の旨味がしっかり溶け込むと、ケチャップだけで味付けしたとは信じられないくらい凝った美味しさになっていました。
この深みがありつつもしつこくない、絶妙な塩梅の甘酸っぱいソースは、新感覚で衝撃的です。
そんな中、甘苦いフレッシュなピーマンと肉々しいウインナーのカリッとした食感が柔らか麺の中でいいアクセントになっており、シンプルながらも癖になる組み合わせでした。
どの具材も比較的薄切りで、当初は不思議でしたが、そのおかげでケチャップがまんべんなくついて全体に統一感が生まれ、尚且つ麺と一緒に食べやすいのに気付いた時は、かなり感心したものです。
肝心の45度に熱したフォークですが、正直言われなければ「お、温かい」と気づきはするものの、そこまで派手に驚くほどの感動はありません。
しかし、料理へのワクワク感で夢中な時、冷たい金属の手触りで一瞬我に返るような、ある種の集中を乱すような事がないのはありがたく、地味ながらも効果的な盛り上げ要素だと思いました。
時間がある時、特別な一皿を出したい時には十分試す価値ありです。
ちなみに、夫もこのナポリタンは「うまかったな~」と後々思い出して言うくらい気に入っており、今後我が家の定番レシピにする予定です。
P.S.
ゆゆさん、無記名さん、コメントをして頂きありがとうございます!
ゆゆさん、当管理人も『丼なモンダイ!』は好きな作品なので、そうおっしゃってい頂けると嬉しいです。親鳥の挽き肉は、数年前までほぼほぼ店頭で見かけることがなかった為、相当ニーズがなかったんだと思います…。現在では、ネットショップで取り扱っている精肉専門店が結構ありますので、そちらでの検索をお勧めいたします。
無記名さん、精度の低い再現記事で申し訳ございません。『美味しんぼ』の“簡単うどん”も“山岡流夜食うどん”も、当時はさらに腕が未熟で微妙に違っていたと思います。最近、近所で“山岡流夜食うどん”で推奨されていた氷見うどんの取扱店を見つけましたので、そちらを使用して再現のやり直しをしてみようと思います。
●出典)『フェルマーの料理』 小林有吾/講談社
※この記事も含め、当ブログの再現料理記事は全てこちらの「再現料理のまとめリンク」に載せています。
※レシピの分量や詳しい内容は、以前こちらでご説明した通り完全非公開に致しております。