『まかない君』の“アボカドと玉子のスパゲッティ”を再現!
- Thu
- 22:11
- 再現料理
味の表現が的確で分かりやすいのは勿論、作者さんのワイン愛が伝わってくるのが嬉しい一冊ですので、ワインに興味をお持ちの方にはぜひともお勧めです。
どうも、最近はアルパカのカベルネ・メルローにドライフルーツのクランベリーを合わせるのが好きな当ブログの管理人・あんこです。
本日再現する漫画料理は、『まかない君』にて浩平君が弥生ちゃんのアイディアを参考に生み出した“アボカドと玉子のスパゲッティ”です!
それは、七月のある暑い日の事。
弥生ちゃんのリクエストで浩平君はチキンカレーを作り、いつも通り三人で賑やかな食卓を囲みます(←ピーナッツバター・ウスターソース・さつまいもをルーに入れて枝豆ご飯にかけるという、なかなか独創的なカレーでした。当初はびっくりしましたが、バターチキンカレーにピーナッツバターを隠し味にするやり方がありますので、案外いけそうです)。
カレーは弥生ちゃん達から「さつまいもカレーに合うね!」「こっくりまろやかでおいしいよ」と好評で、浩平君は喜びながらも「まあカレーはそうそう不味く作れないけどね」と謙遜するのですが、それがきっかけで佳乃さんはある残念なカレーの記憶が蘇ります。
それは、数年前に弥生ちゃんが作ったモツカレー。
しっかり臭みと脂抜きをしたらモツはカレーに合いますが(←清水もつカレーが有名ですね)、弥生ちゃんはどうやら何も下処理をせずにカレー鍋へモツをぶち込んだらしく、その結果凶悪に脂っこいガッツのあるカレーになったとの事でした。
モツはパックに「下茹で済」と書いてあっても、いざ食べてみるとしぶとく脂が残っていてウッとなる事がありますので、さぞ胃にもたれるカレーだったろうな~と苦笑したものです;。
実はこの時、浩平君はカレーのお供としてガスパチョやアボカドのサラダも用意していたんですが、サラダは火を一切使わず混ぜるだけで出来るレシピで、尚且つパスタ系に合いそうな味付けだった為、「あたしでも作れるね」「スパゲティにしてみよう」とリベンジをもくろんだ弥生ちゃんは、浩平君から詳しい作り方を教えてもらいます(←弥生ちゃんは今でこそ料理下手ですが、こういう食に関するアイディア力やセンスは抜群にありますので、経験さえ積めば臨機応変な料理が得意な女の子に化けられるのでは?と思います)。
この時、浩平君が弥生ちゃんに分かりやすいよう説明したレシピが、この“アボカドと玉子のスパゲッティ”です!
作り方はとても簡単で、アボカド・ハム・茹で卵・レモン汁・塩昆布・マヨネーズ・粒マスタードをボウルでよくこね合わせ、茹でたてのスパゲッティを入れて一気に混ぜ合わせたらもう出来上がりです。
ポイントは、アボカドはよく熟れた柔らかめの物を使うことと、スパゲッティにまとわりついて食べやすいようアボカドは小さく、ハムは細めに切ることの二つで、さっと作れる割には小洒落た雰囲気の一皿になりそうなのがいいな~と感じました。
シンプルな材料で、調味料はマヨネーズとレモンと粒マスタードくらいという潔さで本当に味がびしっと決まるのかちょっと心配ですが、浩平君曰く「塩気とうまみが簡単に足せて使い勝手がいい」塩昆布が色々と微調整してくれるとの事。
調べた所、塩昆布の表面の白い粉はグルタミン酸が大量に含まれていて強烈な旨味成分になるそうですので、サッパリ系に見えて案外濃厚なソースに仕上がるのかもしれない…と想像したものです。
本当は、元のサラダのレシピだと茹で卵はうずらの卵だったのですが、ツルツルしたうずらの卵よりも茹で卵の方がスパゲッティに絡みやすくなるので、あえて変更したと浩平君は話していました。
確かに、うずらの卵はスパゲッティと絡めようにもすぐに滑りおちて食べにくいことこの上なさそうですので、ナイスアレンジだと思ったものです(←…と思っていたら、ネットでこんなレシピを発見しました。これはこれでおいしそうだな~と思いますが、フォークではなくお箸必須ですね;)。
ありそうで全く見た事がないレシピでしたので、どんな味か知りたくて再現してみる事にしました。
作中には詳細なレシピがきっちり記載されていますので、早速その通りに作ってみようと思います!
という事で、レッツ再現調理!
まずは、ソース作り。ボウルへ皮や種を取った後に小さく刻んだアボカド(是非とも熟した柔らかめのものを!)、レモン汁、塩昆布、マヨネーズ、粒マスタードを入れ、スプーンでつぶすようにしてザクザク混ぜます。
全体がねっとりして調味料の味が染みたら、細切りにしたハムと輪切りにした茹で卵を投入し、よーく練り合わせます。
材料が混ざったら、ソースは出来上がりです!
茹でたてのスパゲティをソースが入ったボウルへ入れ、しっかり絡め合わせてお皿へ盛り付ければ“アボカドと玉子のスパゲッティ”の完成です!
緑色に染まったスパゲティは一見バジルペーストを絡めたみたいに見えますが、アボカドやマヨネーズの香りがその予想を打ち砕く為、一瞬頭が混乱します。
塩とこしょうで味付けせずとも、しっかり味が決まるものなのか…食べて確認してみようと思います!
それでは、麺がのびない内にいざ実食!
いっただっきまーす!
さて、味はといいますと…そのまま食べるのとは全然違った美味しさで驚き!組み合せが酷似しているせいか、アボカドサンドのパスタ版だと感じました。
パスタの熱が少し入ってトロトロになったアボカドからは青臭さが完全に抜け、まったりクリーミーなのにしつこくないコクがコシのあるパスタに効いています。
こってり濃厚なアボカド風味のレモンマヨネーズ味ですが、果実ならではのフレッシュな汁気が果肉から時折ジュワッと出て来てくどさを軽減させている上、ねっとりとペースト状になってまざっている茹で卵の卵黄のホクホク感とほのかな甘味が全体をマイルドにしている為、スパサラ感覚で頂けるのが特徴的でした。
粒マスタードのスパイシーでピリッとした酸味と、レモンのすっきりフルーティーな酸っぱさが後口をさっぱりさせ、塩昆布からにじみ出る強い旨味成分と塩気が単調になりがちなマヨ味に深みを与えているのがナイスで、見た目によらず結構凝った味わいです。
例えるとするなら「アボカドディップ仕立てのなんちゃって爽やかカルボナーラ」というイメージで、アボカドが朧気ながらもチーズや生クリームの代わりになり、カルボナーラ特有のあのもったりした口当たりまでもが再現できているのに感動しました。
茹で卵の白身のプリプリした舌触りと粒マスタードのプチプチ感、そしてハムのシコシコした歯触りがいいアクセントになり、癖になります。
そのまま食べてもおいしいですが、スパゲティに絡めるとアボカドのコクがより際立つのでおすすめです(←トーストに乗せても絶品!)。
ビールや白ワインにぴったりなお洒落な一皿で、冷めてもちゃんとおいしいのが嬉しい一皿でした。
P.S.
コメントを下さった皆様、ありがとうございます!今年もよろしくお願いします。
●出典)『まかない君』 西川魯介/白泉社
※この記事も含め、当ブログの再現料理記事は全てこちらの「再現料理のまとめリンク」に載せています。
※レシピの分量や詳しい内容は、以前こちらでご説明した通り完全非公開に致しております。
『華中華』の“夏の中華風ステーキ”を再現!
- Thu
- 22:22
- 再現料理
2016年度初にして、再現料理数の合計が800個目に到達する、個人的におめでたい記事を更新致します。
今年も何卒よろしくお願いします。
本日再現する漫画料理は、『華中華』にて島野さんが暑い時期に新作ランチとしてお店に出した自信作・“夏の中華風ステーキ”です!
それは、上海亭にロー・サンチク(その正体は、ハナちゃんの実の大叔父・竹三郎さん)が訪れ、“手作りラー油のニラ玉チャーハン”を認めてくれた日から数日経った日の事。
ロー・サンチクから直接中華料理の手ほどきを受けたいと考えたハナちゃんは、「ロー・サンチクが今日は満点大飯店に現れたそうだぞ」という情報に飛びついて満点大飯店へ駆けつけ、成り行きで一緒に「世直し食べ歩き」に参加する事になります。
どうやら島野料理長もロー・サンチクの登場を予想していたらしく、夏の新創作ランチで迎え撃つのですが、前菜の夏野菜サラダと卵スープ、飯物の基本チャーハン、デザートのマンゴープリンに至るまですべてが完璧で、ハナちゃんはもちろんロー・サンチクも驚いていました。
中でも当管理人が感心したのは夏野菜のサラダで、数年前に発見されたばかりの「50度洗い」という技術が使われていました。
やり方はとても単純で、50度前後の熱いお湯で数十秒間野菜を洗うだけなのですが、ヒートショックという現象で表面の気孔が開き細胞に水分を取り込んで瑞々しく蘇り、味・食感・鮮度が段違いに良くなるとの事で、特に葉野菜に絶大な効果を発揮するのだとか。
以前、『喰いタン』で似たネタを見た為(←はっきり50度洗いと書かれてはいませんでしたが、かえってレタスの張りが増すと明言されてました)、何となくお湯は葉野菜にいいんだろうな~と思ってはいたのですが、こうやって理論的に説明されると分かりやすくて参考になります。
それらの中でも特にハナちゃんが感動していたのが、島野料理長が自信を持って発明したオリジナル中華・“夏の中華風ステーキ”です!
作り方はちょっと手間がかかり、オイスターソースと黒胡椒を揉みこんで約三十分寝かせた牛サーロイン肉と生トマトの両面をフライパンでさっと焼き、一味唐辛子を振りかけてブランデーでフランベしたら取り出し、その肉汁が残ったフライパンへ小松菜・中華スープ・砂糖・醤油・黒酢・水溶き片栗粉を入れて特製スープを作り、最後に食べやすく切ったステーキにかけたら出来上がりです。
ちなみに、付け合わせには先程のトマトの他、さっとソテーした長ナスとパプリカも用意します。
ポイントは、サーロイン肉にはあらかじめ筋切りと隠し包丁をして柔らかく仕上げること、お肉の焼き加減はミディアムにすること、一味唐辛子の量はごく少なめに抑えることの三点で、手間はかかるもののそこまで難しくなさそうなのが初心者としてはほっとしました(←シンプルな分、技術がいりそうな料理は大の苦手です;)。
中華料理でステーキと言えば、『鉄鍋のジャン!』の序盤に出てきたXO醤・揚げエシャロット・玉ねぎ使用の“中華風シャリアピンステーキ”の印象が強い為、黒酢・一味唐辛子・和野菜をふんだんに使ってあっさり仕立てにしたこちらは、ジャンが洋寄りだとすれば和寄りだと思いました。
料理には人の個性が現れると言いますが、「女性が喜ぶ体にも美容にも嬉しい、そして目新しいヘルシーな中華を提供したい!」という信念を持ち続けている島野料理長らしい一品だとしみじみ実感させられたものです。
以上のように、完成度が極めて高い新創作ランチは「夏にはこの少し濃いめの黒酢ソースがぴったりです」「クレームのつけ様がない」とハナちゃんから絶賛されます。
しかし、ロー・サンチクは「この料理の一つ一つは完璧なまでに素晴らしい、そして旨い」「しかし、ランチのセットとして食するとそれぞれの味が強く、組み合わせて食するには重くもあり、味も濃くなってしまってる!」「特にメーンの中華ステーキとチャーハンの組み合わせはなってない!白飯か中華蒸しパンにするべきであった」と酷評し、呆然と立ち尽くす島野料理長に「自らの腕に溺れ、お客の事を忘れた傲慢さゆえの失敗と言わざるを得ない」とトドメをさし、その場へとへたりこませていました(←誠にお気の毒なのですが、その…落ち込んでいる割にはへたり込む瞬間の表情が恍惚とした赤面顔で、内心「もしかして、島野さんってドM?」と複雑な気持ちになりました…;)。
この、「普通の味。10人中7人がうまいと言ってくれればいい」「おいしすぎてもいけない。家庭の味を少し上回るような味がいい」という理論は、日高屋やココイチの創業者が仰っている有名な言葉ですが、深いな~と思います(ラーメンのトッピング全部乗せがすごく美味しい訳ではないという事と同じことでしょうか?←多分、全然違う)。
材料費が高くつく為しばらく敬遠していた料理でしたが、このままだと『華中華』再現が全然進まないので再現する事にしました。
奮発して一枚数千円の佐賀牛サーロイン肉を買った事ですし、早速単行本に記載されている詳細なレシピ通り作ってみようと思います!
という事で、レッツ再現調理!
まずは、牛肉の下ごしらえ。国産のサーロイン肉に包丁で筋切りと隠し包丁を施して柔らかくした後、オイスターソースと黒胡椒をまぶして手で揉みこみ、約三十分寝かせておきます。
次は、野菜の下準備。
ごま油を薄く引いて熱したフライパンへ薄切りにした長ナスと、種を取って太目の千切りにした赤パプリカの千切りを入れ、塩を軽く振って焼きます。
両面に火が通ったら、あらかじめお皿へ盛り付けておきます。
ここまできたら、いよいよ肉を焼く作業。
ごく薄く油を引いて熱したフライパンへ下味がついたサーロイン肉と輪切りにした中玉トマトを並べて焼き始め、一味唐辛子をさっと振りかけます。
サーロイン肉とトマトの片面がこんがり焼けたら手早くひっくり返してブランデーでフランベし、もう片面も香ばしく焼き上げて別皿へ取り出します。
この肉汁が残ったフライパンへザク切りにした小松菜を投入してざっと炒め、中華スープ、砂糖、醤油、黒酢を加えて味付けします。
味が決まったら水溶き片栗粉を足し、グツグツ煮込んでとろみをつけます。
付け合わせを盛り付けておいたお皿へ食べやすいサイズに切ったステーキとトマトを移し、その上から先程の特製スープをたっぷりかければ“夏の中華風ステーキ”の完成です!
パプリカとトマトの赤、小松菜の緑、ナスの紫が何とも鮮やかな一皿で、見ているだけで「どんな味なんだろう」とワクワクしてきます。
小松菜の色が少しくすんでしまったのが残念ですが、黒酢ソースから漂う爽やかな香りがたまりまらなく、食欲がどんどんわいてきます。
それでは、冷めてしまわない内にいざ実食!
いっただっきま~す!
さて、味はと言いますと…ステーキとは思えぬあっさりした美味しさでびっくり!とろみのついた中華風スープが、ブランデーで香り高く仕上がったお肉を最後まで熱々にしてくれます!
サーロインは脂の多さと濃厚な味わいが魅力的なものの、それが原因で後々重くなるのが難点だったのですが、黒酢のマイルドで熟成された酸味が後口をスッキリ爽やかにしてくれる為、全然しつこくありません。
甘辛酸っぱくて上品な酸辣湯風スープ(もしくは軽めの黒酢酢豚風スープ)に、肉汁の旨味が溶け込んでコクが増し、一味唐辛子のピリ辛さがちょうどいいアクセントをプラスして即席とは思えぬ深みがでているのに驚きました。
このスープと、熱が加わっても尚強いシャキシャキ感が残っている小松菜が相性抜群で、ちょっと高菜漬けっぽい味に変化しているのが面白かったです。
オイスターソースの下味はそこまでガツンと主張しませんが、よく噛むごとに深みのある塩気が相乗作用となって肉の美味しさを底上げし、地味にサポートしてるのがよかったです(牛と全く違う潮の風味が加わることにより、かえって味の輪郭がくっきり際立つのが見事)。
また、ごま油の香ばしさが効いたこってり焼きナスとパプリカ、フランベのおかげで香り高く仕上がったトロトロトマトがその都度舌を洗い流し、ステーキの次の一口を新鮮にかんじさせてくれるのがナイスでした。
この黒酢ソースは肉類ととても相性が良く、他の牛肉の部位を焼いたものや、豚ロースソテーやチキンソテーにも合います。
野菜をたっぷり食べられるので、食後感がヘルシーな感じなのが嬉しい肉料理でした。
P.S.
コメントと拍手を下さった皆様、ありがとうございます。
●出典)『華中華』 原作:西ゆうじ 作画:ひきの真二/小学館
※この記事も含め、当ブログの再現料理記事は全てこちらの「再現料理のまとめリンク」に載せています。
※レシピの分量や詳しい内容は、以前こちらでご説明した通り完全非公開に致しております。