2017.10.25
「与党圧勝、3分の2確保、野党バラバラに分散、立憲に勢い」
野上 浩太郎 (政治ジャーナリスト)
10月22日投開票の衆院総選挙で自民、公明両与党は284議席と29議席の合計313議席を獲得。憲法改正の国会発議に必要な3分の2を超えた。野党各党は旧民主党時代からのバラバラ性を引きずり、特に小池百合子・希望の党代表の失敗も手伝って中程度の政党が林立する弱小勢力の集団群にとどまった。この中で小池氏から「排除」された議員集団が立憲民主党を名乗って55人というグループを確保、僅かではあるが希望の党を上回る健闘ぶりを示した。
それにしても立憲民主を除く各党の「選挙下手」ぶりは有権者の気持ちを暗くした。第二次安倍晋三政権は首相が自賛するほどの成果を挙げたとはとても言えなかったが、9月28日の臨時国会冒頭解散は「座頭市」の一太刀を連想させる鮮やかさで、審議は一切なし。狙いはどうやら自らの自民党総裁3選と計9年の長期政権実現にあるようだ。安倍首相の第一志望は憲法改正だろうが、憲法を口にする際の安倍首相は慎重である。自公両与党は数の上では悠々、発議に必要な3分の2を獲得したが、衆院総選挙とはいえ数だけで押し切るのはかえって逆効果の側面を持つ。衆参両院でそれぞれ3分の2を獲得したとはいえ、功を焦って純粋与党だけで押し切ろうとすれば、本命の国民投票(これは多数決)で否決されないとは限らない。安倍首相が母方の祖父岸信介元首相にならって本命の9条改正に失敗すれば、安倍政権そのものの生命が失われかねない。首相が5月に掲げた「自衛隊の名称を憲法に明記する」という改正案はわかりやすいが、9条1,2項をそのまま残して自衛隊をその一角に書き込めば、国際的にもきな臭くなる。自民、公明両与党だけで発議するとなれば、きな臭さが増す。数を確保しても、平和日本のイメージが「暴力的」になったのでは逆効果だろう。このため安倍首相としては小池都知事が率いる希望の党や維新などから賛同者を募り、穏便な形で憲法改正を実現したい意向とみられる。
ところで希望の党を率いる小池都知事の呑気な表情には驚かされる。投開票日にパリに出張中という日程にも驚かされるが、なんといってもバラバラ体質イメージを捨て去るべく、前原代表との党首会談を皮切りに民進党を丸ごと希望に潜り込ませようとした。気に入らない人材は切り捨て、合流を図ったことが絵にかいたような自損行為だった。小池代表は「全員を合流させるなどの考えはさらさらない」「排除する」などのどぎつい言葉を連発した。その口調は冷然としていた。枝野氏は直ちに新党・立憲民主党をまとめ、素直なリベラル議員を中心に2週間の戦いに打って出た。見事に弾は当たった。選挙前には15議席しかなかった立憲がトータルで40議席も増えて全体で55議席と第二政党に駆け上がった。
安倍首相が尊敬するのは、祖父岸信介元首相だ。日米安保条約の調印・批准強行である。いくら安倍首相といえども日本の核武装にまでは踏み切れまい。ところが、北方の北朝鮮は米国をターゲットとしながらも韓国と日本への核威嚇をちらつかせる。 今から日本が核武装しても、核戦争をするわけにはいかない。日米同盟を歯止めに北からの核攻撃を抑止するしか道はなさそうだ。(了)
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