2024年、知っておきたいマネーカレンダー
知っ得・お金のトリセツ(136)
あっという間に1年が過ぎ、新たな1年が巡り来る。「今年こそ」の思いを胸にお金に向き合う人も多いだろう。日々の節約も大事だが、まずは税金や社会保障等、大きなお金に関する流れを知り活用する心構えが重要だ。2024年も家計に影響を及ぼすお金のルール変更は目白押しだ。
1月 新NISAスタート
年が明けると同時に新しい少額投資非課税制度(NISA)がスタートする。本来なら徴収される20.315%の税金を免除してもらえる「投資の器」だ。株式や投資信託の値上がり益や配当収入を丸々享受できる分、運用成績押し上げが期待できる。18歳以上の国内居住者なら誰でも利用可能だから、使わないともったいない制度だ。これまでのように非課税期間の「おシリ」を気にすることなく、自分のペースで生涯投資枠1800万円に向き合える。
1月 相続時精算課税が使いやすく
贈与・相続に関する税のルールが変わる。子や孫にまとまった額を資金援助する際、関係する。暦年課税と相続時精算課税の2つに大別できる制度のうち、前者の使い勝手が悪くなり、逆に後者は使いやすくなる。暦年贈与は、年110万円の非課税枠内で贈与を重ね相続財産を減らす効果があるが「持ち戻し」の期間が長くなる。贈与後に相続税の計算対象として戻される額が、これまでの死亡前3年間から死亡前7年間へと段階的に長くなる。一方、今まで「使い勝手が悪い」と敬遠されがちだった相続時精算課税に年110万円の基礎控除枠が設けられ、都度の税務申告も不要になったことで利用が促進されそうだ。
2〜3月 確定申告は年々便利に
例年2〜3月に行われる確定申告。ふるさと納税や医療費控除の税還付を目的にサラリーマンでも手掛ける人が増えてきた。 国税庁の電子申告・納税システム「e-Tax(イータックス)」はパソコンやスマートフォン経由でオンライン申告できる優れものだが、年々便利になっている。令和5年分からの改善点としては、勤め先がオンラインで提出した源泉徴収票の数字を自動で申告書に転記してくれる仕組みも動き出す。
3月 戸籍に関する手続きが簡単に
戸籍に関する行政手続きにマイナンバーの活用が始まり、関連手続きが簡素化される。法務省が3月に稼働予定の戸籍情報の一括管理システムと、マイナンバーで管理する税や社会保障関連の情報を連携させる。年金や児童扶養手当の申請、結婚の届け出や養子縁組、本籍地の変更などでこれまで必要だった戸籍謄本をはじめとする紙の証明書の提出が不要になる。
4月 いよいよ「2024年問題」顕在化
人手不足問題の背景で語られてきた、いわゆる「2024年問題」。働き方改革関連法によって、トラック運転手の時間外労働に年間960時間の上限が課せられ、勤務間インターバルの確保も求められる。19年に施行された同法の特例で設けられた猶予期間が3月末に終了する。物流各社はデジタルトランスフォーメーション(DX)を進め配送効率化を急ぐが、人手不足は深刻なだけに一部で混乱も予想される。ドライバー以外、医師や建設業も同様に「猶予切れ」に直面しており、社会生活への幅広い影響が懸念される。
4月 相続登記の義務化始まる
不動産登記法が改正され、相続によって不動産を取得した場合、3年以内の登記が義務付けられる。これまでは相続で実家など不動産を取得しても登記は任意だった。換金価値のある土地以外は未登記で放置されがちで、年月を経て所有者不明土地となる原因だった。今後は相続や遺贈で不動産を取得した相続人は、相続開始、所有権の取得を知った日から3年以内に相続登記の申請をしなくてはならない。正当な理由なく怠った場合は過料の対象になる。新たな相続だけでなく、過去に相続をしてそのままにしていた人も義務化の対象だから要注意だ。
6月 ボーナス&所得減税
毎年待ち遠しい夏のボーナスだが、24年は所得減税が同時期に行われることが決まっているので家計へのインパクトは特に大だ。会社員の場合、6月支給の給与やボーナスから源泉徴収(天引き)される税金が減り、その分手取りが増える。本人だけでなく扶養家族分もカウントされるので、夫婦と子ども2人の4人家族なら計16万円の手取り増。ただし年収2000万円超は対象外だ。
7月 新紙幣発行
7月3日、20年ぶりにお札(日本銀行券)のデザインが変わる。1万円札は福沢諭吉から渋沢栄一に、5千円札は樋口一葉から津田梅子に、1千円札は野口英世から北里柴三郎へとそれぞれ「交代」する。キャッシュレス化が進んだ今でも偽造防止の観点から一定間隔で改刷する必要があるという。新紙幣発行後も古い紙幣は今まで通り利用可能だ。だが高齢者を狙って「使えなくなる。振り込めば新紙幣と交換する」といった振り込め詐欺も予想される。気を付けよう。
8月 年金の財政検証
24年は5年に1度の公的年金の財政検証の年にあたる。年金は人口の土台の上に立ち労働力や経済成長率など各種変数が影響を与える長期的な制度なので、定期的な検証が欠かせない。財政検証後、翌年に実際の制度改正が行われるのがこれまでの流れ。5年前は8月下旬に検証結果が発表された。次回の制度改正に向けては、国民年金保険料の納付期間の5年延長(65歳になるまで)や、現行、国民年金と厚生年金で異なる「マクロ経済スライド」による年金の伸びを抑える期間の統一などが焦点になる。
10月 厚生年金の適用拡大、一段と
徐々に対象者を広げてきた厚生年金・健康保険への加入者を増やす動きがもう一段待つ。就労時間など一定の条件を満たすパートやアルバイトが加入対象となる企業の基準が、現行の従業員101人以上から24年10月以降は51人以上に引き下げられる。短期的には保険料負担で手取り減となっても、長期的には年金増などのメリットを享受できると考えたい。
12月 イデコの掛け金上限額に変更も
公的年金の上に立つ私的年金でも変更点がある。税優遇のある確定拠出年金(DC)と確定給付年金(DB)の掛け金を合算で管理するルールだ。現在、企業年金に加入する会社員や公務員がイデコに入る場合、企業年金の制度に応じて拠出上限額は1万2千円か2万円かどちらか。24年12月以降はこの区別がなくなり原則、一律月2万円となる。多くの人の場合、増額になる変更だが中にはイデコに拠出できる額が少なくなる人もいる。自分の場合を押さえておこう。
1993年日本経済新聞社入社。証券部、テレビ東京、日経ヴェリタスなど「お金周り」の担当が長い。2020年からマネー・エディター、23年から編集委員兼マネー・エディター。「1円単位の節約から1兆円単位のマーケットまで」をキャッチフレーズに幅広くカバーする。
食べたものが体をつくり、使ったお金が人生をつくる――。人生100年時代にますます重要になる真剣なお金との対話。お金のことを考え続けてきたマネー・エディターが気づきの手掛かりをお届けします。