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新紙幣を手に考える「タンス預金」の動かし方

知っ得・お金のトリセツ(145)

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話題の新紙幣を手にした。インクも色鮮やかな渋沢栄一の1万円札、津田梅子の5千円札、北里柴三郎の千円札だ。程なく珍しくもなくなるのは承知の上だが(なにせ今年度中に75億枚も印刷される)新しいお札には素直に心が躍る。最大の見どころは世界初の「3Dホログラム」。角度によって肖像が立体的に回転し「目が合う」感覚にちょっとギョッとする。

新紙幣への両替は銀行で

前回、2004年の改刷時には約1年で6割程度が新紙幣に入れ替わったという。待てばやって来る「天下の回り物」だが、例えば自分の口座からATMで現金を引き出した時に新紙幣が混ざるくらい流通するにはまだ時間がかかる。

今欲しければ銀行で両替してもらおう。改刷とは関係なく、これまでも冠婚葬祭時など「ピン札(新券)」が欲しくてお世話になった人もいるだろう。一度に交換できる枚数や手数料の有無、両替機・窓口の別など細かい要件は金融機関ごとに異なる。

一般には、口座があれば1日1回、10枚までは無料で両替してくれるところが多い。口座がなかったり、異なる券種を希望する場合(1万円札1枚を千円札10枚になど)は手数料がかかるようだ。キャッシュカードや専用の両替機カードが必要なケースもある。いずれにしても新紙幣の場合、その上で在庫という制約もある。

前の人で「在庫なし」に

まず向かったメガバンクAの支店では窓口では扱わず両替機だけの対応。開店直後にもかかわらず張り出された「在庫状況」では既に千円札が「×」で5千円札が「△」。ジリジリしながら列に並んだものの、前の人が終わるや無情にも△が×に。かろうじて在庫ありの1万円札だけ両替できた。キャッシュカードを使い手数料は無料だった。

リベンジに近くの信用金庫へ。こちらは「両替依頼書」を記入の上、窓口に案内された。「両替手数料2200円」の表記に一瞬おののいたが「冠婚葬祭など常識の範囲内なら結構です」と手数料ゼロに。ただし当分は1万円が10枚、他は5枚が両替の上限だという。

「聖徳太子」は日銀の本支店で両替

ところで改刷後に旧札となった「福沢諭吉」なども今まで通り問題なく使用できるので、慌てて新紙幣に両替する必要は全くない。早くも「エリザベス女王」が一部使えなくなった英国など諸外国とはだいぶ事情が違う。「無効になるので交換する」という働きかけは詐欺だ。十分に注意しよう。

「諭吉」どころか「聖徳太子」「伊藤博文」……「大黒天」まで。日銀のホームページには現在もお金としての強制通用力が保証されている25種類のお札が並ぶ。とはいえ、実際には古いと自動販売機などでは使えない上、小売店の店頭などで受け取りを嫌がられることもあるだろう。

その場合、聖徳太子など既に発行が停止されていて流通に不便なお札は日銀の本支店に持ち込めば交換してくれる。事前予約が必要だ。ホームページにリンクがある引き換え受付サイトで希望日時を予約した上で訪ねよう。手数料はかからない。

この機に考えたい、タンス預金

日本では発行済みのお金約120兆円のうち、およそ60兆円がいわゆるタンス預金として家計に眠ると推計される。1世帯あたりでならすと100万円強の大金だ。災害時などを考えれば、キャッシュレス化が進んでも手元にいくらか現金を持っておく意味はあるが、多すぎるのは問題だ。

これまではデフレ下で、モノの値段が下がる半面、貨幣の価値は保たれていた。今後は逆にインフレ警戒が欠かせない。手元に1000万円あってもタンス預金のままで4%の物価上昇が続けば、20年後には価値が半分以下になる。

外国為替市場における円の価値も変わる。前回改刷時には1万円札の価値はドルに換算すると90ドル台だったが今や60ドル台だ。

多額の預け入れは?

タンス預金を銀行預金に変えるのも選択肢だ。わずかとはいえ預金金利は上昇傾向で、探せば意欲的な金利を提示する金融機関もある。タンスよりマシだ。ただし、自分のお金とはいえ銀行に一度に多額を預ける場合は一手間必要になることもある。

銀行は、犯罪収益移転防止法に基づき200万円を超える現金取引について本人確認や取引目的の説明を求める義務がある。匿名性の高い現金にはいわゆるマネーロンダリング(資金洗浄)の疑念がつきまとうからだ。

自分のお金なら面倒だが一手間かければそれでいい。問題は相続や贈与で受け取っておきながら申告をしなかった現金だ。年間110万円を超える贈与は課税対象になる。銀行であれこれ聞かれた挙げ句「普通ではない取引」と思われたら警察や税務署に連絡が回ることもありうる。この機に自分のお金との向き合い方を考えてみるのもいいかもしれない。

山本由里(やまもと・ゆり)
1993年日本経済新聞社入社。証券部、テレビ東京、日経ヴェリタスなど「お金周り」の担当が長い。2020年からマネー・エディター、23年から編集委員兼マネー・エディター、24年から編集委員兼論説委員。「1円単位の節約から1兆円単位のマーケットまで」をキャッチフレーズに幅広くカバーする。

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