冬のボーナスどうする? 個人向け国債で投資デビューも
知っ得・お金のトリセツ(135)
待ちに待った冬のボーナス。支給後初の週末、都心の百貨店は買い物客でにぎわっていた。ブランド物のバッグや時計……日ごろ訪日外国人に押されがちな同胞の姿が目立つ。三越伊勢丹ホールディングスでは年末商戦の売上高が2桁増ペースだという。めでたい。
消費だけでなく、いくらかは貯蓄や投資、資産運用に振り向けたい。とはいえなかなかに悩ましいのが、今現在での運用先選びだ。もう少し待てば金利はもう一段、上がりそうだし、来年には新しいNISA(少額投資非課税制度)も始まる。人気だった外貨預金には突然、急激な円高巻き戻しという逆風が吹いた。
慌てることはない。投資に焦りは禁物だ。本格的な投資デビューはNISAでおもむろに行うとして、まずは個人向け国債で「ならし運転」するという選択肢もある。元本割れリスクのない貯蓄とは一線を画する債券投資でありながら、国が一定の元本保証をしており、金利上昇メリットも享受できる。為替リスクとも無縁だ。
懐はそこそこ温かい
8日に支給された国家公務員の冬のボーナスは2年連続で増え、平均67万4300円(一般行政職)と前年比2万2000円の増額だった。民間も同様の傾向。労務行政研究所の東証プライム上場企業(187社)を対象にした調査によると、平均80万28円と1970 年の調査開始以来、初めて80万円台に乗せた。
だが今期の企業業績の好調には円安による追い風参考記録という一面もある。それがここへきて円高方向へと急速な巻き戻しが起きたから、悩ましい。
マーケット環境は悩ましい
先週は外国為替市場で急速に円高が進んだ。週初に1ドル=146円台後半で取引が始まった後、7日には一時141円台まで急伸。1日で5円以上の急激な円高が進む場面もあった。日銀の植田和男総裁の「年末から来年にかけて一段とチャレンジングになる」との発言が「早期利上げを示唆」と捉えられた。
つい先日の11月中旬には1ドル=152円台目前と33年ぶりの円安水準だったわけで、1カ月もたたないうちに瞬間風速で10円以上の急上昇。株価も当然、為替に反応して下落し、日経平均株価は先週1週間で1000円以上も値を下げた。輸出企業の想定為替レートはおおむね1ドル=140円台。それ以上の円高進行は業績悪化懸念につながる。
「高金利」も為替次第
為替変動が直撃したのが最近、個人に人気化していた外貨預金だ。銀行間の「金利引き上げ競争」を背景にドル建て定期預金の1年物金利は5%台から6%に乗せるものまで登場。多額の預金を集めていた。
6%は確かに魅力的な水準だが、全ては為替相場次第。税金や為替手数料を勘案しない単純計算でも、過去1カ月にあったように1ドル=151円から141円まで6%強動けばあっという間に年間の利息収入が吹き飛ぶわけだ。
個人向け国債で投資デビュー
改めて為替を起点としたマーケットの振れ幅に驚いた人も多かっただろう。来年からのNISAはこの乱気流の中で船出する。米連邦準備理事会(FRB)が利下げを、日銀が利上げを模索する正反対の環境だからだ。腰を据えて長期積み立て投資が可能な人には好機かもしれないが、投資初心者にはそれこそ「チャレンジング」だ。
そこで一考に値するのが個人向け国債だ。国債は国が発行する借用証書。利子収入を得つつ満期まで保有すれば額面が戻る手堅い金融商品だ。国の元本保証があるので「預金代わり」に位置づけられる。購入後1年たてば、直近2回分の利子を諦める代わりにいつでも中途換金可能だ。
「資産効果」を実感した人も
一般的な債券のデメリットとしては、金利上昇局面で価格下落リスクがあるが、個人向け国債の中でも「変動10年」は市場金利に連動して利率が上昇する特典付きだ。
「思ったより利子が増えてびっくりした」。ある女性投資家は「どうせないもの」と無視していた変動10年の利子収入でクリスマスの買い物を楽しんだ。2020年に虎の子の1000万円を振り向けた時の利率は年0.05%。市中金利はマイナスだったが個人向け国債の特典の1つとして0.05%以下にはならない下限金利が適用された。
当初は半期に約2500円だった利子収入は気がつけば足元で1万5000円程度に増えており「来年の金利上昇が楽しみ」と笑う。個人向け国債の募集は毎月あり、翌月発行されるものを購入する。12月発行分の変動10年の初回利率は年0.6%と11年8カ月ぶりの水準だった。数字だけ比べれば外貨預金6%の10分の1だが、バカにできない優れものだ。
1993年日本経済新聞社入社。証券部、テレビ東京、日経ヴェリタスなど「お金周り」の担当が長い。2020年からマネー・エディター、23年から編集委員兼マネー・エディター。「1円単位の節約から1兆円単位のマーケットまで」をキャッチフレーズに幅広くカバーする。
食べたものが体をつくり、使ったお金が人生をつくる――。人生100年時代にますます重要になる真剣なお金との対話。お金のことを考え続けてきたマネー・エディターが気づきの手掛かりをお届けします。