新NISA、金融機関を変更する時の注意点
知っ得・お金のトリセツ(130)
今年も残り2カ月を切り、新NISA(少額投資非課税制度)に向けた前哨戦がますます熱を帯びる。来年からの制度開始と同時にスタートダッシュしたければ、スケジュールに従って年内に終えておかねばならない準備もある。
非課税口座は1人1口座
最初の一歩は金融機関でNISA口座を開設すること。普通の銀行預金の口座や証券口座とは異なり、NISA口座の場合、1人につき1口座しか開設できない。
一度選んだ金融機関を変更することは可能で、その場合複数のNISA口座を持つことになるが、買付けをできるいわば「生きた口座」は1つだけ。金融機関が持つ情報はクラウドを通じ国税庁によって一括管理される。
大幅に改善されて使い勝手が良くなっても、1人1金融機関のNISAの原則は変わらない。併用が可能になった「つみたて投資枠」と「成長投資枠」で別々の会社を選ぶこともできない。新たに始める人は慎重に金融機関を吟味しよう。
口座ありの人は自動継続(されてしまう)
既に口座を開設済みの人も油断はできない。「NISA口座は付き合いのある地方銀行で開いた。来年からは米国の個別株に投資したい」――。筆者が実際に受けた相談だが、個別株投資をしたいのであれば、銀行ではできない。証券会社に新NISA口座を開き直す必要がある。
既存NISA口座があれば、何も手続きすることなく、新NISA口座が同じ金融機関で自動的に開かれる。年初からすぐ取引可能で便利ではあるが「変えるつもりだったのに!」という人にとっては逆に落とし穴になりかねない。
変更はできるが年に1度
なぜなら、金融機関の変更は原則1年に1回。年ごとに管理されることになる。変更したい年の前年10月1日から翌年9月30日の間に変更手続きをしなくてはならない。そしてその際、当該年(変更したい年)に一度でもNISAで買い付けをしていればその年の変更はできなくなるルールなのだ。
例えば現行の「つみたてNISA」口座で、毎月自動積み立てがされるような設定にしている場合。金融機関を変えるつもりなら来年1月分が引き落とされる前に停止手続きが必要だ。一度積み立てされてしまうと、たった1カ月分でも来年はもう口座変更ができない。金融機関の変更は再来年からとなり、ほぼ丸1年の時差ができてしまう。
各社ごとの締め切りに注意
来年1月積み立て分がいつ決済されるかは、各社ごとに異なる。クレジットカード決済か銀行引き落としかでも時差がある。
例えばSBI証券で来年1月から投信積み立てを銀行引き落としで決済する場合、締め切りは11月30日の午前6時。相当手前に締め切りがあるわけだ。新たに始めたい人も、うっかりミスを防ぎたい人も事前確認が必要になる。新NISAを使った投信積み立ての事前受け付けも11月中旬以降、漸次可能になるので、思いがけないミスを防ぐためにも能動的に行動したい。
1993年日本経済新聞社入社。証券部、テレビ東京、日経ヴェリタスなど「お金周り」の担当が長い。2020年からマネー・エディター、23年から編集委員兼マネー・エディター。「1円単位の節約から1兆円単位のマーケットまで」をキャッチフレーズに幅広くカバーする。
食べたものが体をつくり、使ったお金が人生をつくる――。人生100年時代にますます重要になる真剣なお金との対話。お金のことを考え続けてきたマネー・エディターが気づきの手掛かりをお届けします。