マイナカード、それでも使わないのはもったいない
知っ得・お金のトリセツ(133)
健康保険証との強引な一本化の過程でひも付けミスが相次いで発覚し、すっかりミソを付けた形のマイナンバーカード。どの分野でどんなミスがあったか、政府は「総点検」の結果を月内にまとめ来月にも発表する。
猛省は必要だが日本の立ち遅れたデジタルトランスフォーメーション(DX)化は待ったなし。個人も使ってみれば確実に便利さを実感できるサービスは増えている。使わないのはもったいない。
ふるさと納税で便利さ実感
特にこれからの時期、年末に向けての駆け込みが意識されるふるさと納税。一般に「自己負担2000円で各地の特産品が返礼品としてもらえる」と認識されるアレだが、税制上の寄付金控除の手続きが欠かせない。その過程でかかる手間はマイナカードの有無で天と地ほど違う。
本来は確定申告すべきだが、特例として、確定申告になじみのない一般のサラリーマン向けに寄付先が5自治体以内に限り自治体への連絡だけで済む「ワンストップ特例」という仕組みがある。
さよなら紙との格闘
これが紙との格闘だった。まず寄付先自治体から申請書が郵送でやってくる。必要事項を記入した上、マイナンバー確認などに必要な複数枚の書類をコピーして添付。1件ごとに郵便で送り返す。
自治体必着の締め切りが翌年1月10日だから、年末ギリギリに駆け込み寄付した個人の年末年始の負荷は高かった。それ以上に重いのが自治体側の負担だ。山のような書類を開封して仕分けして入力して……。
これが今やマイナカードがあればオンライン申請が可能な時代だ。マイナカードに備わる「公的個人認証」の機能を使い、マイナンバーそのものは扱わずに本人確認できるサービスを複数の民間業者が展開し始めた。
確定申告の便利度も向上
基本的な操作は、アカウント登録を行い、寄付先を選択してスマートフォンなどでマイナカードを読み取るだけ。これで必要な情報が自治体側に伝わる。ある業者の宣伝文句によると「所要時間は7分弱」。相当な時短だ。去年スタートし、今年は導入済みの自治体も増えて本格稼働している。
確定申告を利用する場合は、先行してデジタル化が進んでいるから安心だ。自分が利用するふるさと納税ポータルサイト(さとふる、ふるなび、楽天ふるさと納税といったもの)が、マイナポータルとの連携対応を済ませていれば、国税庁の電子申告・納税システム「e-Tax(イータックス)」とつなぎ、パソコンやスマホでオンライン確定申告できる。
控除に必要なデータが取れるだけでなく自動入力までしてくれる。マイナ連携への対応を済ませたポータルサイトは増加しており便利度は一段と向上している。
来年からは源泉徴収票の自動入力も
ふるさと納税以外の分野でもマイナ連携は進んでいる。今年からは国民年金基金連合会が加わったことで、10月末以降は国民年金や個人向け確定拠出年金(iDeCo、イデコ)に支払った保険料のデータもマイナポータル経由で取得できるようになった。
今年の年末調整ではかつて恒例だったはがきの提出がなくなり、便利さを味わったばかりの会社員もいるかもしれない。
さらに令和5年分の確定申告からは、企業がオンラインで提出した源泉徴収票の数字をあらかじめ申告書に自動転記してくれる仕組みも動き出すという。1つ1つ項目を埋めると15分もかかるものだったので、最近可能になったスマホ撮影による読み取りでもありがたかったが、一段と便利だ。
多々問題はあるが……
政府のマイナンバー制度との向き合い方に多々問題があるのは事実だ。情報漏洩は気になるし、健康保険証との一体化は急ぎ過ぎだ。だがこの手の制度は上から与えられるだけでなく、国民の財産として日々見守り、育てる根気も必要だ。まずはふるさと納税をして便利さを実感してみよう。
1993年日本経済新聞社入社。証券部、テレビ東京、日経ヴェリタスなど「お金周り」の担当が長い。2020年からマネー・エディター、23年から編集委員兼マネー・エディター。「1円単位の節約から1兆円単位のマーケットまで」をキャッチフレーズに幅広くカバーする。
食べたものが体をつくり、使ったお金が人生をつくる――。人生100年時代にますます重要になる真剣なお金との対話。お金のことを考え続けてきたマネー・エディターが気づきの手掛かりをお届けします。