NO.693 所得の再分配機能と消費税・・・消費税は所得を「逆配分」する・・・税をどこからとるか?
昨日のエントリーで、ちょっと一般的には正しいが、よく考えると「消費税率引き上げは所得再分配機能を停止」なんてトンデモネーことを書いていました。ちょっと、突っ込んで事実を見てみたいと思います。
NO.692 社会保障財源は消費税増税しか見えない・・・社会保障国民会議報告。
同会議でさえ、社会保障は「『所得再分配の機能』を通じて、給付の平等・負担の公平という『社会的公正』を実現するもの」だとのべています。「所得再分配」とは、資本主義経済がもたらす貧富の格差を是正するため、富めるものから貧しいものへ所得を移し、社会的な連帯ときずなを守る仕組みです。
ならば、低所得層ほど所得に占める負担割合が重くなる逆進的な消費税が、社会保障財源にふさわしくないことは明らかです。消費税の逆進性は税率が高くなるほど大きくなり、消費税率引き上げは所得再分配機能を停止させてしまいます。
所得の「逆配分」機能
「消費税率引き上げは所得再分配機能を停止させてしまいます。」は、正しくなくて、実態に即して正確に言うと、「機能停止」ではなく「逆機能」しています。「消費税は、所得を逆配分する」が正解でしょう。つまり、消費税は、「富を貧しいものから富めるものものへ移し、格差を広げ社会的連帯と絆を破壊する最悪の不公平税制だ」と言えるのではないでしょうか。
当ブログでは何度も紹介していますが、実態は以下のグラフが証明しています。
(しんぶん「赤旗」より拝借)
1989年 竹下内閣が消費税3%導入。
この年、企業の法人税率は42%から40%に、更に翌年は37.5%に引き下げ。
1997年 橋本内閣が税率5%にアップ
翌年には法人税率が34.5%に引き下げ。
以来19年間で、国民が負担した消費税総額は累計で188兆円。
一方、企業の法人税収は、同じ期間で159兆円減った。
更に同じ期間の軍事費増は20兆円。
大企業の減税分と軍事費の伸びをそっくり、消費税が賄ったと言う事が数字にはっきり出ている。
つまり、庶民の富が大企業に再配分されたと言うことです。
1次的労働分配では、派遣やただ働き残業などで不当に安い賃金で分配率を押さえたうえに、再分配過程ではさらに労働者・国民から富を吸い上げて大企業に移すと言う仕組みです。
消費税は市場で優位に立つ大企業なら価格にすべて転嫁できる税制です。おまけに輸出企業は、「輸出戻し税」で仕入れにかかった消費税の還付まで受けられます。一方で下請け中小企業は赤字でも自腹を切って納税しなければならず、消費者はどこにも転嫁できず丸かぶりです。「負担の公平」とはまったく逆の不公平税制です。
社会保障国民会議の議論でも、「企業に社会的な責任、あるいは歴史的な責任をもう少し自覚してもらいたい。今後のさまざまな負担関係でいうと企業が後ろに引きすぎている」という指摘が出されたそうです。自公政府は大企業、高額所得層や大資産家に年間七兆円もの減税をばらまいています。「負担の公平」というなら、こうした既得権益層にこそ応分の負担を求めるべきです。
ヨーロッパ諸国と比較して少ない日本の社会保障費への企業負担をどのように増やすかという議論は、ほとんど出されることはありませんでした。
日本の社会保障費がイギリス、ドイツ、フランスなどと比べても低すぎることが、いまの社会保障を巡る困難をつくり出していることは明白ですが、その財源をもっぱら庶民に求めることは筋違いです。
次の図をご覧ください。
日本とヨーロッパ各国の社会保障財源の内訳を分析したものです。(しんぶん赤旗より)
これを観るとどの国でも、
(1)企業など事業主の負担する社会保険料
(2)個人が負担する社会保険料
(3)税金
以上三つが主な財源です。
税金の一部に消費税が含まれてはいますが、財源全体の一割前後にしかすぎず、日本とヨーロッパで大差はありませんね。
むしろ、図からわかるのは、ヨーロッパでは企業などの負担が大きいことです。
日本の事業主保険料(企業負担)の少なさが、際立っています。
社会保険料は事業主と個人は今折半ですから、これも個人保険料の多さが際立っています。
最近の金融危機や円高などを背景に、トヨタなど輸出産業を中心に「減益」宣伝で危機感をあおり、派遣などの首切りを進めています。さらには、消費税増税で庶民の富をさらに大企業に移そうとする議論などすなどとんでもないことです。トヨタでさえ、減収減収と言いながら8000億もの利益を上げているのです。大企業の内部留保は230兆円ともいわれています。
この点で非国民通信さんは、実感を込めてわかりやすく次のように指摘しています。
トヨタの営業利益は7割減だそうです。これだけ聞くと、まさに非常事態、人員削減もやむを得ないような緊急時にも見えてくるのかも知れません。・・・要は98年の水準に戻るだけ、・・・あまり深刻な気はしませんね。
73%減とはあくまで営業利益であることに留意してください。言うまでもなくそれは、諸々の経費、支出を差し引いて残った「利益」であり、売上とは違います。個人の場合であれば、収入ではなく可処分所得に相当するものです。もし20万円の月給が6万円まで減ったとしたら事態は深刻ですが、それが可処分所得であれば、好ましいことではないにせよ危機とは考えられません。先月は20万円を貯金できた、しかし今月は収入減で6万円しか貯金に回せない、この場合はどうでしょうか? 決して嬉しいことではありませんが、貯金の増える勢いが鈍るだけで、貯金が増え続けることに変わりはないはずです。
社会保障は、本来カネのあるなしにかかわらず公平な給付をすることを通じて所得の再分配機能を果たすものです(いま、それが壊されてきていますが・・・)。そういう意味でも、消費税は社会保障にはもっともふさわしく無い税なのです。
社会保障に必要な財源をめぐる税や社会保険料の改革は、所得や資産に応じて負担する「応能負担」を原則とすべきです。消費税増税はこの原則に逆行するもので、到底認めることはできません。
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http://toyugenki2.blog107.fc2.com/blog-entry-588.html
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2008.11.10 | | Comments(8) | Trackback(4) | ・消費税・財源・税Ⅱ