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187.jpgヒシバッタ一種。防災ずきんをかぶったよう。東南アジア某所にて。

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194.jpgとても美しい草色マイマイ。殻はかなり扁平だった。しかし、この緑色が殻についている色かは分からない。沖縄のアオミオカタニシのように殻に色がついてなくて、内部の緑色の肉が透けて見えているだけかもしれないからだ。
東南アジア某所にて。


先日、東の都のほうで大きなイベントがあり、その節は各方面の方々にお世話になりました。同時に、ご来場頂いた方々、援助をして下さった方々に、本当に心から厚く御礼申し上げます。

居場所は何処

204.jpgハナナガアリProbolomyrmex sp.。マレーにて。

世界中の熱帯から知られるが、どこでも発見されること自体が珍しいレアモンスターである。日本でも沖縄から2種知られるが、最近見つけたという噂を聞かない。日本産種は、環境省の希少種になっている。俺はまだ東南アジアで2回、南米で1回見ただけ。その東南アジアでの2回目がこのコロニーだ。
けっこう荒れたつまらない環境に限って生息するらしい。このコロニーは、ジャングルを切り開いてできた日当たり良いアスファルト道路脇の、小さな石の下にあった。きっと沖縄でもそういう「食指の動かない」環境をしつこく探せば、見つけられるに違いない。

206.jpgこのアリの特徴は、働き蟻にいっさい目がないこと。触角の生え際が顔のものすごく下側に下がっており、前方から見ると大アゴを隠してしまっている。まるで鼻の下を伸ばしているようだというのが、その名のゆかり。
本種を含むハリアリ亜科のアリは肉食性が強く、いくつかの種は特定種の生物しか襲わない。その例に漏れず、ハナナガアリは土壌動物の一種フサヤスデだけを専門に狩るスペシャリスト捕食者である。かつて一度だけ、このアリの飼育を試みたことがあり、その際に飼育容器内へフサヤスデを放してみたところ、働き蟻はすさまじいスピードでヤスデを追い回した。目が見えてないのに、きわめて敏速な動きだった。
アリはヤスデの脇を併走し、横から腹を曲げて毒バリを打ち込んだ。その瞬間、ヤスデはねじ巻き式のおもちゃが止まるが如く沈黙してしまった。それをくわえて、アリは自分のコロニーに持ち帰ったのだった。フサヤスデは、毛虫のように全身を毛で覆っている。そのため、このアリは巣の中でフサヤスデの毛を一本一本引っこ抜いて丸裸にしてから食うと言われている。俺が飼育したときは、条件が悪かったのかそれをやってくれなかった。

ちなみに、フサヤスデは尾端に特殊な防御用の毛束を持っている。これはアリなどに襲われたときにヤマアラシのように吹き付けて使うらしい。毛束の表面には細かい逆トゲが覆っているとかで、普通のアリがこの攻撃を受けると体中の体毛にヤスデの毛束がからみつき、動けなくなってしまうという。そんな危険な獲物を襲うのに特殊化したハナナガアリは、体に体毛を持たないことでヤスデの反撃を無効化するのに成功した。このアリが持つ、まるで陶磁器のような体表の質感には、そんな秘密が隠されている。

205.jpg野外で発見したこのアリのコロニ内ーには、丸裸にされた餌のヤスデは見つからなかった。でも、恐らくヤスデから引っこ抜いたであろう毛束をくわえて右往左往するアリの姿はあった。
ヤスデという虫を専食するアリ自体少ないが、中でもフサヤスデを専食するアリといえば、少なくともアジアにはこのハナナガアリをおいて他に存在しない。誰も利用しない餌資源を独占できるようになったという点で、こいつらは成功しているのだろう。




以下、妄想。




しかし、こいつらはどうしてそんなけったいな虫を獲物として狩るように特化してしまったのだろうか。フサヤスデは決して珍しい虫ではないが、今すぐ多量に集めてこいと言われて集めてこられる程のものでもない。数がそんなに多くない上に、捕獲に多少とも危険を伴う獲物を専門に集めてくるのは、いくら反撃をかわす防御形態をもっているとはいえ、このアリにとってそれなりのコストになるだろう。何より、狩って巣に持ち帰った後に大変な努力をして下ごしらえせねばならないから、食べるのにも時間がかかる。栄養的にも、もっと良さそうな獲物は他にいると思うのだが。
また、餌を巡るアリ種間の競争から解放されるといっても、こんなマイナーで手のかかる獲物をわざわざ選んでスペシャライズしなくてもいい気がする。なのに敢えてそんな修羅の道を選んでしまった。当然の結果として、彼らは世界中どこでも数の少ない、繁栄とはほど遠い日陰者になってしまった。きっとこいつらは、みんなと同じなのが気に入らないのだ。「俺は他の有象無象とは違う道を行く」という、中二病じみた意地を感じずにおれない。だからこそ、俺はこのアリが好きなのである。

192.jpg広大な東南アジアのジャングル。我々の想像を上回る不思議な生き物達を、まだまだ隠しているに違いない。でも、人間ごときにそんな生き物が次々とたやすく見つけられるようになったら、その森はいろんな意味でもう長くないだろう。

日本の西表島には、天然記念物のイリオモテヤマネコ以外にヤマピカリャーという謎の大形ネコが住むという言い伝えがある。小形のヒョウみたいなものらしい。複数の目撃例があるため実在を確信する人がいる一方、あんな小さい島に大形肉食動物が個体群維持できる程の数で住めるはずがないと、冷ややかにみる人もいる。
個人的にはいてほしいと思うのだが、いても永遠に見つかってほしくないし見つかるべきでない。

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144.jpgクビレハリアリ一種Cerapachys(Lioponera?) sp.。たぶん日本でわずかに発見されている珍種クロクビレハリアリC. daikokuの近縁種。樹上性で、樹幹に細い行列を組んで他種の樹上性アリの巣を襲撃し、成虫から幼虫から容赦なく毒バリで半殺しにしてさらう。偶然見つけてあわてて撮影したが、もう少しストロボのディフューズをしっかりすべきだった。

クビレハリアリ亜科は、いわゆる「軍隊蟻」とよばれるアリ達の祖先筋にあたると言われる。確かに、獲物を運搬する時に腹側に抱えて歩く様は、軍隊蟻以外のアリ類では見かけない。

東南アジア某所にて。

ヤー

195.jpgマルズヤセバエ一種Micropezidae sp.。葉上でよく見かける大形のハエで、先端の白い前脚をつねに前に突き出した状態でいる。これを見るたび、ダチョウ倶楽部のあれを連想する。
この様は、一見すると先端の白い触角をピリピリふるわせて葉上を歩くヒメバチ類に見える。動きを止めてしまうとそう見えなくても、触角や前脚の先端が白く、それを振動させる仕草を見せる虫は、みなハチに見えてしまう。

東南アジア某所にて。

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トンボソウ属らしきランPlatanthera sp.。じめじめした日なたの草原に、一本だけ生えていた。人が花に頭から食われているような形の花をつける。東南アジア某所にて。


※ツルランCalanthe triplicataとのご指摘を頂きました。ありがとうございます。

三日月夜空

185.jpgヒシバッタ一種Misythus sp.。ツノがやばい。普通のヒシバッタと違い、地面から離れた場所にいる。東南アジア某所にて。

188.jpgハゴロモ一種幼虫。一瞬でどこかへ吹っ飛んで消える。東南アジア某所にて。

159.jpgメダカハンミョウ一種Therates sp.。薄暗い森の中で、木の葉から葉へ素早く飛び移って回る。人の接近を許さず、撮影困難。東南アジア某所にて。

158.jpgヒバリモドキ一種Trigonidiidae sp.。樹上性コオロギの一種で、鳴かない種が多いようだ。小さくて目立たないが、ファッションセンスはなかなかのもの。東南アジア某所にて。

169.jpgミズカメムシ一種Mesovelia sp.。東南アジア某所にて。似たようなのは日本にもいる。

浮葉植物の多い池でよく見られ、水面に落ちた虫を捕食する。この個体はよく見ると、浅瀬に打ち上げられたカイミジンコに口吻を刺している。この仲間の虫は大抵は無翅だが、ときどき翅のある個体がいる。普段はゆったりと水面を歩くが、逃げるときは素早い。

163.jpg幼虫。獲物を待ちかまえる。

168.jpgいつもは襲う側だが、襲われる側に回ることもある。水底からゲンゴロウ類の幼虫が上がってきた。動いたら襲われる。しばらくこのままだったが、さいわい難は逃れた。

水の生き物は見ていて癒されると言うが、水生昆虫というのはカメムシといいゲンゴロウといいトンボのヤゴといい、やたら肉食の凶暴なやつばかり揃っている。もし人間が虫サイズにされて沼っぺりに叩き出されたら、たちまち身ぐるみ剥がされて大魔界村状態になるだろう。

辛抱辛抱つっかい棒棄てたら希望も草茫々

161.jpgイトアメンボ一種Hydrometra sp.。見た目はひょうきんだが、性格は残忍。水面をつるっと走り、水面に落ちた虫を刺し殺す。

162.jpg小さい上に細いので、とても見づらい。東南アジア某所にて。

167.jpgコマツモムシ一種Anisops sp.。水中の中層に宇宙船のように静止しており、息継ぎの時だけ水面に一瞬浮く。水生昆虫数多かれど、水中の中層に何にも掴まらず定位できるものはほとんどいない。これの仲間以外では、双翅目のフサカ(ケヨソイカ)Chaoboridaeの幼虫くらいしか思いつかない。

東南アジア某所にて。

164.jpgカタビロアメンボ一種Rhagovelia sp.。沼の水面に住む微少な肉食カメムシで、落ちてきた虫にピラニアのごとく集団で襲いかかる。東南アジア某所にて。

夜間、水たまりをヘッドライトで照らしてうつむいていたら、カゲロウが飛来してヘッドライトに衝突し、水に落ちた。カゲロウが暴れると、周囲のウォーターレタスに隠れていたピラニアどもがわらわら集まってきた。ミズカメムシMesovelia sp.までやってきた。最初はゆっくり歩み寄るが、手前まで来ると一気にダッシュして飛びつき、口吻を突き刺して毒を注射する。四方八方から毒矢を打ち込まれて、カゲロウはすぐ動かなくなった。


幼い頃、妙な正義感から身の回りで困っている生き物は何でもかんでも助けねば気が済まなかった時期があった。ちょうどその頃、小学生だった俺の姉が学校のプール脇で弱っていたツバメの雛を助けたとかで、学校の朝礼で激励されるということがあったため、それに触発されたのもあると思う。当時、水田が家の周囲に広がっていたこともあり、よく虫が水面に落ちて溺れているのを見たため、そういう虫は片っ端から掬って陸に揚げてやり、いいことをしたと一人で悦に浸っていた。
しかし、やがて自分が善意でしていたその虫助けが、田んぼの水面に住む数多の肉食昆虫たちから餌を奪い取る行為に過ぎないことに気づいた。自然の成り行きに人間が手を出すことの虚しさを覚えた。以来、あからさまに人為が絡んだケースでない限り、瀕死の野生生物全般を助けなくなった。

165.jpgアメンボ一種。日本のヒメアメンボAquarius paludumくらいの大きさだが、少し胴体が太くてしっかりした印象。東南アジア某所にて。

176.jpgヒメキイロケアリLasius talpa。ミナミキイロケアリと瓜二つだが、脚を見ると立毛がちょびちょび生えており、毛ズネにみえるのが特徴。平地に見られるが、地表に出てこないので普通種のわりに姿を見ない。

神奈川にて。

177.jpgミナミキイロケアリLasius sonobei。平地や温暖な地域に多い種で、より北方・高標高にいるキイロケアリL. flavusとは基本的に棲み分けるが、言うほど南でなくても生息している。キイロケアリより目が小さくてしょぼしょぼしたツラをしている。普通種だが地中性が強く、その辺の道ばたをただ歩いてて見かけることはない。

長野にて。

184.jpgクロナガアリMessor aciculatus。春の結婚飛行をひかえて、巣口の拡張工事を行う。

182.jpg気が早い翅アリが、ときどき顔を出して様子をうかがう。

183.jpg働き蟻がグルーミングして、身なりを整えてやる。まるで旅立ちの門出を祝うが如く。結婚飛行が終われば、巣口を閉じて半年間の引きこもり生活が始まる。

長野にて。

181.jpgツヤグモ一種Micaria sp.。宝石のように美しい色彩だが、非常に小型。乾燥した荒れ地でよく見かける種で、風のようにすばらしいスピードで大地を疾走する。遠目には意外とアリに見える。

長野にて。

リコレクション


173.jpgイヌノフグリVeronica didyma。長野にて。

各地にはびこっている外来のオオイヌノフグリV. persicaと違って、在来の草(史前帰化の説もあり)。小さくて淡い紫の花は可愛く、美しい。オオイヌより厚かましい感じがしないのが、俺の中でポイント高し。

大学学部時代、家の近所で生えている場所を先輩に教えて貰った。以来、毎年春になると何となく見に行ってしまう。群落は、ここ数年縮小も拡大もしていない。日本ではかつて普通に見られたようだが、近年見かける機会が少なくなり、環境省の絶滅危惧種にも指定されている。最近レッドリストを見たら、意外に絶滅危険度ランクが高いのに驚かされた。

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イヌノフグリの仲間は、実はアリと浅からぬ関係をもつ。タネにアリの好む成分「エライオソーム」が付いているため、地面にこぼれたタネをアリが運ぶ。それにより、移動分散を助けて貰っているのである。エライオソームをタネに付ける植物は、他にもいろんな分類群で知られている。
また、ヨーロッパの乾燥砂漠地帯に生えるタチイヌノフグリV. arvensisは、アリの巣の周辺にしか生えないらしい。アリがよくタネを巣へ持ち帰ることに加え、アリの巣の周辺土壌がアリの出したゴミや排泄物により肥沃になることが関係している。







最近ヴェロニカで連想する言葉と言ったらアーデルハイト比叡=ハインツェル・・

172.jpgカベアナタカラダニBalaustium murorum。春先に、日当たり良いブロック塀にやたらいる。一見ぞっとするが、いわゆる「ただちに影響はない」。長野にて。

ドS

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179.jpgハシボソガラスCorvus corone。もう割れているクルミを、なお容赦なく割ろうとして高所から落とし続ける。長野にて。

145.jpgヒシバッタ一種。目が異様に上に出ている種。東南アジア某所にて。

171.jpgコイチャコガネ一種Adoretus sp.。日本にも同属がいる。異様にパッチリした巨眼がチャームポイント。本属は種類がそれなりにいるが、食葉性の仲間なので原則どれも害虫であろう。東南アジア某所にて。

134.jpgオオノコギリハリアリAmblyopone reclinata-group。大形でがっちりした種で、土中に住む。あらゆる節足動物を襲う捕食者。このアリは女王が存在しないようで、働き蟻どもが少しずつ産卵する。

東南アジア某所にて。

夏草や強者どもが

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アギトアリOdontomachus sp.の、頭だけが草に食いついたまま事切れていた。東南アジア某所にて。

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154.jpgカタゾウムシPachyrrhynchus sp.と、それに似たサルハムシEumolpinae sp.。カタゾウムシ類はとてつもなく体が堅く、捕食者である鳥などはこれを飲み込んでも消化できない。そればかりか、下手に飲み込むと消化管を痛めたり腹を下すのでこれを食いたがらないという。カタゾウムシ類はとても種類が多いが、どれも煌びやかな模様を体に持つ。これは、敵に自分を食べても不味いことを覚えさせる意味合いもあるだろう。

面白いことに、カタゾウムシ類の多い地域では、これに見た目の非常にそっくりな他分類群の昆虫群衆が成立している。ハムシやカミキリのほか、甲虫ですらないツユムシやコオロギにすらカタゾウ擬態と考えられる虫が知られている。いかにカタゾウという虫が、現地の捕食動物から嫌がられているかを如実に物語っている。
上のハムシは、実際にはもっと美しい虹色光沢を持つが、写真ではどうにもそれを表現できない。

東南アジア某所にて。といっても、カタゾウが多い場所と言ったら1カ所しかないが。

※なお、どうやらハムシには他にも別種のカタゾウに擬態した種類がいくつかいる模様。しかし、この写真の種以外は見つかりませんでした。

X指定

151.jpgオサゾウムシ一種Rhynchophoridae sp.。日本のオオゾウムシSipalinus gigasに似た雰囲気だが、背中に燦然と輝くX字がよく目立つ。18歳未満採集禁止。東南アジア某所にて。

Cryptoderma philippinenseという種とのご指摘を貰いました。

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156.jpg渓流にすむヒシバッタ類。熱帯の水辺には、少し雰囲気の違うヒシバッタがいる。東南アジア某所にて。