
ツノゼミ
Butragulus flavipes幼虫。ナントカツノゼミでなく、正真正銘ツノゼミという名前のツノゼミ。ただツノゼミというと、この種のことを指すのかツノゼミという分類群全体のことを指すのかが分からないので、俺はこの種のことを「タダツノ」と呼んでいる。
本種は方々の図鑑には最普通種とか書いてあるが、通常はある程度標高のある山手に入らないと生息しない。また、実際に山をふらふら彷徨っても思いのほか発見できない虫である。というのも、寄主植物が多岐に渡る種のため、具体的に探す的を絞れないのである。
この数年間というもの、どうにかしてこの「普通種」を普通に見つけられないものかと試行錯誤した。その結果、どうやら長野県の標高1000メートル以上の地域ではほぼ例外なく幼虫期にシワクシケアリ
Myrmica kotokuiを随伴させている傾向が認められた。このタダツノの他、モジツノゼミ
Tsunozemia paradoxaやトビイロツノゼミ
Machaerotypus sibiricusなど大抵のツノゼミ類はシワクシケアリのみを取り巻かせている。同所的に生息するトビイロケアリ
Lasius japonicusなどのアリは、近くのアブラムシに集まることはあってもなぜかツノゼミには殆ど来ていない。シワクシケアリは、通常はあまり高い植物上に登らないので、それが数匹高い木の枝上に群がっているのを探せば効率でツノゼミを発見できるのである。
ただし、これはあくまでも長野県で俺が感覚的に思っただけの事なので、よその地域でどの程度これが通用するかは分からない。また、高原で見られるマルツノゼミ
Gargara genistae?の場合、今まで見た限りではシワクシケアリが全く随伴せず、代わりにヤマアリ属(時にケアリ属)が随伴していた。


本種の幼虫は、色彩の変異が顕著である。本当に同じ種類なのかと疑いたくなってしまう。実際、このタダツノはかつて幾つかの種類に分けられていたが後で同種にまとめられたりした経緯がある。また、寄主植物の範囲が広いとはいえ、地域によって明らかに好んで取り付く植物種が決まっているように思える。これまで日本のツノゼミ分類は、殆ど成虫のツノの形だけでなされていた感が否めないため、分子その他のツールを使えば今後いろいろ新しいことが分かるに違いない。
長野にて。