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2024年8月

2024年8月31日 (土)

おのが心地にかしこしと思ふ人のほめたる

青森県の中三の倒産

 民事再生手続きを経て、結局、倒産という結果になりました。百貨店という業態が、生き残ることが難しい時代になっています。青森市に住んだ昭和末期の2年間は、青森市の中三(なかさん)デパートにはお世話になりました。倒産という報道には、寂しさを感じます。やはり、当時の地方都市のデパートには、時代の流行の先端を感じさせる役割があったと思います。雪が積もっても、デパートの駐車場に車を入れて、快適に買い物ができるのも便利でした。今は、ショッピングモールでの買い物が主になっているのでしょうが、ECサイトでの購買割合が増えてくれば、いずれ、アメリカのように幽霊モールが増えてしまうのではないでしょうか?新興国にも、休日に中間層が買い物や飲食やエンターテインメントなどのために家族で出かける地域の拠点は、必ず存在します。デパートという業態は、昭和の象徴でした。令和の家族はどこへ行くのでしょうか?

 

国立劇場の再整備

 国が責任をもって早急に行うことになっていますが、国費の増額のほか、PFI事業の中身を見直す(ホテル事業を必須としない)ことで、手を上げる事業者がいない状況を打開する方針のようです。しかし、国費の増額は簡単ではなさそうですし、ホテル事業を除外すれば、ビジネスが成り立つとも限りません。民間事業者に自由度を与えて、国費を抑制するのが本来の趣旨ですから、路線変更で、話が進むのか注目です。伝統芸能関係者には、長期の閉館に危機感が募っています。国立という看板の意味は非常に大きいのです。歳月が無駄に流れて行けば、関係者は歳を取り、舞台に立てなくなるかも知れません。現役の演者の方々の本音は、リノベーションでも構わないので、空白期間をできる限り縮めてほしいのです。路線変更で、直ぐに再整備が進むのなら不満は収まるでしょうが、そうならなければ、文化庁は当事者能力を失うのではないでしょうか?国立劇場の再整備が座礁した状態に至っていることは、我が国の文化行政の大きな恥辱です。計画策定時と比較すれば、建築費が高騰するなどの事情があったのでしょうが、文化庁の調整力不足は否めません。これ以上の時間の浪費は許されません。

 

おもちゃ市場

 15歳未満の人口が減少する中で、おもちゃ市場は拡大しています。子どもではなく、大人が購入するからです。トレーディングカードは、交換価値が上がる可能性もあるため人気です。推し活をする大人向けの商品開発も盛んです。価格の高いものも、大人なら買えるという面もあります。大人になって良かったいうことなのでしょうが、心は少年少女のままという人間が増えるのは、社会の発展という意味では考えものです。「ちいかわ」のように、大人も子どもも対象になるキャラクターもあります。様々な会社とのコラボで引っ張りだこになっています。サッカーJ1の試合にもマスコットが登場していたのには、驚きました。玩具市場は、既に1兆円産業なのです。

 

2024年8月30日 (金)

例のやうにては、にくげにさぶらはん

国際的な頭脳循環

 ユニクロの柳井会長は、最優秀の外国からの人材を吸収しようとしない日本に、愛あるダメ出しをしています。人口減少時代にも拘らず、外国からの高度人材を積極的に受け入れる政策を持たず、単に低賃金労働力として短期で使い捨てるというシステムに終始しているのでは、国際的な頭脳循環のハブにはなれません。出稼ぎ労働者たちにとっても、円安もあり、日本はかつてほど魅力がなくなっています。ましてや、生活環境や教育事情などで、欧米の先進国に見劣りする日本には、頭脳で勝負する人材が定住してくれるはずもありません。シンガポールという都市国家のような国は、以前から日本とは真逆の政策を取っており、極めて優秀な頭脳の外国からの受け入れには特別に熱心です。研究機関には、特別待遇で招聘された外国出身のシニアから若手までの研究者が、珍しくありません。彼らが定住するなら、シンガポールのパスポートを与えるという一種の「誘拐」作戦です。富裕な投資家を受け入れて、資産運用のハブともなっています。相続税がないというのは、大きな魅力です。こっちの水は甘いと誘いかけて、移住させて、彼らのビジネスから消費までを含めて、シンガポールの国富を増やす作戦なのです。柳井会長が嘆いているのは、世界の頭脳循環が日本をほとんどスルーしていることなのです。単なる旅行客や単純労働者が増えても、日本経済の成長への寄与は知れています。高度人材の誘致競争に参加もしていない内向き姿勢は、もはや致命的です。政権構想で、そうした政策を打ち出す政治家を見てみたいものです。

 

王位戦第5局

 先手の藤井7冠がシリーズ4勝目を上げて防衛に成功し、永世王位を獲得しました。読みの深さで、攻防に圧倒したという感じです。序盤では、7七玉と取ったところが、一見危ない形に見えましたが、相手には咎める有効な手段がないことを読み切っていたようでした。中盤で、5六歩から飛車を展開して、有利を築いていきました。その流れで、渡辺9段が、金を打って4四の飛車を捕獲する筋もありましたが、かりにその手を選んでいれば、藤井7冠には、切り返しの必殺技が見えていたようです。凡庸な棋士なら間違いなく陥っていた罠に嵌ることがなかった渡辺9段も流石でした。終盤では、8三銀と打って、飛車に圧力を掛けて行った妙手がありました。そのあたりでは、はっきり藤井7冠が優勢でした。渡辺9段の反撃に対して、3九角と打ってもう1枚の飛車も捕獲したところで、勝勢になりました。ただ、この時点で選択肢を誤れば、渡辺9段が逆転する可能性がありました。形勢判断に誤りがなく、攻防に的確な指し手を繰り出す藤井7冠の棋力には、あまたの棋士も感服するしかありません。渡辺9段は、あと一歩まで迫りましたが、自玉に詰みがないことを読み切った藤井7冠は、3一飛と打って、合駒を請求することで、さらに玉を安全にして、渡辺9段を投了に追い込みました。最終盤では、百戦錬磨の渡辺9段もお手上げという雰囲気でした。Abemaで途切れ途切れに観戦しましたが、ほぼ互角の状況から抜け出していった藤井7冠の構想力と終盤での読みの深さが印象的な一局でした。対渡辺9段戦には相性が良い面もありますが、最強棋士の調子が再び上向きになってきたと感じます。

 

不動産取引の囲い込み

 国交省は、いわゆる悪質な囲い込みを行う業者に対する罰則の適用を積極的に行う方針です。レインズへの登録をしない、照会に対して適切な対応をしない、売り手・買い手の双方から手数料を取るために顧客に対して情報操作を行うなど、悪質なケースが絶えない状況が続いています。今さらという感じですが、コンプライアンスが徹底されない業界の特殊性があるようです。国交省が、悪質な業者を駆逐する大掃除に乗り出すのは賛成です。単なるモグラ叩きではなく、業界の清掃が進むことを期待したいと思います。

 

2024年8月29日 (木)

あけんとならばただ入りぬかし

畜産の危機

 最近は、スーパーの牛乳パックの価格が少し高めになっています。良く飲む方には、家計に響いているかも知れません。ただ、生産現場の状況に鑑みれば、いつまで新鮮な牛乳を低価格で飲めるのか不安になります。畜産農家は、2023年には、5.3%減少しました。85%の農家が赤字です。飼料代の高騰、コロナ禍による需要減少、子牛の価格低迷、燃料代の上昇などが原因です。生産コストの上昇に見合って、生乳価格が上がらないと、廃業する農家が増えてもおかしくありません。バターの潜在的な供給不足も、生産現場に余裕がなくなっていることを示しています。気候変動による温暖化は、本来、寒冷地に生息していた牛にとっては、厳しい環境です。それにしても85%が赤字という状況は、異常です。持続可能な畜産のために、もっと公費を投入して、経営の合理化による安定を図る必要があると思います。このままでは、21世紀末には、新鮮な牛乳を普通に飲めなくなるのではないでしょうか?

 

隠れた空き家

 国交省が、隠れた空き家を判定するシステムを開発するとのことです。電気や水道の使用状況をチェックできるなら、それほど難しい話ではないと思います。確率的に示すそうですが、現地に行きさえすれば、見た目からもある程度は判断できそうです。隠れた空き家であるらしいと分かっても、所有者自身が、介護施設に入所していれば、事実上、取り引きはできない状況で、隠れた空き家の流通に繋がるのかは、かなり疑問です。所有者の特定が難しい場合もあります。相続で揉めていればダメですが、相続しても空き家状態に放置しているなら、そもそも交換価値が乏しい物件だからでしょう。一般的なビジネスにならない物件は、流通しにくいのは当然です。二束三文でも処分したければ、買い手や借り手が見つかりにくい空き家を専門に扱う業者さんに相談しているでしょう。国交省の自己満足にならなければ良いのですが・・・。

 

志願倍率2倍未満

 公立小学校の教員試験の志願倍率が、2倍未満の都道府県が、24まで増えて、全体の4割となりました。今や、小学校教員については、数を確保するのがやっとで、質は問えなくなっているのです。この状況から脱するには、ブラック職場と揶揄される問題点をすべてクリアする必要があります。そのためには、公費負担を増やすことが必要条件になりますが、文科省の既定予算の枠内でやりくりできる規模ではありません。単に、教職調整額の増額で済む話でもありません。文科省は、抜本的なシステム改革は避けているので、財務省との交渉では、ブラック職場の解消策が不十分な中で、財政支出の増額による効果が見込めるのかという重い問いを突き付けられるでしょう。少子化が進む中で、学校教育への予算配分を伸ばすという理屈は、教育(教員)の質の向上という課題抜きには成立しません。文科省は、中教審での議論を、学校教育の在り方(特に教員の役割)を見直すところから、深掘りしていかないと、教員という職に対する社会的評価を改善することが難しいのではないかと思います。

 

2024年8月28日 (水)

障子を五寸ばかりあけていふなりけり

AIと短歌

 浦川通「AIは短歌をどう詠むか」(講談社現代新書)は、文学と生成AIのあるべき関係を探求する試みです。著者は、積極的にテクノロジ―を応用すべきだとは考えていません。しかし、既に、短歌を作成する生成AIが登場していることもあり、それから短歌の作成のヒントを得ようとしています。生成AIは、過去の作品を学習することで、確率的に言葉を並べて行きますが、単なる再現は創作性を生みません。パラメータの調整によって、「飛んだ」短歌も作れるのですが、意味不明に陥る恐れがあります。実際に、新聞の歌壇に採用されている作品にも、理解するのが難しいものもあります。飛躍をちょうど良い塩梅に不時着させるという作業は、実際の短歌の作成にも似た作業です。かりに上の句で止まっているときに、下の句を考える際の、「壁打ち相手」になってくれるなら、利用価値はあるというのが、プロの歌人の見解のようです。音楽でも、プロの作曲家が似たような使い方をしていると聞いています。美術の村上隆さんも、作品作りのプロセスで、生成AIによる「作品」のアイデアにヒントを得る様子を、地上波で紹介していました。短歌の作成プロセスでは、自分の言葉を探す作業の支援ツールとしての利用価値があるようです。俳句には、現代俳句データベースがあり、それを学習させたら、生成AIが、最強の「俳人」になってしまうかも知れません。短歌には、そういうデータベースがありませんが、学習が進めば、好きな言葉を入力するだけで、それらしい短歌(〇〇さん風の)が生成できてしまう時代が来るでしょう。

 

ガザの戦後

 イスラエルは、ハマス殲滅を目的にしているので、戦争は終わるどころか、ガザ地区から中東地域へと拡大していく可能性がありそうです。アメリカが仲介する戦闘停止の交渉は、未だに出口が見えない状況です。かりにハマスがガザ地区から排除されたとしたら、その後のガザ地区の統治はどうなるのでしょうか?そこに暮らしている200万人以上のパレスチナ人の生存権は、どう保障されるのでしょうか?鈴木啓之編「ガザ紛争」(東京大学出版会)所収の鈴木啓之准教授の論文によれば、イスラエルが安全保障などで関与する可能性があります。これまでは一貫して分離政策を取ってきましたが、世論の後押しもあり、これを改めて入植を進めるかも知れません。統治は、アメリカや周辺国による機構が暫定的に担い、西岸地区を管理しているパレスチナ暫定自治政府へ移管するという国連案があるようです。ただ、イスラエルは、自治政府への不信感から、その案には賛成していません。既に街が空爆で破壊されていますが、イスラエルは、パレスチナ人の多くをガザ地区から避難させる(追放する)つもりなのかもしれません。大量の難民の流出は、この地域周辺の不安定さに拍車をかけます。そういう事態は、非常に危険です。復興には、多額の資金を要するので、日本を含めて、世界の政府やNGOが協力するしかなさそうです。イスラエルは、ハマスとの戦争には勝利するのかもしれませんが、殲滅には至らず、非戦闘員の犠牲者を増やし続ける殺戮・破壊行為を行ったことで、国際社会からの批判に晒されています。誰が、どう考えてもやり過ぎです。もはや、イスラエルの「戦略的な敗北」という状況でしょう。これは、結局、ハマスの思う壺です。一刻も早く、ガザ地区の戦後処理に向かうべき時だと思います。

 

柳沢慎吾さん

 笑点で「高校野球」というネタを披露していました。横浜対PLという古豪の対戦を演じていたのですが、高校野球ファンならば、あるあるネタが満載で、楽しめたでしょう。彼の本業は俳優ですから、人間観察力が優れています。私は、一種のドラマとして、彼の作品を見ていました。隠し芸以上の出来なので、こういう一人芝居も、幾種類か揃えて、小さな劇場でやったらよいと思います。ライフワークになりそうです。演芸コーナーに芸人でない人が出るのは異例ですが、彼の起用はスマッシュヒットになりました。これからも隠れた逸材を発掘して、笑点に出演させてほしいと思います。なお、高校野球を知らない人にとっては、何が面白いのか、理解しがたい部分もあったでしょう。万人向けの笑いは、なかなか成立しにくい時代になりました。高校野球は、やっている人間たちが真剣そのものだけに、どこか可笑し味があります。人間観察からキャラを生みだして、コントを展開した志村けんさんの手法に似ていると思いますので、柳沢さんの新たな発想力に期待しましょう。

 

2024年8月27日 (火)

家のほど身の程にあはせて侍るなり

大相撲9月場所

 横綱の出場が怪しくなっているので、大関・関脇による優勝争いになりそうです。大の里関は右差しを研究されているので、左を使う取り口を見せられるか注目です。琴櫻関は、もう初優勝しなければいけないでしょう。そのためには、取りこぼしをなくすことです。小結に留め置かれた平戸海関が、二桁の勝星を上げることができるかにも注目です。たたき上げ力士の代表格として、大関を目指してほしいと思います。新入幕の阿武剋関には、怪我などがなければ、10勝以上を期待できそうです。十両では、尊富士関の復活に注目です。願わくは14勝くらいで優勝して、再入幕を決めてほしいところです。新十両の大青山関、木竜皇関には、勝ち越しを期待したいと思います。十両の壁に跳ね返される力士が多いので、まずは十両に定着する地力をつけてほしいのです。24歳の大青山関は、中国出身の荒汐部屋のホープで、近々、幕内上位に上がる大器だと思います。幕下上位では、19~20歳と若い悟富士さん、若碇さん、安青錦さんの3人に、このチャンスを生かして関取の座をつかんでほしいと思います。特に、ウクライナ出身の安青錦さんは、正攻法の相撲で番付を駆けあがっているので、以前から注目していました。外国人力士で、これほど相撲の勝ち方を知っている人は稀だと感じます。大関になった琴欧洲関並みの素材だと思います。安治川親方の指導を受けているのも、急成長の要因でしょう。

 

本当に怖い将棋

 NHK杯で、羽生9段が近藤7段に敗れる一局がありました。後手の羽生9段が勝勢でしたが、近藤7段の粘りで差が縮まり、最善手を逃した羽生9段のミスで、近藤7段に15手詰めの勝ち筋が生じました。これを読み切った近藤7段は見事でしたが、素人目にも勝ちが見えていた羽生9段にとっては、極めて珍しい敗戦でした。羽生マジックで何度も逆転勝利を飾ってきた棋士なので、終盤での寄せの判断にミスが出たのは、意外な出来事でした。勝利を目前にすると、羽生9段のような大名人でも安全に勝ちたいという気持ちが働き、近藤7段の逆転勝ちの要となった7七金の位置を変えさせるという攻め手を見逃したのでしょうか?30秒将棋の罠に、百戦錬磨の棋士でも落ちてしまうことがあるということを改めて教えてくれた恐ろしい将棋でした。Abema将棋(フィッシャールール)では、さらに時間がないので、逆転劇が頻繁に起こります。AIによる評価値が出るので、一手で積み上げてきた優位が崩壊する瞬間がしばしば見られます。実に残酷なゲームです。

 

パン屋倒産

 もともと薄利多売の商売だそうです。パンを作って売るのは、パン屋さんだけではないため、競争も激しいのです。廃業率が、3年で70%、5年で80%、10年で90%だという数字があります。ビジネスとしては、売り上げを伸ばすことが難しく、経費の上昇が経営を圧迫するという構造的な問題があります。売れ残りのロスが避けられず、特に、人気が高い菓子・総菜パンは、当日に売り切るしかないので、機会を逃さず、利益を確保することが容易ではありません。このところ、廃業が目立つのは、小麦等の原材料費の上昇、光熱費の上昇、賃金の上昇など、コストアップが主な原因だとのことです。世田谷区は、パンの激戦区ですが、消費者にとっては、選択肢が広いので、有り難く感じています。ただ、コロナ禍以降は、コストプッシュで価格上昇が著しいために、足が遠のいている状況もあります。フランスやドイツなどに比べても、日本のパン文化は非常に高度に発達しているので、この伝統の灯は消えないでほしいと願います。

 

2024年8月26日 (月)

思はん子を法師になしたらんこそ心くるしけれ

京都国際高校

 今夏の高校野球選手権大会の優勝校です。韓国語の校歌が何度も甲子園球場に流れました。韓国からも正式な学校として認可されているというので、在日韓国人の子弟が多いのかと思いましたが、そうではなく、生徒の7割が日本人です。ルーツが、民族学校だという経緯があるために、誤解されがちです。学校の特色として、韓国語や英語の履修に力を入れたカリキュラムが組まれているとのことです。男子生徒の9割が野球部員(73人中61人)だとのことですから、野球の強豪校として入学してくる生徒が多いということです。小規模な学校ですので、男子は、ほぼ野球部という特殊性が際立ちます。決勝戦を戦った関東第一高校は、男子生徒が1300人以上で、野球部は100人程度です。甲子園常連の強豪校といっても、野球だけが強いわけではありません。今年の京都国際高校は、春の近畿大会も制しており、2人の投手を中心に選手権で優勝してもおかしくない戦力だったようです。期待されての初優勝、おめでとうございます。

 

大谷翔平の新しい勲章

 MLBの40-40クラブに6人目の選手として名を連ねました。有り難いことに、NHKBSのMLB中継があり、レイズ戦での達成の瞬間を目撃することができました。マンガでも、こういうストーリーは非現実だとして避けるでしょうが、彼は、同じ試合で、盗塁を決め、9回裏に、同点で迎えた2死満塁のチャンスで、サヨナラホームラン(40号)を打ったのです。ベーブ・ルース並みの快挙ではないでしょうか?解説者が、満塁になれば、大谷選手に打席が回ると予言したとおりになり、左投手の初球の外角への難しい変化球を見事に打ったのには、本当に興奮しました。WBCの決勝で大谷投手がトラウト選手を三振に打ち取ったときにも勝る、最高のシーンでした。こういうことが起こるのは、MLBの素晴らしさです。肝心の記念球が死蔵されてしまった(まだ返ってくる可能性はあるかも)ことは、ご愛敬でしょう。過去の記録を見ると、カンセコ42-40(オークランド)、ボンズ42-40(サンフランシスコ)、Aロッド42-46(シアトル)、ソリアーノ46-41(ワシントン)、アクーニャ41-73(アトランタ)となっており、大谷選手(ロサンゼルス)は、最速での達成ですから、残り試合で、記録がまだ伸びる余地があります。結果として、孤高の50-50をクリアしたとしても、大谷選手なら驚くには値しません。大谷選手は、二刀流であるがゆえに、打者としての記録は歴史に残らないという心配がありましたが、肘の故障の功名で、40-40クラブに加わることができ、彼の真の実力を記録に止めることができました。通訳の違法賭博事件の被害者になるなど、彼の人生は波乱万丈ですが、日本が生んだ最高のアスリートとして歴史に残る偉大な人物だと思います。今年、ドジャースにも世界一をもたらしてくれると信じています。もしもニューヨークとのワールドシリーズになるなら、いやがうえにも全米が盛り上がるでしょう。

 

パラ五輪代表による誹謗中傷

 オリンピック代表選手らへの誹謗中傷が社会問題になっている中で、パラ代表自身がライバル選手への誹謗中傷を行ったために、民事裁判で損害賠償の支払いを命じられました。パリのパラリンピック大会への出場も辞退したということです。支援団体からも見放されれば、事実上、選手生命が断たれるかもしれません。出場辞退では済まず、競技団体から除名されてもおかしくないでしょう。SNSによる誹謗中傷は、軽率な行動という次元で許されるものではなくなっています。競技団体としては、誹謗中傷から選手を守るだけでなく、選手に対して誹謗中傷をしないという行動規範を徹底すべきでしょう。オリンピックでは、女子体操で、喫煙飲酒による出場辞退がありましたが、他の選手への誹謗中傷の方が遥かに重大な問題です。今回の裁判では、100万円以上の賠償を認めましたが、悪質性が高い場合は、もう一桁大きい賠償額を課しても良いと思います。

 

2024年8月25日 (日)

きき耳ことなるもの

埼玉県の男女別学

 男女共同参画委員会からの勧告から1年、県教委は、まだ具体的な男女共学への工程を示すに至っていません。20年前にも同じ勧告がなされて、各学校の自主性を尊重するという方針から、共学化は実現されていません。県立高校なら、共学が当たり前で、長々と議論をする意味もないと思います。どうしても、異性と机を並べたくないなら、男女別学の私学に行けばよいだけですから。県教委としては、基本的に、今回は、共学化を推進するという方針のようです。生徒を含めて反対論も根強いようですから、学校の設置者として、共学化の方針の正統性をきちんと論じて、かりに共学化しなければ、その学校の存続を保障しないというくらいの強い方針を打ち出さないと、まとめられないのではないでしょうか?ここまで来て腹をくくれないようなら、責任者を交代するしかないでしょう。埼玉県教委は、それほど頼りない存在なのでしょうか?高校生の6割が共学化に反対というようなアンケート結果に、問題処理の拙さが滲み出ていると感じます。教育長さんたちは、高校生たちに賛否を聞いて、どうするつもりだったのでしょうか?

 

知事の往生際

 兵庫県では、百条委員会による知事の疑惑に関する調査が進められています。パワハラや贈答品の受け取り(おねだり)などの証言が集められています。それらも十分に辞職に値する内容だと思いますが、公益通報者(その後自殺)への対応という面では、通報者に圧力を加えたとされる知事与党の議員さんを含めて、より大きな看過できない問題があったと思います。伝聞が多くなるのは当たり前ですが、広範な職員からの「告発」に鑑みれば、火のないところに煙は立たずで、身から出た錆ではないでしょうか?コミュニケーションの齟齬というような説明は、見苦しい限りで、本人に恥の感覚があるのならば、百条委員会における調査結果を待たずに、自分から辞職を申し出るのが当然だと思います。議会の方は、委員会の調査結果を待っているところでしょうが、辞職勧告の議決をしない道理はなさそうです。ただ、四面楚歌に近い状態にありながら、知事という役職にしがみついているような人間を選挙で推した政党・会派の責任は免れないと思います。自分で出処進退を決断できないようなので、可及的速やかに、議会が積極的に行動すべきでしょう。知事に相応しい人間かどうか、経歴だけで判断せず、人間の本質をしっかり見極めてほしいものです。瞬間湯沸かし器(古い表現!)のような人間は、絶対に組織のトップに立たせるべきではありません。

 

アメリカ大統領選挙報道

 日本での報道ぶりには、疑問を持ちます。無党派層をどう取り込むかが課題だなどという当たり前すぎる評論をするだけで、接戦州の動向を直接取材して、無党派層がどういう投票行動をするのか、肌感覚で伝えるべきでしょう。異例のことながら、ハリス候補への変更で、敗色濃かった民主党が急激に上げ潮ムードになっているのは、理解できますが、全米での得票数は勝敗には関係ないので、7つのスイング・ステートの状況を、きちんと自分の目で見て報道すべきです。ハリス候補が、白人男性の庶民的なウォルズ氏(ミネソタ州知事)を副知事候補にして、中間層に対する政策を重点化するとしているのも、接戦州での勝利に狙いを絞っているのだと思います。8月時点の世論調査では、7州のうち、5つまでハリス候補が優勢という結果になっており、明らかに勢いはハリス候補にあります。ただし、両者の支持率は非常に僅差で、ハリス候補が勝つと言い切れるものではありません。それでも、勢いという点では、トランプ陣営に焦りを感じさせるだけの脅威になっていると感じます。ハリス候補が独自に打ち出す政策の中身で、もう一押しする必要があるでしょう。テレビ討論で2人の候補が並べば、トランプ候補の老いがどうしても目立ちます。トランプ氏の返り咲きが現実味を帯びていた初夏の頃とは、随分景色が変わってきました。外務省は、ハリス陣営とのコンタクトを強めているはずです。

 

2024年8月24日 (土)

法師のやうにねりさまよふ

学力テストのデータ活用

 岩波講座社会学第11巻「階層・教育」(岩波書店)は、期待したほどデータに基づく政策に役に立つ分析が提示されていません。これが、今の計量社会学の限界だと受け取って良さそうです。かねてから、学力テストのデータの公開(個人との紐づけを外した上で)を願ってきましたが、ますますその思いを強くしました。地域の特性と学力テストの結果を重ね合わせてみれば、様々な問題点が浮き彫りにできるはずです。階層による学力格差の状況も、より大量のデータで追えるでしょう。社会学者からも、明確に要求すべきですが、そうした記述は見当たりませんでした。文系の学問は役に立たないと揶揄されるのは、折角の貴重なデータを国が抱え込んでいるからです。早く活用して、国および地域の教育施策に生かすべきだと思います。活用しないのなら、学力テストに今ほどの財政支出を行う必要も感じません。

 

覇権阻止の防衛戦略

 コルビ―「拒否戦略」(日本経済新聞出版)は、アメリカの国防問題の調査研究で指導的立場にあった専門家による、中国覇権阻止への戦略を解説した作品です。興味深い点を幾つか紹介します。まず、アメリカとして取るべき戦略は、「拒否的防衛」だとしています。要は、中国に対して優位に立つことを目指す必要はなく、反覇権連合の国を既成事実化によって従属させようとする中国の企てを拒否する(失敗させる)ことが肝要だという見立てです。拒否のオプションとして、主要な領土を奪取する能力、奪取した領土を占領する能力を拒否するという戦略が示されています。台湾有事を例に取れば、沿岸部に上陸を許したとしても、内陸部の前線を維持して反撃するというシナリオです。沖縄戦でも、内陸部での日本軍の反撃でアメリカ軍はコストが高い戦いを強いられたとしています。最適な戦略は、拒否とコスト賦課の組み合わせだというわけです。日本に関する記述では、戦後の防衛モデル(非軍事化、アメリカへの不平等な依存)からの大転換だとしています。岸田内閣が進めている防衛予算増を、漸進的に過ぎないと表現しています。北朝鮮の核武装に対しては、ミサイル防衛システムによる拒否戦略を基本としつつ、コストが高くなり過ぎれば、韓国・日本への核拡散を検討せざるを得ないと記しています。両国が報復手段を持てば、北朝鮮の核攻撃を抑止しうるとしています。ただ、核拡散は、中国はもちろん、グローバルな戦略的反響を巻き起こすに違いないと述べています。少なくとも日本については、核保有は考えられないと思います。広島。長崎の悲惨な経験の記憶が、核兵器への絶対的拒否という強い心情を支えています。アメリカの核の傘にいることと矛盾していますが、核兵器を自ら持つという選択肢はないでしょう。同盟国であるアメリカ軍による核兵器の持ち込みさえも支持されないはずです。

 

アメリカの金融所得

 日経新聞に、アメリカと日本の個人消費の差は、金融所得の差が影響しているとの記事がありました。アメリカの家計には、年率換算で540兆円もの所得があるというのです。日本と比較して、40倍の規模です。アメリカの家計の金融資産は、過去20年で3倍以上となっていますが、その間、日本では、漸く1.5倍程度になっただけです。その構成を見れば、アメリカは、株式や投資信託が5割を占めているのに対して、日本は、現預金の割合が5割を超えています。日本では、株高が所得に結びつかないために、個人消費が弱い状態から脱することが難しいのです。貯蓄から投資への転換は、安定的に金融所得が伸びて行く環境なくして、実現しません。日本の家計からの投資が、アメリカの投資信託へ向かっているようでは、日米の格差はさらに拡大するのではないでしょうか?株式相場の不安定さは、素人が安心して投資をするような状況とは程遠いと感じます。長期的に投資することが、豊かさの源泉になると分かれば、自然と投資が普通の行動になっていくでしょう。日銀には、政策転換に際して、タイミングを誤らぬように、慎重な判断を求めたいと思います。

 

2024年8月23日 (金)

しのびたる郭公のたどたどしき

自民党総裁選挙の限界

 結局、自民党の議員票の争奪戦ですから、政治とカネの問題で画期的な政策構想が出てくるはずもないのです。そこは、手緩くしないと、議員たちから票をもらえなくなります。世代交代を唱えようが、政策通を披露しようが、国民に人気があろうが、詰まるところは、自民党の国会議員という利権を守ることが、得票のポイントになるわけです。派閥を超えた選挙だという話も、眉唾です。そもそも縁も所縁もない人間に投票する議員などいないでしょう。派閥は、もともと、トップを総裁・総理にすることで、集団に属する議員たちにも人事面で利益を分配するシステムですから、自分の得になる人に投票するという行動パターンは不変です。今回のような候補者が乱立する選挙では、勝ち組に乗りたいという行動パターンの議員さんが大半です。20人の推薦人を集める時点は、せいぜいベースキャンプで、地方票と推薦人以外の議員票を集めて上位2名に入るところが重要です。ポストの約束を含めて、利権丸出しになるでしょう。常識的に考えれば、派閥なき多数派工作には、余計にお金がかかるのではないでしょうか?

 

Jリーグ終盤戦

 J1の優勝争いは、上位5チーム(町田、広島、鹿島、ガンバ大阪、神戸)に絞られています。残り7節で、1位と5位の勝ち点差は7ですので、逆転可能です。今後の直接対決の機会は、意外に少なく、首位の町田は、9月末の広島とのアウェイの試合が山場になります。そこで、引き分け以上にできれば優勝が見えてきます。広島は、鹿島、横浜M、町田と続く3連戦がカギになります。得失点差で見れば、1・2位と3~5位には差がありますので、町田か広島が優勝すると見るのが普通でしょう。タイトルから遠ざかっている鹿島は、執念の逆転優勝を狙っているはずです。広島戦に勝利するとともに、下位チームとの対戦で勝ち点3を積み上げて行ければ、光が見えてくるでしょう。以上、まとめれば、本命が町田、対抗が広島、穴が鹿島ということになります。J2への自動降格圏にいるのは、札幌、鳥栖、磐田ですが、これからの7試合の結果で、巻き返しは可能です。ただ、札幌が降格を免れるには、5勝くらい必要でしょう。27試合で4勝しかしていないので、苦しいのは事実です。鳥栖は、選手が流出したので、どこまで団結して戦えるかが課題です。磐田は、湘南、京都との順位争いになるでしょう。この3チームにとっては、特に、勝ち点1が貴重になります。最後まで、熾烈な争いになるでしょう。今後の対戦カードを見ると、磐田はやや不利だと感じます。

 

教職調整額13%

 文科省が、2025年度予算で、教職調整額を13%とすることを想定した3か月分の所要額を概算要求するとの報道がありました。4%からのアップは既定方針でしたが、13%という数字に、どのような根拠があるのかは分かりません。一律に調整額で支給するのではなく、残業時間を適切に管理して、それに見合う残業代を支給する方が公平です。来年の通常国会で、給特法の改正案が国会に提出されます。現場の教員からは、定額働かせ放題の仕組みを見直すとともに、ブラック職場と言われるような業務負担の抜本的な改善を望む声があります。教員の志願者の減少の根本原因への対策を取らなければ、折角の財政負担増も流れを変えるに至らずということになりかねません。教職調整額を増やすということは、今よりも残業をさせてよいという意味にも取れます。

 

2024年8月22日 (木)

霞も霧もへだてぬ空のけしき

女性からの被害告発とプロスポーツ

 最近では、サッカーの佐野選手がマインツへの移籍が決まった直後に、逮捕されるという事件がありました。その後、水面下の交渉が行われたものと推測しますが、不起訴となり、彼はチームに合流して、チームの支援を受けながら、選手として活動しています。その前に、ランスの伊東選手も、女性からの告発がありながら、チームは彼の選手としての活動を支援し続けました。欧州のサッカーチームには、この種の告発の扱いに関する高い経験値があるのでしょうが、日本では、リスクを避けるために、選手の出場機会を制約する方向に傾きがちで、海外との違いが鮮明になっています。不起訴になっても西武で出場させてもらえなかった山川選手は、王会長の後押しを受けてソフトバンクに拾われて、今年は、ホームラン王のタイトル獲得がほぼ確実です。彼の加入は、長打力の補強で効果を上げて、チームの顔とも言える柳田選手の離脱がありながら、ソフトバンクは、パリーグで圧倒的な首位に立っています。一方の西武は、ダントツのビリです。松井監督の更迭後もまったく浮上していないのは、チームの戦力が見劣りするからです。なぜ、昨年、山川選手に出場機会を与えるという判断ができなかったのか、今さら取り返しは付きませんが、残念なことです。西武ファンは、山川選手の流出やソフトバンクでの活躍をどう感じているのでしょうか?チームは、最悪の状況になるまでは、選手を信頼する姿勢を貫いてほしいと思います。マインツは、佐野選手の起用へのSNSなどでの批判に対しては、毅然と反論して、ファンの動揺を抑える措置を取っています。そういうロジカルで腹の座った対応が望まれます。

 

コメの高騰

 新潟県のJAグループが、新米(1等米)の買い上げ価格を22%引き上げるという報道がありました。コメ価格の上昇は、全国に波及するようです。確かに、8月中旬になって、近隣のサミットからもコメが消えました。その前から、週末の値引きも取りやめていました。需給がひっ迫しているのは、前年夏の猛暑により流通量が減少したこと、相対的な値ごろ感からコメの消費が拡大していることが影響しています。また、価格の上昇は、前年の需給関係による価格上昇、農家の生産コストの上昇が影響しています。9月中旬以降、今年の新米が流通するので、コメが買えない状況は緩和されるでしょうが、価格については、間違いなく高騰するでしょう。コメは主食ですから、価格上昇は、特に低所得者を苦しめることになります。コメがいつでも買えない状況は気持ちが悪いものです。

 

王位戦第4局

 後手の藤井7冠が1日目からリードする展開で、そのまま差を広げて、藤井曲線での完璧な勝利を飾りました。渡辺9段がA級順位戦の佐々木勇気8段戦の指し手をぶつけた形ですが、藤井7冠が5六歩と角を攻める妙手を繰り出して、優位に立ちました。渡辺9段が長考して封じ手となった段階で、半ば勝負がついていたようにも感じます。2日目に、藤井7冠が、角と銀を捨てて、竜を作った段階で、勝勢となりました。終盤、渡辺9段が、2二角と打った勝負手にも、正確に対応して、全てを読み切っている藤井7冠の強さが光りました。感想戦でも、2筋からの渡辺9段の攻めの可能性を指摘して、圧倒的な読みの深さを披露していました。他を寄せ付けない異次元の強さです。猛暑の中でも研究を怠らず、伊藤匠叡王に初めてタイトルを奪われたショックを完全に払拭したものと感じます。これで、シリーズは3勝1敗となり、次戦に勝利すれば永世王位の称号を得ることになります。

 

2024年8月21日 (水)

祭りの頃いとをかし

残置物の処理等に関するモデル契約条項

 国交省住宅局が法務省の協力のもとに作成した契約モデルです。残置物の処理というボトルネックを解消して、単身高齢者の賃貸物件への入居を円滑にすることが目的です。ガイドブックが公開されており、こちらは、漫画の形式でわかりやすく解説されていますので、お勧めです。簡単に言えば、単身高齢者が賃貸物件に入居する場合、亡くなった後に残置物を指定した送付先に送付してもらうことができるシステムです。委任契約を、存命中に、居住支援法人と締結するという点がポイントです。契約後は、指定する物品のリストを作成して、シールを貼るなどして、物品を分類します。送付先が指定されないものは、廃棄処分します。送付の業務に要した費用は、相続人に請求するか、敷金と相殺する形になります。本来は、相続人が片づけを行う必要があり、なかなか大変な作業ですが、それを代わりにやってもらえるのは、助かります。大家さんや管理会社としても、速やかに残置物の処分がなされるので、安心して単身高齢者の入居を認めることができます。恐らく、今後、受け皿の居住支援法人も増えて、モデル契約が普及するでしょう。残置物の処分という問題解決が進むことを期待します。

 

ロシアの指揮系統立て直し

 ウクライナの越境攻撃を受けて、大統領府主導にするそうです。初動対応や情報伝達に不備があったために、側近に撃退作戦の指揮に当たらせるつもりでしょう。大統領府が軍隊の専門領域にはみ出すことで、成功する保障は全くないと思います。もっとはっきり言えば、ロシアの敗北への近道だと感じます。ロシア軍の将兵にとっては、プーチンが勝手に始めたウクライナ侵攻が膠着状態に入って、所期の目的達成は不可能になっている中で、これ以上の戦争継続の意義を感じられなくなっていると思います。そんな中で、大統領府が主導する作戦など、馬鹿らしくて本気でやる気になるでしょうか?政治権力と軍事部門が衝突しかねない危うい段階に入ったと思います。負け戦になると、司令官を交代させたがりますが、そもそもウクライナ侵攻作戦は失敗したわけで、その責任は、プーチンが負うべきです。悪あがきはやめて、大統領府の軍隊への介入はやめるべきでしょうが、当たり前の冷静な判断ができなくなりつつあるロシアは、国家として危険な水域に突入していると思います。日本の官邸主導もスケールは違いますが、行政の責任の所在が不明確になるだけで、確たる成果を上げているとは思えません。

 

日本外交の劣化

 山上信吾「日本外交の劣化」(文藝春秋)は、世界の外交官たちには読ませたくない本です。それほど、外務省の抱えている危機的状況を的確に抉り出しているからです。実名で告発されている幹部たちは、屈辱に、怒り狂っていることでしょう。他方で、著者の外務省愛が極めて高いことも伺われます。劣化した外務省を、何とか立て直したいという強い再生への思いが感じられるからです。幾つかの点で、正に同感だと膝を打つ記述がありました。安倍総理が進めた北方領土交渉の問題点の指摘はその最たるものです。プーチンの口車に載せられて、随分と前のめりの交渉を行っているのは、私もウラジオストックへの出張の際に強く感じました。北方領土の7割の面積を占める択捉・国後の返還を諦めるという路線転換には驚かされましたが、交渉経緯としては相手の記録と記憶に残ってしまいました。功を焦った官邸主導の失敗例です。中国のために働く中国課長というフレーズは、何とも愉快ですが、そういう勘違いが起こりやすいのも外務省です。承認欲求が過ぎて、本来利害を異にする相手側に褒められたくなるからでしょう。そういうバカは、どんな組織にいるものです。内話電が絶滅の危機にあるという指摘は、外務省の構造的な問題を反映していると思います。公邸に籠っていては、内話は取れませんし、そういう社交や人脈の価値を高く評価しなくなった本省の姿勢が、劣化の原因になっているものと思います。他省庁からの出向で大使になった人間が、部下にパワハラだと騒がれて手を焼いたという話をしたところ、部下の指導などしなくて良いと本省幹部に言われたエピソードには驚かされます。外務省は、確かに個人プレーがモノを言う役所ですが、チーム力を高める指導さえ諦めているとは、もはや組織の体を為していません。「あるべき政と官の関係」の章の記述は、全ての霞が関の役所にも同様に充て嵌ると感じます。幹部人事への官邸の介入を通じて、霞が関が劣化のスパイラルに陥っています。政治にすり寄って、次官ポストに就く人間が続くようになれば、組織は劣化するしかありません。外務省は、まだOBに山上さんのような一言居士がいるだけマシでしょう。今年一番の極めて刺激的な熱い作品でした。

 

2024年8月20日 (火)

ひろごりたるはうたてぞみゆる

ネットでコト消費

 2023年度は、コト消費の伸びが19%増で、モノ消費の7%増を上回ったとのことです。特に、旅行への支出回復が牽引しています。デジタルコンテンツへの支出も伸びました。電子書籍は18%増で読書の形態としてすっかり定着していると考えられます。コト消費がモノ消費を追い越す日はそう遠くなさそうです。特定のサービスをネットで購入する機会が増えています。鉄道や航空機のチケット、音楽・演劇・映画や遊園地・スポーツイベント等のチケットなどが最たるものです。そうした機会が増えれば、おのずとコト消費が増えて行きます。例えば、昔は、レコード屋さんに音楽CDを買いに行きましたが、今は、ダウンロードで音楽を楽しめます。CCCのツタヤさんにビデオを借りに行く必要もなくなりました。モノ以外のサービスの購入が伸びるのは、ある意味、当然のことです。日経新聞が、学生の趣味やレジャーにかける費用が上昇したのを受けて、自給自足の推し活をしているという見出しを付けていましたが、推し活ばかりに金をかけているのではないでしょう。1990年との比較で、食費や書籍代が減っていることは気になります。

 

霞が関の不変性

 日経新聞に、脱ブラック職場というタイトルと矛盾するような、平均終業時刻は0時48分という見出しが付いていました。国会答弁の作成で、サービス残業を強いられているのです。通常国会終盤の4~6月には、法案審議があるために、担当部署は徹夜状態になることがあります。質問の通告を審議の2日前の正午までに行うとの申し合わせがありますが、半数ほどはこれを守っておらず、形骸化しています。ブラック職場は、私が若かったころから、40年以上、基本的には変わっていません。今どき、こんな働き方を強いられる職場には若い人は魅力を感じないでしょう。かつては、政府委員として局長が主に答弁に立つことが当たり前でした。それを「改革」して、大臣・副大臣・大臣政務官の役割としたために、彼らへのレクの時間を含めて、国会対応の効率が悪くなったという事情もあります。待機を含めて拘束時間が長く、国会答弁の作成という本質的ではない業務に忙殺されるシステムは、ほぼ不変だと言って過言ではないでしょう。残念ながら、ブラック職場から脱する見込みは持てません。

 

筑駒

 小林哲夫「筑駒の研究」(河出新書)は、国立大学附属の一つの中・高校をテーマに取り上げたユニークな作品です。多数の教員や卒業生からの証言をもとにバランスよく構成されており、信頼性は高いと思います。不足していると感じる点は、生徒の親や家族からの証言です。私も卒業生の一人なので、懐かしいと感じたエピソードが幾つもあります。特に、授業では、受験と全く関係がない大学の教養で学ぶような「共同体の基礎理論」などが取り上げられていたことです。今でも、同じような路線で教育が行われており、受験については鉄緑会という塾の方でやり、学校では3大行事(文化祭、体育祭、音楽祭)、超オタク的な部活動、SSHによる先端科学の探求などに精を出すという組み立てになっているようです。野田秀樹さんの「ひかりごけ」を文化祭で見た鮮烈な記憶も蘇りました。これを見て演劇に進もうと決意した生徒がいたことも納得です。確かに、それほどのインパクトがありました。東京大学への進学者が多いのは、鉄緑会の賜物という記述になっていますが、受験勉強が基本的に自学自習でできる程度の頭をみなが持っており、情報入手先として、受験産業(私たちの時代は、主に代ゼミやZ会)を利用するという感じです。筑駒には、国際科学オリンピックに出るような突出した頭脳の持ち主もいて、大学受験の先の知識を授ける、学問の面白さを味わうというような授業が行われる合理性があります。附属と言えども、筑波大学への進学は、医学を除けば非常に少ないはずです。筑波大学との関係は、双方が努力して構築してきていますが、国立大学法人からは独立して経営した方が、実態に合っているようにも感じます。東京教育大学附属の時までは、実験校としての意味もありましたが、筑波大学が我が国有数の総合大学となっているために、付属学校の必要性は常に問題視される恐れがあります。才気あふれる生徒が放し飼いになっているような自由な雰囲気の学校は稀ですから、これからも、筑駒の本質が損なわれることがないように、存続してほしいと願います。

 

2024年8月19日 (月)

得ずなりぬるこそいとあはれなれ

選手の声を聴きたい

 メダリスト以外の代表選手の声を聴く必要を感じます。JOCやスポーツ庁の仕事でしょうが、国民にも伝わるような形で行うことが重要だと思います。選手村の食事や空調などへの外国人選手による不満の声が報道されていますが、当事者の本音がどうだったのか、知りたいところです。メイン種目の陸上と水泳は、前回からかなり後退した印象があります。原因や改善策についての選手の声は重要でしょう。各種目を統括する団体では、選手が本音を語りにくい体質があると思います。下手すれば、指導部批判と受け取られて、代表を外されかねません。沈黙は金という状況です。団体自体の問題についても、きちんとした分析がなされるように、JOCやスポーツ庁が目配りすべきでしょう。躍進したレスリング、フェンシングなどは、成功の要因と今後の課題をまとめておくべきです。球技については、それぞれの団体で総括しているでしょうが、ファンの期待に応えられなかった面があるので、選手、コーチを含めて、適切な人間から、事情を説明する機会を作ったらどうでしょうか?批判と反論、議論を避けていては、前進はないからです。スポーツには勝ち負けがあり、勝てなかった選手は表に出ないのですが、負けるにしても力を出し切ったのなら、堂々としていれば良いと思います。バスケットボール男子の対フランス戦、なでしこの対アメリカ戦などは、選手たちから大いに語ってほしいと思います。オリンピックという競技大会自体の限界を含めて、スポーツに関して、専ら真剣に語り合う場ができることを望みます。選手のスポンサー企業、スポーツ産業からも参加してほしいと思います。彼らの存在無くして、競技力向上は実現できないからです。どうも、日本では、スポーツをバラエティ番組のネタとしか考えていないようで残念です。ぜひスポーツの地位向上のために、国民に開かれた議論の場を活発化すべきです。

 

大統領候補の頭脳

 イーロン・マスクさんとの対談の中で、トランプ氏は、「福島には3000年、人が住めない」と言い出して、マスク氏に間違いを指摘されています。日本政府は、反論しなくて良いのでしょうか?単に知識が足りないのか、嘘でも何度も繰り返すことで効果を上げようとしているのか、分かりませんが、これでは、日本から海産物を輸入させない中国政府以下ではないでしょうか?仮にも同盟国の日本に対して、何という言い草なのか、宮藤官九郎さんではありませんが、不適切にもほどがあります。岸田総理は退陣するわけですが、トランプ氏に対して言うべきことも言わずに、漫然と過ごすつもりなのでしょうか?トランプ氏は、若干、ハリス氏に押され気味だと感じていますが、有権者の半数ほどの支持がある候補ですから、彼の言葉を信じるアメリカ人も少なくないはずです。ジョークと受け取りつつ、事実はこうですよと教えてあげるべきでしょう。岸田総理自ら立ち入り禁止が解除された地区を訪問して、住民が戻りつつあることを示したらどうでしょうか?こちらもジョークらしい返しをすれば良いでしょう。

 

知覧特攻平和会館

 卓球の早田選手が訪問したい場所に挙げて話題になっています。早速、彼女への意味のない批判が中・韓で起こっているようです。特攻が行われたのは主に沖縄戦なので、彼らの国とは基本的に無関係だと思います。例外と言えば、「ホタル」という映画で、韓国出身の特攻隊員にスポットライトが当たっていることくらいでしょうか?美しい映画ですが、韓国では、どの程度知られているのか分かりません。Z世代の若者が、特攻に興味を持ったのは、映画その他で取り上げられていたのを見たからでしょう。哀しいかな、アジア太平洋戦争については、中・高と歴史の授業がありながら、詳しく教えていないのが実情です。特攻についても、学校では深く考える時間がなかったはずです。しかし、最近ヒットした映画などを観て、早田選手のように、国家のために命をささげることを強いられた普通の国民の姿に気が付き始めたZ世代も、少なくないはずです。決して特攻を美化しようというわけではなく、特攻で死んでいく運命にある人間の苦悩や葛藤に対して、同じ年齢層の人間としての同情や共感から興味を持ったのだと思います。出撃前に残した言葉の多くは、親への感謝と愛する人の幸福を祈るものでした。1000人以上の知覧にいた特攻隊員を含めて、国家のために戦場で命を落とした人たちの声を聞こうとすることは、生きている日本国民の義務だと思います。また、きちんと学校で教育してこなかったことへの反省も必要だと思います。個人的には、特攻のような異常な作戦を導入する前に、白旗を掲げて戦争を終結させるべきだったと考えます。本土決戦を夢想した連中は、国民に自爆攻撃を行わせるつもりだったのでしょう。女性を含めて、みなが特攻をさせられる一歩手前で、終戦となりました。人間の命を消耗品としか見ない人間たちが戦争指導を行っていたのは、愚かを通り越して、恐ろしいことです。知覧特攻平和会館は、修学旅行を含めて、普通の観光コースにもなっていますが、すべての世代に、これを機会に興味を持ってほしいと思います。オンラインミュージアムもあります。

 

2024年8月18日 (日)

けふはみなみだれてかしこまりなし

統計学の極意

 シュピーゲルハルタ―「統計学の極意」(草思社)は、統計学という学問を知るためのガイドブックとして役に立ちます。最後に紹介されている効率的な統計実務のための10カ条は、なかなか興味深いものです。曰く、統計学的手法は、データを元にして科学的疑問への答えを出せるものでなければならない。シグナルは必ずノイズを伴う。とにかく先行して計画を立てる。データの質を気に掛ける。統計分析は計算法の集合以上のもの。あくまで簡潔に。バラツキの評価を提示する。仮定を確認する。可能なら再実験する。分析を再現可能にする。以上のように、著者は、あくまで、統計学を科学と捉えています。再現可能性に拘るのも、科学だからです。統計の活用に関して、マスコミが陥りがちな罠について述べているところも、面白いと思います。現在の一般的見解に反するものを選んで記事にする。研究の質や不確実性には頓着しない。全体像を見せることはしない。関連性が一つでも観察されれば、因果関係として提示する。証拠が特定の政策を支持していると主張する。利益相反や意見対立を顧みないなどなど。確かに、マスコミが統計データを記事にするときは、センセーショナルに特定の問題を誇張して報道するのが常套手段です。因果関係については、専門家と称する人たちも、科学というよりは、肌感覚の印象で論じることが多いと思います。それが一人歩きすれば、誤情報を流布する危険もあるでしょう。再現性のない統計分析は、科学とは言えません。しかし、再現性が期待できないデータもあり、因果関係の解釈は容易ではなく、統計分析を施策に生かすことも簡単ではないと思います。教育分野は、特にそうした傾向が強いと感じます。

 

8月の農園

 トマト、キュウリは栽培を終えました。キュウリは、残渣を土に埋めました。カボチャは、なかなか受粉せず、残り1~2個の収穫を待って撤収します。トマト、カボチャも、残渣は、土に埋める予定です。茄子は好調な収穫が続いていますが、間もなく更新剪定をします。オクラと甘唐辛子の収穫は、これから最盛期を迎えます。台風には風対策をしました。秋までの待機期間を使って、二十日大根の種を撒きました。暑さが気になります。他の区画でも、それぞれ収穫・撤収して、新たな栽培サイクルに入るところです。まだ1区画だけは、雑草に覆われています。少し草取りをされたようですが、マルチでも張らないと、雑草は直ぐに復活しますので、焼け石に水だった感じです。9月以降の栽培に備えて、キャベツ、ロマリア、ロマネスコの苗を育成中です。今後、タマネギ、ソラマメなども育苗します。ジャガイモは、「ながさき黄金」という種芋を仕入れました。その他、カブ、エンドウ、ニンジン、青梗菜、ミズナ、小松菜を育てるつもりです。農園にはほぼ1日おきに自転車で通っていますが、少し脚に筋肉の強さが戻ってきたように感じます。農園作業の効果とともに、高齢者にはうれしい副産物です。

 

外国人の診療費の未払い

 厚労省の調査によれば、2023年9月中に、外国人を受け入れた病院の18.3%で、診療費の未払いが発生しているとのことです。前年度もほぼ同程度の未払いがありました。100万円を超える未払いが42件もあったというのも驚きです。保険に加入していない外国人の診療を行うべきかどうか、問題になりそうです。人気のテレビドラマ「新宿野戦病院」でも、支払い能力に疑問のある外国人患者の治療を行うというシーンがありましたが、未払い診療費の回収は、定収がある人ならば、中期的には可能かもしれませんが、借金を残したまま帰国されてしまえば、かなり厄介だろうと想像します。海外でも、緊急を要する場合は、保険なしでも治療を行っています。医の倫理に基づく行為でしょう。ただ、保険がなければ、患者負担は相当大きくなります。悪気はなくとも、支払い能力を超える可能性もあります。この件は、万国共通の課題で、決め手になる方策はないようです。

 

2024年8月17日 (土)

つねに後ろを心づかひしたるけしき

南海トラフ巨大地震の警戒解除

 警戒期間が1週間というのは、短すぎるのではないでしょうか?もともと日常生活は普段通りに続けながらという警戒でしたので、1年でも2年でも、警戒期間を延ばしても構わないはずです。監視を続けて、適宜、注意情報を更新するので、お祭りや旅行も含めて、自粛する必要はないと伝えておけば良いのです。ホテル・旅館のキャンセルなど、地域の経済への影響が大きいので、そうした事情を考慮したのではないかと推測します。瀬戸内側の松山への旅行客も減ったというので、情報の伝達をもう少し丁寧に行えばよかったと思います。折角、危機感が高まったのに、解除で、逆に緊張がゆるんでしまうことが懸念されます。高台避難の訓練などは、すべての学校や介護施設などで実施するまで、続けた方が良いと思います。自治体の準備態勢も、きちんと整うまで手を緩めないようにしてほしいと思います。そうしたことを行うには、1週間では短すぎました。なすべきことがある関係者には、警戒を解除しないでほしいものです。

 

和倉温泉を復活させよ

 能登半島の復興には、和倉温泉を復活させる必要があります。多くが建物の損傷で、取り壊し・再建が必要な状況ですが、算盤勘定が成り立たずに、復活プランが描き切れないようです。金融機関からの借り入れができなければ、温泉旅館群は、廃業するしかありません。観光の拠点がなくなり、地域の雇用も失われます。半年が過ぎても、和倉温泉の復活シナリオが明確にできないのは、何故でしょうか?石川県の政治家は、何をしているのか分かりませんが、実に不思議です。破綻しそうな銀行には政府からの融資がありましたが、和倉温泉にも公的な融資や保証をすればよいのではないでしょうか?輪島塗の生産拠点に関しても、同じことが言えます。和倉温泉が復活できないとすれば、能登全体が見捨てられたも同然です。石川県は、早く、和倉温泉復活プランをまとめて、国に対して働きかけるべきでしょう。国の財政審では、能登のような過疎の被災地の復興については、極めて冷ややかな方針を打ち出そうとしているようですが、石川県の人たちは、自分たちの論理をきちんと主張すべきだと思います。過疎地に住む弱者切り捨てが当然の世の中になれば、日本は暗闇になるでしょう。

 

灼熱の甲子園

 大阪が最高気温39度を記録する中でも、甲子園では4試合が粛々と行われました。5回終了時に休憩を取るなど、確かに工夫もしています。しかし、これほど高温の環境で、高校生に野球をやらせているのは、クレイジーではないでしょうか?どうしても、この時期に試合をしなければならないのであれば、甲子園球場からドーム球場へ開催場所を移すべきだと思います。高校総体のサッカーの会場は、福島県のJヴィレッジ(サッカーナショナルトレーニングセンター)に固定されました。サッカーをする環境が整っていることに加えて、高温による選手への影響を多少なりとも緩和する意味があると思います。野球も、思い切って涼しい北海道に「聖地」を移したらどうでしょうか?あるいは、宿舎などの都合で、大阪周辺を離れたくないならば、京セラドーム大阪を使わせてもらったらどうでしょうか?試合を7回制にするなどの対策が検討されているようですが、野球の本質にかかわるような変更をするくらいならば、北海道や京セラドーム大阪でやればいいだけです。応援団の人たちにとっても、随分、楽になるでしょう。過去の思い出に拘って、野球の本質を曲げるようなことはしてほしくありません。

 

2024年8月16日 (金)

雪のむらむら消え残るここち

東大合格までの費用

 布施川天馬「東大合格はいくらで買えるか?」(星海社新書)は、東大生へのアンケート調査結果をもとに、東大入学までの費用を平均推計しています。もちろん、彼らは、合格を買ったわけではないし、費用をかければ誰でも買えるわけでもありません。そんなに費用をかけないで合格した人も少なくありません。著者の調査結果を鵜呑みにしない方が良さそうです。その上で、平均費用の数字を見ると、小学校で316万円、中学校で243万円、高校で316万円、合計で、875万円の費用が必要だということです。この金額は、すべての人のデータによる推計ですから、小中高と公立で成績優秀であれば、最低130万円もあれば、合格できる可能性はあるとのことです。ただ、現役生のための受験指導をしてくれる塾や通信教育を利用せずに、東大を受験する人は、まずいないでしょう。確かに、今日、東大生の親の所得水準は比較的高く、著者のデータでも、年収600万円以下は14%に過ぎません。45%が1000万円以上なのです。戦争などの攪乱要因がないために、戦後から数えて、2代目、3代目と時間が経過するとともに、知識テクノクラート層(高所得)が固定化して行く傾向にあるのは事実でしょう。著者のように東大だけを対象にせずとも、国公私立の有力な大学ならば、同じように社会的階層を学歴で上昇する動きは、少なくなっていると思います。東大生でも親の収入が600万円以下という者が14%ほどいることに、むしろ救いがあるのではないでしょうか?ただ、この数字は、自営業の家庭の場合とサラリーマン家庭の場合で、実際の家計状況が異なっていることにも注意が必要でしょう。自営業の子どもでも、中高一貫校の出身者は珍しくありません。著者も、家庭の経済力では苦労した人ですが、東大生が実家の貧乏を実感した場面を紹介しています。クリスマスにプレゼントが買えなかったと親が泣いて謝った話などが掲載されています。

 

三体

 Netflixのドラマを観ました。話としては、400年後に、宇宙人が地球に襲来するとの予告がなされ、戦うための情報収集の衛星を飛ばそうとするところまででした。続編のシリーズが制作される予定です。宇宙人の科学技術は人類を遥かに凌駕しており、人類は滅亡の危機を迎えます。作品としては、人類の種々の反応が一つのテーマです。戦おうとする者、宇宙人を崇める者(主従関係)、積極的に宇宙人の手先(戦闘員)となる者など、様々です。既に、人類は操られてしまっている状態です。国連は、地球防衛対策本部のような役割を担っています。私は小説を読んでいないため、この先、どう展開するのか知りませんが、国連として加盟国が一致団結することはあり得ないと思います。宇宙人の側に立って考えれば、人類同士が敵対して殺し合いをすることで、弱体化すれば、地球の乗っ取りが楽になるでしょう。甘い言葉で誘惑して、潜在的な敵同士に戦争を嗾けることは容易です。あるいは、生物兵器を漏洩させて、人類の大半を病死させることもできそうです。人類を奴隷化したいのならば、宗教的な支配を目指して、崇める者を増やせば良いでしょう。もともと、宇宙人を地球に招来したのは、文化大革命の犠牲者たる物理学者でした。ある意味で、中国共産党支配に対するアンチテーゼとしての宇宙人なのではないでしょうか?しかし、宇宙人が理想的な支配者になるという保障はありません。科学技術に秀でた者が、政治的に寛容で、人権を守るとは限りません。最先端の物理学者を始め、知識層を抹殺しているところは、文化大革命時代の中国共産党と異なるところがありません。藁をもつかむ思いで宇宙人に救いを求めたが、相手は自分の思いとはかけ離れた存在だったということになるでしょうか?全体的に、雰囲気が暗くて、不幸な人ばかりが出てくる話なので、なかなか見るのも辛い印象です。最先端の科学技術の知識を活用していますが、似非科学のようにも見えてきます。脳を衛星に載せて宇宙に送るというトランスヒューマン的な筋も出てきます。宇宙人の実態も、そうしたものかもしれません。

 

現職が出ない総裁選

 本当に新しい人材を求めるなら、自分が身を引くのではなく、互いに戦って、自分に勝った者が、新しい自民党を作るというシナリオを選ぶべきです。地方票が取れないから、勝てないと判断して、逃げたという印象です。要は、戦わない人、リスクを取らない人、リーダーシップを発揮しない人、地震のような危機に弱い人、党内をまとめきれない人、コミュニケーション力が弱い人、実行力がない人という弱いキャラクターの首相でした。国民の目には、何をするために首相になったのか、政治家としての信念の起きどころが分からない人でした。支持率が低迷し続けましたが、可もなく不可もない、個性を感じない、大衆の心に響く言葉が出てこない不思議な政治家でした。次の総裁には、衆議院選挙に勝つという重責が課されますが、誰がなっても、自民党のブラックさを払拭するのは至難の業でしょう。清濁併せ呑むという表現がありますが、濁の部分がヘドロのように溜まっており、選挙の顔を変えたくらいでは、裏金以降の流れを変えることは難しいと思います。少なくとも若返りが起きると希望も持てますが、長老格の人たちは出番がなくなることを恐れるでしょうから、簡単ではなさそうです。派閥の解消が進んだので、議員の投票行動がどうなるのかは注目に値します。

 

2024年8月15日 (木)

雪まのわかなつみ

リノベーション術

 「地主と家主」9月号で、第一印象を良くするリノベーション術の紹介がありました。注目したいのは、エントランスです。物件の顔としての特徴を作ることがポイントです。そのために、古くなった個性のある部分をレトロな雰囲気の良さとして活用するという作戦があります。他方で、無機質な印象の設備は交換して、雰囲気を合わせてグレードアップするというような工夫を行います。ターゲット層を絞って、特定のテーマでインパクトを与えるような訴求方法もあります。〇〇好きが集まる共同住宅というイメージです。その他、廊下を各階でターゲットに向けた色使いで個性化するとともに、照明を含めて、明るく高級な印象を与えるというやり方があります。外壁は、物件の看板としての意味合いがあり、低予算でも入居者確保に効果があります。カラーリングやデザインを工夫することで、競合に第一印象で差をつける作戦です。入居者にとっては、ここに住みたいと感じる好印象を与えてくれる外観を持った物件が魅力的に見えるからです。

 

墓じまい

 週刊文春に、手続きと費用の相場に関する記事がありました。少子化が進み、実家を離れている人も増え、葬祭の在り方も変化しつつあります。今後、墓じまいの需要も増えて行くものと思います。基本の流れは次の通りです。親族の同意⇒墓じまいの意思の伝達⇒新しい埋葬地の確保⇒改葬許可申請書の受領(現在墓の自治体)⇒埋葬証明書の受領(現在墓の霊園)⇒受け入れ証明書の受領(新規墓の霊園)⇒改葬許可証の受領(現在墓の自治体)⇒墓石の撤去依頼(霊園指定?)⇒遺骨の取り出し・法要⇒新しいお墓に納骨という手順です。この手順だけでも面倒だという印象が強いところですが、最大の問題は費用です。特に、離檀料と称して、高額な請求を行う寺院もあるようです。曹洞宗は、宗門としての取り決めはないと公式に明らかにしています。文春による相場は、5~20万円となっています。30万円以上は要注意だそうです。なお、墓じまいにかかる法要費用が含まれているかについても、要確認です。墓石の撤去は、1㎡当たり10~15万円程度です。特殊な立地のケースは別途追加になります。遺骨の取り出しは、1柱ごとに、1~5万円です。随分、料金に幅があります。全体の数によるのかもしれません。閉眼供養(魂抜き)は、3~5万円です。寺院や霊園とのこれまでの関係を考慮して、依頼する方が大半だそうです。新しいお墓についても、開眼供養に同じ程度の金額を要します。改葬後の新しい墓については、人気は、合祀墓(31%)、樹木葬(23%)、一般墓(22%)、納骨堂(17%)、散骨(1%)の順です。それぞれについて、最も安い費用を見ると、散骨5万円、樹木葬20万円、合祀墓40万円、納骨堂50万円、一般墓100万円となっています。やり方、素材、立地によっても、価格が大きく異なってきます。また、墓に入っている方の数(柱と数える)によっても、負担が違ってきます。文春によれば、最も安く計算したとしても、墓じまいには、60万円程度はかかるとのことです。なお、代行業者も存在しますが、寺院によっては代行を拒否する場合もあるようです。寺院にとっては、墓が減れば、檀家が減り、法要の機会も減り、収入に影響があるのは明らかです。人口減少時代なので、墓じまいは、寺院にとって厄介な問題です。費用や手間を考えれば、放置する人も出てくるでしょう。墓じまいのハードルが高ければ、無縁墓の問題が浮上することになりそうです。次の世代に負担をかけることを避けるために、樹木葬や合祀墓を選択する人が増えているものと思います。納骨後、30年ほどすれば、遺骨も自然に還るというシナリオが一般にはむしろ好ましいのではないでしょうか?

 

実家の家族信託

 親が認知症になって介護施設に入居してしまえば、実家が空き家になります。家族は、処分もできません。そういう事態を想定して、予め、実家信託をしておくという手段があります。「地主と家主」9月号に、その活用術が紹介されていました。空き家の維持費用、固定資産税、親の介護費用などを考えると、実家信託は有力な手段です。かりに実家を処分した場合、その売却代金は家族の口座に入るので、認知症などで管理ができない親に代わって、自在に親の医療介護などの費用に使うことが可能です。施設入居後、空き家になった実家を3年以内に売却した場合、譲渡所得から3000万円を控除することが可能になります。手残りを増やすこともできるのです。もっとも、実家信託を活用するためには、親の理解が欠かせません。介護施設に入所しても、自宅に戻りたいという思いを持っている人間が非常に多いと感じます。自宅での介護が不可能になったために入所しているにも拘らずです。しかも、自宅には、膨大な家財が残されており、思い出深いものが沢山あります。モノへの執着がない人はいませんので、子に対して実家を信託するという決意ができる人は少ないでしょう。なかなか人間という生き物は、合理的にはなれないものです。

 

2024年8月14日 (水)

すがたかたち心ことにつくろふ

ファスト大学

 高部大問「ファスト・カレッジ」(小学館新書)は、事務職員から見た中堅以下の私大の実情が赤裸々に語られています。著者によれば、教員と学生のミスマッチが甚だしく、学生からも、自分たちを「ちゃんと見てくれない」と不満を持たれているとのことです。そうした大学は、もはやレジャーランドでもなく、教員は無免許運転をしているようなものだと批判しています。学生も、多くを求めず、ファストフード店のように、単位や卒業証書をもらえれば十分だと考えています。著者は、生成AIは、ファスト化に拍車をかけるとも述べています。卒業証書には、有効成分がなく、プラセボ効果(偽薬)しかないと非常に辛口です。そんな大学に高額の料金を支払って通うのは、社会的な無駄でしかないでしょう。そんなファスト大学でも、学生との契約であるシラバスを起点とする改革を進めることで、教育機関としての質を向上させるべきだと述べています。当たり前のことではありますが、シラバスが形骸化している実態があるのでしょう。20年以上前からの常識なのですが、いまだに現場で骨抜きにされているようです。日本の大学には、大学の体を為していないものが、そう珍しくないのです。文科省も見て見ぬふりをやめるべきです。

 

伊東純也選手の不起訴

 性加害疑惑を週刊新潮が報道したために、彼の人生は大きく暗転しましたが、ようやく真実が見えてきました。今後は、「被害者」を名乗る女性たちを相手にした民事裁判で、問題の決着を見ることになりますが、サッカーファンとしては、彼が除外されたおかげで、アジアカップの制覇が夢と消えたことが、残念でなりません。真実からほど遠い報道をした週刊新潮には、個人として、不買不読で対抗することにします。JFAは、選手を守れなかったことを反省すべきです。週刊誌報道を鵜呑みにして、リスク回避一辺倒でしか動かなかったのは、組織が官僚化しているからではないでしょうか?代表チームで貢献している選手に対して、なぜもっと信頼感を持てなかったのでしょうか?私が伊東選手だったら、きちんとした名誉回復の声明をJFAに要求します。他の選手たちも、他人事だと思わずに、この際、JFAに対して言うべきことをきちんと発言すべきです。JFAやJリーグは、週刊新潮を、半永久的に、出入り止め処分にすべきでしょう。選手に対する重大な人権侵害を引き起こした誤報事件です。片方当事者からの主張に基づいて記事を作成するとは、報道機関として落第です。週刊新潮は、もはやオワコンです。

 

孤独死保険

 「地主と家主」9月号に、家主が行う孤独死への対策で紹介されていました。家主が加入するもの、入居者が加入するものがあります。家主さんとしては、火災保険に付帯される家賃収入特約だけでは孤独死により減額した家賃収入は補償されないようです。家主費用特約を付けると、原状回復費用、特殊清掃費用、遺品整理費用、空室機関の家賃、下落した家賃の補償、共用部で亡くなった場合の原状回復費用などを、カバーすることが可能になります。補償内容を確認して、判断する必要があります。特に、築古のワンルームなど、高齢者や低所得者層が入居するアパートなどでは、こうした孤独死保険による対策を検討すべきでしょう。1戸当たりの費用は、数千円程度とのことです。

 

2024年8月13日 (火)

冬はつとめて

悠仁親王殿下の大学選び

 東京大学の推薦入試(総合型選抜)を受けられるのではないかという憶測が巷にあります。出願書類の中で求められている実績や証明記録として、学術論文(赤坂御用地のトンボ相)が使えると認識されているからです。そういう実績を作るために、専門家の協力を得て、論文作成に時間を割いたに違いないと推測されています。そうかもしれませんが、この論文さえあれば、合格できるというものではありません。大学入学共通テストのスコアが一つのハードルです。また、学部ごとに行われる面接もあります。募集人数は、学部ごとに決まっており、5~30人程度です。トンボの論文は、高校生が書いたものとしては非常に優れていると感じます。スーパーサイエンスハイスクールの秀才たちに匹敵するのではないでしょうか?ただ、東京大学に入学する場合は、帝王学を身に着ける時間を削って、一般的な教養や専門分野の学業の習得に邁進する必要がありそうです。通学されている高校での警備に関しては、秋篠宮家は簡素にすることをお望みと報道されていますが、東大に通われる場合は、キャンパスが開かれているので、殿下の周囲の警備体制はかなりタイトにせざるを得ないと感じます。学業と警備のストレスを考えると、東大という選択は、相当なチャレンジになりそうです。大学生活には、時間と心の余裕を持たれた方が良いと思います。東工大でシーラカンスの解剖が行われた際に、当時の天皇陛下(現在の上皇陛下)と秋篠宮様が、研究活動の一環で行幸されたことがありましたが、お二人とも、専門家という立場で、解剖を熱心に見ておられました。その血筋を継いでおられる悠仁親王殿下なら、いずれは生物に関する研究をされることになりそうです。

 

パリオリンピックの想い出

 印象に残ったことを、記しておきます。第1に、大きな国際イベントにおける観客の力を再認識させられました。特に、スケートボード、ブレイキン、スポーツクライミングのような新しいスポーツでは、観客が選手たちを盛り上げる役割を担っています。東京大会は、その意味で、可愛そうなほど盛り上がりに欠ける大会でした。第2に、選手村のおもてなしの不備が、選手たちから指摘された大会でした。フランスという美食の国でありながら食事への不満が出ているのは、恥のレベルです。勲章を授与されたシェフたちに登場願えなかったのでしょうか?空調設備に関しても、エアコンがなかったので、睡眠への影響があったと不満が出ています。政治的な正義を前面に出したために、選手のコンディションの維持が軽視されました。組織委員会だけでなく、それを見逃したIOCの責任でもあります。パリの不評が、東京大会のおもてなしの素晴らしさを再認識させてくれました。第3に、審判の中立性や判定の公平性への疑念が噴出した大会でした。オリンピックに懸ける選手の思いは強く、人間の勝手な操作によって運命が変えられてしまうことへの嫌悪感は、今大会によって世界共通のものになったと感じます。フランス人が、それほどまでに自国を勝たせたいのかと、認識を新たにした次第です。特に、リネール選手で2勝して、混合柔道団体の金を奪い取ったルーレット作戦には、驚きました。第4に、水質に問題があると知りつつセーヌ川でトライアスロンを強行したことです。選手の軽視というよりも、選手の健康を無視する行為でしょう。IOCを含めて、異常な強行の責任が問題にされるべきだと思います。地中海岸で実施するなど、いくらでもトライアスロンの適地があるはずです。セーヌで無理に泳がせる必要はないでしょう。第5に、セーヌ川を使った開会式の成功です。芸術文化としての質が非常に高かったと思います。これについては、フランス人の才能の極致だと評価したいと思います。こういう芸当は、日本人にはできません。あらゆる困難を一つ一つ解決して、雨も降る中でやり遂げたのは、立派でした。これに比べれば、東京大会の開会式は、幼児の作品でした。第6に、NHKほかによるテレビ中継の偏向です。より広範な種目の中継を行うべきでした。特に、メダルが決まるステージについては、ダイジェストの形にしてもよいので、日本人選手が有力でなくても、オリンピックの全体像を見られるように放送すべきだと思います。日本人がメダルを獲得した種目(馬術、セーリング、近代五種)でも、完全にスルーされていたのは、残念なことでした。メダル獲得の場面を繰り返し放送するくらいなら、その他の種目のダイジェストを集めた枠を別に設けるべきです。そういう映像を見たい人が少なくないはずです。

 

パリオリンピック男女マラソン

 男子は、赤崎選手が、女子は、鈴木選手が、6位入賞を果たして、楽しかったとコメントしました。この好成績で、陸連は救われましたが、女子の貴重な1枠を無駄にした罪は重いと思います。男子では、並み居る強豪が脱落する中で、エチオピアの補欠だったトラ選手が、抜け出して優勝を飾りました。エチオピアの選手の起用の内情は分かりませんが、トラ選手が好調だったことは明白です。陸連は、女子の補欠の細田選手の役割を早々と解除して、その後、前田選手が疲労骨折していることが分かり、結局、皆が必死に得ようとした出場枠を使えませんでした。状況説明をしていましたが、要は、エチオピアは賢く、日本は愚かだったということです。男子は、3人とも、実力を発揮して、相応の成績を残しましたが、女子の一山選手は、彼女らしくない出来でした。体調が悪いか、怪我をしているか、何か原因があったはずです。こういう不運な選手がしばしば出ることは、仕方のないことですが、本来の成績が残せない状態と分かれば、補欠に交代させたら良いのではないでしょうか?したがって、エントリー変更ができるギリギリまで判断を留保して、補欠を含めて、直前の状態の良い選手を出場させればよいのです。女子の体操でも、日本は、団体メンバーを1人欠いたままでの戦いを強いられました。自ら選んだと言っても過言ではありません。オリンピックを神聖視し過ぎているのかもしれませんが、代表チームとして最高の成績を残すという観点から、ものの考え方を整理した方が良いと思います。国際舞台では、馬鹿正直はバカにされるだけです。なお、アジア勢もアフリカ勢にマラソンで対抗しうるという実績を作ったことは、非常に高く評価できると思います。

 

2024年8月12日 (月)

秋は夕暮

野菜ビジネス

 梅田みどり「野菜ビジネス」(クロスメディア・パブリッシング)は、野菜や野菜ビジネスに関する知識を広げるのに役立ちます。野菜と健康の関係、環境問題や食糧問題と野菜の関係など興味深いテーマに関しても取り上げています。私が面白いと感じたのは、野菜農家が稼げる野菜のリストです。キャベツ、レタス、ミニトマト、サトイモ、大型トマト、レンコン、サツマイモ、小型白菜などですが、作業量が少なく、収穫性が良いことがポイントです。要は、コスパです。生産された野菜の20%が廃棄されており、廃棄問題への対処が課題になっています。例えば、野菜専門卸の畑買い契約、学校給食やカット野菜としての活用、フードバンクへの寄付、産直市場やECサイトでの販売、6次産業化などの取り組みがあります。野菜の保存に関して、適切な温度があることも、知っておきたい知識です。カブ、キャベツ、ブロッコリー、ニンジン、ホウレンソウ、大根は0~5度、トマト、ナス、サトイモは5~10度、キュウリ、ジャガイモ、タマネギ、カボチャは10~15度となっています。冷蔵庫での保存の際にも、参考になると思います。葉物野菜は、キッチンペーパーで包んでからビニール袋に入れると湿度が保たれます。根菜類は、湿気を嫌うので、袋に入れる場合は小さな穴を開けます。エチレンガスを出す野菜(リンゴ、バナナ、トマト、アボカド)と嫌う野菜(ジャガイモ、ニンジン、ブロッコリー、ホウレンソウ)は、別々にすることも覚えておきたいポイントです。著者が言うように、100年後にも、日本のおいしい野菜を食べたいものです。同じように作っても、出来上がった野菜は、同じ状態になりません。売っている野菜を見ると、いかに立派なものかと感心します。無駄にしないよう肝に銘じたいと思います。

 

男子サッカー五輪決勝

 スペインが5-3(延長)でフランスに勝ち、優勝しました。互いに譲らぬ好試合でした。4-3-3の同じシステムでの戦いで、フランスは、組織力で優るスペインに対して、選手同士の1対1の勝負を仕掛けて、前半の立ち上がりに先制しました。フランスの強度の高さに押され気味のスペインは、サイドからの崩しで、エースのロペスが決めて同点にしました。これで、スペインの全員が落ち着いたと感じます。フランスの速い攻撃にも慣れて、守備が安定し、FKを直接決める会心の一撃も出て、前半を3-1でリードしました。楽勝ムードでしたが、後半のフランスは、交代選手を中心に、再び同じ戦術で前線からの守備の強度を高めて戦いました。アンリ監督の戦術変更しない作戦が功を奏して、終盤にPKでついに追いつきます。スペインは明らかに逃げ切り作戦でしたが、ホームの大声援の後押しを受けたフランスに抗しきれなかったと思います。延長では、スペインのカメ―ジョ選手が浅いラインを突破して、2点を奪い、勝負を決めました。彼がMOMでしょう。フランスの選手たちの疲労が、勝敗を分けたと感じます。この試合では、選手同士の攻防に見どころがありました。一瞬の判断の遅れが、反則を誘発し、時には命取りになります。若い選手たちですが、欧州のリーグで揉まれているために、1対1に強さを持っています。見ごたえのあるデュエルが120分間続き、格闘技としてのサッカーを再認識しました。日本の若い選手も、このレベルの選手たちと切磋琢磨してほしいと思います。スペインは、ユーロ2024に続く栄冠です。男子は、黄金時代に突入しています。女子も強いのですが、今回は、ミスが出て、ブラジルの勢いに苦杯を舐めました。次のワールドカップでは、連覇に燃えてくるでしょう。

 

サッカー女子五輪決勝

 アメリカが、1-0でブラジルを破って、3大会ぶりに優勝しました。勝つための準備をして掴んだ金メダルでした。前半は、ブラジルの前線からの圧力に苦戦しました。縦に早い攻撃に押され、何度もピンチがありました。オフサイドに救われ、GKの好セーブで、何とか0-0で前半を終えることができました。しばしば、左サイドの突破からチャンスを作られていました。ブラジルのクロスの精度がもう少し良ければ、十分先制できたはずです。後半、アメリカは、守備のラインを上げて、ブラジルに拾われていたセカンドボールの回収に成功するようになり、組織的に攻撃する回数が増えて行きました。スワンソン選手のゴールは、一本のスルーパスで奪ったものです。後半の守備の修正で、アメリカは息を吹き返して、勝ち切ることができました。最高殊勲は、GKのネイハ―選手でしょう。彼女が守っていなければ、ブラジルが勝っていたと思います。アメリカは、過酷な日程にも拘らず、先発を大幅に入れ替えずに、6試合を戦い抜きました。疲労の蓄積を防ぐための特別なサポートがあったのかもしれません。なでしこは、ブラジルに勝ち、アメリカにも善戦しました。差があるとすれば、決定力です。早さで負けない脚力と強烈なキック力を磨く必要があります。今回のオリンピックでは、互角に渡り合えるチーム力を示すことができましたので、この流れを途切れさせずに、次のワールドカップまでに、着実にレベルアップしてほしいと願います。

 

2024年8月11日 (日)

月の頃はさらなり

日本語要指導児童生徒が6.9万人

 文科省の2023年度の調査で、小中高で日本語が不自由な子どもが、全国で6.9万人存在することが分かりました。外国人の子弟が、日本語を身に着ける機会が十分にない状態が続いていることを表しています。外国人子弟が日本社会に包摂されるには、日本語の習得は必須です。新しい社会教育の課題とすべきだと考えますが、文科省はシステムの構築に動こうとしていません。調査結果が出たので、対策を講じるのが普通ですが、一義的には地方自治体の仕事だと逃げているのではないでしょうか?外国からの移民に対する政府の後ろ向きの方針が、文科省の消極的な態度に繋がっているのだろうと推測しますが、日本語が理解できない外国人子弟が増えれば、本人の人生も苦しいものにしかなりません。社会的にも負担になります。早く課題と向き合って、然るべき社会システムを構築すべきだと思います。

 

若手優遇の人事院勧告

 国家公務員の初任給を大手企業並みに引き上げる勧告が行われました。近年の官僚離れへの対策です。総合職への志願者が減り続け、採用後10年未満の離職者が、2022年度で、177人と過去最多になっています。折角入っても、見切りをつける人が多くなっているのです。かつては人材供給の源になっていた東京大学の学生からさえ、完全に見限られているのですが、理由は初任給だけの問題ではありません。今回も、課長級以上の給与は抑制しているとのことで、朝三暮四でお猿さんを騙そうというような話に聞こえます。学生はお猿さんよりは賢いので、乗ってこないでしょう。そもそも、国家公務員の給与は、50人以下の企業の給与水準を考慮して決められているので、どうしても企業に就職した同期の人に比べて見劣りします。都内の宿舎の家賃が安い、退職後のいわゆる天下りなどで、待遇を埋め合わせて、バランスを取っていたはずですが、それも今や難しい状況です。しかも、かつてほどやりがいのある仕事が中央官庁にないので、別の道へ進む人が増えたのは当然のことです。これまでのような能力のある人間が集められなければ、仕事の質も劣化するしかありません。加速度的に下降している状況なので、より抜本的な対策を講じなければ、悪い流れは止められそうにないと思います。

 

スキャンダルの楽しみ方

 堂場瞬一「ルーマーズ 俗」(河出書房新社)は、女優さんが自宅で遺体となって発見された事件を巡って、マスコミやネットでの噂を含めた大騒ぎの顛末を、皮肉を込めて描いた小説です。このような大騒ぎは、現実にしばしば起こっています。一種のお祭り騒ぎです。関係者が、しゃぶり尽くすまで終わりません。実に醜い生態ですが、これが退屈している人間の性でしょう。しばらく前には、有名女優と有名シェフのスキャンダルがありましたし、今は、女性タレントによる別のタレントに対する暴言(いじめ)が、ネットの俎上に上がっているようです。利害関係のない人間が、あれこれコメントするのです。そんな行為自体が変だと思いませんか?SNSでの誹謗中傷は犯罪ですが、大きく見れば、大騒ぎの渦中に参加したいという欲求の表現とも考えられます。期待を裏切ったスターに対して、自分は、容赦のない言葉の攻撃をする権利があると勘違いする土壌が、そこにあると思います。それは、妬みや憧れの裏返しでもあります。スキャンダルに「大審問官」として参加するのは、気分が良いでしょう。つい気が大きくなって、暴言を浴びせるわけです。誹謗中傷に対しては、AIを使って監視し、当人に対して直ちに警告を行い、削除するシステムが早く導入されることを期待しましょう。検閲のような形に見えますが、犯罪予防と考えればよいと思います。批判するにしても、誹謗中傷にならないように、事実を踏まえて、適切な表現で発信することが必要です。AIが発達すれば、サイバー警察のような仕事をAIが行うかもしれません。

 

2024年8月10日 (土)

不請阿弥陀仏、両三遍申してやみぬ

南海トラフ巨大地震

 日向灘沖でM7を超える地震が起きました。臨時情報が発出されて、避難準備を含む注意を促しました。今回の地震が南海トラフ巨大地震の前兆だとは直ちに言えないようですが、想定震源域の端で、陸側のプレートが跳ね上がる同じメカニズムの地震が起きたので、誰もが南海トラフが危ないと連想するわけです。万が一、巨大地震が起こってしまえば、日本への打撃は計り知れません。桁違いの死者や家屋の倒壊、社会インフラの毀損が起きますし、被害甚大な都市は、その機能の回復に相当な時間を要すると思います。大阪万博もとても開催不可能でしょう。それどころか、大阪の街自体も中心部の広範囲が海水につかります。もう一度、被害想定を確認して、1週間分のサバイバルのための備蓄、対策本部の立ち上げ準備、避難手順の確認、避難所の立ち上げ準備など、今できることを始めておくことが大切だと思います。巨大地震に対して、日本がどう備えを行って、被害を最小化したかを、世界に示すチャンスだと思います。特に、被害想定地域は、時間を無駄にできません。

 

長崎市平和祈念式典

 イスラエルを招待しなかったために、G7の日本以外の国の大使も参加を取りやめる事態になっています。主催者である長崎市の勝手ですが、イスラエルを排除することは、パレスチナの側を政治的に支持することを意味すると受け取られるので、あまり賢い判断ではなかったと思います。それでも、長崎市の独自の政治的判断なので、それ自体は自由です。ただ、こうした事態を招く可能性があることを認識していたのなら良いのですが、外務省とも事前にすり合わせておくべきだったでしょう。自らの正義の基準照らして良かれと思ってしたことが、思わぬ波紋を引き起こして、収拾に苦労しているのではないでしょうか?平和祈念は立場の異なる参加者によって、立場を超えて行われることに意味があると思います。他国を侵略しているロシアのような国は別として、長崎市が特定国を排除したのは、得策ではなかったと思います。

 

ライドシェアいまだ成らず

 日本版は、タクシーが足りない曜日と時間帯に限って、地域限定で、運転業務ができるに過ぎないので、やる気があっても、儲からないので、参入を躊躇する人が多いようです。日経新聞にも、大阪市でのニューモの募集でも希望者は2000人いたものの、採用に至ったのは30人だったとのことです。その条件では稼げないと知って辞退した人が多かったのです。タクシー会社の既得権を重んじて、ライドシェアを導入しない、導入しても形ばかりにするなどの、実に日本らしい対応が見られます。世界に取り残されるニッポンの典型的な事例です。社会的ニーズもあり、世界には成功事例もあり、やってみたい人もいるにもかかわらず、頑なに制度の全面導入を妨害している守旧派の政治家をあぶりだして、次の選挙で全員落とすしかないでしょう。

 

2024年8月 9日 (金)

心更に答ふる事なし

取り残されるニッポン

 サム田渕「日本はなぜ世界から取り残されたのか」(PHP新書)は、日本を含む世界のエリートが考える日本の強みと弱みを紹介しています。強みが弱みの原因になっているのが特徴です。アメリカからは、意思決定が遅い、移民を受け入れない不合理、世界に学ばない、リスクを取らない、女性への偏見、過去の暗い歴史を教えないとの指摘があります。ヨーロッパからは、内向きな世界観、目立つことを嫌う、女性が積極的に表に出ないなどの点が挙がっています。アジアからは、意見をはっきり言う人が少ない、ワークライフバランスが悪い、外国人とのコミュニケーションが取れない、宗教を信じている人への理解に欠けると言われています。こうした弱点は、日本人自身にも分かっていると思います。要は、変えたくても全体としては変われないという点に日本の最大の問題があります。なぜでしょうか?一つの焦点は政治です。アメリカからは政治家のレベルが低いとはっきり言われています。その通りです。最優秀の人間が政治家になることが非常に少ないと思います。著者は、エリート教育がないから、真面なリーダーが育たないと考えています。国の安全保障や軍事に対する驚くほどの無知が、世界平和への貢献を行えない原因だともしています。1人当たりのGDPでは世界で37位に過ぎないことへの危機感も薄いと思います。大きな課題について、根本的な解決に資する方策を議論し、実行する胆力がないのは残念です。ニッポンの衰退の原因は、少子高齢化だけではなく、人間の質の劣化にあると感じます。

 

スウェーデンの学校

 戸野塚厚子「スウェーデンの優しい学校」(明石書店)は、日本の学校教育の現場が抱えている多くの問題の解決策を考える上で、重要な示唆を与えてくれます。スウェーデン流のお茶の時間は、教師間の連帯と心の余裕になっています。児童中心主義(低学年は24人以下、学びの軌跡を記録するポートフォリオの存在)、時間割と教師の裁量(教科書は貸与制、学習材は子どもが主体的に学習するためのもの)、ビュッフェスタイルのスクールランチ(無償、外で食べても自由)、ジェンダーニュートラルトイレ(個室)など、スウェーデンの学校教育の目標に適合した仕組みや装置が、日本との大きな違いです。ピッピの母であるリンドグレーンが描いたような自由で奔放な子どもが育つようにする学校を作ろうとしているように見えます。部活動はなく、子どもも地域のサークルに加入します。学校が楽しいかという問いに対するスウェーデンと日本の子どもの回答が、小学校で77.8%と49.3%、中学校で59.4%と25.7%と差がついているのも、理解できます。ランチだけでも質的な差があると感じます。スウェーデンは、コロナ禍でも学校を休業にしませんでした。保健室には、子ども100人に1人の割合で、スクールナースが雇用されていて、健診や予防接種も行います。日本の養護教員は、世界ではガラパゴス的な存在です。私たちは、日本の学校を所与のものと受け取りすぎていると思います。スウェーデンの学校の話を聞いていると、自由さ、楽しさ、手厚さ、余裕を感じます。雁字搦めになって、誰にとっても楽しくない日本の学校が、滑稽にさえ見えてきます。

 

新しい封建制

 コトキン「新しい封建制がやってくる」(東洋経済新社)は、階層化が進み、停滞が続く社会の傾向を分析したものです。中産階級への警告の書でもあります。現代の巨大IT企業は寡頭支配層の誕生を意味します。彼らが貴族です。著者によれば、カリフォルニア州は、富も貧困もナンバーワンで、階層化が進み社会的流動性に欠ける社会になっています。中世の聖職者にとってかわったのが、知識階級で、テクノクラート権威主義を担っています。学問の府である大学が、自由主義文化の存立基盤について無智な学生を社会に輩出する役割を担っていると批判しています。確かに、大衆化した大学では、就職を目的にした学生が多いので、古典的な学問への興味が薄いのはやむを得ないところでしょう。大学自体も明確に階層化しており、エリート大学では、かなり事情が異なると思います。著者が、新しい宗教として、社会正義、環境保護を挙げていますが、支配階級の宗教として、超人間主義を候補として挙げて、人工知能技術の開発と推進によって神の頭脳を実現するものだとしています。生成AIの開発競争が激化していますが、その動きは、自分たちが神となり、不老不死の存在になることが究極の目的だというのです。確かに、そういうテーマの映画やアニメがありますが、大抵の場合、そんな試みに没頭するのは人類の敵となる悪人です。著者は、急速な技術の進歩に対する警戒感を露わにしています。民主主義が破綻し、ホモ・デウス(神の如きカースト)が支配する世界への道だと考えているからです。そして、最終節では、「第三身分よ、目覚めよ!」と強いメッセージを送っています。要は、新しい階級闘争の勧めです。アメリカよりも、日本の方がはるかに社会的流動性が低く、儒教の影響で身分制を所与のものとした教えが共有されています。古いタイプの封建的傾向のある社会だと思います。その殻を脱しきれずに世界から取り残されているわけですが、その先にある新しい封建制において、日本全体が下層に沈むことのないように警戒しなければならないと思います。ただ、どれほど多くの日本人が、新しい封建制がもたらす危機に気が付いているのか、不安もあります。

 

2024年8月 8日 (木)

浄名居士の跡をけがせり

大家さんの老後の心得

 大家さんに限りませんが、不動産所有・賃貸経営を行っている人間であれば、特に、自分が認知症その他で判断能力が低下する可能性を考慮して、予め備えをしておくべきだという話を、大西統さんという方から、東住協セミナーで伺いました。子どもがいない夫婦の場合は、必ず、相互に全財産を譲る旨の遺言をしておく必要があります。それがないと、兄弟やその子どもたちとの分割協議書の作成が必要になり、手間もかかり、財産分与もすることになります。相続人がない場合は、特に、意思を明確にして、遺贈先を遺言しておくべきでしょう。認知症対策では、財産管理委任契約+任意後見契約を勧めていました。賃貸経営をしている場合は、任意後見では、被後見人の財産を守ることが目的となるために、種々の制約がかかります。そのため、家族信託を利用して、不動産の売却などもできるような余地を作っておく必要があります。お一人様の老後に関しては、身元保証契約(介護施設入所の際に必要)、生活サポート契約、死後事務委任契約(葬儀関係、ペット対応、家財処分、残余財産の遺贈先など)を検討します。死後事務委任契約については、遺言とセットで公正証書を作成するのだそうです。縁の薄い相続人が出てくるというリスクを回避するためです。こうした対処によって、空き家、孤独死、無縁墓などの問題を予防することが可能です。住んでいた自宅を売却してもらって、自分の老後の資金にすることもできます。お一人様は、子どもがフォローしてくれるわけではないので、特に、周到な準備が必要なのです。話を伺ってみれば、なるほどと思う点が多々ありました。元気なうちに手を打っておくことが非常に大切なのです。

 

AIと著作権に関する考え方

 著作権分科会方制度小委員会が3月に取りまとめた標記の文書について、ジュリスト7月号で特集されています。この文書は、著作権法の解釈について一定の考え方を取りまとめたもので、個別事案に対する司法判断の参考になるものと考えられます。開発・学習段階については、法30条の4ただし書に該当する行為の範囲が明確に示されたわけではないので、結局、今後の司法判断や国際的な動向に委ねられているとしか言えないでしょう。生成・利用段階については、依拠性がポイントになります。既存の著作物を認識していた場合は、依拠性があると認められるようですが、類似するものを生成する意図があった場合に限るのかについては、学説も分かれるようです。〇〇風というような程度の創作物は、基本的に、侵害にはならなりません。また、認識がなくても、その著作物が学習素材に含まれていた場合は、依拠性を推認することが可能だとされています。推認は反証で覆る可能性があります。含まれていたかどうか明らかでない場合は、アクセスできた可能性や類似性の程度によって判断するしかないようです。実際の裁判になれば、弁護士さんの腕の見せ所なのでしょうが、立証はかなり骨が折れる作業になりそうです。知財高裁所長を務めた高部さんが、立証の在り方について整理されていますが、知財専門の弁護士さんでなければ、実務を適切の処理するのは難しいと感じます。著作権法の実務に関して最もホットな論点ですが、制度設計や運用に関して、早期に国際的な調整の場が必要だと思います。日本を含むアジアが欧米から取り残されないように注意が必要です。

 

イギリスの暴動

 各地で、極右団体が扇動した暴動が発生しています。きっかけは、ダンス教室での殺傷事件が、ボートでイギリスに来たイスラム教徒によるものだったとのニセ情報が拡散されてことにあります。関東大震災の際に、朝鮮人が井戸に毒を入れているというデマから、襲撃が始まったことを想い起こします。イギリスは、総選挙で、反移民の主張を掲げるポピュリズム政党が14.3%の得票を得ているので、不法移民へ反感を持つ人々がかなり存在するということです。労働党が政権について、前政権が構築した不法移民のルワンダ移送を廃止したこともあり、移民を巡る対立が国民を分断している様子が見て取れます。極右が扇動すれば各地で暴動が起きる状況は極めて危険です。労働党政権は、出だしから、試練に曝されおり、この危機をどう乗り切るのか注目されます。日本国内では、技能実習生の脱走者たちによる犯罪行為が目立つようになりました。これを抑え込めないと、反外国人労働者の気分が国民に共有されかねません。一部の事例を見て、すべてが悪いと決めつける人も少なくないので、要注意だと感じます。

 

 

 

2024年8月 7日 (水)

心は濁りに染めり

バスケットボール男女の6戦全敗

 パリオリンピックで、男子は悲願の1勝を、女子はメダルを目指しましたが、結果は、ともにグループステージでの3戦全敗に終わりました。ただ、男子は、ドイツ、ブラジル戦は20点ほどの差がつきましたが、フランス戦は、不運な判定によって、手にしかけた勝利を逃しました。相手の3チームは全て準々決勝に進出しており、日本にもチャンスがありそうだと、希望の光が見えてきたと感じます。20年前のサッカーと似た状況です。女子は、東京オリンピックで銀メダルの快挙を達成して、今回は、各チームから研究されて特長を封じられたため、実力を発揮できなかったと思います。初戦に最強のアメリカを当たって、大差で敗れたことが、ドイツ、ベルギー戦と、本来の出来には程多く、歯車を狂わせた原因だと思います。最終戦のベルギーに思わぬ大差を付けられましたが、チームとして何が何でも勝つという意欲が感じられませんでした。心が折れていたのかもしれません。バスケット人気がテイクオフして、今が、バスケットボールへの社会的関心の裾野を広げる重要な時期です。6戦全敗は、この流れに水を差す恐れがあり、次の目標に向けて、立て直しが急務です。男女とも、若手の台頭が待たれます。サッカーのように海外に武者修行に出られる環境を作ってほしいと思います。6戦全敗をバネに、教訓を得て、次に向けて飛躍してください。

 

泡と消える含み益

 日経平均4451円安、約800社がストップ安という異常事態を招いたのは、日銀の利上げでした。もちろん、アメリカ株の下落もありますが、年初来の上昇が一挙に泡と消えました。株式相場とはこういうモノだと言えばそうなのでしょうが、貯蓄から投資へと誘導してきた政府は、どう責任を取るのでしょうか?急速な円高についても、何とかできないものでしょうか?日銀の利上げ自体は、既定路線ですが。恐らくタイミングが悪かったのだと感じます。アメリカの景気後退への警戒感と相まって、歴史的な株価下落を招きました。個人投資家たちは、財務省や日銀に対して強烈な不満を持つと思います。新NISAを始めたばかりの個人は、株式投資の深刻なリスクを頭に植え付けられたと思います。これほどのショックを受ければ、株式相場は暫くダメでしょう。年金資金も大学ファンドも大丈夫でしょうか?彼らは、早々と売っているのかしら?翌日に、3000円以上回復しましたが、残した傷は大きかったと思います。

 

賃貸経営の落とし穴

 東住協のセミナーにおける谷崎会長の講演から、恐ろしい話を2つ紹介します。まず、外国人入居者の問題です。低家賃の物件には、出稼ぎの外国人を入居させることがありますが、騒音、ゴミ分別、部屋の無断DIY、多人数同居、家賃支払い遅延、無断帰国などのリスクがあります。こうした問題を回避するには、ルールを明記(母国語に翻訳する)して、遵守を誓約する署名をしてもらうことが大切です。守らなければ罰則があることも文書に記載して正しく理解してもらいます。この一手間で、トラブルの予防に効果があります。2つ目は、父親のアパートの管理が好い加減だったために、長女の方が問題のあった8戸の入居者さんへの対応で、四六時中奔走し、問題解決に1年を要したという事例です。無断転貸、滞納、多数のペット飼育、ゴミ屋敷、暴力団がらみ、契約書の不存在など、山盛りのトラブルへの対応で、最終的には問題は解決したものの、夫と離婚、父と断絶など、家族関係が破綻状態になったという話です。賃貸経営は、不労所得が得られて優雅だなどと考えられがちですが、安易に考えると大変な目に遭うこともあるという教訓でした。身が引き締まります。

 

2024年8月 6日 (火)

心ををさめて道を行はむとなり

東京女子医大の泥沼

 第三者委員会によるガバナンスの検証に関する報告書が公表されました。今どき、こんな私立大学があるのかと驚かされます。元凶と名指しされている理事長を早く交代させるべきでしょう。知人の会社にコンサル契約して一部を還流させる、同窓会と大学から給与を二重払いさせる、推薦入試の受験生に寄付を求める、教員人事でも寄付を求めるなど、「金銭に対する強い執着心と学校法人に対する忠実性の欠如が見て取れる」と断罪されています。東京女子医大の伝統を汚し、乱脈経営を繰り返しているわけですから、理事長の退場以外には再生の道はないでしょう。文科省は、適切に権限を行使して、東京女子医大の再生を促進する必要があります。また、こうした事態を招いた原因をきちんと分析して、今後の私学行政に生かすべきだと思います。

 

敦賀原発2号機

 原子力規制委員会は、再稼働を認めないという審査結果を了承したそうです。理由は、原子炉直下に活断層がある可能性を否定できないからです。活断層とは、12~13万年前以降に活動し、再び動く可能性がある断層です。新規制基準では、活断層があれば、アウトということなので、論理的には正しい判断でしょう。ただ、活断層は、全て分かっているわけでもなく、いつ動くかも分からないのです。これまで17基が審査に合格して、12基が稼働していますが、かりに活断層がある可能性を認めたのであれば、地震計や歪み計などの前兆現象を把握するための機械を駆使して、様子を見ながら稼働するという手もありそうです。しかも、原発には寿命があるので、役割を終えるまでの間、監視をしながら稼働すればよいわけです。万年単位のリスクで、再稼働させないという基準自体に合理性があるのか、かなり疑問です。規制委員会は、新基準に照らした判断をしているだけなので、罪があるわけではありませんが、2011年以降のエネルギー政策は、振り子が極端に触れたままで、国家として危ういと感じます。不合格が敦賀原発2号機だけであれば、電気エネルギー供給に大きな影響はないのかもしれませんが、原発の再稼働を躊躇して、気候変動対策のCO₂削減という目標の達成が遠のくとすれば、日本という国への批判は避けられないと思います。原発の再稼働を認めないなら、どういう代替手段があるのか、気候変動対策を含む説得力のある説明が必要になります。

 

賃貸事業と地震災害

 東住協セミナー「大家さんのためのリスクマネジメント」に参加しました。地震で賃貸物件が壊れると、大家さんの負担で修繕することになります。住めない状態になれば、家賃収入は入らず、少なくとも損害の程度に応じて賃料の減額をしなければならなくなります。そのため、手元資金の確保がお勧めです。震災後は金融機関からの借り入れができるとは限りません。講師によれば、3~6か月分の家賃相当額があると安心だとのことです。確かに、家賃収入がなく、ローンの返済義務は継続するので、手元に資金がないとたちどころに困った状態になるのです。また、管理会社や修繕を担当する工務店などには、問い合わせが殺到します。業務量は半端ではないので、直ぐには対応してもらえません。リスクヘッジとしては、日頃からの付き合いを欠かさないことが重要だとされます。さらに、可能であれば、仮設・修繕資材や急場をしのぐ設備を用意しておくこともお勧めです。入居者さんには、NHK防災で紹介している断水や停電の際の心得が参考になるとのことです。必要な情報は、入居者さん向けのしおりなどに記載しておくと良いでしょう。東住協では、大家さん大学というYouTubeの学習教材を無料で提供しており、私も新しいものが出ると見るようにしています。

 

2024年8月 5日 (月)

事にふれて執心なかれとなり

なでしこ対アメリカ戦

 延長戦の結果、0-1で敗れて、なでしこのパリオリンピックは終わりました。なでしこの戦術は、5バックで固く守って、守から攻への切り替えを早くして、小人数で速攻を仕掛けるというものでした。ボールは8割方持たれましたが、ラインコントロールがうまく行き、堅守を崩す切っ掛けが見いだせずに、攻撃力を誇るアメリカが苦戦しました。ただ、前後半を通じて、なでしこのシュートが枠に飛ぶことが少なかったので、アメリカも油断することなく、ゴール前では体を張っていたと思います。延長に入って、得点を奪うために、アメリカは、5人が前線に残るシステムで圧力を高めました。これが、ロドマン選手の追加時間でのゴールに結びついたと思います。延長後半は、システムを変更して、必死の攻撃に出ましたが、ゴールには至りませんでした。結局、両者の差は、シュート力に尽きます。なでしこは、頭を使って献身的にスペースを消して、俊敏性を生かして積極的に背後を狙うことによって、難敵に対して大健闘したと感じます。ベストを尽くして、なお及ばなかったという試合でした。アメリカは、ロングボールを封印して、スペースを見つけて相手の守備の隙を突くヨーロッパのスタイルへ転換しているようでした。実力双璧のスペインとアメリカに負けましたが、収穫の多いオリンピックだったと思います。このところ準々決勝の壁に悩まされていますが、くじ運が悪いだけです。アメリカのスタッフの充実ぶりは参考にしたら良いでしょう。女子サッカーの進歩は、男子よりも早いと感じます。澤選手を中心に世界を制した2011年は遠くなりましたが、過去の栄光は一旦忘れて、前進あるのみです。

 

海外出稼ぎ

 歴史的な円安で、日本から海外で稼ぐために脱出する人が、注目されています。NHKクローズアップ現代取材班「ルポ海外出稼ぎ」(大和書房)、大石奈々「流出する日本人」(中公新書)などにも、このテーマが取り上げられています。前者では、働くために海外へ出て行く若者たちの動向を「静かなストライキ」と表現しています。長時間労働、男女格差、専門スキルへの低評価などが動機として描かれます。また、逆に、外国から労働者が日本に来なくなるという危機感にも目が向けられています。受け入れ国として魅力がない、欲しい人材に選ばれないという問題です。待遇格差の解消、日本語教育への支援、移民2世以降の教育体制などの課題への取り組みが弱いのです。後者では、より広く、デジタルノマドの出現、富裕層の移住、ワーキングホリデーの光と影などにも目配りがされています。著者は、2011年が分水嶺になって、日本の災害、安全保障、経済、教育上のリスクを回避する動きが顕著になっていると分析しています。また、海外移住に関しては、永住のハードルと移住後のリスクにも触れています。著者は、海外への移住を一方通行の流出とは捉えず、グローバルな人材交流の潮流として、より柔軟な制度設計(複数国籍を含む)と外国人を含む住みやすい国造りを推進すべきだとしています。海外で稼いで日本で使えば、豊かに生活できる状況になっているのは事実でしょう。そんな状況が長く続けば、待遇の悪い日本に、外国人労働者は来なくなります。人口減少で借金が多い国を、何とかして、安心して住め、世界に通用する教育を受けられ、余裕をもって稼げる国にするしかありません。そのためには、劣化が著しい政治を根本的に変える必要があると感じます。法制度を変革するには、国会を動かすしかないからです。外国人に選ばれない国は、海外で稼げる能力のある自国民にも見捨てられてしまいます。

 

デジタルアーキビスト

 デジタルアーカイブ学会主催で、国家資格の可能性に関して議論するシンポジウムがオンラインで開催されました。デジタルアーキビストについては、社会的認知度が高いとは言えず、直ちに国や地方自治体において、デジタルアーカイブの専門機関が組織化されるような状況にはないので、デジタルアーカイブの管理責任者というような職業として構想するのではなく、業務遂行のための基本的な知識技能を習得したことを証明する資格とする方向で検討を進めることが提案されています。理想を言えば、図書館、博物館・美術館、公文書館、初等中等学校、関連業務を行う企業に有資格者が一定数いるような姿にできれば、我が国のデジタルアーカイブの整備が適切に推進できると思います。国家資格化には、責任府省の確定、国家資格化する論拠、他の民間資格との統合などを含む調整、試験実施などの実務体制の整備その他の課題があるでしょう。学会による提案は、スタートラインに過ぎません。デジタルアーキビストという資格に関する社会的認知度を上げて、衆知を集めて構想の詳細を詰めて、国家資格化という目標に近づくことが肝要だと思います。個人的には、国交省の宅建士のような試験にすることを目指すべきだと考えています。年1度の試験と5年ごとの更新講習によって、デジタルアーキビストの専門性への信頼を得ることが大切だと思います。

 

2024年8月 4日 (日)

三途の闇に向かわんとす

サッカー男子対スペイン戦

 好ゲームでしたが、主審の笛が中立性を欠いており、試合への興味を台無しにしてしまいました。恐らく、日本のファンは、おかしい、不公平、違う、何故だを連発しながら見ていたのではないでしょうか?特に、細谷選手のゴールは、オフサイドで取り消されるべきものではなかったと思います。日本の協会として、主審の笛には、正式に抗議すべきでしょう。勝敗を分けたのは、スペインの11番の個人技でした。左右どちらでも強烈に打てるシュート力は、圧巻です。今後の国際大会でも、フェルミン・ロペス選手は活躍するでしょう。オーバーエイジを入れたスペインと、互角に渡り合った選手たちは称賛に値すると感じます。記録に残る結果は、0-3と一方的なスコアでしたが、かなわない相手だったとは思いません。ただ、スペインには、この年代に、A代表でユーロ2024で優勝の原動力になった2人のFW(ウィリアムス、ヤマル)らがいるので、このチーム以上の潜在力があると認識すべきです。次のワールドカップでも優勝候補に挙がってくると思います。大岩監督は、若い選手たちをチームとしてまとめ上げて、見事な組織的なサッカーを見せてくれました。近未来に、A代表の監督を務めてほしいと思います。選手たちも、欧州でもまれて、さらに能力を磨いてほしいと思います。U23日本代表は、立派に戦ってくれました。メダルは逃しましたが、大いに褒めましょう。彼らは、十分に大きな収穫を持ち帰ってくれました。「ありがとう」と拍手を送りたいと思います。

 

王位戦第3局

 先手の藤井7冠が逆転で勝って、シリーズ2勝1敗としました。角換わりの出だしで、渡辺9段が5七金と「つめろ」をかけて、有利な状況を作りましたが、藤井7冠が、4五銀右として、同歩、同銀と進んだところで、勝勢にあることが分かりました。渡辺玉の逃げ方のすべての変化を読み切っていたものと思われます。何という頭脳でしょうか?詰将棋の伝説のチャンピオンらしい勝ち方でした。渡辺9段は、4五玉と逃がしましたが、3六角が決め手になりました。一局を通じて、渡辺9段が有利な場面が長く続いていました。特に、6六香としていれば、勝勢にできる順があったことが感想戦で判明しました。藤井7冠を追い詰めながら、勝ちを逃した形です。ただ、そこに辿り着く道があまりにも狭かったということでしょう。藤井7冠が見出した4五銀右も、同じように「次の一手」問題になりそうな絶妙手でしたが、それを見つける頭脳に一日の長があったと思います。やはり、最強の棋士です。両者は、現代将棋の最高峰の戦いを見せてくれました。ともに天晴だと感じます。

 

泣き叫ぶ女

 阿部詩選手がわずかな隙を突かれて思わぬ敗戦を喫した際に、人目もはばからず、泣き叫んでいました。これに対して、同情や非難の声が聊かやかましいのですが、他人がどう感じようとも、彼女が立ち直るために必要なことであれば、意味のある泣き叫びだったとプラスに捉えるべきだと思います。想像もしていなかった敗戦のショックは、尋常ではなかったでしょう。現実を受け止めるのが、非常に辛かったはずです。こんな結果になって情けないという自己嫌悪もあるでしょうし、支援してもらった人に申し訳ないという謝罪の気持ちもあったでしょう。その混乱の中で、感情が爆発して、泣き叫ぶという行動になりました。落ち着くまでに時間を要したでしょうが、少し冷静になってからは、恐らく、心のエネルギーが枯れた状態になったのではないかと思います。あれほど泣き叫ぶには、膨大なエネルギーが消費されていますから・・・。その後、金メダルを目指した兄の試合を応援していた姿からは、彼女が新たな挑戦へと気持ちを切り替え始めていることが伺われました。兄が強い意志で2連覇を達成して、自分も前を向いて進もうと決意を固めたのではないでしょうか?やはり、自然に泣き叫んだことには大きな効果があったと感じます。人間の脳はそういうふうにできているのだと思います。

 

2024年8月 3日 (土)

魚と鳥のありさまを見よ

ハマス最高指導者の暗殺

 イスラエルの暴走が止まりません。イラン領内へのミサイル攻撃で、ハマスの代表を殺害しました。アメリカが事前に承知していたかは不明(公式には不知とのこと)ですが、イランとの間で更なる戦闘状態が起きても不思議ではないでしょう。ガザ地区での戦争も続いており、人道危機は悪化しています。最高指導者の暗殺にまで手を染めた以上、イスラエルの現政権が戦争・戦闘を止める気がないのは明らかですから、さらに犠牲者が増えることでしょう。イスラエルへの憎しみは、深く心に刻み込まれて、これからも繰り返しイスラエルへの攻撃の動機となることでしょう。ここまでやり過ぎると、ホロコーストの正統化にさえ繋がる恐れがあるのではないでしょうか?最初に奇襲攻撃を仕掛けたハマスの軍事部門の思惑通りに、イスラエルが暴走していることは、政治的には多くの国から批判を浴びて敗北の道を辿っているようにしか見えません。イスラエルにも賢人がいるでしょうから、国家の暴走を自ら止めるべきです。

 

金利ある世界

 日銀は、政策金利を0.25%へ引き上げました。この水準は15年7か月ぶりです。国債購入も減額します。市場の機能回復への回帰です。長く金利がない生活に慣れていますので、金利がある状態になることは、正常化ではあるものの、基礎体力がない企業や個人には、些かショックに感じられるかもしれません。金利は、今後、0.5%への引き上げが予想されています。景気の冷やす結果を招かないか、正直なところ心配です。円高への懸念から、直後の株価が急落しました。中期的には、生産性の低い企業が高い企業に置き換わる雇用の好循環が達成できるか次第ですが、地域格差もあり、うまい具合に不時着できるかは、予断を許しません。過去にも利上げによる景気後退という失敗事例があります。日銀の決定を受けて、円が買われて相場が円高傾向に動いています。150円台という円安から脱することは、日本にとって中長期的にはプラスです。日本が安く買い叩かれている状況を早く脱したいものです。食糧やエネルギーなどの輸入物価の高止まりも緩和されるでしょう。消費者物価が2%程度の上昇で落ち着いていることが、非常に重要です。日銀のかじ取りが難しいのは分かります。最大多数の最大幸福が実現できても、取り残された人たちが大きな不幸の中に没してしまえば成功とは言えないからです。もしかしたら、最大多数の最小不幸の方に傾斜してしまうかもしれません。異形の金融政策の後始末は始まったばかりです。

 

男性の育休取得

 日本社会の変化が進んでいる分野です。男性の育休取得率が、初めて30%を超えました。規模が大きい職場ほど、取得が進んでいます。結構なことですが、日本では育休期間が短いという問題があります。1~3か月未満が28%、2週間~1か月未満が20.4%となっており、今のところ、せいぜい1か月ほど子育てを生活の中心に置くに過ぎません。北欧などの約1年間の育休とは質的に異なります。この間の所得補償が北欧では手厚いのです。1人目で妻が取得したなら、2人目は夫が取得を義務付けられると聞いたことがあります。公園デビューも半数はお父さんと一緒なのです。育休の取得に消極的な日本人男性の意識改革は始まったばかりです。統計によれば、1か月以上の期間取得した男性は、10人に1人もいないことになります。今後は、取得率が目標ではなく、最低1か月の取得を目標にすべきでしょう。少子化対策はすべての企業にも協力義務があると考えるべきです。

 

2024年8月 2日 (金)

他の俗塵に馳する事をあはれむ

国立大学の未来像

 文科省が有識者会議を設けて検討を始めました。自己収入増を収入源の多様化で図るとともに、授業料の標準額の値上げを提言するようです。日経新聞は、「国立大、重み増す「稼ぐ力」」というタイトルを掲げていました。国立大学が、どのようにして稼ぐのか、全国的には決め手になりそうなものは見当たりませんが、東工大が行ったような都市部の土地活用くらいでしょうか?大学ファンドの支援を受ける第1号の東北大学の計画を見ると、産業界からの資金獲得を大幅に拡充するというシナリオになっています。第2号以下を目指す大学も、そのような大胆な(夢のような)計画を立てることになり、有識者会議も、そのラインで国立大学が財務的に自立化して行くことが望ましいと言うのではないでしょうか?しばしば引き合いに出される英米の私立大学は、巨額の寄付金を投資に回して利益を出すことで、自己資金を得ています。国立大学には、そんなファンドは存在しないので、比較するべきではないのですが、国家財政が苦しいために運営費交付金の拡充はしない前提で、自分たちで何とかしてくれという方向での議論が進められるようです。我が国の研究力の劣化は国立大学ばかりが原因だとは思いません。企業の基礎研究力も相対的に低下しています。国立大学の研究者は、特に研究時間の不足を嘆いています。大学が自分で稼ぐために、より多くの時間を取られるとすれば、本末転倒になります。そこで、教員の分業体制という話が出ますが、実際に、専ら教育その他の事業に従事するだけの教授になりたい人がどれほどいるのでしょうか?国立大学が国からの財政支援を当てにできなくなりつつある時代に、つじつま合わせで外部資金獲得を提言しても、実現可能性が低く、そんなもので世界と研究力で戦うのは非現実でしょう。特に地方の国立大学は、研究力の劣化に歯止めがかからなくなると思います。国が国立大学を財政的に面倒見切れなくなっているなら、国立の看板を下ろしたらいかがでしょうか?

 

男子サッカー対イスラエル戦

 イスラエルは、ヨーロッパのチームらしい組織的な攻守を見せていました。序盤の15分ほどは、前掛りで圧力をかけてシュートまで行く戦術でしたが、基本形は、堅守速攻のチームです。気温が31度と高くサッカーをやるには苦しい環境でした。日本は、引き分けでも構わないという戦いぶりで、イエローをもらった選手や出場時間が長かった主力を休ませていました。結果は、1-0で勝利しましたが、GKの活躍がなければ、3点くらい取られていてもおかしくない出来でした。決勝点は、藤田⇒佐藤⇒細谷ときれいなパスがつながり、珍しく細谷選手がフリーでシュートを打ったものです。MOMは、小久保選手です。3戦とも無失点に抑えたのは彼の功績大です。準々決勝のスペイン戦でも、彼の好セーブ無くして勝利はないでしょう。怪我人も出ていますが、1点を巡る総力戦になると思います。オーバーエイジなしでどこまで戦えるのか、U23の真価が試されます。

 

なでしこ対ナイジェリア戦

 3-1で勝利して、グループ2位通過で、準々決勝へコマを進めました。32度と暑い中での消耗戦でした。選手交代によって、負荷がかかっていた主力の疲れも緩和できたと思います。基本的に3-4-3のようなシステムが採用されて、ウィング2人が高い位置でプレーしていました。ナイジェリアは、ロングボールで背後を突くか、サイドをドリブルで運ぶ攻撃に終始していました。失点は、パスミスを拾われて、パス一本から強烈なシュートを決められたものです。個々の能力には、優れたものがあると感じました。ただ、組織的に守備網を崩してくるスペインのような巧みさはないので、安心して見ていられたと思います。得点の中では、1点目のパスワークは見事でした。2点目はこぼれ球への田中選手の反応の良さが出たものです。3点目は復活した北川選手のFKの技術が光りました。後半にも、得点チャンスは幾つかあり、5点くらい取っていてもおかしくない状況でした。なでしこの良さが十分発揮できた試合です。準々決勝の相手は、因縁のアメリカと決まり、厚い壁に挑むことになりました。試練の時を迎えますが、メダルへの避けられない関門なので、特に守備陣の健闘でぜひ勝利をつかんでほしいと願います。なでしこ、正念場です。

 

2024年8月 1日 (木)

三界は只心一つなり

アマゾン薬局

 EC大手のアマゾンが、処方箋薬の配送サービスを始めます。配送料は無料ではないので、どこまで利用が拡大するかは不明ですが、街場の薬局が縮小撤退する切っ掛けになると思います。書店が消えて行く原因には、雑誌が減ったこと、万引き被害が絶えないことのほか、アマゾンによる書籍の購入があるに違いありません。同じように、薬局での待ち時間を嫌って、配送料の負担も意に介さない人たちは、アマゾンを利用するでしょう。街角から薬局が消えて行くのを、厚労省は構わないと考えているのでしょうか?アマゾンの進出で利便性が増すから結構なことだとばかり言えないと思います。

 

オリンピック漬け

 テレビでは、日本選手がメダルを取ると大騒ぎしています。逆に期待を裏切る結果になった場合は、SNSで誹謗中傷が始まります。所詮、他人事なのに、何を騒いでいるのか、不思議な光景です。確かに、選手が艱難辛苦の末に目標を達成したことを称賛するのは、自然な反応です。共感しているのでしょう。快挙に感動して、勇気をもらったと感じるのです。そうした反応は、ポジティブなものなので、他人に迷惑にならない限り、自由です。しかし、武運拙く、あるいは審判の誤審などの不運で、真の実力を発揮できなかった人間に腹を立てるのは、お門違いです。何の権利があって非難するのでしょうか?自分は、選手とは何の関係もないことに気づいて、冷静になるべきでしょう。酷い誹謗中傷は、発信者が特定されて逮捕される可能性があります。にわか応援者は、ある意味で危険です。メダルを逃すと手のひらを返して非難する側に回ってしまう恐れがあるからです。本当に応援したいなら、うまく行かなかったときほど、元気を出せと励ますべきでしょう。推しの極意を知らずして、推しはできません。勝負は時の運、メダルだけが選手の価値ではないのです。栄誉をたたえつつ、大騒ぎするのはやめましょう。

 

誤審の防ぎ方

 日本選手が不利に扱われた判定があり、見ている側にはモヤモヤした嫌な気持ちが残ります。柔道で幾つかあり、勝負に影響がありました。バスケットボールでもあり、フランス戦の勝利が逃げて行きました。これらの競技では、もっと機械を導入して、映像を確認することで、誤審を防ぐことを進めるべきでしょう。柔道などは、AIの活用で、偽装攻撃を見破るなど、指導の客観性を高めるべきです。後から映像を見て、誤審だと確信して、審判への非難を行う人もいますが、故意に依怙贔屓したのでなければ、審判を責めるべきではないと思います。ただ、誤審については、審判の能力に関わるので、然るべき筋から正式に問題とすべきです。そして、審判が誤審しないようなシステムの導入を、強く運営者側に求めるべきなのです。オリンピックの歴史は、誤審のオンパレードです。判定が覆った例はありません。それで金メダルが取れなかった選手に対しては、そのことを記憶に留めておくしかないでしょう。あるいは、誰かがスポンサーになって、誤審の被害者たちに金メダルのようなものを授与したらどうでしょうか?記憶に残したい敗者の表彰です。

 

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