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2024年12月22日 (日)

若くよろしき男の、下衆女の名よび馴れていひたる

コメ不足の失政

 銘柄米は高騰したままですが、安いコメも争奪戦で、品薄だそうです。日経新聞に、「安いコメ消失、崩れる序列」という記事がありました。今夏は、小売店からコメが消えた時期があって、業務用に回るべきコメを供給がひっ迫した小売店が買いに出たという図式もあったようです。そのために、インバウンドで需要が膨らんだ飲食店も、高いコメを仕入れざるを得なくなっているとのことです。一般のコメとブランド米の価格差が縮小気味になっているのも、コメ不足という背景によるものです。農水省は、需給バランスの乱れは一過性だとしていますが、インバウンドという要素の軽視で、需要を見誤ったのではないでしょうか?また、農業人口の高齢化もあり、我が国の主食であるコメの生産力の減退についても、正しく見積もっているのか、疑問を持ちます。コメの価格が上がることを、むしろ歓迎しているのではないでしょうか?消費者の立場からは、農水省が単に怠慢なのか、実は黒幕なのか、判断がつきませんが、コメの価格高騰は、裏金問題以上の大きな政治的な黒星だと思います。

 

日本経済の衰退

 日経新聞に、1人当たりの名目GDPで、2022年に韓国に抜かれ、2024年には台湾に抜かれたという記事がありました。2030年代には、こうした逆転も予想されていたようですが、大幅な前倒しになりました。こうした結果は、大幅な円安の影響によるものですが、日本経済の衰退を象徴するものだと思います。2024年の実質成長率は、アジア太平洋地域でも唯一マイナスになるとのことです。特に、日本経済研究センターの試算によれば、20年代の労働生産性が韓国や台湾を大きく下回るとのことで、近い将来への展望が明るいものにはなりそうもありません。高齢人口の割合が大きいことも、韓国や台湾に抜かれる原因なのかも知れません。上記のようなデータを目にすると、人口減少で慢性的にマンパワー不足なのですから、定年を廃止して、働ける高齢者は生涯現役で労働生産に関わるような社会に構造改革すべきだと感じます。ただし、高齢者が従事できるのが、低賃金な単純労働の職種だけというのでは、話になりません。韓国や台湾の方が我が国よりも裕福になったというデータは、多くの日本人には衝撃的でしょう。新聞の片隅の記事でしたが、危機感を共有すべきです。

 

摂関政治の実相

 有富純也編「日本の古代とは何か」(光文社新書)は、最新研究によって解明されてきた奈良・平安時代の歴史に関して、解説する作品です。興味を持ったのは、「光る君へ」の背景になった藤原氏による摂関政治です。第2章は、「藤原氏は権力者だったのか?」というタイトルになっています。道長は、関白になったことはなく、摂政も1年だけです。内覧として20年を過ごし、右大臣、左大臣として太政官のトップに君臨していました。道長によって、藤原良房から続いてきた摂関政治が形骸化されたとも言えるのです。面白いのは、道長の時代は、文献史料に恵まれているため、政治的に充実しているように見えるだけかもしれないと記されていることです。ロバートの秋山さんが演じた実資の小右記を始め、複数の史料があるので、この時代だけ研究が進みやすいのです。摂関政治が行われた時期について、後期律令国家と見るのか、初期権門体制と見るのか、20年も論争があり、学説は定まっていないとのことです。摂政関白になる要件は、天皇の外戚、太政官のトップ、藤原氏のトップの3つであり、すべてを満たす人物がいなければ、次第に、天皇の外戚が重視されるようになりました。このため、道長たちも、娘を次々と入内させて、次の天皇になりうる子を生ませることに執着していたわけです。どうやら、摂関政治という表現も、将来、消える可能性もあるようです。日本史研究の分野としては、まだ未成熟の分野だそうですので、学校教育で習ったことが変わることもありうると心得ておきましょう。

 

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