年配の大学職員に対してリーダーシップについてどう伝えたか?(4)
私がお薦めする本は、次の通り。みなさんには、この程度の知識を共有しておいて欲しい。
まず、(1)吉見俊哉「大学とは何か」(岩波新書)は、事務職員全員が読むべき本で、財務部の若手研修でも教材にしたもの。世界史的な大学という存在の意味を手短に理解できる。次に読むべきは、(2)天野郁夫「大学の誕生(上・下)」(中公新書)で、我が国の大学制度の歴史を理解できる。大学の管理職ならば必読である。こうした知識を持たずに管理職をするのは大変恥ずかしい。
(3)コッター「企業変革力」(日経BP社)は、組織変革の進め方を実践的に論じたもの。大学の事務組織改革にも参考になる。同じ著者による「かもめになったペンギン」という寓話も、リーダーシップ論の教材としてお勧めできる。リーダーシップの在り方は多様性があり、個々人の持ち味で的確な役割を果たせば、組織に貢献できることが分かる。黒沢映画の「七人の侍」にも、七人それぞれに個人のリーダーシップを発揮する場面が描かれている。リーダーシップは複数形だと理解すればよい。(4)ドラッカー「エッセンシャル版 マネジメント 基本と原則」(ダイヤモンド社)は、最初に読むべきマネジメントの教科書である。ドラッカー理論のエッセンスがコンパクトに盛り込まれている。(5)カーネギー「人を動かす」(創元社)は、超ロングセラーである。読んだ人も多いだろうが、読んだときの年齢に応じて新たな発見があるかもしれない。管理職として成功しようと思えば、必読である。(6)酒井穣「はじめての課長の教科書」(ディスカバー21)は、文字通り、始めて課長になる人が基礎知識を得るには、手頃な参考書である。種々のマネジメント本から、中間管理職に必要な知識をコンパクトにまとめてある。
以上の講話を聞いて、みなさんが突如として覚醒することを期待することはないが、私が短い時間の中で、わかりやすいメッセージを送ったことは覚えていて欲しい。自ら学習を開始するかどうか、それは、みなさん次第である。
以下には、質問への回答を記しておく。
問1. 管理職として組織を活性化させるコツはないか?
管理職の役割で大きいのは、業務の優先順位を定めること、業務の割り振りを行うことである。与えられた資源の中で、能力も気質も異なる職員を動かして、どれだけの成果を引き出せるかが、マネジメントのポイントになる。それができないと、ボンクラ管理職になる。部下に命令する際には、判断の背景や理由を、相手が分かるように説明すれば、納得してやってくれやすい。
問2. 他大学と比較して筑波大学の職員をどう評価できるか?
以前に勤務した大学では、すべての事務職員とグループ面談を行ったので、職員の能力や考え方の分布を理解していたが、筑波大学ではそうした経験がないので、全体を比較することはできない。リーダー人材の育成という面では、どの大学も苦労しているので、これからでも遅くはない。若手を含めてリーダー人材さえしっかりしてくれば、事務組織は脅威で述べている状態から脱して、次第に強化されると思う。
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はじめまして。
大阪府和泉市に住む24歳の男です。
現在、私は京都大学の大学職員になることを目標とし、そのための情報をネットで集めている最中に、こちらのブログにたどり着きました。
私が手に入れたかった情報が書かれており、感謝の気持ちをお伝えしたくて、コメントさせていただきました。
これからもブログの更新を楽しみにしております。
投稿: K.I | 2013年12月19日 (木) 22時01分