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2024年9月

2024年9月30日 (月)

婿取りして四五年まで産屋の騒ぎせぬ所

女性の階級

 橋本健二「女性の階級」(PHP新書)は、本人とは別に、夫の有無や夫の所属階級による格差を分析しています。女性の格差については、男性に比べて研究が遅れており、1980年代になってようやくバイアスの解消に着手されたとのことです。下位の階級ほど女性比率が高いのは、家父長制的な性格を持つ企業組織の在り方に問題があるとの指摘は、その通りだと思います。今でこそ、女性の正規職員も増え、管理職を務める人も増えてはいますが、主戦力は男性だという企業組織が殆どです。そのような企業では、女性に期待される役割が、年収の低い職種に限られているのです。貧困率を見ると明白なのは、アンダークラスのシングルマザーが61.0%と高くなっていることです。新中間層や労働者階級のシングルマザーは、シングルマザーではないアンダークラス並みです。要は、シングルマザー⇒貧困率が高いということです。著者は、男性以上に女性たちの格差は深刻だとしています。人生の岐路は、どの階級のパートナーを得るか、フルタイムの仕事を続けるか、続けない場合は専業主婦になるか、パートタイムで働くかといった選択です。こうした岐路を経て、女性の人生は、十数種類のパターンに分かれて行きます。さらに、ライフステージの変化が、階級の移動をもたらします。主婦は、危険と隣り合わせの危うい地位です。離死別によってアンダークラスに流入する恐れがあります。その他、アンダークラスになりやすいのは、父親の学歴が低い、学校を中退している、卒業から就職までに空白がある、いじめや不登校を経験しているという人ですが、暴力や虐待などを行う毒親に育てられた子どもは、職に就いた後にも転落する可能性が高いという分析結果もあります。遺伝なのか環境なのか、両方なのかという問題はありますが、戦争や大災害などの攪乱要因がなければ、階級の変動は少なくなり、階級は固定化します。したがって、特に女性が、アンダークラスから上昇する機会が幾重にもある社会システムを作ることが求められます。

 

親と子

 ギブソン「親といるとなぜか苦しい」(東洋経済新報社)は、親という呪縛から子どもが自由になる方法を示す本です。どんな親も子にとっては毒を抱えており、子はそれから逃れるために親から自分を切り離すことを運命づけられていると思います。親を客観的に観る、親を否定することが簡単ではないので、著者は、それを実行するためのヒントを提供しているのです。親の精神的成熟度のチェックリストで、親の精神的な未熟さを知ることから始めます。その上で、親がどんなタイプの人間なのかを分析して、どういう対処方法があるのかを冷静に考えるのです。著者は、自分の感情を抑え込まないで、怒りに目を向けるとともに、全力で頑張らなくていいと勧めています。また、親は、「できた人間」でもなく、いつか変わってくれるというのは幻想だと指摘しています。堂々と距離を置いて構わないと述べています。私自身は、このような本を読んだわけではありませんが、14歳くらいの時に、両親に対する幻想を捨てて、自分の道を進むことに専念する構えができたように思います。社会的地位の高い親の場合は、子は大変窮屈な思いをすることになるでしょう。歌舞伎を始め伝統芸能の宗家などは、職業選択の自由を奪われて、親子が師弟になってしまいます。心の中は複雑になるでしょう。週刊誌を賑わせる事件がしばしば起こるのも、無理からぬ面があると思います。

 

忘れられた日本史

 八木澤高明「忘れられた日本史の現場を歩く」(辰巳出版)は、文献史学からは抜け落ちている民俗的な記憶を現場から呼び起こそうとする作品です。もちろん、現場に行っても、過去の人びとが蘇るわけではなく、住居などの痕跡も、昔であればあるほど、ほとんど残っていません。しかし、現場の風景の写真には、確かにかつて人びとが暮らした記憶のようなものが感じられます。著者が取り上げているのは、呪術信仰(拝み屋)、感染症、からゆきさん、蝦夷に渡った和人、風待ち港、姥捨山、北米への出稼ぎ村、アイヌ部落、蝦夷の英雄(人首丸)、無戸籍者の谷、飢饉、平家落人集落と殺人事件、潜伏キリシタン、難破船と波切騒動、本土決戦の特攻基地(館山湾)、遊女の宿、大阪の墓地群、原発事故による立ち入り禁止地区(浪江町)です。これらのテーマに関して、少なくとも幾つかについては、初めて知ったという読者も多いと思います。岩手県奥州市は、2024年の話題の中心にいるドジャーズ大谷翔平選手の故郷として有名ですが、著者は、人首丸(ひとかべまる)の墓碑を山中深くに訪ねています。蝦夷の首領阿弖流為(あてるい)は、坂上田村麻呂に降伏した後、田村麻呂の助命の嘆願虚しく、大阪府枚方市で処刑されましたが、人首丸は山に籠って最後まで戦って、数年後に討ち取られたとされています。それが、蝦夷の最後の組織的な抵抗でした。人首丸は、教科書では教えない蝦夷の英雄だったのです。歴史は常に勝者による歴史です。取り上げられている人たちは、確かに忘れ去られていますが、そういう人たちが確かに日本の片隅で生きていたことは覚えておきたいと思います。

 

2024年9月29日 (日)

よろしうよみたるとおもふ歌を

クライマックスシリーズの怪

 今年のパリーグは、福岡ソフトバンクホークスの圧倒的な強さが目立ちました。9月26日現在、2位の日本ハムに11ゲーム差をつけています。3位のロッテに至っては、17.5ゲーム差です。これほどの大差でも、CSが必要でしょうか?日本シリーズでパリーグを代表して闘うのは、ソフトバンク以外にあり得ません。もともと、CSなどというシステムは不公平で、無用だと思いますが、2位に11ゲーム差をつけているチームが、日本シリーズに出ないなら、日本シリーズは、日本一を決定する戦いの場ではなくなってしまいます。日本シリーズの価値を損なうCSなど辞めるべきでしょう。地区優勝+勝率上位によって争われるMLBのシステムとは、月とスッポンです。くだらないシステムは廃止すべきです。

 

妙義龍関の引退

 兵庫県高砂市出身で、38歳まで、現役力士として、土俵を務めました。膝に故障を抱えてしまったために、大関には上がりませんでしたが、記憶に残る天晴な力士人生でした。膝を曲げた低い姿勢で、押し、寄りができる高い技能がある、いぶし銀的な力士でした。相撲は、相手を土俵の外に出す競技なので、彼の取り口は、相撲の本質にかなうものでした。境川部屋では、平戸海関が三役に昇進しましたが、中卒たたき上げの力士が、猛稽古で育ってきたのは、妙義龍関や佐田の海関らの薫陶を受けたからだと思います。妙義龍関は、男は黙って土俵で勝負というような、寡黙で、愛想のないタイプです。負けるとファンサービスもありません。力士としては、ある種の美学を貫くのは良いと思いますが、振分親方としての人生が始まるので、武士から職人・商人へと、心を入れ替えるべきだと思います。ファンサービスやタニマチさんたちとの付き合いにも、積極的に取り組んでもらわなければなりません。また、最新のスポーツ科学の知識も取り入れて、相撲という競技の指導を、より合理的なものにしてほしいと願います。そういうことができる親方がまだ少ないので、指導者としての振分親方には、そうした役割を担ってほしいと思うのです。競技としての相撲の技術は、振分親方に聞けと言われるような相撲博士を目指してください。母校の日体大の大学院で学び直すのも良いでしょう。自分でとる相撲と、他人に教える相撲では、勝手が違うはずです。親方修行には、力士としての心技体の整え方を教える総合的な指導方法の習得が欠かせません。これまでの経験だけでは不足ですから、大相撲の外にも目を向けて貪欲に勉強してほしいと思います。

 

散文化する短歌

 日経新聞の歌壇を見ていると、短歌らしくない散文そのものが、かなり選ばれています。短歌の概念が変わってきたということなのでしょう。俵万智さんが登場した時代は、短歌がポップなニューミュージックのような感覚を取り入れたと評価して、進歩を感じていたのですが、今の新概念の短歌は、60代の人間としては、ついていくのが難しいと感じます。三十一文字の中で、何がどうしてどうなった、なぜ心が動いたのかというように、受け取る側に理解させ、共感を得るのが短歌の特長だと考えていましたが、それも、最近の作品では、裏切られることが多いと感じます。一体、どういう状況なのかさえ、不明瞭な作品も選ばれているからです。だから何が言いたいのですかと、作者に聞きたくなってしまうのです。作者の年齢は分からないのですが、内容から判断すると、年配の投稿者が多いようにも感じます。圧倒的に、青春の葛藤や恋愛の苦悩をテーマにする歌が少ないからです。短歌の進歩があるとすれば、若い人材がそれを担うでしょうが、歌壇に投稿するのは、高齢の暇人ばかりになっているのでしょうか?散文的な短歌の中に、進歩の兆しがあるのかもしれませんが、短歌という定型詩が崩壊してしまいそうで不安です。例えれば、散文化した短歌は、ヘタウマの漫画のようなものでしょうか?

 

2024年9月28日 (土)

除目に司得ぬ人の家

名誉の値段

 旭川市の女子中学生いじめ自殺事件に関連して、無関係の男性(旭川市在住)が加害者であると虚偽の内容をSNSで発信した者に対して、旭川地裁は、16万5千円の支払いを命じました。名誉を侵害する行為ですから当然ですが、この金額は妥当でしょうか?いじめ自殺事件の加害者だという虚偽の情報が広がれば、地域社会の中で、どれほど精神的に苦しい状況に追い込まれるか、想像がつきません。加害者ではないということを自身で積極的に証明することは非常に難しいからです。その意味で実に悪質な行為です。それにしても、その不法行為の代償が、たったの16万5千円とは、何と名誉の値段が安い国でしょうか?請求額の10分の1しか認めなかった理由が知りたいところです。これほど名誉の値段が安ければ、苦労して裁判で勝っても十分な代償を得られないということになります。これが我が国の常識だとすれば、虚偽の情報を流した者の勝ちだと認めているようです。世の中、おかしくないでしょうか?

 

仮設住宅の浸水被害

 能登半島地震の被災者が住む仮設住宅が、豪雨による浸水被害に見舞われました。平地が少ない能登では用地確保が難しいために、浸水想定区域と知りながら、仮設住宅を建設したそうです。居住者は、1年に2回も住家を追い出される形になり、精神的なダメージが大きいことでしょう。今回のような豪雨災害は、それほど珍しいものではなくなりました。全国で安全な場所はないと思います。浸水想定区域に仮設住宅を建設することは、今回のようなリスクを覚悟しなければならないでしょう。輪島市の復興はさらに遠のきました。再び豪雨が襲えば、繰り返し浸水被害を受けると言うのでは、あまりにも気の毒です。結局、用地がないから仕方がないで済ませると、こういうリスクが現実にあるということを、石川県の人は、身をもって知ったということになります。岸田総理は、アメリカへ卒業旅行に出かけていました。外交も大事でしょうが、最後まで、庶民の感覚とはズレた政治家でした。去る者には餞の言葉をかけるのが礼儀ですが、彼に対しては、そういう気にさえなりません。能登の人たちにも、恃むに足りぬ存在としか映らなかったでしょう。

 

捜査機関による証拠捏造

 袴田事件の再審裁判(静岡地裁)は、有罪の中心的な証拠とされた5点の衣類について、捜査機関による捏造だと認定しました。1966年の事件なので、今は、捏造に手を染めた警察関係者は、この世にいないかもしれませんが、冤罪を引き起こしたのは、彼らの違法行為です。厳しく断罪されなければなりません。小説ならともかく、現実に、警察関係者がこのような違法な捜査を行っていたことは驚きです。裁判でも、そんなことは想定できないことを前提に、動かぬ証拠として、捏造されたものを扱ったのだと思います。まさかそんなことはないという想定が間違いだったことになります。警察関係者は、今も、黒いものでも白、白いものでも黒にできると平気で考えているのでしょうか?袴田事件の捜査は、過去の話ではありますが、捏造によって、無実の男が死刑囚として長年収監されることで人生を奪われて、親族が世間の白い目に晒され続けたのです。真実にたどり着くまでに58年間を要するなど、この国の正義は、警察関係者の捏造によって捻じ曲げられてきたのです。組織的な違法行為が二度と起こらないように制度設計することが、政治の責任だと思います。

 

2024年9月27日 (金)

験者の物のけ調ずとて

なりすまし詐欺の時代

 AIによる精巧ななりすまし動画の作成が可能になっています。有名人を騙った投資詐欺でかなりの被害が出ていますが、なりすまし動画を使うことができれば、詐欺の道具として非常に強力なものになります。そうした詐欺が行われないように、いわゆるプラットフォーマーに偽の動画を即座に削除する義務を負わせるなどの措置を取るべきではないでしょうか?そもそもAIによる偽の動画の作成は現行法でも違法だと思いますが、より明白に取り締まりができるように新規に立法すべきだと思います。詐欺目的だけでなく、個人の評判や信用を落とす、政治的な扇動を行うなどの目的もあり得ます。なりすましのリスクが高まっているので、動画の真贋を簡単に見分けられるソフトの開発提供も必要だと思います。

 

郵便料金の値上げ

 10月から、ハガキが63⇒85円、封書が84⇒110円に、値上がりします。あまり郵便を利用することがありませんが、笑点収録参加などで、ハガキによる応募が必要です。恐らく、ハガキにすることで、ネットによる場合には膨大になりすぎる応募数を抑制しているのでしょう。今回の値上げ幅は、かなり大きいのですが、それでも、2026年度以降は、黒字化は見込めないとのことです。2023年度の赤字は、896億円にも上ります。更なる値上げをしていけば、利用の縮小傾向を促進してしまうでしょう。20世紀には、年賀状のやり取りが大きな需要でしたし、旅先からハガキを出すというようなコミュニケーションにも意味がありました。戸籍謄本を取り寄せるのも封書の往復が必要でしたし、季節の贈答の際にもお礼の挨拶を郵便で行っていました。そうした風習も廃れ、ICTによる通信に切り替えられてきたので、郵便への需要が減少するのは当然のことです。これからも値上げが続きそうです。宅配便のように、目的地によって料金が変動することも、やむを得ないのではないでしょうか?

 

口上の言い間違え

 大関大の里関の誕生という晴れの舞台で、大の里関が口上を間違えている映像が繰り返し流れていたのには、些か残念な思いがしました。大関に推挙されたのですから、「謹んでお受けいたします」と言わなければなりません。「謹んで申し上げます」という口上は、ありえないのですが、間違ったまま何度も地上波で放送されていました。間違ったことは仕方がないので、もう一度、やり直して、編集してもらうべきでした。二所ノ関親方も、相撲協会からの使者役の親方も、周囲にいたはずの報道陣も、誰も気づかなかったのでしょうか?大の里関は、緊張のあまり舞い上がっていたのでしょうから、こうした間違いが起こるのは仕方がありません。放送の際には、正しい口上が流れるように、周囲が配慮してあげるべきなのです。大相撲の世界には、その程度の知恵のある人もいないのでしょうか?

 

2024年9月26日 (木)

あらぬよしなき者の名のりしてきたる

スポーツと遺伝

 名選手の子どもが一流になれないというケースはよくあります。プロ野球でも、子どももスター選手になった例はほとんど聞きません。最も有名な選手の一人である長嶋茂雄さんと息子の一茂さんを思い浮かべると、体という点では、ほとんど遜色がないように見えます。茂雄選手は、身長178㎝で、プロ野球の選手としては小柄な方と言って良いでしょう。実働17年間で、2471安打、444本塁打、1522打点を上げており、生涯打率は305です。巨人の黄金期V9時代の中心選手だったこともあり、MVP5回、首位打者6回、本塁打王2回、打点王5回に輝いています。ちなみに新人王も獲得しました。入団当初からスターだったのです。一茂選手は、ヤクルト⇒巨人と渡り歩きましたが、実働は7年間です。通算、161安打、18本塁打、82打点で、生涯打率は210です。名選手の遺伝的形質を受け継いでいるはずで、同じように立教大学からプロへ進んだので環境も良かったはずですが、父のような選手にはなれませんでした。もちろん、子どもがプロ選手にすらなれない人が大半なので、一茂選手が典型例だとは言えませんが、遺伝というものは、つくづく気まぐれだと感じます。彼は、プロレベルの大打者になるために必要な何かを、父親からもらえなかったことになります。天才の血筋は受け継ぐことができても、極めて稀なる才能は一代限りのものだということです。子どもに親は選べませんが、親にも子どもがもって生まれる形質は選べません。親ガチャで外れだというなら、子ガチャにも外れが少なくないのです。

 

ヘルメットの着用

 自転車利用者のヘルメット着用が、少しずつ増えてるように感じます。特に、13歳未満の子どもの頭を守ることは重要です。ヘルメットの非着用は、致死率が3倍になるだけでなく、頭部への打撃は後遺症も懸念されます。秋の交通安全運動でも、自転車=ヘルメット着用というキャンペーンが展開されています。自転車は徒歩の延長のように考えている人も多いでしょうが、11月からは、飲酒運転に罰則が適用されるようになります。3年以下の懲役または50万円以下の罰金です。スマホを見ながらの運転も、罰則の重さは違いますが、処罰対象になります。こうした認識がない自転車利用者も多いのではないでしょうか?最近気になるのは、電動キックボード(Luupなど)が普及して、大半の利用者がヘルメットをせずに車道を運転していることです。事故現場を見たことはありませんが、時速20キロでも自動車と接触すれば、間違いなく放り出されて大怪我をすると思います。頭部が守られていない場合は、非常に危険です。利用者は不安を感じないのでしょうか?あれを頻繁に借りる人は、折り畳み型のヘルメットを常に携帯しているべきだと思います。

 

十両昇進力士たち

 九州場所で、十両に昇進する力士が発表されました。新顔が、若碇さん(甲山親方の息子さん。)、安青錦さん(ウクライナ出身、安治川部屋の関取第1号。)、琴手計さん(改め琴栄峰関。琴勝峰関の弟。)です。おめでとうございます。いずれも新進気鋭の期待の星です。1年以内に、大関に昇進した大の里関(24歳)に挑戦しているかもしれません。栃大海さん、千代丸さん、生田目さんは、帰り十両ですが、特に生田目さんは、若者グループの一人です。今後の大相撲を牽引するのは、豊昇龍関、大の里関の世代(24~25歳)ですが、それを追いかけるのが、熱海富士関、伯桜鵬関、木竜皇関のほか、今回十両に上がる力士たち(20~22歳)になります。いよいよ、新旧交代が十両以上に及んできました。貴景勝関、妙義龍関、碧山関の引退は、それを象徴しています。しばらくは、横綱を目指す大の里関にスポットライトが集中しますが、彼に対抗しうる力士が誰になるのか、この1~2年で明確になるので見守りたいと思います。今なら、豊昇龍関が最有力候補ですが、平戸海関、尊富士関が急浮上する可能性もあります。もちろん、霧島関や若隆景関も大関を狙うでしょう。さらに、大の里世代を追う力士が若い世代から頭角を現すはずです。先行して出世している熱海富士関らも、うかうかできません。さらに新十両を決めた力士たちに追随しようと狙っている幕下の力士たちにも注目です。15枚目以内の競争は、幕内以上に厳しいものがあります。25歳の中村部屋の宮城さんは、上がっていければ、動きのよい小兵力士として人気が出ると思います。九州場所でも、ぜひ頑張ってください。関取まであと一歩です。

 

2024年9月25日 (水)

家のうちなる男君の来ずなりぬる

国立大学の東京圏からの移転

 自民党総裁選挙の中で、ある候補者から、移転話が出てきました。こうした提案は、シャボン玉のようなもので、現実の政策には結びつかないものなのだと割り切って、気にする人も少ないとは思います。しかし、幾つも大臣を務めた政治家が、軽々しく、こういう馬鹿話をして良いとは思いません。例えば、東京大学の本郷キャンパス(附属病院を含む)を、どこに移転させるというのでしょうか?インフラを含む移転費用が膨大で、とても財政に余裕がない国にできるとは思えません。大学の教職員にもメリットがなければ、移転に賛同を得られないでしょう。説得材料はあるのでしょうか?東京教育大学を筑波大学に移転・発展させるプロジェクトも、一筋縄ではいきませんでした。今は、紆余曲折を経て、何とか形になっているとは思いますが、大規模な総合大学の移転は、少なくとも安定するまで30年以上を要する大事業です。各都道府県には、国立大学が存在しており、東京圏からの移転は、既存の地方国立大学にも配慮が必要です。あるいは、東京大学柏キャンパスのように、新たな研究拠点を地方に創設するという話になるのかもしれません。それなら、大学側にもメリットがあり、予算さえつければ実現できるかもしれませんが、立地に関しては、どこでも可というわけではなく、東京からのアクセスが問題になるでしょう。いずれにせよ、国庫からの相当の負担が避けられませんので、新規に科学技術系の大学院大学を創設した例(北陸、奈良、沖縄)を用いて、地方創生への貢献度を検証してからでも遅くはないでしょう。なお、行政機能の地方移転については、やっと実現したのが、文化庁(一部)の京都移転だったことを想い起こしてほしいと思います。大山鳴動して鼠一匹とは、こういうケースを言うのではないでしょうか?

 

遺伝と教育

 安藤寿康「教育は遺伝に勝てるか?」(朝日新書)は、行動遺伝学の専門家による著作で、結局のところ、教育は遺伝に勝てないという内容です。ただ、ヒトは教育する動物であり、知識を学習により共有することで、生物として繁栄していると捉えています。したがって、遺伝が世に出るためには、教育が欠かせないとも述べています。そうだとすれば、教育と遺伝に勝ち負けはつけられないというべきでしょう。オオカミに育てられた子どもは、言葉を話すことができないわけですから・・・。親にできることについて、著者は、双生児家庭の協力を得て実施した調査結果から、次の項目が学力成績に影響を及ぼすとしています。読み聞かせや読書の機会を与える、勉強しなさいと言わない、体罰を加えない、言いつけに従わせようとしないの4点です。磯野家のカツオ君が、学校の成績が悪いのは、これらが満たされていないからでしょうか?もう一つ興味深いのは、15歳以上になると、環境よりも遺伝が犯罪行為(窃盗や性犯罪)の支配的要因になるという知見です。要は、子育て万能主義には立てないというわけです。それにしても、犯罪者の子どもは、遺伝的に犯罪者になりやすいということなら、子どもは本当に気の毒です。最後に、自由で平等な社会が実現すれば、遺伝による格差が如実に表れるという指摘に注目したいと思います。私たちは、経済的な格差が種々の格差の原因となるので、それを緩和するための適切な社会政策が必要だと考えていますが、自由で平等な社会に近づくほど、遺伝的な格差が表面に浮上するというのは、いささか厄介な問題です。学業成績は最も遺伝率が高いとされるので、メリトクラシーを徹底すれば、遺伝による格差は正義だと認めることになります。そのような考え方は、ヒトラーに追随するような思想で、極めて危険だと思います。そうだとすれば、多少は不自由で不平等な社会の方が、健全性を保てるという矛盾した結論に行きつきそうです。

 

高齢者の身元保証

 65歳以上で配偶者など3親等以内の親族がいない人は、2050年には、448万人に達するとの推計が公表されました。身元保証人がいない人が増えれば、身元保証のサービスを提供する団体への需要が増えます。医療や介護のサービスを受ける場合、身元保証人がいない場合に、受け皿となる団体と契約することが経済的事情でできない人に対して、どのような公的な仕組みを作るのかという課題がありそうです。親族がいても身元保証はしたくないという場合もあり、制度設計は簡単ではありません。高齢者全体の11.5%が純粋なお一人様で、この課題を基礎自治体で解決しようとすれば、大きな行政事務負担増になるでしょう。自助や公助による解決が難しいとすれば、無縁社会の危機を共助の復活によって乗り切れるでしょうか?

 

2024年9月24日 (火)

人の國よりおこせたるふみの物なき

同化しない移民

 ジョーンズ「移民は世界をどう変えてきたか」(慶應義塾大学出版会)は、移民が受け入れ国に同化するという見方は神話であるとして否定しています。実際には、移民は独自の文化を捨てることなく、受け入れ国の文化も移民が持ち込む文化に影響を受けるというのです。これを著者は、スパゲティ理論と称していますが、確かに食文化が典型例です。また、この書籍で紹介されている東南アジアにおける華僑が所有するビジネスが、非常に大きいことに驚かされました。例えば、マレーシアでは、中国系の人口は33%ながら、GDPでは60%を占めています。タイでは10%で50%、インドネシアでは4%で50%、フィリピンでは2%で40%という塩梅です。東南アジアの資本主義の成功は、著者が指摘するように、華僑の活躍によると考えても良いでしょう。こうした華僑の実績をもとに、著者は、貧困に終止符を打ちたいなら、より多くの移民が資本主義の道を進むようにするという方法を採るべきだと示唆しています。アメリカへの移民の子孫たち(第4世代)の文化的な同化に関する調査結果も、興味深いと思います。同化率が高かったのは、ドイツ系で79%、以下、アイルランド67%、イギリス67%、メキシコ58%、イタリア58%、スカンジナビア54%、ポーランド38%となっています。このように、移民の子孫が完全に同化するということは期待できないのです。著者は、移民によって持ち込まれる文化の多様性が、短期的なリスクとともに、卓越性の見返りをもたらすと主張しています。日本は、基本的に移民の受け入れに消極的ですが、根本にあるのが、日本人の文化的多様性への寛容度が極めて低いことです。それによって失っている機会にこそ目を向ける必要があると思います。

 

新旧交代の秋場所

 大の里関が2度目の優勝を成し遂げ、大関昇進が確実視されます。一方で、4度の優勝を飾り、横綱に挑戦し続けた貴景勝関が28歳の若さで引退しました。故障していた首の状態がよほど悪いのでしょう。今後は、湊川親方として指導者の長い道を歩むことになります。大の里関は、怪我さえしなければ、恐らく来年のうちには、横綱へ昇進するでしょう。満身創痍の横綱照ノ富士関に、漸く後継者が誕生することになります。そうなれば安心して引退することができるでしょう。次に大関に挑戦するのは、霧島関、若隆景関に加えて、十両優勝した尊富士関あたりだと思います。若手の王鵬関は三役に上がる力があることを見せましたが、平戸海関、熱海富士関は、もう少し時間がかかりそうです。他方で、旧世代の正代関、宇良関らが活躍しており、玉鷲関、佐田の海関らのベテラン勢もまだまだ元気です。新勢力が台頭しているものの、旧世代の力士も個々に健闘しているという状況です。ただ、怪我をして休場となった力士もあり、32歳を過ぎると体力的に厳しくなる実態が分かります。高安関は、優勝争いに加わりましたが、15日間続けて万全の状態では相撲を取れない場所が続いています。幕下上位では、安青錦さんが目立ちました。九州場所では十両に上がって、更に上を目指すことになるでしょう。十両を簡単に通過するならば、潜在的な大関候補になると思います。立行司の木村庄之助さんが千秋楽で引退しました。初場所の親方トークに登場してほしいと願っています。長年、ご苦労様でした。

 

元旭日松関の引退

 桐山⇒振分親方として、相撲協会の業務面を支えていましたが、借りていた親方株を返さなければならなくなり、協会から退職することになりました。誠に残念です。営業のセンスがあり、トークが面白く、国技館に行ったことがある人ならば、彼の仕事ぶりを高く評価してくれていたと思います。どんな組織にも、こういう陽気な口八丁手八丁の人材が必要です。まともな組織ならば、彼のような人材を、つまらない理由で退職させるような馬鹿なことはしないでしょう。親方の中で、トップクラスに役に立つ人間を辞めさせるとは、相撲協会の上層部の無策には、開いた口が塞がりません。定年退職後の参与が親方株を手放さないことが、株の需給関係を乱していることが明白ですから、参与になったら親方株は協会の管理にすればよいと思います。それが7~8ほどありますから、元旭日松関のような役に立つ人材には、その株を貸せばよいのです。相撲の指導者に関しては、きちんとした制度を作るべきですが、当面の制度内の運用の改善さえもしようとしない執行部には、失望を禁じえません。親方の勤務評定さえ行っていないのでしょう。元旭日松関のような人材は、協会の外でも成功をつかめるでしょうが、相撲協会という組織のダメさ加減が顕著に表れた突然の引退でした。貴重な人材が失われて、本当にがっかりです。

 

2024年9月23日 (月)

博士のうちつづき女子生ませたる

県知事の不信任決議

 兵庫県では全会一致で不信任決議案が可決されました。知事が辞職するのか、議会を解散するのかに注目が集まっていますが、常識的な行動が期待できないと考えれば、あくまで自分が正しく、議会の判断が誤りだと言うためには、議会の解散しか選択肢はないと思います。その場合は、知事選で支援してくれた「維新」の得票には、大きなマイナスとなるでしょうが、それも構わないと思えば、初めての議会解散という法律に認められている知事の権限を行使することに、むしろ栄誉を感じるのではないでしょうか?併せて、辞職して、知事としての正統性を県民に問う可能性もあると思います。単に、知事の任期を伸ばしたいなら、辞職をせずに、県議会が再び不信任決議を行い失職するのを待つという選択肢もあります。ただ、知事と県議のダブル選挙に持ち込んだ方が、自分の正統性を主張するには好都合だと思います。いずれにせよ、自分が正しいという思いが、どこまで強いのかによると思います。正式な世論調査とは言えませんが、地上波が行っている街頭でのアンケート調査では、知事を支持する県民の割合は、せいぜい1割で、残りの9割は、即辞職すべきだとの強い不支持です。県知事として、討ち死に覚悟であくまで戦うにしても、まったく成算がない選択だと言えるでしょう。戦うにしても、白旗を上げるにしても、もう格好良い最後にはなりません。今や、斎藤という個人の性格次第です。四面楚歌で、既に玉が詰んでいる状態で、まだ自分がしてきたことは正しいと主張するエネルギーが残っているのか、最後まで見届けたいと思います。今回のケースは、地方自治に関する教育研究の素材として大変興味深いものです。無責任な暴論を吐く常識のないコメンテーターは無視して、日本国民ならば、重大な関心をもって、今後の推移を見極めるべきでしょう。

 

ぺロブスカイト型も中国製

 日本発の発明ですが、量産では中国が先行しているとの報道がありました。こういう失敗を何度繰り返すのでしょうか?これは、科学技術で先行しても、生産力で圧倒されて市場占有されてしまうといういつものパターンです。その昔、東北大学で、液晶テレビの最新技術を見せてもらったことがありました。当時は、まだ薄型テレビはなく、この技術で世界のテレビを席巻できるなら、莫大な国富を生み出すだろうと、捕らぬ狸の皮算用をしたことを思い出します。確かに、シャープの世界の亀山モデルなど、日本の家電メーカーは一時的には収益を伸ばしましたが、中国が直ぐに技術的に追いついて、生産力を背景に価格競争で、日本を追い越していきました。似たような話は、太陽光発電パネルでも、起こりました。科学技術で先行しても、生産力で歯が立たない状況となり、世界の市場を占有されてしまうというパターンです。ペロブスカイト型の太陽光発電では、過去の轍を踏まぬように、大量生産設備の整備に国家的な投資を行って、世界の市場を一定程度は取れるように、何としても頑張るべきでしょう。技術で先んじても、商売で負けては、何も残りません。

 

体験格差

 経済的な格差によって、サッカーがしたくてもできない子どもがいることについて問題提起しているのが、今井俊介「体験格差」(講談社現代新書)です。考えてみれば、昔から、すべての家で子どもに平等に機会が与えられてきたわけではありません。モノだけでなく、コトについても経済格差が反映しているのは事実です。今さら子供のころの体験に格差を指摘しても、新鮮味はないのですが、著者は、体験の費用を子どもに対して補助する、体験の場となる公共施設を維持し活用するなどの提案をしています。そうしたことは、主に地方自治体で既に行われていますが、あまねく子どもたちに体験が行き渡ることは難しいでしょう。スポーツでも、芸術でも、本格的にやろうとすれば、かなりお金がかかります。レベルが上がるほど、金額も上がります。学校の部活動や校外の行事は、格差を緩和するための機会の提供です。私立学校は、その部分を充実させて、競争力を高めています。もちろん、親にとって、お金や手間がかからないわけではありません。結局、体験格差を埋めるには、基本的に学校での機会を充実させることが早道ですが、その指導を教員に頼ることはできなくなりつつあり、公的資金で社会での安価な受け皿を構築することも難しいでしょう。優先順位としては、まず、学校教育に直接かかわる部分について、公的資金を投入することで、経済格差に由来する教育格差を埋めることが先だと思います。

 

2024年9月22日 (日)

晝ほゆる犬

引揚者の神様

 城内康伸「奪還」(新潮社)には、松村義士男という一介の無名の人物が、ロシア軍の支配下に置かれた敗戦直後の北朝鮮から6万人の難民を脱出させた埋もれた歴史を、掘り起こしています。松村さんは、戦時中は、危険人物(アカ)と扱われていた人ですが、38度線から南下できずに飢餓や病気に苦しめられていた日本人を救うために、ロシア軍などと水面下の交渉しながら、交通手段を準備し、38度線を獣道を作りながら越境させ、海を越える船の手配をするなどして、引き揚げを実現しました。これは、純粋に民間人の力で成し遂げられた快挙です。彼がいなければ、公的な引き揚げを待つ間に、どれほどの犠牲者が出たか分かりません。しかも、彼は、この引き揚げに関連して、個人的に多額の借金(現在の貨幣価値で1600万円)をして、帰国後も、その返済で苦しんだのです。結局、内縁の妻が残債を返したとのことです。日本政府は、見て見ぬふりをするだけでした。実におかしなことです。敗戦に伴う棄民の事実を表に出したくなかったのかも知れません。帰国後の半生は、惨めなものだったのかもしれませんが、松村義士男という人物が成し遂げた日本人6万人の奪還は、歴史や道徳の教科書に載せる価値のある事実だと思います。名前の通り、彼は義の人でした。

 

正義の味方

 佐藤誠「ホンボシ」(文藝春秋)には、いわゆる木原事件に関する捜査のプロとしての著者の見解が記されています。権限を持たない警察庁長官が、自殺での処理を正統化する発言をするなど、極めて異例の事件です。死んだ男の妻は、事件後、自民党の衆議院議員の妻になっています。著者の見立ては、現場の状況から、力の弱い妻による犯行ではなく、別の男が実行犯であるというものです。ただし、妻は、自殺を偽装するための工作を行っている疑いがあります。現場に入った大塚署の初動捜査ミス(防犯カメラ映像の収集なし、遺体の検視なし)を指摘して、「怠慢」とまで表現しています。自殺で処理した事件が、12年後に、警視庁によって掘り起こされて、再捜査されますが、国会が始まる直前に、唐突に捜査終了が宣言されます。自殺でケリをつけたいとの思惑を持った上からの圧力が強く疑われます。著者は、東京地方検察庁に陳述書を提出しましたが、警視庁は短期間に事件性なしと判断しました。いかにも早く火を消したいという対応です。週刊文春の報道によって、この事件は世間の注目を浴びました。2006年4月の事件なので、新たに真実に迫る証拠を集めるのは難しいでしょうが、政治家の妻への疑惑がありながら、中途半端な形で捜査が打ち切られたという事実は、政治不信、警察不信の大きな火種になったと思います。少なくとも警察は、12年後の捜査を最後まで続けて、著者が指摘しているような疑問に答えを出すべきでした。もう、警察には真実はどうでもいいのでしょう。本人だけでなく、遺族も犠牲者です。現場の警察官の士気も下がるでしょう。いわゆる木原事件は、初動捜査の失敗、再捜査の打ち切り、真実の探求の放棄を含め、警察の黒歴史そのものです。

 

日本人が安心して住めない中国

 深圳で、日本人学校へ親とともに通学中の男児が、刺殺されました。6月に蘇州で同様の襲撃があり、子どもを守ろうと抵抗した中国人スタッフに犠牲が出たばかりです。中国外交部の報道官による会見を見た日本人の多くは、「どこの国でも起こりうる事件」という発言には、違和感を持ったと思います。どこの国で、いつ、同様の事件が起こったというのでしょうか?なぜ、中国で、再び日本人学校の子どもが襲われたのでしょうか?中国には、日本人の家族が安心して住める環境は、最早ないと感じます。深圳での事件は、柳条湖事件から93年の記念日に実行されたものです。国辱の日として、反日感情が高まる日を選んで行われた犯罪ですから、単なる「個別の事件」とも言えません。犠牲になった男児は、日本人の父と中国人の母から生まれた子どもでした。それを知っての犯行だとは今の時点では思いませんが、過剰に愛国的な動機の皮を被った反政府目的の暴発的な行動のようにも見えます。中国政府による中国共産党の指導を正統化するための愛国教育は、抗日反日というピースが欠かせません。そうした洗脳教育の結果が、日本人の安全が保たれない環境・土壌を作っていると思います。同様の襲撃事件がこれからも起こる可能性があるので、中国在住の日本人は、家族の安全を確保するために、彼らを一時帰国させるなどの方策を考えるべきでしょう。中国政府が日本人家族を本気で守ってくれるとは思えません。中国政府への不満のはけ口にされ、家族が殺されては適いません。なお、中国人すべてを敵視するのは間違っているので、この事件を、日本対中国という対立の構図だと早とちりしないことが大切です。

 

2024年9月21日 (土)

内侍のすけなどにてしばしもあらせばや

ポケベル型の殺傷兵器

 イスラエルがヒズボラ戦闘員への攻撃に、通信機器に爆薬を仕込んで遠隔で爆発させるという新しい手段を使った模様です。ヒズボラが調達した機器が納入される前に仕込んでいたわけですから、スパイ映画さながらの新兵器の登場です。私たちの生活の中に、ハイテク製品が溢れていますので、あらゆる機器に危険な仕込みがないかをチェックするのは、事実上不可能です。ブラックボックスになっている機器の安全性が保障されないわけですから、もしも日本でこうした事件が起これば、全国がパニック状態になるでしょう。地球環境を守るために増え過ぎた人類を削減すべきという特異な思想を持ったテロリストが、世界中にスマホを無料でばらまいて、一挙に大量殺戮を企てるというような映画に出てきた空想的なストーリーが現実味を帯びてきます。ガザでのパレスチナ人の殺戮に関して、イスラエルは明らかにやり過ぎていますが、兵器開発の面でも新たな危険な領域に足を踏み入れています。これ以上ダークサイドに落ちてしまえば、正真正銘のテロリスト国家になりかねません。

 

iPhone最安値国

 海外への転売目的で新機種を大量に購入しようとする反社会的集団も現れてますが、要は、日本での販売価格が安いことが背景にあります。iPhone16の最安値機種の価格は、世界平均よりも2.2万円安いのです。中国、タイに続いて、世界で3番目に安いのですが、これでも、15の時に比べれば、少しは高めに価格設定がなされています。世界の物価水準を比較する際に、Big Macの価格が引用されますが、ハイテク機器に関しては、iPhoneが良い比較材料になりそうです。国際的な賃金水準の低下が、国内のiPhone価格に反映されていると思います。平均的な日本人は、失われた30年で、確実に貧しくなりました。インバウンドによる消費の拡大を喜んでばかりいられません。iPhoneの新機種に手が出なくなる人も増えて行くでしょう。

 

学校のための著作権

 西田光昭「学校のための著作権マニュアル」(教育出版)は、ケース別の基本的な対応についてのガイドとして、便利だと感じます。学校教員の方々は、児童生徒及び保護者に対するサービス向上のために行う行為については、著作権を軽視する傾向にあるので、それを是正する意味もあると思います。幾つか気づいた点について以下に記しておきます。まず、授業目的公衆送信補償金制度に関しては、すべての教育委員会がSARTRASと契約しているわけではないことに注意が必要です。契約していなければ、他人の著作物を許諾なく授業において公衆送信することはできません。補償金制度なので、費用が掛かるので、効果との兼ね合いで制度を利用しない教育委員会もあるのです。次に、職務著作という制度はありますが、公立学校は法人格がないので、設置者の教育委員会が著作権者ということになるはずです。学校が権利者であるという記述は、不正確ではないかと思います。実際は、権限を学校長に降ろしている可能性もありますので、法律論と実務面の両方に配慮した記述にすべきでしょう。第3に、肖像権に関しては、デジタルアーカイブ学会が、実務的なガイドラインを作成しているので、教育委員会として処理方針を決める際には、参考になると思います。過去の教職員や児童生徒が被写体になっている写真などを、学校の歴史を紹介する際に使う場合には、肖像権の処理が必要になるからです。以上のように若干の補正があるべきだとは思いますが、こういうマニュアルは、少なくとも各学校に配布して、中心となる教員にはきちんと勉強してほしいと思います。

 

2024年9月20日 (金)

我は三巻四巻をだにえ見はてじ

SHOGUN

 俳優の真田広之さんが主演男優賞に輝き、プロデュースも手掛けて、作品賞も獲得しました。時代劇が受賞したのは快挙です。真田さんが正統的な時代劇をアメリカで制作したことには、心から拍手を送りたいと思います。この快挙は、真田さんの栄誉です。彼を信頼して、日本から専門スタッフらを招聘するなど、投資を惜しまなかったディズニーの関係者にも感謝したいと思います。その上で、この受賞で日本や時代劇が認められたような錯覚に陥らぬよう、戒めるべきだと思います。もう、日本では、時代劇は、コンスタントには制作されていません。NHKの大河ドラマも、製作費や撮影時間に制約があるためか、正統的な所作・台詞、衣装・化粧・道具などへの拘りは、ほとんど見られません。「光る君へ」でも、いつ牛車が出てくるかと楽しみにしていますが、今のところ影も形もありません。時代劇の伝統が残っているとしても、最後の灯が消え残っているような状況でしょう。それらの文化資源を動員して、アメリカでSHOGUNを撮影したわけで、これによって時代劇が復活するわけでもありません。10年後にも時代劇を日本で制作できるでしょうか?私の個人的な感覚では、2002年の山田洋二監督作品「たそがれ清兵衛」(松竹)で、時代劇映画は終わっているというのが偽らざる気持ちです。あれから、もう20年がたちました。今撮影できるのは、時代劇の皮を被った現代ものでしかありません。俳優さんにも訓練の機会がないので仕方がないのです。

 

王座戦第2局

 藤井7冠が先手で、角換わりの戦型になりました。75手目までは、前例がありましたが、永瀬9段が、9五歩と新手を繰り出しました。藤井7冠は、長考の末、銀を見捨てて、端攻めを緩和しつつ、4六香という切り返しを行いました。この決断が、勝敗を分けたようです。AIによれば、永瀬9段が玉を早逃げする、人間には指しにくい手順を選ばぬ限りは、藤井7冠が有利になっていく状況でした。その後、藤井7冠は、飛車取りを無視して、4四歩と玉に圧力を掛けて、2五角打で勝負を決しました。永瀬9段の研究手への対応を約2時間半の長考で考え抜いて、切り返しの勝負手で反撃した藤井7冠の対応力の高さが光りました。もしも、同歩と取っていれば、Abema解説の遠山6段が述べていたように、永瀬9段が一方的に攻める展開になったはずです。罠に嵌らなかった藤井7冠のリスク管理が見事でした。永瀬玉を左右から包み込むように寄せて行った藤井7冠の終盤力も流石でした。やはり、藤井7冠は完全に復調していると感じます。

 

知床事件の捜査

 海上保安庁が、事故から2年半を経て、やっと船の運航会社の社長を、業務上過失致死罪で逮捕しました。運航と事故との因果関係、事故の予見可能性、事故回避の可能性が、焦点になるとのことで、それぞれについて、慎重に吟味していたために、これほどの年月を要したものと考えますが、それにしても、判断が遅すぎます。観光船が沈没して、26人の命が失われた大事故です。運航責任者に刑事責任がないなどということになれば、観光船には乗るなら死ぬことを覚悟でという話になります。有り得ないでしょう。運輸安全委員会が最終報告書を提出してから、1年後にやっと逮捕というのは、いかにも海上保安庁の自信のなさが表れているのではないでしょうか?この7月に、遺族からの損害賠償の提訴も行われています。そうした状況を踏まえて、動かざるを得なかったのではないかと勘繰られても仕方がなさそうです。世間常識では、社長さんが有罪になるのは当然だと受け取られていますが、海上保安庁のこれまでの動向からは、不安です。

 

2024年9月19日 (木)

その人のよみたる歌はいかに

基準地価上昇

 国交省の基準地価は、前年比で、住宅地が0.9%、商業地が2.4%の上昇となりました。上昇は、3年連続です。上昇は歓迎すべきことですが、中身を見ると、諸手を挙げて喜ぶわけにもいきません。東京都は、住宅地で4.6%、商業地で8.4%の上昇と、全国の中で突出しています。特に、都心部への投資の集中が顕著です。他に目立つのが商業地の上昇で、大阪府が7.3%、福岡県が6.7%、神奈川県が6.2%、京都府が5.7%の上昇となってます。海外からの投資を含めて、将来的に更なる上昇が見込めると判断されているのです。それにしても、地価の上昇率が大きく、円安を追い風に海外からの不動産投資が進んだことが分かります。3大都市圏以外では、沖縄県が、住宅地で5.8%、商業地で6.1%の上昇と、地価の値上がりが目立ちます。移住者の増加や県外からの観光投資が盛んであることが伺われます。全国では、基準地価の上昇が28、下落が29と、都道府県別に勝ち組と負け組が色分けされている状況です。自民党総裁選でも、一様に地方創生への取り組みという政治的意欲は語られますが、本気で取り組むというなら、震災後の地価下落が著しい石川県輪島市の基準地価を上げる方策を具体的に提示したらどうでしょうか?復興へのシナリオが不十分であることが、人口流出、地価の急落に繋がっています。地価の二極化が止められず、特に被災地が取り残されるようなら、全国的な上昇を悦ぶ気にはなりません。

 

東大の授業料値上げ

 現役の学生さんには、影響がないのですが、値上げに反対する学生がいるのが、よくある話です。東大の中で、値上げをしない場合に、別の収入を得る手段があるなら提案すれば良いでしょう。寄付を募集したり、事業で収益を上げたりすることは、そう簡単ではありませんし、やれそうなことは、もうやっています。授業料値上げ分に見合う文科省からの運営費交付金の増額があれば、メデタシですが、それも期待薄です。東大よりも財務的に苦しい国立大学が多いので、むしろ東大には我慢してほしい、自力で財務の安定を図ってほしいという声がありそうです。東大は、大学ファンドからの資金獲得も当然狙っていますが、これも、一度は失敗しており、二度目のチャレンジをするでしょうが、他大学との競争もあり、当選確実とは言えません。東大がこれまで長年にわたり授業料の値上げを回避してきたことが、実は、かなり無理をしていたとも言えます。人件費や物価の上昇を踏まえて、制度的に許される範囲で、授業料に徐々に転嫁するべきところを、先送りを続けてきただけで、以前の執行部の判断が正しく、今の執行部のそれがおかしいとするのは、不公平な見方でしょう。学生諸君には、東大における学習環境に照らして、どの程度の授業料が適正かどうか、世界の同レベルの大学との比較で考えてほしいと思います。大学の維持に要する費用をだれが負担すべきなのか、私学に通う同年代の学生との平等も考慮して、大局を踏まえた判断をしてほしいと思います。そのようなアプローチをすれば、答えは自ずと出ます。

 

リニア掘削調査容認

 静岡県は、、JR東海の掘削調査を、ついに容認しました。県知事の交代で、ようやくリニアの開発に対する障害が取り除かれたのは、ご同慶の至りですが、前知事の反対に正当な根拠があったのか、単に工事を遅らせるための屁理屈だったのか、いずれ明らかにすべきだと思います。県知事の反対で、その理由の正統性如何に拘わらず、リニアの開発が止まってしまうのは、民主主義国家の失敗の典型例ではないでしょうか?誰を知事にするかは、県民が決めればよいことですが、その人物の判断によって、リニアのような県域を越える巨大事業が事実上止められてしまうのは、政治システムの欠陥だと思います。知事の判断が結果的に正しければ良いのですが、単なる屁理屈だったとしたら誰が責任を取るのでしょうか?今回のリニアを巡る騒動を踏まえて、鉄道を含む国家的な事業に関する県知事の反対を凌駕する仕組みを行政プロセスに導入することを検討すべきだと思います。高い技術を持ちながら、リニアの実用化が遅れてしまったのは、国家的な損失です。静岡県とJR東海の問題に矮小化せず、政治システムの失敗に目を向けるべきだと思います。

 

2024年9月18日 (水)

古今の歌二十巻をみなうかべさせ給ふ

日本人の旅離れ

 海外渡航者はコロナ前の6割程度で、国内の宿泊旅行も前年割れが続いています。訪日外国人旅行者の増加と対照的です。Z世代の若者の57.3%が海外旅行に行きたいとは思わないと答えているのには、驚きました。やはり、円安が大きな壁になっているのでしょうか?30年ほど前には、国内旅行よりも海外旅行のコスパが良かった時代がありました。週末に海外へという人もいましたし、海外での買い物にはお得感がありました。初めて行く国には、大いに刺激を受けました。仕事を含めて40ヶ国ほど訪れましたが、実際に行ってみることで、脳が受ける情報量は恐らく100倍以上になります。音楽ライブと録音録画の違いに近いと思います。また、自分たちが子どもの頃には、兼高かおるさんの旅番組くらいしか、海外を紹介するものはありませんでした。今は、地上波で海外ロケ番組を見られるので、行ったような気になることは十分可能です。世界遺産などの映像を通して経験した気分が味わえれば、それで満足している人が多いのでしょう。私もよく旅番組を録画して観ています。この手軽さも旅離れの一因と考えられます。マチュピチュ遺跡は、世界遺産の中の白眉ですが、行くのが大変で、お金もかかるので、映像で十分だと考えている人も多いのです。海外留学の減少も、所得水準の低下、費用の高騰が、主な要因ですが、国力の低下が留学を減らし、留学の減少が国力を低下させるという相関関係があると思います。海外旅行も似たような意味で、民主主義の質の低下を招くと思います。円安は、気づかぬうちに、思わぬ弊害をもたらすものです。

 

ドリフターズ

 時々、TBS系で、「8時だヨ!全員集合」などからのコントの再放送がありますが、公開放送で、大掛かりな舞台装置を組んで、毎週、新しいコントを見せるという番組は、伝説的です。今は、とても企画が通らず、制作できません。テレビの力が非常に高かった時代のお化け番組でした。品が悪いとか、愚劣だとか、非教育的だとか、子どもも見る番組としては、大きな批判にも晒されましたが、視聴率は圧倒的でした。大衆が求める娯楽だったからです。令和の今、製作費の問題もありますが、作品のテーマや設定が不適切だとされて、この種のコントはもう制作できそうにありません。従って、昭和のコントは、空前絶後で、永遠に不滅であるわけです。ドリフのメンバーは、鬼籍に入った人も多く、寂しい限りですが、残してくれた馬鹿馬鹿しい笑いは、貴重な文化遺産です。これほど腹から笑える作品は、生まれそうにありません。特に、リーダーのいかりやさんが、メンバーにいじられるコントには、何とも言えない痛快さがあります。厳しい上司に対する細やかな復讐は、サラリーマンたちにも受けていたと思います。

 

読書なし6割

 文化庁が5年ごとに行っている調査で、1か月の読書がゼロだとの回答が6割超となっています。情報機器で時間を取られているのが主な理由です。文化庁は、必ずしも活字離れではないとの見方をしていますが、SNSで流れる情報を読書と比べるのは、雑草と作物を植物として同一視するようなものです。情報は玉石混淆で、ただ日々流れて行くものです。読書は、知識を得る、考え方を学ぶ、人生の糧にする、心を豊かにするなど、さまざまな効果がある行為です。たとえ、収監されている人間にも、読書の自由はあります。日本は、出版文化が高度に発達しており、自国語による読書の環境が最も整っている素晴らしい国です。そういう国でありながら、SNSで時間を浪費しているのは、機会損失の最たるものと言わざるを得ません。我が国の民主主義は、読書をしないような国民が増えれば、きちんと支えられそうにないと思います。6割がゼロは、十分な危険水域だと感じます。

 

2024年9月17日 (火)

わびくちをしがるもをかし

ジャック・アタリの未来学

 アタリ「教育の超・人類史」(大和書房)は、教育史から未来予測するという内容です。第6章は、1900~2022年で、すべての人が教育を受ける時代がタイトルです。アフガニスタンの女性などが、例外になるでしょう。日本については、「まもなく子供のいなくなる国の過酷な競争」というサブタイトルが付されています。過去の分析は、それほど目新しさはありません。未来に関する予測に面白さがあります。著者は、教育は反復練習や暗記によって知識を学ぶスタイルが数千年も続いており、学習に必要な時間は短縮されていないと指摘しています。著者の予測では、無知による蛮行(新興国やポピュリズム国家)、人工物による蛮行(インターネット社会)のいずれのシナリオも、学校の終焉へと繋がっていくと指摘しています。遠隔学習のためのインフラの整備、コンテンツの蓄積が進み、学習者は、自分で選択した内容を自身のペースで学ぶことができるようになります。選択を支援するAIの活用も進むでしょう。また、学習指導も教師に加えて、AIが行うようになるでしょう。さらにその先に、人工神経細胞による伝達(人工装具を脳に埋め込む)、遺伝的操作による操作(才能児の誕生⇒倫理的問題あり疑問)が可能となる時代が来るというのが著者の見立てです。教育内容に関しては、著者は、新たな4学科を学ぶ必要があるとしています。科学、倫理学、芸術、生態学の4つですが、それぞれが、かなり広範な学問領域を含んでいます。外国語の学習は、実用的には不要になるが、通じていることで、教養や異文化理解が深まるとして推奨しています。旧来型の学校は無くなるが、個人の学習をサポートする交流の場としては必要だとしています。イメージとしては、通信制のN高校のような形でしょうか?著者は、学校が、権威・規律・服従の場ではなくなるとしています。学習形態が、遠隔学習を含むハイブリッド型になるからです。アタリ氏のような未来学は、一種の頭の体操として意義があると思います。まずは、AIと教育について、総裁候補たちによる論戦のテーマにしてはどうでしょうか?

 

10冠の対局

 NHK将棋トーナメントで、藤井7冠と西山女流3冠のドリームマッチがありました。後手の西山女流は、中盤まで互角の評価を維持し、健闘したと思います。戦型は、角交換向かい飛車で、西山女流は桂馬を、藤井7冠は銀を使って、攻撃態勢を整えます。藤井7冠は、6五歩から西山玉の前面に圧力を掛けて行きました。西山女流は、5九角打ちで、馬を作って対抗しますが、藤井7冠の馬を取っていけば、もう少し接戦が続いたようです。終盤の藤井7冠の寄せも見事で、7四銀を見て、西山女流は潔く投了しました。藤井7冠への敬意のなせる業だと感じます。西山女流は、棋士編入試験を受験中で、その棋士群の最高の地位にいるのが藤井7冠ですから、勝てなくても仕方がありません。ただ、この対局は彼女にとって、大いなる学びの場になったと感じます。彼女らしい指し回しも見られました。将棋ファンとしては、十分楽しませていただきました。後に続く女流棋士の励みにもなったことでしょう。

 

秋場所9日目

 再び、国技館で観戦しました。親方トークは、佐ノ山親方(元千代の国関)でした。MCは、再び笑顔の熊ケ谷親方(元玉飛鳥関)です。佐ノ山親方は、九重部屋の21歳の千代虎さんを関取に上げようと奮闘中です。自身は、毎日、1,000回の腕立て伏せをして、突き押しの威力を増したそうですが、今の力士に、そこまでの過酷なトレーニングを求めるのは難しいようです。膝の怪我で親方は上手投げが打てなくなり、相撲のスタイルを突き押しに変更したという苦労話も聞きました。大怪我で番付を落として、酒に溺れたときもありましたが、横綱千代の富士関から叱責と激励を受けて、立ち直ったというエピソードも印象的でした。若手力士では、若碇さん、東俊隆さんのような動きの激しいタイプが好みだとも述べていました。確かに、千代の国関の相撲に近いですね。三段目の終盤から、結びまで、取り組みを見ましたが、三段目では川副さんが元十両の力の差を見せていました。優勝候補でしょう。幕下では、幾つか全勝対決がありましたが、中では旭海雄さんが優勝に近いように感じました。幕下上位の安青錦さん、若碇さんは、確実に十両昇進に近づいているという印象でした。また、小兵の宮城さんが実力者の草野さんを破った速攻相撲の一番が目立ちました。彼も筋肉がついて確実に進歩しています。十両では、尊富士関が力強い相撲で相手を圧倒していました。他に、島津海関、大青山関が好内容の相撲でした。幕内では、若元春関との指し手争いを制した大の里関の優勝と大関昇進が現実味を帯びています。佐ノ山親方の優勝予想も大の里関でした。1敗で追う霧島関が対抗でしょうが、10日目に顔が合うので、その勝敗次第です。熱海富士関、宇良関の意外な押し相撲による勝利が印象に残りました。幕下の取り組みで、伝え反りという珍しい決まり手が出ましたが、見ている方は、さっぱり分からず、館内に大きなモニターを設置して観客にビデオを見せてほしいと思います。伊勢ケ浜部屋の後援会長が経営しているMIDASという投資会社の社員さん家族がおそろいの浴衣を着て観戦していました。伊勢ケ浜部屋の4人の力士の取り組みに、それぞれ懸賞5本をかけていて、太いタニマチさんです。翠富士関以外の3力士は、めでたく懸賞を手にしました。嬉しい副収入です。

 

2024年9月16日 (月)

すずろに汗あゆる心地ぞする

高齢社会白書

 内閣府から令和6年度版が出ています。高齢者向けの政府による施策を説明することが目的ですが、就業、健康、学習、生活(住環境・街づくり・防犯)、研究開発、国際協力などの分野について、盛りだくさんに施策が紹介されていて、それらの目標が、どの程度達成されているのかは良く分かりません。興味を覚えたのは、掲載されているデータです。65歳以上の一人暮らしは今後も増加することが予測されています。2020年では、65歳以上に占める割合が、女性で22.1%、男性で15.0%ですが、2050年には、それぞれ29.3%、26.1%に増加すると予想されています。そうなれば、孤独死が懸念されます。孤独死を身近に感じるとする65歳以上は、既に48.7%に上っており、夫婦のどちらかが先に亡くなれば、一人暮らしで、孤独死という事態も現実味を帯びてきます。住み替えの需要に関する調査結果では、70~74歳の層でも31.3%が、潜在的なものも含めて住み替えの意向があると答えています。賃貸住宅の居住者の場合は、全体で56%にも上ります。主な住み替えの理由は、健康・体力面の不安です。男性は自然豊かな環境を求め、女性は、交通の便や買い物が住み替えの動機になります。住み替え先としては、戸建てが28.7%、マンション(シニア向けを含む)が22.9%となっており、近年のマンション人気が反映されています。独立性・広さより、便利さ・快適さを求める高齢者が増えてきているということです。

 

空き家の解体

 コンデックス情報研究所「空き家の法律と税金と管理がわかる本」(成美堂出版)は、コンパクトに空き家への対処のポイントが解説されているので、空き家を相続したような方には、とても便利だと思います。ただ売る場合に、リフォームしてから売る、解体してから売るという記述は、ケースとしては非常に少ないのではないかと思います。リフォームする場合は、賃貸か民泊を前提に行うのが通常です。中古物件の買い手は、自分の好みに合うリフォームを行いたいでしょう。買い手が気に入るかどうかわからないリフォームをするのは、リスクがあります。また、解体となれば、中古物件の買い手には対象外になることもあり、よほど危険な建物でもない限り、わざわざ解体して売るというような方法は取らないと思います。解体する場合は、新たに建て直すことが前提になります。一般的に、建てる計画がないのに、解体する人はいないでしょう。世田谷区では、大半の人が、必要なものだけ取り出して、残置物を含めて、そのまま業者さんに売るのではないかと思います。

 

法とは何か

 長谷部恭男「法とは何か」(河出書房新社)は、法学入門などの科目のテキストとして書き下ろされたものでしょうが、内容は、それほど易しくない、むしろ憲法学者らしい奥の深いものになっています。「国家の権利の限界と個人の選択の範囲」という部分を読んで、具体例として、同性婚、選択的夫婦別姓の実現可能性について思いを巡らせました。限界の理由づけとして、個人に判断させた方が個人は幸福になり、社会全体の幸福量も最大化されるという説明があります。また、比べようのない選択肢については、国家は個人に介入しない方が、人間らしく生きる余地を保障することに繋がるという説明もあります。宗教に関しての選択も正しさの基準がないので、基本的に個人に委ねるべき事柄だとしています。このような記述から、やはり、同性婚や選択的夫婦別姓については、速やかに法制化すべきではないかと考えます。2024年において、国家が、異性婚、夫婦同姓に、絶対的な正統性を論証できるとは思えません。

 

2024年9月15日 (日)

花をしみればもの思ひもなし

民泊投資

 外国人観光客数はコロナ前に戻ってきていますので、民泊にはビジネスチャンスがあります。民泊を始める動機としては、空き家対策が61.5%を占めています。不動産投資への興味、追加的収入を得るという動機が、これに続きます。民泊を始めた人のうち、7割強ほどが、期待した結果を得ているようです。民泊物件投資の実施利回りは、20%以上が、41.1%と最も高くなっています。物件があれば、限定的なリフォームや家具の追加配置で、ビジネスが始められるために、利回りが高く得られているものと思います。ただし、安定した集客を維持すること、清掃など業務委託先との調整など、苦労がないわけではありません。7割以上のオーナーさんが苦労を感じています。騒音やゴミ対策、近隣との付き合いなどが課題だと感じているオーナーさんもいます。確かに、見慣れない外国人らが急に近隣に入ってくることには、違和感を持つ住民もいるでしょう。問題が小さいうちにきちんと対処しないと、民泊ビジネスにも理解が得られなくなる恐れがあります。

 

私大の定員割れ6割

 2024年度の入学者に関する調査で、三大都市圏でも、東京・大阪は充足率が100%以上でしたが、神奈川・埼玉・千葉、兵庫・京都、愛知が、定員割れです。規模別では、3000人以上が100%を超えているだけで、500人未満は85.3%と、小規模の大学ほど学生募集に苦労している状況があります。定員割れの私立大学は全体の6割で、最近の5年間で、一段と悪化しました。基本的に、学納金の負担に耐える家計ならば、子どもを大学で学ばせることが可能ですが、その割合が減少しているということを意味しています。大学卒業までの経済的負担(その後の奨学金返還を含む)と卒業後の収入予測を比較して、私大は、投資に見合わなくなっているとも考えられます。構造不況業種である私立大学は、きちんと工程を管理して、在籍学生の学習を保障しつつ、整理統合廃止を進めるべきだと思います。理系学部増設に猫も杓子も手を挙げて公的資金による生き残りを模索しようとしていますが、現実的に、意味のある学部学科がそれほど多くできるとは思えません。文科省は、私立大学の店じまいを計画的に進める仕事を進めようとしているのでしょうか?

 

後期高齢者の3割負担

 現在、後期高齢者で、医療費の窓口での負担が3割になっているのは、単身なら年収383万円以上の方で、7%に過ぎないそうです。確かに、クリニックでも大半のお年寄りは、1割しか負担していません。貼り薬を薬局で購入するよりも、処方箋を出してもらって購入する方が、自己負担が少なくなるため、母親が死んだ後に確認したところ、大量の湿布薬が保存されていました。年齢を重ねるほど、自然とクリニックに通うことが多くなり、医療費が増える原因を作っていると思います。また、後期高齢者を支える側の保険料負担が大きくなるはずです。結論から言えば、負担は全て公平にするべきで、誰でも3割で良いと思いますが、一日も早く制度改正してもらわないと、世代間に不公平が残ってしまいます。岸田内閣の最終盤に検討を始めるなどと狼煙を挙げても、大して期待感を持てません。総裁候補で、3割負担を実現するなどと公約する政治家もいません。どうせ7人は決戦投票に残れないのですから、1人くらいは全員3割負担を主張する候補がいても良いと思うのですが・・・。

 

2024年9月14日 (土)

げに千とせもあらまほしき御ありさまなるや

沖縄移住者用物件

 「地主と家主」10月号に、沖縄への移住者用の賃貸物件に投資しているオーナーさんの紹介がありました。沖縄で生まれ育った人たちは都市に住みたがる一方、移住者は、海への距離が短い物件を好むそうです。徒歩2分以内のアパート及び戸建てを購入して、平均を超える賃料を得ています。2拠点生活の沖縄拠点として活用している人もいるとのことです。老後の移住の場合、なかなか高齢者には貸してもらえないという事情もありますが、今は、アップルウォッチを使って動きが把握できますし、生活支援のサービスも得られるので、高齢者=孤独死のリスクと考える必要はなくなっています。遠隔地の物件の経営は、容易とは言えませんが、リノベーションの際に、多数の職人さんと面接を行い、信頼関係を築くことができたので、仕事を任せられる相手が見つかっているようです。オーナーさんは写真で見る限りかなりの美人さんで、得をしているのかも知れません。

 

相撲女子

 相撲ファンでも、男性と女性では、目の付け所が違うように思います。それぞれが楽しめばよいので、どちらが正しいというわけではありません。男性は、純粋に格闘技としての相撲に興味を感じていると思います。体重無差別の競技なので、どうしても体が大きい力士の勝率が高いのですが、スピードやテクニックが優ることで、勝利を得るというケースもあります。幕下以下で、赤丸急上昇中の力士を見つけるのも楽しみです。圧倒的な強さで優勝する横綱・大関も、小良く大を制する小兵力士も、相撲の奥義を体現しているので、魅力を感じます。女性の場合は、単に強いということでは魅力を感じないようです。優しい人柄だとか、笑った顔が可愛いとか、ファンサービスが良いとか、ツーショットを撮ったとか、○○推しの独特の心理が働いています。語弊があるかも知れませんが、大きなペットのようで可愛いと感じている人が多いのではないでしょうか?宇良関の女性ファンは非常に多いですが、半分くらいは負けるので、応援に行って彼が勝った時の喜びがひとしお大きいようです。もう小兵力士ではないのですが、ファンのイメージは、技を駆使して巨漢力士に対抗している小さな巨人ということなのでしょう。熱海富士関も、強さと脆さが同居しているような力士ですが、勝つと胸を張って嬉しそうですし、負けるとしょげかえって小さくなっている姿に、共感するのではないかと思います。白熊関も人気になりつつありますが、目が細くて田舎のお兄さん風の顔つきですが、非常に力が強い逞しい力士です。名前にも特徴があり、ギャップが面白いようです。同じ系統には、おにぎり君の異名がある隆の勝関がいます。国技館には、確かに高齢者が多いのですが、外国人が増えていることと、年齢幅が大きい女性のファンが目立つと感じます。出待ちをしているのは、圧倒的に女性です。私は、生の相撲を見る時間を削って出待ちに行くことはありませんが、女性は写真やサインの方に価値を感じる傾向にあると思います。行司さんのファンまでいます。コアな女性ファンは、序二段、三段目、幕下の力士だけを推す人までいます。将来性を買うというよりも、もはや友人感覚なのでしょう。地方から、一人で、国技館まで来ている女性もいます。嵌ると相撲沼は居心地が良いのかもしれません。

 

空き家の福祉転用

 「地主と家主」10月号に、地域を元気にする企業として、兵庫県尼崎市で、空き家を福祉転用して障碍者への住まいの選択肢を増やす試みをしている会社が紹介されていました。障碍者と言っても、障害の種類も重さも人それぞれですので、個々に面接して、障害の状態や支援の状況を把握して、累計40件を成約しているが、入居者による問題が発生したことはないとのことです。今は、増えて行く空き家を活用して、障碍者への賃貸物件に転用するモデルを推進しています。家主さんにもメリットがあると感じます。

 

2024年9月13日 (金)

清涼殿の丑寅のすみの北のへだてなる御障子

書店が消える日

 小島俊一「2028年街から書店が消える日」(プレジデント社)によれば、書店はいまや構造倒産業種になっています。著者が指摘しているように、本屋さんの閉店が続けば、小中学校の生徒さんが使う教科書の供給が危機にさらされます。そんなことを考えたこともなかったので、驚きです。興味深いと感じたのは、著者講演会が出版界に残された利益のラストリゾートだと指摘されていることです。集客さえできれば、イベントとして収益が出るということです。紀伊国屋書店新宿店などでは、しばしば行われていますね。また、タブレットの教科書が、子どもの紙の本離れを起こすという図書館長からの指摘は、聴き捨てにできない問題提起です。そうだとすれば、良かれと思ってすすめている施策が、出版業界を苦しめているのです。最も重要だと言えることは、本屋さんがなくなることは、長期的に出版会社の業績低下を招くという当たり前のことです。本屋さんは、専ら民間企業に過ぎませんが、地域の文化の盛衰のカギを握っています。単純に、書店が消えたことを軽く扱うのは危険です。

 

年金官僚

 和田泰明「ルポ年金官僚」(東洋経済新社)は、年金行政の歴史を分析しながら、詰まるところは、GRIF改革の真相を明らかにするために書かれたものです。特にスポットライトが当たっているのは、香取照幸年金局長です。彼は、官邸において民主党政権下の年金改革案(最低保障年金構想)を葬り去ることに成功し、塩崎厚労大臣に嫌われながら、年金積立金の株式運用の割合を増やすGRIF改革を、官邸主導の下で推進しました。安倍総理によれば、塩崎大臣は、思い込みが激しく、上から目線で来る官僚との相性が悪いから、香取局長に説明させたのがまずかったとのことです。大臣から出入り禁止扱いされて、香取局長の心中は穏やかでなかったでしょうが、基本的に官邸の方針に従って、揺らぐことなく改革を進めることに徹していたものと思います。結局、事務次官への芽を摘まれてしまいますが、年金システム改革の立役者として名を残しました。小泉政権を支えた飯島秘書官ら香取さんを高く評価する人たちも少なくありません。著者も、年金官僚の代表格として描いています。今のところ、年金システムに関して大きな改革は予定されていませんが、しばしば話題になるのは、支給開始年齢の引き上げです。国民全員の利害に関わるため、政局がらみになることが避けられない大改革は、よほど安定した政権下でしか実現できないでしょう。

 

秋場所5日目

 親方トークは、荒汐親方と熊ケ谷親方でした。今場所の優勝力士予想を聞かれて、荒汐親方は霧島関(大関に上がった時のように好調)を挙げ、熊ケ谷親方は大の里関(当てに行ってる?)を挙げていました。ところが、全勝の琴櫻関、霧島関、正代関の3人が、5日目にして揃って黒星となり、大の里関のみが全勝をキープしました。熊ケ谷の呪いは、恐ろしい!あの笑顔の陰に、相当な念の強さが隠されているようです。幕下以下での有望株では、若碇さん、琴手計さんを挙げていましたが、自分の部屋の丹治さんには、荒汐親方も大きな期待をしていました。まだ18歳ですから粗削りで、脇の甘さを突かれて負けていましたが、真面目な力士なので、1年後には関取になると期待しています。十両では、尊富士関の強さが目立ちました。千秋楽まで務められれば、優勝するでしょう。千代翔馬関、嘉陽関も5連勝で好調です。特に中村部屋の嘉陽関は、固さが取れたのか動きに迷いがなくなりました。幕内では、大の里関のほか、平戸海関、若隆景関の動きが非常に良かったと思います。三段目の終わりからすべての取り組みを見て、夏の巡業や合宿などでの稽古がしっかりできた力士が伸びていることを実感しました。国技館の館内は、非常に込み合っており、地下大広間のちゃんこ、相撲協会ほかの売店にも人だかりがあり大盛況です。3日目に琴櫻対翔猿戦で物言いをつけなかったことへの批判を受けてか、審判は確認のための物言いを増やしていることが分かりました。念のためビデオでチェックするのは良いことだと思います。軍配差し違えになることは一番もありませんでした。

 

2024年9月12日 (木)

家は、近衛の御門。

西山朋佳女流3冠の棋士編入試験第1局

 後手で、高橋4段との紙一重の激戦を制して、貴重な1勝を上げました。Abemaで視聴していましたが、西山女流3冠の攻守に渡る終盤力が光りました。高橋4段の反撃も、非常に鋭く、打歩詰が反則になるために一歩及ばなかったという結果でした。逆に言えば、西山女流の玉捌きが正確だったと思います。持ち時間の使い方もうまかったと思います。中盤までは、高橋4段が馬を作って囲いを固めたのに対して、西山女流も、6二金と自陣を補強しながら、三間飛車からコマを捌いて若干リードしていました。9七角と打ち込んだ手は、西山女流らしい強手でしたが、その後、4二角成とした一手が疑問手で、評価値がほぼ互角に戻りました。一瞬のチャンスが生まれましたが、時間の制約の中で高橋4段も最善手を逃して、再び西山女流ペースになりました。8筋9筋の攻防は、心臓に悪いくらい見ごたえがありました。西山女流の特長である終盤力が存分に発揮された一局でした。攻め勝つイメージが強い西山女流ですが、この一局は、相手の攻めを巧みに凌いで勝利を得たものです。幸先の良い1勝で少し余裕を持てると、次局はより良い棋譜が残せるでしょう。それにしても編入試験は、両者に大変なストレスがかかる戦いだと感じました。勝利を得た西山女流の精神力、胆力は、試験官の若手棋士と遜色なく、本当に立派だと思います。

 

コメの流通事情

 世田谷区のサミットで、つや姫を購入していますが、やっと9月中旬になって、5キロを買うことができました。1か月近く姿を見ていなかったので、値段は度外視して、購入した次第です。税込み価格は、3080円でした。過去は、土日の特別セールの25%引きで、2080円くらいで買うことが多かったので、大変な値上がりです。今は、25%引き自体がなくなっています。コメは物価の優等生で、主食として安定した価格を期待できたのですが、ここまで実質的に急騰してしまえば、むしろ貴重な食糧品として認識しなければならなくなりました。サミットが儲けているわけではないことは理解していますが、需給が逼迫しているのを傍観し、価格の高騰も良しとしている政府には、失望を禁じえません。慌ててスーパーを視察した模様の農水大臣は、農水官僚の手のひらで転がされているだけですから、残念ながら失格でしょう。

 

トランプ陣営のフェイクニュース

 ヴァンス副大統領候補が、オハイオ州でハイチからの不法移民が猫を殺して食べているという趣旨の発言をしたようですが、こうしたフェイクニュースが、同調者や「目撃者」などによって、まことしやかに増幅されて伝わるアメリカという国は、恐ろしい危機的な状況に陥っていると思います。もちろん、どこの地域にも、不法移民によるネコ食いの事実などありません。しかし、トランプ支持者にとっては、不法移民が何をするか分からない大変危険な人物ばかりで、ネコ食いという怪物的な行為があったとヴァンス副大統領候補が言うのなら、それを真実であると受け取ってしまうのです。陰謀論の影響力は、馬鹿にできません。ハリス候補との討論で、トランプ候補自身が、このフェイクニュースを口にして、キャスターから事実ではないと否定されていました。党派的なフェイクニュースが伝搬する土壌があることが、今日のアメリカの悲劇の根源です。そんな事実はなかったといくら真実を指摘しても、逆に、不法移民を庇うような連中のいうことは嘘に違いないと思い込んでしまうのです。ほとんど、カルト宗教に洗脳されたような状態です。アメリカ国民のかなりの数が、そうした危険な視野狭窄症に陥っているのは、同盟国の人間として本当に残念です。世界的な人気歌手のテイラー・スイフトさんが、ハリス+ウォルツ支持を明確にしましたが、態度を明確にしないと、トランプ陣営に、自分に関するフェイクニュースを流されることを恐れての行動だと思います。残念ながらアメリカは、カルト的な分断が進む非常に危うい国家になりました。

 

2024年9月11日 (水)

たちは、たまつくり。

藤井聡太7冠のライバルたち

 NHKスペシャルで、叡王戦を中心に、AI研究を超える将棋の可能性を探求し始めている藤井8冠(当時)の姿が描かれました。また、同い年の藤井8冠から、叡王のタイトルを奪取した伊藤匠新叡王の刻苦勉励ぶりにもスポットライトが当てられました。すでに頂点に立つ者(伊藤叡王によれば「教祖」)とそれに対峙する宿命を負った者が、ともに将棋の先端研究者として、最先端の棋譜を残そうと盤上で格闘しているのです。叡王戦では、伊藤新叡王は、藤井8冠優勢の将棋を終盤で2局も逆転するという誰もできなかった偉業を成し遂げました。これから30年くらいの棋士人生のライバルとして名乗りを上げたと認めて良いと思います。現在、王座戦に挑戦中の永瀬9段、これから始まる竜王戦で挑戦者になっている佐々木勇気8段も、ライバル(共に将棋の世界を探究する学究仲間)と考えて良いと思います。一方、藤井7冠とは別のルートで、将棋の新たな可能性を探ろうとしているのが、豊島9段、佐藤天彦9段だと思います。AIによる研究の成果から離れて、人間ならではの指し手で勝負していく方向です。AIが不利だと断定している振り飛車を採用するなど、あえて研究の主流から遠ざかろうとしているのです。主流とは別系統の存在ですが、新村田システムを編み出した村田顕弘6段は、独自に振り飛車の研究を進めて、一つの島を発見・開拓したイノベーターだと言えるでしょう。王座戦挑戦者決定トーナメントで藤井8冠に勝利寸前まで肉薄した名局は、忘れることができません。どんなに藤井7冠が強いと言っても、あらゆる棋士が藤井7冠と同じ将棋を目指すのでは、進歩は得られませんし、面白くもありません。AIによる研究が進んでいるからこそ、豊島9段らは、形勢が多少不利でも研究が進んでいない混沌とした局面に持っていくことで、棋士の生身の力量が問われる状況を作り出しているとも言えます。それも勝負術であり、新たな発見への旅立ちにもなるのです。これまでも、勇気ある先駆者たちの創造力で、新戦法が生み出されてきました。科学研究と似ていますが、他人と同じことをしても、ノーベル賞級の発見は生まれません。藤井7冠の牙城を脅かすような新しい将棋は、誰の手によって生み出されていくのか、そうした研究史的な見方をするのも楽しいのではないでしょうか?

 

貴景勝関

 大関から陥落して、今場所に大関復帰をかけています。ただ、首の故障は、かなり重症だと思われます。しかも、彼が大関に上がり、優勝を重ねるために編み出した、何度も頭から当たる独特の取り口が影響していると考えられます。首の故障は、力士の職業病のようなものです。今すぐに頭から当たる取り口を変えるのも難しいでしょう。かと言って、まだ28歳の力士ですから、まだまだ土俵を務めたい気持ちは強いでしょう。何とも歯がゆく、非常に苦しい状況だと推測しますが、今こそ、貴景勝関に賛辞と声援を贈りたいと思います。彼の相撲に対する気力が衰えていないことは、相撲を見れば分かります。今できることをやり切ろうとしています。確かに、これまで立ち合いから圧倒していた相手に攻め込まれて負けることが多くなっています。場所前に、申し合いができない状態で、ぶっつけ本番のような形で秋場所に入ったので、仕方がありません。それでも、日を追うごとに彼らしい相撲を取り戻してくれると期待していました。15日間、何とか千秋楽まで取り切ってほしいと願っていましたが、残念な結果になりました。態度が立派だと感じる点は、国技館からの帰り道でのファンサービスを嫌がらずにしてくれていることです。負けてもなお平常心でサインの求めに応じている姿には、崇高さを感じます。ファンの列を無視して急ぎ足で通り過ぎるだけの力士とは、雲泥の差があります。貴景勝関は、大相撲には欠かせない人格のしっかりした模範的力士だと思います。相撲に興味のある方には、力士の人格もしっかり見て、推しの選択をするようお勧めします。現役を退けば、親方として、長く相撲協会を担うことになるでしょう。

 

兵庫県知事の不信任決議

 全会派が不信任決議に賛成する流れになっているので、不信任はほぼ確実ですが、県知事が議会を解散することがあるのか、注目です。これまで、不信任決議が成立した場合、岐阜、長野、徳島、宮崎では、知事が辞職しました。今回、兵庫県知事が議会を解散するとすれば、初めてかもしれません。あくまで自分は間違ったことはしていないとの認識のようです。推薦してくれた維新からも見放されて、辞職を勧められても、頑なに続投する意思を示しているので、行くところまで行くのでしょうか?もう詰みになっているのに、指し続けようとする棋士はいません。自分に誇りがあるなら、詰みを認めて、負けましたというのが、作法です。その程度のことは、分かりそうなものですが・・・。それにしても、視察先から、獲物を持って帰ることを常習的に繰り返していたのには、驚きました。おねだりというレベルではなく、権力者による収奪と表現した方が良いでしょう。相手としては、権力者の知事からの要請には応えざるを得ないという立場の格差を利用した収奪です。連日、情報番組で流れてくる「戦利品」を知るにつけ、こういう特異な人格の人間をよくも兵庫県知事選で推薦したものだと呆れています。公益通報制度が骨抜きにされている兵庫県の実態も、とても21世紀の日本とは思えぬ異常さです。無反省が貫かれている本心も、道義的責任など知らぬと返す心根も、本当に異様です。どこまで悪あがきを続けるのかを野次馬の一人として見守りたいと思います。総務省も苦い思いで見ていることでしょう。

 

2024年9月10日 (火)

原は、みかの原。

宇宙開発の思想

 シャーメン「宇宙開発の思想史」(作品社)は、人類が宇宙で生きることの意味について、どのような思想が展開されてきたかを明らかにするものです。アーサー・C・クラーク氏などのSF作家から、実業家のイーロン・マスク氏まで、必ずしも思想家ではない人物による思想を取り上げている点が特徴です。マスク氏は、火星移住の値段を、アメリカの住宅価格程度とすることができれば、文明を築いていけると踏んでいます。ドームが碁盤の目状に並び、地下鉄道には自動運転のEV車が走り、太陽光でエネルギーを供給するという都市です。鉄道は宇宙港と結ばれて、惑星間輸送システムが運行されているというイメージを、マスク氏は描いていました。アマゾンのべソス氏も、月の資源を活用して、他の惑星への移住によって、資源の限界を乗り越えるという構想を公表しています。大きな新規ビジネスの創業者が、図らずも宇宙を目指すというのは、興味深いことです。著者によれば、宇宙定住のパラダイムとしては、地球モデルの世界構想をそのまま新世界に持ち込むものですが、植民地主義的な宇宙開発を良しとはできないと述べています。昔、山本夏彦さんというエッセイストが、「何用あって月世界へ」という問いを発しましたが、一般の人間にとっては、今も同じように得心が行かない状況だと思います。宇宙を軍事的に利用しようとする企みがあるのではないかと勘繰ってしまいます。地球よりも住みやすい宇宙が、私たちの手近にあるとも思えません。だから、地球はかけがえのない存在なのです。

 

大相撲解説者

 北の富士さんの休場が続いています。復活の可能性があるために、後任探しをしていないのか、事情が良く分かりませんが、他のスポーツでは考えられないNHKの判断です。適任者がいない、あるいは意中の人物に断られたのかもしれません。舞の海さんについては、力士の心理について、取材に基づかない単なる推測で軽薄に語る癖があり、解説者としては、いかがなものかと思います。根拠なしに自説を展開するのは、居酒屋談義の域を出ません。とても公共の電波に乗せるレベルではないと思います。秋場所でも、初日から、貴景勝関の心中について、不適切な発言をして、アナウンサーが婉曲に非を認めるコメントを出していました。今に始まった話ではないので、NHKとしては後任探しを急ぐべきでしょう。人口減少の影響もあり、相撲の競技人口は落ち込んでいます。国技館はチケット完売でも、実際には、国技の継承さえ危ぶまれる状況なのです。力士の養成拠点である部屋のシステムも、時代に合わなくなっており、限界に近いのではないかと感じます。親方は新弟子募集に東奔西走していますが、力士の数は減少の一途です。入門者が少ない上に、入っても直ぐにやめて行きます。相撲未経験者が簡単に勝てるようになるほど甘い世界ではないのです。関取の地位に上がれば、プロとしての処遇も受けられますが、幕下以下の力士には、給与もなく、セカンドキャリアへの準備の機会もありません。30歳を過ぎても、独立して生計を営む収入がなく、社会に出て行くための何の資格もない状態というのは、悲劇的ではないでしょうか?若い力士が辞めて行くのは、結局、番付を上げるだけの力量を付けるのが難しいと判断しているためですが、そういう行き場のない先輩のようにはなりたくないという面もあると思います。大相撲の解説者には、大相撲が抱えている危機を乗り越えるための改革の視点が求められると思います。

 

総裁選のポピュリズム

 自民党の総裁選挙は、いよいよ何でもありの人気集めになってきました。増税なしに防衛費の拡充を実現する(できるなら議論の最中に提示していくべき)、給食費を完全無償化する(子育てに理解があるというアピールに過ぎない)などは、財政規律を度外視する発言です。金融資産課税の強化というのも、かなり唐突です。取りやすいところから取るということ以外に理屈はなさそうです。改革の推進者であることを打ち出すために、年末調整の廃止(全員がeTaxで確定申告をする)、解雇規制の緩和(首にしやすくする)などが持ち出されていますが、もともと賛否が分かれるところですし、より詳細な議論を要する課題です。健康保険証の廃止に待ったをかけるという説も、国民の不安を考えれば頷ける面があるものの、今さら方針変更するのでしょうか?なぜもっと前に立ち止まって、閣内での議論を深めなかったのでしょう。地方再生、農林水産業の成長・発展を持ち出すのも、地方票を意識した発言でしょうが、これまでできなかったことは、自分が総裁になっても実現することは難しいのではないでしょうか?できるというなら、何を、どのように進め、いつまでに、どれほど達成するのかを示すべきです。確かに、地方でも、養殖の生産技術を向上させ、付加価値の高い農産物を生産し、海外への輸出を含めて成功を収めている事業体はあります。しかし、それらは主として民間の努力の成果です。国ができることは限られています。総裁選挙で地方票が欲しいから、様々な毛バリ作戦が展開されていますが、誰も信用しないのではないでしょうか?政治家として一本芯が通っているのなら、今までその課題について自分が何をしてきたのかと問われて当然です。唐突に魚を釣ろうとしても、意図(糸)を見透かされて失敗するでしょう。

 

2024年9月 9日 (月)

峰は、ゆづるはの峰

本田圭佑さん

 38歳の今、ブータンのチームで選手をしています。プレーを見た日本人はほとんどいないでしょう。面白いのは、アジアの代表チームの監督としてワールドカップに出たいという目標を持ちながら、日本の指導者ライセンスの取得には興味がないとしているところです。彼ほどになると、誰の助言も聞くことはないのでしょうか?例えばイタリアで取得するならそれでもかまいませんが、主要国のライセンスがないと国際的には通用しないと思います。ライセンスなしには指導者としての実績の積みようもないので、ワールドカップは遠い夢になるでしょう。ライセンス自体の中身が素晴らしいかどうかは別の話で、文句があるなら、取得してから言うのが正しい態度です。そうでないと、負け惜しみに聞こえるからです。学生の授業評価のアンケート調査で、悪い点が付いた場合、次の機会に点数を上げてから、評価方法について意見を言う大学教授の行動と、同じことです。指導者としては、40歳の長谷部さんへの期待が高まるでしょう。フランクフルトでの実績も積んで、クラブの監督への道が開けて行くはずです。日本代表チームの監督にも必ず就任する時が来るでしょう。一方、本田圭佑という名前は、サッカーファンから忘れられていくことになります。しばらくは解説者として使ってもらえるでしょうが・・・。一匹オオカミ的な独りよがりは、JFAのような組織では通用しません。それが分からないなら、ただ消えて行くのみです。頭のいい人だと思いますので、サッカー界には、いるべき人材ですから、選択を誤らないでほしいのです。

 

9月の農園

 まだ、甘唐辛子、茄子は、しばらく収穫できそうです。オクラもそろそろ終わりです。新規に栽培を始めたのは、ニンジン、大根、青梗菜、カブ、ジャガイモです。キャベツ、ロマリア、ロマネスコ、タマネギ、ブロッコリー、ミズナの苗づくりも進めています。区画で言えば、ジャガイモは2区画で、それ以外は、1区画以内です。他の方の農園では、幾つかで、サツマイモの弦が伸びて、盛んに広がっています。早い方は、秋冬の栽培に切り替えたという感じです。それにしても、まだ最高気温35度の日があり、暑いので、秋のモードになりにくい状況です。早く涼しくなってほしいものです。

 

町内会

 玉野和志「町内会」(ちくま新書)は、歴史を踏まえて、再生への道を探るという趣旨の書です。今日では、町内会に加入しない世帯もあり、多くの若者には存在さえ知られていません。著者によれば、町内会の特徴は、世帯単位であること、全戸加入を原則とすること、機能的に未分化であること、地区に一つしかないこと、行政の補完作用を担っていること、保守的伝統の温存基盤となっていることです。結論から言えば、今日的な町内会の存在理由は、防災・防犯ではないでしょうか?大規模地震の際には、地域の共助が必要ですが、その担い手となるのが町内会だろうと思います。逆に言えば、それくらいの役割しか考えにくいということです。居住しているマンションも、全戸で町内会に入っていますが、日頃は、何らの関りもありません。防災関連で世田谷区からの配布がある場合、町内会を通じてということがありうるために、加入しているのであって、それ以外のメリットは実質的にないと思います。従って、加入しないという世帯があっても、不思議ではありません。ただ、全戸加入が現実でない状況なので、行政からの下請けとして機能するのも難しくなっています。ましてや、役員さんが高齢で、動いてもらうには気の毒な状況になっています。再生しようにも、役員のなり手を探すのが難しいでしょう。

 

2024年9月 8日 (日)

市は、たつの市。

リフォーム費用の値上がり

 東住協セミナーで、谷崎会長の講演を聞きました。講演後は、会社の関係で、再び札幌へ戻るのだそうです。リフォーム会社からの聞き取りでは、材料費の大半が値上げになっている、その他の経営コストも上がっているとのことです。リフォーム経費は、3か月ごとに変動します。原状回復費用は、例えばクロス張替えで、材料費の上昇が大きく、総額で20%アップしています。室内クリーニングは、㎡当たり1000円程度だが、きちんと仕事ができる清掃員の確保が難しいそうです。そのため、労務費は上昇傾向です。エアコンの取り換えも、実質2年で20%上昇とのことです。ピークの6月より前に発注するのがお勧めです。屋上防水に関しては、大規模な現場では3~4か月の準備期間を要する、金額の要望はできない状態だそうです。なお、大規模修繕を1年半先延ばしした結果、3960万⇒4554万と大幅増額になったケースが紹介されていました。今後3年で、30~50%上がる可能性があります。こんな状態では、既存の大規模修繕計画は完全に狂ってしまいますね。分譲マンションでも積立金の増額で苦労しそうです。このところのコスト上昇で、賃貸経営は、すっかり状況が変化したと感じます。キャッシュフローに余裕がないと、コストアップに押しつぶされてしまいそうです。

 

兵庫県の公益通報対応

 百条委員会で調査が続いていますが、文書作成者を特定して、県の上層部が詰問し、マスコミに情報を漏洩したことで処分を行い、当人の再就職などが取り消しになり、最終的に当人が自殺に追い込まれたという経緯は、驚くべき内容です。公益通報もしているのですが、その調査結果を待たずに、嘘八百だとして処分を急いだのは、知事の指示だったとされています。ただ、知事の取り巻き連中が、告発を寄ってたかって潰しにかかっていたことは、明らかです。すべてを知事の責任だとするのは、おかしいのではないでしょうか?法的助言を行った弁護士は、処分は正統だと述べているようですが、真実相当性がない文書をマスコミにリークしたと決めつけて、処分を後押ししたのは、県から誘導されたのかも知れませんが、弁護士の助言として、些か軽率だったと感じます。今になって、職員の多数から、知事の問題行動について、見たり聴いたりしたことがあるというような回答がなされており、火のないところに煙は立たずと考えて、慎重に第三者による調査を行うように助言するのが、法律の専門家としては妥当だったでしょう。私なら、こういう弁護士さんには、危なっかしいので助言をお願いしません。慎重な助言をしてくれる人を信用します。百条委員会の調査も、知事だけでなく、取り巻きが具体的に何をしたのか、指示系統及び各自の行動を綿密に証言させるべきだと思います。証言の曖昧性を排除するための突っ込みが甘いと思います。県議会の調査能力にも問題があります。トータルとして知事の指示だなどという意味がはっきりしない証言で終わってはダメです。突っ込み上手の漫才師さんの助言でも受けたら良いでしょう。

 

小泉進次郎さん

 人気のある政治家ですが、少し軽い感じです。経験不足というよりも、本人の性格・資質が軽いということです。内閣総理大臣を目指すわけですから、自身の改革プランを打ち出したい気持ちは分かりますが、父君は郵政民営化一本で、国民の支持を得ることに成功しました。党内の意見が分かれている課題について、いつまでの法案を出すなどと結論を先に言ってしまうとリスクがあります。父君は最重要課題はこれだとかなり強引にテーマ設定をしたと思いますが、政策の選択の形を取りつつ、党内の権力闘争の思惑がメインだったようです。その意味で、小泉純一郎さんは、政治闘争に長けていたわけです。その他の改革の中身は、経済財政諮問会議に丸投げしていました。ご本人は、全てを理解していたとは思えません。進次郎さんも、学識者をうまく使って、議論をまとめさせて、それを実行させるというプロセスを踏む方が、改革の実を上げることができるでしょう。ライドシェアくらいなら強引に進めてもできるでしょうが、解雇規制の緩和などは、簡単な課題ではありません。憲法改正も然りです。個々の改革が経済成長にどのような関わっているのか、全体像をヴィジョンとして描く必要もあるでしょう。父君は、自分にない政策の立案力はブレーンを使って補強していましたので、その手法を真似ると良さそうです。先走って足をすくわれぬよう、気を付けてほしいと思います。また、単なる軽い神輿をして担がれぬことも大切でしょう。人気が先行していますので、自分から転べば失望されてしまいます。なお、進次郎さんの知的なレベルを試したければ、経済、外交、防衛の課題について具体的に尋ねるべきでしょう。質問の仕方が拙劣な記者は質問に立たない方が良いと思います。

 

9月場所直前予想

 横綱照ノ富士関が休場しました。横綱を務める上で、心身の限界が近づいていると感じます。次の横綱の誕生が是非とも必要です。当面、琴櫻関、豊昇龍関の争いですが、綱取りに向かうという気力が不足しています。うまさではなく、強い勝ち方で、力の差をみせられるようにならないと、横綱には上がれないと思います。三役力士では、平戸海関に注目です。境川部屋での稽古も充実しており、年齢も24歳と若く、怪我さえなければ、大関に上がる勢いが感じられます。潜在的な横綱候補の大の里関にも勝っているので、昇進への星の積み上げに期待が高まります。優勝争いに絡んで、11勝ぐらいはしたいところです。大の里関は、二所ノ関部屋の稽古環境が気になります。立ち合いの引き出しを増やすために出稽古が必須です。もう毎場所、ほぼ同じ相手と相撲を取るので、ワンパターンでは読まれて十分な形にはさせてもらえません。大相撲の顔として、あらゆる面で、力士の模範になってほしいと思います。もう学生気分ではダメです。十両では、尊富士関の怪我からの回復ぶりが気になります。問題がなければ、14勝くらいで優勝できるでしょう。37歳の妙義龍関は、初日から怪我で休場です。このまま引退し、親方になるのかもしれません。気力の続く限り、土俵を務めてほしいと願います。新十両の大青山関は、スケールの大きな力士で、活躍を期待しています。動きの良い木竜皇関とともに、幕内を目指してほしいと思います。彼らに続く幕下上位の若手力士の関取昇進争いにも注目です。個人的には、ウクライナ出身の安青錦さんを応援しています。今場所は、5日目、9日目に国技館で観戦します。

 

 

 

 

2024年9月 7日 (土)

山は、をぐら山

王座戦第1局

 後手の藤井7冠が、中盤から抜け出して、読みの深さで押し切りました。戦型は、後手が3三金型を採用した少し変則の角換わりでした。序盤は、永瀬9段が馬を作って、玉の囲いも固くし、互角以上に戦っていました。藤井7冠は、少し長考して、7筋から攻勢をかけて行きました。優勢になったのは、5六銀と捨てて、7六桂としたところです。この位置の桂馬が最後までよく働きました。6八角で、2四香を取って、飛車を呼び込んで、捕獲に成功した流れは、解説者も気づいていなかった巧みな手順でした。飛車を取って、勝利が見えてきたと思います。永瀬9段は勝負手を放って、食らいつきましたが、藤井7冠は全てを読み切っていました。自陣は風前の灯火で、迫る手段が尽きた永瀬9段は、1分将棋の中で、投了に追い込まれました。永瀬9段に大きなミスがあったわけではなく、藤井7冠の形成判断、攻守の組み立の見事さが際立った一局でした。藤井7冠には、叡王戦以前の圧倒的な強さが戻ったと感じます。もはや取り付く島がない状態に見えますが、次戦での永瀬9段の巻き返しに期待しましょう。

 

賃貸物件の建築費高騰

 東住協セミナーで、黒田相談員の講演を聞きました。建築費の高騰に関しては、次のような要因があるとのことです。資材費の価格指数は、10年で160.7と6割上昇しています。ウクライナ情勢、ウッドショック、為替が原因です。労務費は、大阪万博、局所的な建設ラッシュ(馬毛島)、能登復興、就業者減、高齢化(若者が入らない)などで、上昇しています。残業が多い、休日が取れないなどの問題があります。建設業界の苦境は、経営悪化、倒産増加に表れています、人出不足で工期が延びる、施工中の資材や労務費の上昇を反映できず赤字というような悲鳴が上がっている状態です。建築費が下がる見込みはなく、土地活用での新築は無理というのが現状です。新築計画の検討で使用した収益計算書で説明していましたが、建築費の高騰で、築20年の木造戸建てをRC共同住宅8戸に建て替える計画は、単純に単年の採算が悪化する、相続評価額は6年後に始めて効果が出るということでした。この方は、建て替えを断念したとのことです。かりに新築を計画する場合は、資金計画は増額を前提に余裕を持つべきだとのことでした。工期の変更もありうると覚悟しておく必要もありそうです。数年前に比べて、大変厳しい時代になりました。

 

W杯アジア最終予選対中国戦

 7-0で圧倒しました。後半だけで5点です。それくらいの実力差がありました。中国は、守りに専念させられ、攻勢に出るのも難しかったでしょう。南野選手の4点目が決まった時点で、奮闘していたGKさえも呆然としていました。実質的には、前半追加時間での2点目、堂安選手のクロス⇒三苫選手のヘッドで、勝負ありという感じでした。伊東選手が復帰戦でゴール、前田選手、久保選手も持ち味を出したゴールを決められて、高井選手が代表デビューを飾るなど、収穫の多い試合でした。4-4-2で自陣に引いてスペースを与えないという戦術も、正確なクロスや巧みな駆け引きで、中国の守備陣は木っ端みじんになったということです。日本の強みは、誰が出ても同じように戦えるということです。富安選手が怪我でしたが、その他は全員集合したので、現時点でアジア最強だと思います。1試合も負けることなく、W杯への切符を獲得してくれるでしょう。観客も、特に後半は、代表チームの選手が躍動する姿を楽しむという余裕のある時間を過ごせました。伊東選手が温かく迎えられたのは、当然のことですが、とても良かったと思います。

 

2024年9月 6日 (金)

よろこび奏するこそをかしけれ

残念な阪神タイガース

 昨年からの選手の流出もなく、セリーグ連覇が期待されましたが、残り30試合を切って、かなり厳しい状況です。様々な要因が複合的に影響していると思いますが、成績を見ると、投手はそれなりに頑張っているが、大きく落ちた打者が何人かいる打線に責任がありそうです。チーム防御率は、2.51で、広島と同じ程度です。先発陣では、才木、ビーズリー、西勇輝、村上、大竹の各選手は、QSデータで81~65%を記録しており、村上以外は勝ち越しています。村上選手については、防御率も2.46で、打線の援護がないことに尽きると思います。自責点36に対して、失点45という点も気になります。彼は、守備にも足を引っ張られています。先発陣では、伊藤、青柳の両選手が、目立って成績を下げています。この二人は、監督にとって誤算だったでしょう。ブルペン陣については、大きな誤算はなかったと感じます。ただ、リリーフに勝ち星が付くケースが少なかったのは、打線の力が弱かったという印象です。打者については、2番中野、4番大山、6番ノイジー、7番梅野(坂本)、8番木浪の各選手が、大きく打率、OPSを下げました。5番佐藤選手は、長打を期待される打者ですが、ホームラン数が半減しています。期待通りに働いたのは、1番近本、3番森下の両選手くらいです。この体たらくは、昨年、日本一になったことが幻のように感じられます。結果がすべての世界なので、打撃成績を上げるために、あらゆるテコ入れ策を講じる必要があるでしょう。主力級が、揃って期待を裏切る状況では、岡田監督としては、どうしようもなかったはずです。久しぶりの日本一で、選手が安心してしまったのでしょうか?そんなことを書いてみたら、急に打ち出しました。奇跡の逆転優勝があるでしょうか?

 

人間の顔

 中野珠実「顔に取り憑かれた脳」(講談社現代新書)は、人間にとって、顔がいかに重要かを科学的に論じています。脳で分泌されるドーパミンは、やる気の元ですが、自分の顔を認識するとドーパミンが放出され、他方で、見知らぬ顔には、脳が恐怖や不安の感情を掻き立てます。最新の研究で、ドーパミンは、予想外の嬉しいことがあると多く分泌されることが分かっています。化粧や美加工によって、自分の顔がより美しいと感じれば、ドーパミンが増えて、心地よく感じるのです。ただ、過激になってくれば、グロテスクに近づくので、どこかでやり過ぎが終わることになります。人間は、他人の表情から、その心理を読み取ります。社会的動物として、ちょっとした目の動きからも相手の心情を察知して、それを踏まえた行動を集団の中で取ってきた長い歴史があるのです。同性に対しては、自分と類似している顔の人を信用する類似性の原理が、異性に対しては、自分にない長所を持つ顔を備える人に惹かれる相補性の原理が働くと言います。自分の顔が基準になるところが面白いと思います。ただ、全てに当てはまるのかは疑問です。いずれにせよ、顔によって選別が働くことは事実です。女も男も、時代の美しさの基準に合致する顔を持つ人が、高い人気を得るということは、歴史が証明しています。それは、著者が言うように、脳が顔に対して、とりわけ大きな比重を置くように設計されているからでしょう。男がエステサロンに通い、日常的に化粧をすることもそれほど珍しくなくなりましたが、ある意味で、脳が求める合理的な行動です。美しい自分を見ることで、モチベーションが上がり、パフォーマンスに自信が持てるということなのでしょう。

 

金融所得課税

 いつの間にか、自民党総裁選での争点になっているようです。増税の主張をする候補がいるとは驚きましたが、リスクも考慮しながら投資して得た配当や売買収益に、所得税15%+住民税5%も課税されているのですから、国の取り分としては十分すぎると思います。貯蓄から投資へと国民を誘導する政策が始まった途端に、いきなり増税論が出てくるのは異常です。自民党には税調というシステムがあるので、その関係者に喧嘩を売っているようにも感じます。増税論者が総裁にならないことを祈るのみですが、経済と多数派工作に疎い人間は政治家に向かないと思います。とても内閣総理大臣を務めるのは無理です。

 

2024年9月 5日 (木)

なにの身にこのたびはなりぬらん

軟弱地盤

 能登地震の被害から、ビルの杭の強度が、軟弱地盤によって増幅された揺れに耐えられず、横倒しのような形で倒れることがあることが分かってきました。NHKの放送でも、東工大の田村教授による調査研究の成果が報道されていました。輪島市では、隣家の木造家屋を押しつぶして、死者2名が出ています。東京の直下型地震の想定には、軟弱地盤によるビルの転倒は想定外だそうですが、主要な災害復旧を支える道路が、転倒したビルで塞がれるリスクが指摘されています。問題は、リスクの分析に止まらず、むしろ、効率的な補強方法の発明です。その点については、結論に至っていないようですが、軟弱地盤の工学的な克服が急がれます。最新の地震対策の要点は、人命を守る避難と強靭な街づくりです。江戸時代に川の氾濫原や海面だった場所は、恐らく、全て軟弱です。住み続けなければならない人もいるので、被害想定を再検討して、対策についても早急に進めてほしいと思います。

 

1993年5月15日

 Jリーグが始まった日です。NHKでヴェルディ川崎対横浜マリノスの開幕試合の録画放送があったので、見ました。旧国立競技場に6万近い観客が入って、華々しくJリーグの発足を祝いました。日本のサッカーが幼年期から少年期へ転換する歴史的な日でした。当時のサッカーは、今とはかなり様相が違います。ヴェルディは、4/2/3/1のシステムで、ラモス選手と三浦選手を中心に、中央からドリブルとショートパスでラインを突破するスタイルです。ラモス選手のプレーは、今見ても一人だけ創造力に溢れており、サッカーの楽しさを感じさせるものでした。マリノスは、4/4/2のシステムで、木村選手の正確なキックを生かして、セットプレーからの得点を狙います。また、水沼選手のスピードと個人技を生かして、相手の守備網を崩すというパターンです。2-1でマリノスが逆転勝ちしましたが、得点者は、すべて外国人選手で、決勝ゴールを決めたのは、アルゼンチン代表のラモン・ディアス選手でした。こういう名前を見ると、当時の日本の経済力が想像できるでしょう。外国人選手の活躍は、Jリーグの初期の状況が反映されています。今のサッカーとの違いは、中盤でのドリブルが多いこと(三浦選手のドリブルは止められない)、中央突破に重点が置かれていること、クロスが少ないこと(サイドバックの役割の違い)、サイドを起点とする攻撃が少ないこと(ボールを奪ったら縦に急ぐ傾向が強い)、交代枠が2しかないこと(60分過ぎの戦術的交代がない)、危険なプレーにもイエローカードがでないこと、監督が指示を出すためにサイドラインに立っていないことです。コンパクトな陣形からの球際の攻防には激しいものがありました。守備では、井原選手の先を読んだポジショニングは、目立っていました。ベテランGK松永選手の守備の統率と安定したキャッチングも、マリノスを支えていました。開幕試合で、気合が入ったぶつかり合いながら、フェアな好試合でした。当時は、サポーター団体が組織化されておらず、応援のスタイルも確立されていませんでした。この点は、大きな違いです。30年の歴史で、日本のサッカーは大きく変化しました。選手の育成プログラムも整い、技術的にも体力的にも大きく進歩したと思います。それも、Jリーグの発足で日本中が盛り上がったことから始まったと思うと、重みのある試合でした。今は、この試合に出場した選手の子どもよりも若い選手たちが、Jリーグを戦い、海外に羽ばたいています。唯一、三浦選手だけは頑固に現役を貫いていますが・・・。北澤選手は、今に至っても、トレードマークの長髪を貫いていますね。世田谷区のイベントでも、しばしばお見掛けします。

 

大阪万博の防災計画

 15万人が3日間滞留しても大丈夫だそうですが、こういう計画の前提は、最多入場者(22万7000人)があっても、水と食料、トイレ、毛布などの備蓄が十分にあるということです。60万食ではそもそも不足です。人口島は、橋や海底トンネルが通行できなければ、孤立が長引くでしょう。万博会場を救援してほしくても、大阪市を始め、大きな浸水被害を受けている地域から、優先して助けに来るということは現実的に無理ではないでしょうか?また、会場から出られても、自分の家までの交通手段が途絶していれば、第2の避難所に滞留するしかありません。そういう受け入れの余裕が、大阪市などにあるのでしょうか?さらに、地震の場合は、3日間で、電力、通信、交通などが回復するという保障もありません。最近は、家庭にも1週間程度の備蓄が求められています。南海トラフ地震に備えるには、まったく不十分な防災計画で、やはり万博には危なくて行けないと思います。リスクを冒しても行きたいと感じるコンテンツもなさそうです。特に、子どもたちを連れて行くのには、大きな躊躇があります。会場の地盤は、標高11mで、津波想定にも対応できるそうですが、人工島は必ず沈下しますので、安全性については、発表を単純に信用しない方が良いと思います。

 

2024年9月 4日 (水)

これは翁丸かと見せさせ給ふ

人質司法

 角川歴彦「人間の証明」(リトルモア)は、226日間勾留された著者による人質司法に対する宣戦布告の書です。被疑者の人権蹂躙を許している人質司法を廃絶するべきだというのが著者の主張です。勾留は、自尊心を奪う身体検査、常備薬が与えられない、丸見えの便器というような環境です。有罪になっていない状態で、犯罪者扱いするのは、著者が言う通り、可笑しくないでしょうか?保釈を認めない理由として、犯行を否認し、供述調書への署名捺印を拒否していることを検察が挙げているのですが、著者の指摘しているように、無罪を訴えれば、保釈しないというのは、被疑者の権利を否定するもので、論理的に無理があります。無実の人間を罪に落とすことにもつながりかねません。自身が作成していたノートを、弁護士との接見時間中に、検事の指示でコピーを取られたというのも、日本の刑事司法がフェアとは言えない一つのエピソードです。逆に検事のノートを、被疑者に見せますか?勾留中に、処方箋通りに薬が与えられず病気が悪化して、食欲もなくし、15キロ痩せたというのも衝撃です。拘置所の医師から、「生きて出られない」と言われて、恐怖と怒りで全身が震えたと記していますが、著者が死ねば、検察にとって都合が良いということなのでしょう。酷い話です。著者は、警察・検察の発表をそのまま流すマスコミにも、人質司法システムの一端を担っている責任があるとしています。彼の戦いの場は、既に裁判所に移っています。さらに、国会での人質司法禁止法の制定を目指しています。法曹を目指すすべての人には、著者が指摘していることへの問題意識を持ってほしいと思います。著者が、東京オリンピックに関する汚職事件で罪に問われるのかも注目ですが、人質司法への反対運動の闘士として、歴史に名を残すことになりそうです。「人間の証明」は、森村誠一さんの小説のタイトルを、ご遺族の賛同を得て、使用したものです。

 

24時間テレビのマラソン

 日本海テレビの幹部によって、260万円分の寄付金が着服されていた事件があり、毎年8億円以上集めていた寄付金額が、今年はかなり減ったようです。信頼が失われた以上、仕方がないことでしょう。マラソンの企画は、伝統になっており、ほぼ24時間を通して、過酷な挑戦に奮闘しているタレントさんの姿が放送できること、最終盤のゴール時には常に最高視聴率(今年は25.8%)を得られること、寄付を呼び掛ける際に共感を得られることなどが理由で、代替不可能になっているものと思います。日本人のマラソン好きも影響していそうです。ゴールを待つ国技館では、Yoshiki+高校生ブラスバンドによって、「紅」が演奏されていました。これは、新しいパターンで、マンネリの打破を狙ったものだったようです。残念なことに、今年は、国技館に入る直前の歩道で、不審者がタレントさんに触るという事件が起きました。怪我などはなかったようですが、女性としては、不快であり、危険を感じる瞬間だったでしょう。テレビ中継の都合上、タレントさんの前をスタッフが露払いできないので、こういう事故も起きてしまいます。また、今年は、天候にも翻弄されました。雨に打たれてのマラソンは体力を奪われるとともに、足元が滑りやすいので、足首や膝を痛める恐れが高まります。悪条件の中で最後まで走り切ったことは称賛に値します。ただ、100キロほどの距離をタレントさんが走るという企画は、最高気温が35度越えが当たり前になっている状況に鑑みれば、無謀だと思います。記録を狙うチームでの24時間耐久○○のようなものに代替した方が良いのではないでしょうか?

 

アメリカ国民の分断

 大統領選挙運動真っ盛りですが、意見の相違は、親しかった親族の関係を壊し、メディアを通じて得る情報の偏向を増幅させています。自分の考えに会うメディアを選択することで、一種の偏見の渦に巻き込まれてしまうのです。その結果、自分は正しいと信じ込み、自分と違う意見の人間とは、一緒にやっていけないとまで思いこんでしまいます。アメリカには、地方紙の伝統がありましたが、インターネットの発達で、地方紙のビジネスモデルは成立しなくなりました。地方紙は、その地域の人びとを統合する役割を担っていましたが、その廃止は、彼らの公共的な言論に空白をもたらしました。そこに、扇動を目的とする媒体が入り込もうとしています。アメリカ国民の分断は、メディアによる分断でもあるのです。日本には、全国紙、地方紙があり、今のところ、経営が維持されていますが、玉石混淆(石が非常に多い)のネット空間の情報に頼っている人が増えると、扇動やフェイクに引っかかる確率が高まるでしょう。陰謀論を信じ込むのも、自分が選択している情報源が、事件の裏に陰謀があると根拠薄弱な解説しているからです。トランプ支持の看板を庭に出している戸主が、真剣に、自宅を襲われる恐怖を語っていたのには驚きました。意見の相違が、激しい暴力に結びつく危険性を肌で感じているのです。情報に対する取捨選択の基準をきちんと持っていない人間は、情報洪水の中で溺れまいと、間違った藁に縋ってしまうようです。これは、アメリカだけの話ではないでしょう。我が国でも、ネットを含めて、実に好い加減な言論が日々飛び交っています。

 

これは翁丸かと見せさせ給ふ

人質司法

 角川歴彦「人間の証明」(リトルモア)は、226日間勾留された著者による人質司法に対する宣戦布告の書です。被疑者の人権蹂躙を許している人質司法を廃絶するべきだというのが著者の主張です。勾留は、自尊心を奪う身体検査、常備薬が与えられない、丸見えの便器というような環境です。有罪になっていない状態で、犯罪者扱いするのは、著者が言う通り、可笑しくないでしょうか?保釈を認めない理由として、犯行を否認し、供述調書への署名捺印を拒否していることを検察が挙げているのですが、著者の指摘しているように、無罪を訴えれば、保釈しないというのは、被疑者の権利を否定するもので、論理的に無理があります。無実の人間を罪に落とすことにもつながりかねません。自身が作成していたノートを、弁護士との接見時間中に、検事の指示でコピーを取られたというのも、日本の刑事司法がフェアとは言えない一つのエピソードです。逆に検事のノートを、被疑者に見せますか?勾留中に、処方箋通りに薬が与えられず病気が悪化して、食欲もなくし、15キロ痩せたというのも衝撃です。拘置所の医師から、「生きて出られない」と言われて、恐怖と怒りで全身が震えたと記していますが、著者が死ねば、検察にとって都合が良いということなのでしょう。酷い話です。著者は、警察・検察の発表をそのまま流すマスコミにも、人質司法システムの一端を担っている責任があるとしています。彼の戦いの場は、既に裁判所に移っています。さらに、国会での人質司法禁止法の制定を目指しています。法曹を目指すすべての人には、著者が指摘していることへの問題意識を持ってほしいと思います。著者が、東京オリンピックに関する汚職事件で罪に問われるのかも注目ですが、人質司法への反対運動の闘士として、歴史に名を残すことになりそうです。「人間の証明」は、森村誠一さんの小説のタイトルを、ご遺族の賛同を得て、使用したものです。

 

24時間テレビのマラソン

 日本海テレビの幹部によって、260万円分の寄付金が着服されていた事件があり、毎年8億円以上集めていた寄付金額が、今年はかなり減ったようです。信頼が失われた以上、仕方がないことでしょう。マラソンの企画は、伝統になっており、ほぼ24時間を通して、過酷な挑戦に奮闘しているタレントさんの姿が放送できること、最終盤のゴール時には常に最高視聴率(今年は25.8%)を得られること、寄付を呼び掛ける際に共感を得られることなどが理由で、代替不可能になっているものと思います。日本人のマラソン好きも影響していそうです。ゴールを待つ国技館では、Yoshiki+高校生ブラスバンドによって、「紅」が演奏されていました。これは、新しいパターンで、マンネリの打破を狙ったものだったようです。残念なことに、今年は、国技館に入る直前の歩道で、不審者がタレントさんに触るという事件が起きました。怪我などはなかったようですが、女性としては、不快であり、危険を感じる瞬間だったでしょう。テレビ中継の都合上、タレントさんの前をスタッフが露払いできないので、こういう事故も起きてしまいます。また、今年は、天候にも翻弄されました。雨に打たれてのマラソンは体力を奪われるとともに、足元が滑りやすいので、足首や膝を痛める恐れが高まります。悪条件の中で最後まで走り切ったことは称賛に値します。ただ、100キロほどの距離をタレントさんが走るという企画は、最高気温が35度越えが当たり前になっている状況に鑑みれば、無謀だと思います。記録を狙うチームでの24時間耐久○○のようなものに代替した方が良いのではないでしょうか?

 

アメリカ国民の分断

 大統領選挙運動真っ盛りですが、意見の相違は、親しかった親族の関係を壊し、メディアを通じて得る情報の偏向を増幅させています。自分の考えに会うメディアを選択することで、一種の偏見の渦に巻き込まれてしまうのです。その結果、自分は正しいと信じ込み、自分と違う意見の人間とは、一緒にやっていけないとまで思いこんでしまいます。アメリカには、地方紙の伝統がありましたが、インターネットの発達で、地方紙のビジネスモデルは成立しなくなりました。地方紙は、その地域の人びとを統合する役割を担っていましたが、その廃止は、彼らの公共的な言論に空白をもたらしました。そこに、扇動を目的とする媒体が入り込もうとしています。アメリカ国民の分断は、メディアによる分断でもあるのです。日本には、全国紙、地方紙があり、今のところ、経営が維持されていますが、玉石混淆(石が非常に多い)のネット空間の情報に頼っている人が増えると、扇動やフェイクに引っかかる確率が高まるでしょう。陰謀論を信じ込むのも、自分が選択している情報源が、事件の裏に陰謀があると根拠薄弱な解説しているからです。トランプ支持の看板を庭に出している戸主が、真剣に、自宅を襲われる恐怖を語っていたのには驚きました。意見の相違が、激しい暴力に結びつく危険性を肌で感じているのです。情報に対する取捨選択の基準をきちんと持っていない人間は、情報洪水の中で溺れまいと、間違った藁に縋ってしまうようです。これは、アメリカだけの話ではないでしょう。我が国でも、ネットを含めて、実に好い加減な言論が日々飛び交っています。

 

2024年9月 3日 (火)

よろずの犬とぶらひみにいく

大麻疑惑の藪の中

 関西学院大学のアメフト部は、伝統ある名門・強豪チームです。U20の日本代表として出場して5人の選手のうち、1名は大麻所持・使用により無期限活動停止処分、4人は規律違反による代表資格停止1~2年などの処分を、日本協会から受けました。しかし、関西学院大学は、大麻使用の証拠はなかったとして、記者会見を開いています。5人は、練習に参加していないものの、部としてはリーグ戦の開幕に向けて準備をしているとのことです。かりに一部員の大麻使用が事実だとすれば、日本大学の前例に照らせば、関西地区のリーグ戦への出場が不可とされてもおかしくありません。その点についての弁明が、記者会見の趣旨だったのでしょう。重い処分となった1名については、毛髪検査の受検拒否がポイントだったようですが、確かに、頑固に拒めば、隠しているのと同じだと受け止められます。ドーピングと同じです。大学が否定しても、日本協会による処分という事実は消えていないので、大学のアメフト部としては、他の部員も含めて、大麻の使用がないことを、第三者の力も借りて、徹底的に調査すべきでしょう。その上で、処分が間違いだというのなら、取り消しを求めて訴訟を起こすなり、疑惑を晴らすための行動を起こすしかないと思います。日本大学の事件があったばかりなので、関西学院大学の選手たちが大麻に手を出すことは、蓋然性としては考えにくいのですが、日本協会の事実誤認ならば、それを正すのも大学の使命だと思います。

 

地面師たち

 Netflixの人気ドラマ(全7話)です。豊川悦司さんのハリソン山中という地面師の首魁の悪人ぶりに惹かれる視聴者が多いのではないかと思います。ドラマとしては、かつての人気海外テレビドラマのスパイ大作戦(トム・クルーズのMIの原型)に類似しています。チームでプロが役割分担して、詐欺ですから、もちろん犯罪ですが、相手をコンゲームで罠にかけるのが、面白いわけです。このシリーズでは、積水ハウス事件がモデルになっており、加害者・被害者の双方に死人が出ます。詐欺グループの構成員も、ハリソンから離れるときは、決して無事ではいられないのです。言っても仕方がない話ですが、宗教法人たる寺院の女性住職の顔くらいは、何らかの資料や写真で確認できそうなものです。騙される方の情報収集力が低すぎます。また、相当多数の殺人事件も起きますが、捜査1課が出てこないのは、ストーリーの作りとしてまずいと思います。さらに、情報屋がフィリピンに逃亡した地面師に関して短時間で調べ上げて、殺された恩人の部下に情報提供するという筋も、無理がありそうです。コンゲームのスリルは確かに楽しめますが、実は、ハリソンの狂気(特に自ら人を殺す場面)が最大の見どころです。地面師になるということは、他人を地獄に落とすだけでなく、自分も必ず地獄に落とされることを意味します。ヒット作になったので、続編が期待できそうです。ハリソンの悪魔ぶりをさらに見たいと感じます。彼が、ダイハードの悪役ハンスというテロリストを褒めるシーンがありますが、刑事役のリリーさんがハンスのように落下して行った映像は一見の価値がありました。ただし、ジョン・マクレーン刑事は登場せず、あくまでピカレスク・ロマンの作品になっています。

 

 

マンションの全面改修

 国交省は、2025年度の税制改正において、マンションの全面改修や解体にも、建て替えと同様の優遇措置を適用する要望を提出しているとの報道がありました。実現するかは、年末の調整を待たなければなりませんが、老朽化対策の裾野を拡大することには意義があると思います。建て替えに管理組合の合意が得られないケースも少なくないからです。一棟丸ごとのリノベーションや、解体して敷地売却などのケースにも、優遇措置を拡大することで、老朽化したマンションの解消を促進するということです。併せて、マンションの全面改修や解体売却に要する管理組合の議決要件を緩和する制度改革(所有者の4分の3以上)も予定されています。

 

2024年9月 2日 (月)

犬島へつかはせ

備蓄米

 政府は、全国的には需給ひっ迫はないとしています。9月になれば、新米が流通するはずだと見ているのですが、要は行動が遅すぎたと思います。日ごろから、政治家が、スーパーなどで買い物をしていないためでしょう。JAグループの買い上げ価格を見る限り、新米価格が2~4割高くなってもおかしくありません。その時になって、政府の無策に対する不満が湧き上がってくることでしょう。九州などでは、新米が出回っており、親切な方が、コシヒカリ2キロを送ってくれましたが、世田谷区の住民の中には、コメが手に入らないことで困っている人もいるでしょう。結局、岸田内閣は、庶民感覚が理解できず、行動力が不足していたと思います。支持率が上がらなかったのもむべなるかなです。裏金問題だけが理由ではないと感じます。今回の米騒動は、新米が出回れば一件落着ということでもなさそうです。備蓄米を放出せよと農水省に国民が押しかけるのを待っているのでしょうか?

 

カリフォルニアのAI規制

 州議会が法案を可決し、州知事の判断を待つ段階に至りました。規制には、開発事業者の多くが反対しており、知事による拒否権の行使があるのかどうか、注目されています。法案の内容は、開発業者に対して、人命を危険に晒す、経済的な被害を引き起こすなど、サイバー犯罪や兵器への使用を防ぐための安全対策を義務付けるものです。違反企業には、損害賠償責任が課せられます。州内で事業を行っていれば、規制対象になるので、影響は広範です。連邦レベルでは、EUのような規制法制が成立する見通しはないので、カリフォルニアの動向が重要な意味を持っています。日本における法制の在り方に関する議論にも、間接的に影響があるでしょう。日本でも詐欺事件やサイバーテロが頻発しており、警察はそれなりに捜査をしているのでしょうが、未然に防ぐことは不可能です。悪い奴らが野放し状態になっている環境を変えるべしという議論が強くなっていくのは、当然だと思います。

 

公設秘書給与の詐欺事件

 公設第1秘書の妻を、名目上第2秘書として雇用して、給与350万円を詐取したという事件があり、自民党の参議院議員(岩手県選出)が辞職し、在宅起訴されました。この人物は、弁護士をしているとのことで、遵法意識の欠如は呆れたものです。秘書給与の不正受給での立件は、日経新聞に掲載されている限りでは、6人目ということですが、要は、第2公設秘書は実質的にいなくても支障がないということではないでしょうか?この際、第2秘書の給与の公費負担をやめるという議論がなされるべきです。週刊誌報道の直後は、勤務実態があるとの弁明をしていたので、何とか言い逃れができると考えていたのかも知れません。この悪質な事件以外にも、政治家としての資質に疑問を持たれるような行動があった人物なので、自民党は、候補者選定に段階で、もう少しチェックを厳しくすべきではないかと思います。有権者は候補者の裏の顔までとても見抜けません。公党の推薦なり公認を信頼するしかないので、こういう事件が起きると、自民党への信頼は無くなります。

 

2024年9月 1日 (日)

うへにさぶらふ御猫

ウクライナの越境攻撃

 精鋭部隊をロシア領の占領に繰り出した作戦が、ロシアとプーチンを刺激しています。お互いに、占領地を確保することを優先すれば、ロシアによる奪還は意外に難しいのではないでしょうか?ウクライナの越境攻勢をロシアが通常兵器で押し返す力がなければ、ロシアがしばしば脅しに使ってきた核攻撃を本当に行う恐れが出てきました。ウクライナ侵攻の失敗を認めたくないゆえに、プーチンが核の使用という暴挙に出るという最悪のシナリオが浮かんできます。そうした最悪の事態に至らぬうちに、停戦が実現することを強く望みます。ロシアは、ザポリージャ原発を管理下に置いていますし、暴走を始めれば、ウクライナのみならず、人類にとって、非常に大きな人災を引き起こす可能性があります。ロシアもウクライナも国民は、無益な戦争に疲れているでしょうから、停戦交渉への糸口はありそうです。それにしても、仕掛けたロシアにとっては、誤算続きの戦争でした。失敗の責任は、プーチン自身が負わなければならないでしょう。核兵器の使用にまで手を出せば、稀代の犯罪者として国際法廷で裁かれるしかなくなります。決して「畳の上」では死ねないでしょう。失敗した独裁者の末路は惨めなものです。

 

未来の天皇陛下の大学受験

 皇室がエゴサーチをされているとは思いませんが、お節介なことに、自分と無関係の他人の家の大学受験に反対を表明する人間が1万人以上もいたようです。東大の推薦入試を受験することが最善かどうかには疑問もありますが、あくまで、専ら、ご本人と秋篠宮家の判断に委ねるべき事柄です。また、推薦入試を受ければ、即合格という保障はありません。忖度があると決めつけるのは誤りで、国立大学の入試の内情を知っている人に聞けば分かります。入試業務には学内のかなりの人数が関与するので、不当な得点の嵩上げは、実務上難しいでしょう。嫌がらせのような反対署名を行うのは、天皇制反対というような過激な思想に由来するのでしょうか?どこの大学に進学しようが、悠仁親王殿下が天皇に即位されることになることに変わりはありません。要は、未来の天皇として学ぶべきことに支障がなければ良いだけです。そうした判断は、お節介しなくても、秋篠宮家の方々がなさるでしょう。東大に入れば、恐らく学業にかなりの時間を取られます。天皇になられる方には、別に学ぶべき大切なことが山積していると思います。職業選択が自由な東大生とは、まったく状況が異なります。

 

移住婚

 国は、女性を対象に、移住して結婚する場合に、支援金60万円を支給するという施策を検討していましたが、女性のみというポイントへの反対論に鑑みて、事実上撤回しました。東京に女性が集まる傾向があるために、首都圏から地方への若い女性の移動を促進したかったのでしょう。移住+結婚という条件は、国がプライベートなことに直接介入するようで、烏滸がましさも感じます。撤回に追い込まれたのは、手法が拙劣なので、仕方がないと思います。ただ、首都圏からの女性の流れを作るということ自体は否定すべきではないのではないでしょうか?確かに、直接的に金で釣るというのは、デリカシーに欠けて、大変失礼です。そういうつもりではないでしょうから、施策を再検討して、出直したらどうでしょうか?

 

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