下衆の家に雪の降りたる
プラごみ条約案の先送り
プサンでの条約案の政府間交渉は、成案を得るには至りませんでした。元となるプラスチックの生産段階からの規制、使い捨て製品の使用制限、途上国支援の仕組みなどでの厳しい対立があったためです。プラごみは食物連鎖を通じて、人体にも影響を及ぼす恐れがあり、世界全体で対処が必要だという認識は共有されているはずです。ただ、具体的な方策となると、国ごとに利害関係が異なり、条約案の成案を得るには、まだ道のりが遠いようです。日本も、この会合には参加したはずですが、国内ではほとんど報道がなされていませんでしたプラごみの危険性に関しては、認識が広まっているとは思いますが、国際条約への主体的な参画への意欲はまだまだでしょう。島国で領土は世界61位ですが、領海を含むEEZ(排他的経済水域)の総面積は、世界6位です。海洋国家として、海の健全性には無関心でいられないでしょう。簡単に対立が解消することはなさそうですが、外務省及び関係府省には、より積極的な参画を求めたいと思います。
緊縮予算と国債金利
フランスのバルニエ内閣が国債金利の急上昇を踏まえて、歳出を抑制する2025年予算案を作成したところ、緊縮に反対する野党によって内閣不信任決議を可決される危機に瀕しています。フランスは、EU主要国の中では、対GDP比6%もの財政赤字で突出しています。放漫財政を続ければ、格付けが下がって国債が売られる、緊縮予算を組めば政権基盤の弱さから不信任を突きつけられるという板挟みの状況なのです。内閣不信任となれば、議会の賛成が得られる別の人物を首相に据えることになりますが、議会で過半数を確保していないマクロン政権にとっては、極めて頭の痛い状況になるでしょう。日本人にとっては、単にフランスの国内問題と受け取られがちですが、日本でも、今のような財政規律の緩みが続いて行けば、同じような政治の不安定さに苦しむ時代が来るのではないでしょうか?単年度の赤字国債の対GDP比については、フランスと似通った状況ですが、債務残高に関しては、フランスの111.8%に対して、日本は257.2%と大きく上回っています。それでなくても、金利のある世界は必至ですから、必然的に、財政赤字を抑制することは一層難しくなります。フランスで起きていることを、他山の石とすべきでしょう。財政赤字は、明らかに日本のアキレス腱です。特に将来世代への足かせです。私のような60代の人間は、破綻しないうちに命を終える方が幸福でしょう。
輪島塗の危機
岩波書店の雑誌「図書」12月号に、眞木啓子さんという工芸店の方の「能登・輪島を想う」というエッセイが掲載されています。「輪島の主要な産業である漆器は、まるで止まっています。」と記されています。塗師屋の50~70%は辞める方向に向かっているというのは、忌々しき事態です。地震+水害で、完膚なきまでにやられて、茫然としているのです。そして、天災からの復興は、公の仕事だと主張しています。確かに、輪島塗の文化が存亡の危機にあることは明らかで、産業復興の成否は、地元石川県の肩にかかっています。能登大地震からの再生は、和倉温泉と輪島塗が輝きを取り戻さなければ、成功には至らないでしょう。復興へのロードマップを早く示してほしいものです。人が散ってしまえば、復興は不可能です。
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